『父と子の戦い』(2021.5.8)
 

《粗筋》

 竜の紋章を共鳴させるバランの精神攻撃に耐え、拳へと紋章を移したダイ。バランを殴り飛ばしたダイに、一同は驚愕を隠せなかった。

 紋章が移動した理由を、ヒュンケルはダイ自身の意志だと推理した。バランの頭脳支配から逃れ、彼以上の攻撃力を得るために、ダイは本能的に紋章を額以外の場所に移すしかないと感じたのだろう、と。

 全闘気ではバランに劣ったとしても、紋章の力を一点に集中させれば、一撃の破壊力では上回れる――従来の竜の騎士にも出来ないであろう、奇跡……その証拠として、バラン自身が驚いていることを指摘するヒュンケル。
 拳に紋章を宿らせたダイは、怒りをそのままバランへとぶつけていた。
 
ダイ「覚悟しろ、バラン……! あんたは、たくさんうばった……おれの大事なものを……たとえ親だろうとなんだろうと、絶対に許さない! ぶちのめしてやる!」

 ダイの怒りに呼応して、竜闘気が噴き荒れる。
 それに押されたのか、一瞬、腕で自身を庇ったバランだったが、次の瞬間には怒りをむき出しにしてダイに殴りかかった。

 それを平然と待ち受けるダイは、バランの拳に自分の拳を打ち付ける。互いの拳をぶつけ合いながら、にらみ合う竜の親子。
 次に動いたのは、ダイの方だった。
 ダイは左手でバランに殴りかかり、今度は左手同士が激しくぶつかり合う。その衝撃で、地面に大きなクレーター状のヒビが入った。

 焦りを感じたように、バランは両手を組んでそれを振り下ろした。が、ダイは後ろに飛んで攻撃を躱す。
 そして、地面に足がついた途端、前に飛んでバランへ殴りかかった。

 だが、バランもその攻撃は読んでいた。
 両手を身体の前に交差させ、後ろに飛ぶことで攻撃に備えようとする。が、ダイはガードの上からでもお構いなしに殴りつける。蹴りも織り交ぜた猛攻に、さすがのバランもガードを崩し、自身も蹴りと拳で応戦する。

 あれほどの強さを見せつけたバランと、互角に戦っているダイを見てクロコダインは息を飲む。
 今のダイの姿は、奇跡のように見える。
 その奇跡を起こしたのは、ダイの中に流れる人間の血のおかげだとヒュンケルは考えていた。

 倒れているポップを見やり、友を思う心が竜と魔の力を腕に追いやり、逆に支配したのだと語るヒュンケル。

 その間も、バランとダイの戦いは続いていた。
 バランの拳を、右手でつかみ取るダイ。
 どこまでも自分に逆らう息子の姿を、驚愕の目で見るバラン。彼には、ダイの抵抗が彼だけの意志とは思えなかった。

バラン(ソアラよ……おまえまでも、私が間違っているというのか……!?)

 怒りも露わに、ダイを蹴り飛ばすバラン。飛ばされたダイは身体を一回転させて体勢を立て直し、再び殴りかかってくる。
 それを、竜闘気で迎え撃とうとするバラン。

 雄叫びを上げて殴りかかった来たダイの拳は、その竜闘気をも貫き、森を裂いて大きな地割れを作り上げた。
 みぞおちをまともに殴られたバランは、わずかだが血反吐を吐く。彼は、明らかにダメージを受けていた。

 一撃の破壊力では、ダイは確かにバランを上回っている。それを確信するクロコダインとヒュンケルだったが、不安は拭えなかった。
 
 怒りに燃えたバランがダイに殴りかかり、それを避けたものの、ダイの服が真っ二つに引き裂かれ、アバンのしるしが露わになる。
 荒い息を吐きながらも、バランは親が子に勝てないと宣言する。額の紋章に光を集めながら、バランは紋章閃を放つ準備をしつつ、ダイを脅しつける。

 本気になれば、風穴を開けると言われてもダイは動じない。
 まっすぐにバランを睨みつけ、言い放つ。

ダイ「……だから、なんだっていうんだ……?」
バラン「いいんだな、ディーノ……」
ダイ「おれは……おれば、ダイだ!」

 ダイに向けて、紋章閃を放つバラン。
 ダイは全く動じず、紋章の宿る拳でその光を払いのけた。軌道を反らされた光は文字通り森を裂き、山を打ち砕く。






 その震動は、テラン城にまで伝わっていた。
 うろたえる兵士の問いかけに、テラン王はこの騒動の主が竜の騎士だと確信していた。





 一方、バランの紋章閃を払いのけたダイは、その姿勢のまま怒っていた。
 ダイは、悟っていた――バランが本気で攻撃していないことを。

ダイ「本気でやれよ……ポップやみんなには出来て、おれにはできないのかあッ!?」
バラン「図に乗るなよ……このガキがぁああ!」

 怒りのあまり、咆哮するバラン。
 そんな二人の戦いを見ながら、ヒュンケルはダイを案じていた。バランをこれ以上怒らせてはいけないと、感じ取っていたのだ。
 ダイが見抜いたとおり、バランはダイに対して手加減している……つまり、まだ秘めている力があるということなのだから。






 そして、レオナは少し離れた所からその様子を見守っていた。レオナ自身は動いていないが、ダイとバランが激しく戦いながら場所を移動したため、彼らは今、森の中にいる。
 ダイの強さに驚き、これならなんとかなるかもと希望を持つレオナ。
 その時、誰かが走る音を聞き、そちらを向いたレオナはメルルを見つけ、声をかける。

 レオナに気づいたメルルは、ホイミをかけようと屈み込んだ。
 しかし、レオナはそれを断り、メルルにクロコダインとヒュンケルを託す。それに頷きながらも、メルルは煮え切らない様子でポップの方を見つめる。

 だが、レオナはポップのことは任せて欲しいと言う。
 一度も成功したことがないが、試してみたい呪文があるから、と――。






 戦いは、まだ続いていた。
 立っているだけで地面にひび割れを作り、雄叫びを上げて竜闘気を全身から噴き上がらせる二人の竜の騎士達。
 自分達の想像を超えた戦いが始まることに、戦慄を感じるダイの仲間達。

 二人が拳を握り、攻撃に出たのは全く同じタイミングだった。
 両者の拳がぶつかり合い、激しい爆炎が噴き上がる。だが、爆風が収まった後は二人の姿が消えたことに驚くクロコダイン。

 しかし、ヒュンケルは上だと叫ぶ。
 見上げた空で、ダイとバランが空に跳び上がって戦っている姿があった。空中で激しく殴り合い、蹴り飛ばし合う親子。

 どちらも手加減なしでの攻撃であり、地上戦と違ってダメージを負った時は大きく後ろへと飛ばされるが、それでも互いに全く怯むことなく相手に殴りかかっていた。

 一度、山にぶつかりそうになったダイは体勢を立て直してバランに突進し、頭突きで突っ込んだ。
 互いに額をぶつけ合いながら、一歩も引かないダイとバラン。
 ケダモノのように吠え立てながら頭を押しつけ合う二人だが、バランの蹴りがダイの顎にヒットしたことで均衡が崩された。

 空高く飛ばされたダイを、翼を広げ、追って飛ぶバラン。
 ダイは一瞬意識を失っていたが、ハッと気づくと身構えて自分からバランへ向かっていく。

 ダイの拳が、バランの頬を見事に捉えた。
 今度は、バランが崖へと吹き飛ばされる。岩肌に貼り付けられたバランを、さらに埋め込もうとするかのようにダイがすかさず追撃を仕掛ける。
 二度目の吐血を吐くバランに、ダイは止めを刺そうと拳を振り上げる。

 が、その瞬間、バランの反撃が始まった。
 ダイの頭を掴み、空中に舞い上がったバランは勢いをつけてその頭を崖へと打ち付けた。
 しかも、それにとどまらず、頭を抑えつけたまま崖を削るように飛び、空高くへと舞い上がる。

 さらにダイを手にしたまま、今度は地面に叩きつけた。それでもなお、バランの攻撃の手は止まらない。ダイを引きずったまま飛び、今度はテラン城の城壁へと叩き込む。






 その衝撃は、城の内部にも伝わっていた。
 テラン王は竜の騎士の戦いに驚愕しつつも、自分達も選ばなければならないと考えていた。
 どちらの竜の騎士様が、正しいかを――。





 城の一部を瓦礫に変えながら、バランは空中でじっと下を見下ろしていた。
 そんな彼の目に、瓦礫の中からよろけつつも立ち上がるダイの姿が映る。
 心配そうにダイを呼ぶレオナ。

 同じようにダイを見つめながら、ヒュンケルはその一歩先まで読んでいた。
 このままでは、ダイが負けるだろう、と。
 バランはこれまで、息子を殺さないように力をセーブしていた。だが、その制限を今のバランは失ってしまっている。

 自分の息子であっても、殺さずにはいられない竜魔人となってしまった……空中にいるダイは両手を高々と上げ、組み合わせる。
 合わせた拳を、バランは当然のようにダイに向けて狙い定めた。

 徐々に開かれる指の間から生まれるのは、眩いまでの光と強烈なエネルギー。開かれた手が竜の顎を描く時、秘呪文ドルオーラが放たれる。
 だが、ダイはまだダメージから立ち直りきっていない。意識が定まっていないのか、荒い息をつきながら頭を押さえていた――。






 バランの拳が竜の口を形どるのを見て、メルルが悲鳴を上げる。
 クロコダインやヒュンケルも、驚きを隠せない。ドルオーラの正体が、竜闘気を圧縮して放つ呪文だと見抜くヒュンケル。
 威力を予想し、ヒュンケルはダイに避けるようにとアドバイスを飛ばす。

 その声でハッと意識を取り戻したダイは空を見上げ、今にも呪文を打ち出そうとしているバランを発見する。
 が、次の瞬間、ダイは空へと飛び上がり、バランの脇をすり抜けるようにしてさらに上空へと向かった。

 しかし、バランはダイを逃す気は無い。
 ダイの方向に構え直し、ドルオーラを放つバラン。背後から迫る強大なエネルギーの固まりに、振り返ったダイの顔が驚愕に染まる。
 自分に向かってくる光を、恐ろしい物のように見つめるダイ。

 驚愕に目を見開いたダイを、光が包み込む。
 呪文の域を超えた凄まじい爆風が吹き荒れ、仲間達は爆煙で何も見えない中、ただひたすらにダイを心配する。

 と、その時、空から人影が降ってきて地面に激突する。
 それは、苦しそうに息をつくダイだった。瞬間移動呪文で呪文を躱したダイに対して、またもドルオーラの構えを取るバラン。

 それを見たダイは、一瞬、仲間達の方を見やる。
 そして、トベルーラの呪文を唱えて再び空へと舞い上がった。それを見たクロコダインは焦らずにはいられない。
 
 翼を持つバランに空中戦を挑んで、勝ち目などあるはずがない。ダイがなぜ、そんな真似をしたのか分からないまま、不安そうに空を見上げるメルル。
 しかし、ヒュンケルには分かっていた。

 仲間達がドルオーラの巻き添えを食らわないように、ダイが自らの意志で空へと舞い上がったことを。バランと違い、ダイは怒りの中でも自分を見失っていない。

 それに感動したクロコダインはメルルに、立てる程度で構わないから早く回復呪文をかけるようにとせがむ。
 それを受けて、毅然とした声で「はい」と頷き、クロコダインの元に駆け寄るメルル。






 一方、バランは空中で動きを止めたダイを見て、観念したと思い、ドルオーラを身構えながら勝ち誇って笑い出す。
 だが、ダイは両手を交差した姿勢で身構えた。その目には、はっきりとした決意の光が見える。

 ダイは、バランのドルオーラに耐えるつもりでいる。
 地上にいるヒュンケル達も驚くが、ダイは本気だ。ドルオーラという呪文の凄まじさが分かるからこそ、二発が限界と見切ったのだ。それに耐えさえすれば自分の勝ちだと言い切るダイに、バランの怒りは掻き立てられるばかりだ。

 竜の騎士最強の呪文に耐えられるものなどいないと言い放つバランに、ダイは全く怯まない。

ダイ「竜の騎士には撃ったことがないだろ!? おれだって、竜の騎士だ!」

 ダイの挑発に、バランは完全に理性を飛ばし、ダイを消し飛ばそうと全力で呪文を放った。
 それを避けず、真っ向からそれを受け止めるダイ。
 自分の中の竜の力を呼び起こし、竜闘気を全開にして驚異の呪文に耐えようとする。

 竜闘気同士がぶつかり合い、空が発光した。
 我が子に向かって超呪文を放ったというのに、バランは歓喜のまま笑っていた。強敵を倒した喜びに浸るバランに対して、クロコダインはたまりかねたように怒鳴る。

クロコダイン「何がおかしい!?」
ヒュンケル「魔獣め……!」

 身をのけぞらせて笑っていたバランは、突如、その笑いを止めた。
 爆煙の向こうに見えた人影は、ダイ――ドルオーラに耐えきったその姿を見て、バランは驚愕する。

ダイ「バラン! これでもう、あんたは打つ手なしだ!」

 ダイは腰からパプニカのナイフを引き抜き、身構える。アバンストラッシュの構えを取り、斬りかかる。
 ドルオーラが無効化された衝撃に棒立ちになったままのバランは、まともにそれを食らった――かに見えた。

 しかし、バランの身体に刃が当たる寸前に、パプニカのナイフは音もなく崩れていく。
 レオナからもらったナイフの消失に、衝撃を受けるダイ。

 が、そんなダイの衝撃は、今度はバランにとって絶好の攻撃の隙となった。
 ダイの腹に蹴りを放ち、突き飛ばすバラン。
 バランは機嫌よさげに笑い、言い放つ。

 竜の騎士の力には、並の武器は耐えられない。まして、右手に全エネルギーを集中させたダイの力に敵う武器など、この世には存在しない、と。
 地上に降り立ったバランは、見せつけるかのように自分の剣を手に取った。竜の騎士の力に耐えうる唯一の剣、真魔剛竜剣。

 もうドルオーラを使えるほどの魔法力はないが、これで勝負は見えたとバランは剣を抜き放ち、ダイに斬りかかろうとした。
 だが、その足にクロコダインが食らいつく。

 流れる血もそのまま、完全には体力が回復しきっていないはずのクロコダインは、渾身の力を込めてバランを地べたに叩きつける。

クロコダイン「オレとて獣王と呼ばれた男! 何もせず座するつもりなどない!」

 バランの足を掴み、そのままぐるぐると振り回すクロコダイン。




 彼の奮闘を見ながら、レオナは文字通り這いずってポップの元に向かう。胸に手を当てるが、心臓が停止している。

 自分の力で呪文が成功させられるかどうか危ぶみながらも、レオナは決意して両手を空に伸ばし、呪文を唱え出す。
 死者を蘇らせる呪文、ザオラル。

 メルルからその話を聞き、ポップが生き返るのかと希望を持つヒュンケル。だが、ザオラルの成功率は熟練の僧侶でも50%以下……レオナの腕次第だ。
 魔法力を高め、レオナはポップの生還を祈っていた――。





 一方、自分を振り回すクロコダインに苛立ったバランは、剣で何度も彼の腕を切りつける。しかし、クロコダインは全く手を緩める気配もない。

クロコダイン「オレの腕を切りたくば、ギガブレイクでも作ることだ!」

 クロコダインの挑発にのせられたのか、バランは雷雲を呼んでライディンで彼を気絶させる。
 もはやバランは、誰にもダイとの戦いを邪魔させる気は無い。たとえ、それが神であろうとも……。

 剣を手に、空中に飛び上がるバラン。
 竜闘気を纏い、空を飛びながら攻撃を避けるダイだが、空を飛ぶ速度はバランの方が上――しかも、相手は武器を手にしているのに、ダイは素手だ。

 バランの攻撃を辛うじて躱すも、バランの一撃は森を破壊するほどの威力がある。拳を握り込んでバランに殴りかかったが、バランの一撃で胸元を切られてしまった。
 痛みに呻き、間を空けようとするダイに、それを執拗に追いかけるバラン。





 その頃、地上でメルルの回復呪文を受けていたヒュンケルが、それを止めさせた。
 まだダメだと引き留めるメルルに、ヒュンケルは動けるだけで十分だといい、クロコダインの下へ向かう。

ヒュンケル「クロコダイン、しっかりしろ。立て。ダイを助けねば……力を貸してくれ。――オレに策がある」





 地上でそんなやり取りが躱されているとも知らず、ダイとバランは空を駆け巡る。バランの猛進撃に追いつかれそうになるダイの目が、大きく見開かれた――。

 
 

《感想》

『そんなぁっ、殺生なところで止めないでっ!?』
 と、思わず叫んじゃいましたね。ええ、次の展開を全部知っていますけど、つい(笑)

 今回の冒頭は前回のラストをそのまま引っ張ってきましたね。連続物の話だとそうなるのは仕方が無いですが、少しは変化をつけて欲しいと思ってしまう今日のこの頃。

 しかし、ヒュンケルの説明が原作より簡略化、なおかつ分かりやすくなっているのには感心します。従来の竜の騎士にはできないという推理を述べる際に、バランが驚いていることを指摘しているのはアニメでの改変ですが、すっごく説得力がありますね。

 ダイの台詞も、微妙な改変があります。

原作ダイ「……あんたは……おれの大事なものをたくさん奪った……!」
アニメダイ「あんたは、たくさんうばった……おれの大事なものを……」

 アニメのダイは倒置法を使っています。倒置法は本来、言葉を強調するための小洒落た文章という印象が強いですが、ダイの場合はむしろ、怒りのあまり言葉遣いがたどたどしくなっているような印象ですね。
 また、アニメではダイの怒りに応じて竜闘気が噴き荒れる表現があるのが、いい感じです。

 バランもそうですが、ダイも感情が高ぶると竜闘気の発動を抑えられないみたいですね。どんなにいがみ合っても、やっぱり親子だと強く感じます。

 バランとのバトルにも、改編が!
 原作では、ダイはバランの拳を避けて手首を掴み、ひねりあげようとしています。それを嫌ったバランに蹴飛ばされ、後ろに飛ばされるという流れでした。

 が、アニメでは拳同士をぶつけ合う真っ向からの殴り合い!
 クロスカウンターではなく、拳同士をぶつけ合うガチなバトルが実にいいですね! そして、アニメのバランは蹴りではなく両手を組んで殴りつけるという、ヒュンケルを倒した時と同じ手を使ってきました。

 その後の殴り合いも、すごい! 殴ろうとするだけじゃなく、蹴りも使う辺りが素晴らしいです。個人的に、ボクシングよりムエタイ系の動きの方が好きなので、見応えがありました。
 原作では存在しなかったコマとコマの間の動きを、めちゃくちゃド迫力に見せてくれたのに感動です!

 ヒュンケルの解説を、まとめてではなく別けて語るのも好印象。
 ポップの死に顔も、髪で隠れて見えない風になっているのが嬉しかったですね。しかし、左手の怪我が血が流れまくって服の破けが大きい割に、皮膚の裂け目が見当たらないのに違和感を感じましたが。

 原作では血の量の割に、服の切れ目は極小さく描写し、傷口を見せない方向性だったのに、なぜそこは踏襲しなかったのか。
 ついでに言うのなら、倒れているクロコダインの背中から血がにじみ出して地を染めているのですが、この量が原作より明らかに多いのですが(笑) 

 でも、バランがダイの抵抗にソアラの意志を感じ取るシーンの追加は嬉しいですね。
 バランが愛する妻と息子を半ば同一視しているのが、よく分かります。

 そして、バランは気がついていませんが、ソアラの意志を自分への否定と感じている辺り、バランは無意識下で、今の自分をソアラが認めてくれないことを自覚しているのだと思います。

 死者を思い返す際、当たり前の話ですがそれはその人死者本人ではなく、思い出す人の知っている死者に他なりません。ですので本物のソアラがバランを認めないのではなく、バランの思い返すソアラが今の自分を認めてくれないだけです。
 
 つまり、バランは自分で自分を認められないでいるんですね。
 バランを救えるのは死んでしまったソアラでも、息子であるダイでもなく、自分自身しかいないのですが、バランはそれを頑なに認めようとしません。

 認めたくないからこそ、息子であるディーノを自分の味方に引き入れ、心の奥底の罪悪感を宥めようとしていたんじゃないですかね。

 殴られたバランが血反吐を吐くシーンも、アニメの改変ですね。
 みぞおちをまともに殴られると、意識ははっきりしたまま猛烈な苦痛を味わうそうで、ある意味で頭を殴られるよりキツいんだとか。
 
 それで反吐を吐いてしまうのは、プロになる以前のボクサーにはよくあることらしいですが、そこに血が混じるとなると……腹をやられたと言うよりも、喉、もしくは口内にダメージを負ったんじゃないかと思えます。

 紋章閃を放つ直前のダイとバランのセリフのやり取りも、アニメの改変ですね。
 ダイのことをディーノと呼び続けるバランと、自分はダイだと主張するダイの意地のぶつかり合いがいいです。

 後、バランが紋章を放つシーンで、白黒の荒っぽい線画のシーンがあって、その荒さが逆に迫力があっていいなと感心しました。

 テラン王、城の中にいるだけなのに地震や地響きの原因が竜の騎士だと確信していましたね。……やっぱり、テランの災害の大本って竜の騎士のせいだったんじゃ(笑)
 うん、高床式の家にして、ついでに屋根も低くして台風対策並に災害に強い家づくりをしたくなるわけです。

 それはさておき、原作ではスピード戦で表現したいたダイやバランの怒りが、身体から噴き荒れる竜闘気で表されているのがいいですね。
 
 レオナが森の中にいるダイとバランを見るシーンで、二人の姿ではなく、二人の放つ紋章の光として表現しているのが興味深かったです。原作ではバッチリ姿が見えていましたが、敢えて光だけというのもいいですね。
 ただ、ダイとバランでは身長差がある上、ダイの紋章は手に映っているため、紋章の輝きが同じ高さで並んでいたのには違和感がありましたが。

 そして!
 そして、意図せぬお色気シーンを発見っ。
 腕をついて森を見やるレオナのカット……ッ、一瞬、上半身裸に見えてギョッとしましたよ!?

 よくよく見ればちゃんと服を着ているのですが、なまじ服が薄いピンクなせいで、光が当たっている部分は顔の色と同じぐらいの白さに見えるせいで、胸がむき出しに見えちゃって驚きもいいところでしたよっ。
 服の皺の入れ方もタイミングがいいと言おうか、いやいや、悪いと言うべきか、胸のラインを強調する物でしたしっ。

 ベージュのシャツが一見何も着ていないように見えるのと同じ感覚で、焦りました。

 メルルの登場シーン、彼女がまっしぐらにポップを目指して走っていましたね! でも、レオナに呼ばれると即、彼女を助けに来るところが可愛い……けど、原作と同じくポップを気にしているのか、目をチラッと横に向けていました! 目立たないシーンですが、何回も見返して確認しちゃいましたよ。

 ダイとバランのぶつかり合い、原作ではぶつかることで爆発が起こったかのような演出でしたが、アニメではしっかりと拳をぶつけ合うシーンが描かれていましたね。

 本来、相手の攻撃を受けるのに拳で受けちゃうと、あっさりと拳が割れたりダメージを受けるので本来はやらない行為なんですが、そこを敢えてやるあたりが人外の戦い感を感じます。 

 ダイとバランがぶつかった後、クロコダインが即座に消えたと叫んでいますが、ここにワンカットでもいいから原作のように俯瞰から大きくえぐれた森の図を見せて欲しかったですよー。

 戦っていたはずの二人がいなくなった、どこ? と、見ている側にも思わせて欲しかったです。クロコダインが叫ぶのが早過ぎて、読者視点でダイ達がどこにいったのか疑問に思う前に、話が展開しちゃっていますね。
 戦いに尺を取り過ぎて、その余裕が無くなったんですかね?(笑)

 でも、その分、バトルの充実振りはすごいです! 空中戦もたっぷりと尺が増えていますよっ。地上戦でも拳と蹴りを使っていましたが、空中でも同じく拳と蹴りを使い、更には動きが上下左右と派手になっているのがナイスでした。

 特に、ダメージを受けたダイから竜闘気が消え、山に叩きつけられそうになったのに、竜闘気が復活して再度バランに戦いを挑むシーンの動きの迫力ときたら!

 小さな点のような姿から、目が大きくアップになるカットまでの動きの速さと迫力、そこから親子でガチの頭突きと、荒っぽい動きの連続に惚れ惚れしました。
 原作ではダイとバランの戦いは殴り合いが主でしたが、アニメでは蹴りも交えた上に頭突きまで入れて、喧嘩っぽさが格段にアップしていますね。

 洗練されてない荒い動きが、竜の騎士の本性を現しているようで、とても気に入りました。

 バランがダイを痛めつけにかかるシーン、原作ではダイが悲鳴を上げていましたが、アニメではダイの悲鳴はカットされていましたね。ポップの悲鳴などは延々と描写していたので(笑)、これはダイとポップの性格の差による演出の違いでしょうか。

 また、テラン王の台詞も追加されていました!
 原作ではテラン王はこの時点では完全なる傍観者だったのですが、アニメでは参戦への意志を固めているように見えます。この後、テラン王もサミットに参加することを思うと、ここで彼の心境が変化するのが見えてくるのはいいですね。
 
 バランのドルオーラ前のアクション、実にカッコイイです!
 手を組み合わせるのに一度、上に手を伸ばす仕草といい、縦に握り合わせた手を横に構え直し、ドラゴンの顎の形に見せる演出といい、練りまくっていますね〜。
 竜の騎士同士の戦い、すごいド迫力っ! 

 メルルの台詞で「自殺行為」という言葉が削られていましたね。やはり、言語に関してはずいぶんと気を配っているようです。しかし、空を見上げるメルルが可愛い♪

 それと、バランの二発目のドルオーラの際、原作ではダイはバランの正面に飛び上がっていましたが、アニメではバランの背後に飛び上がるように改変されていました。

 ヒュンケルの「ダイはオレ達のダイのまま〜」の台詞、泣き出しそうに声を震わせた演技なのに感心しました。原作ではヒュンケルはいたってクールに戦いを見ている様子だったのですが、アニメのヒュンケルは原作よりも感情的な印象ですね。

 クロコダインに早く回復呪文を、と急かされて「はい」と応えた時のメルルの毅然とした表情、走り出す動きに合わせて揺れる黒髪の美しいこと!
 気弱な表情が多いメルルだけに、たまに見せるキリッとした表情が際立ちます。
 
 原作ではクロコダインの台詞に対するメルルの台詞も反応もなかったので、嬉しい改編です。
 改編と言えば、バランが「これで決まりだ」という際に笑うシーン。これも、原作を拡大解釈した感じですね。

 原作では「グフフフフッ」と台詞だけで表現した笑いが、身をよじって高笑うというオーバーアクションになっています。悪役張りの笑いなのに、かっこよく聞こえるのは声優さんの力量か。
 アニメのバランの方が、竜魔人化すると理性が薄らぎ、怒りなどの感情に引きずられガチになるのをよく表現していると思います。

 ダイが呪文に耐えるために身構えるシーン、腕を小さく畳んで頭を振るシーンを見て、思わず「○じめの一歩」のピーカブースタイルを連想しちゃいました(笑)

 ドルオーラの爆風が地上に及ぶシーンで、クロコダインがメルルを抱き寄せて庇っていました! やっぱり、クロコダインが一番頼りになるなぁと思いますねー。

 原作にはないシーンですが、クロコダインは爆風やダメージがある場合、側にいるか弱い者(高確率でポップ)を庇っていたりするので、この状況下ならメルルを庇うのは納得です!
 ……ちょっと、レオナが心配になりますが(笑)

 ドルオーラ直後に、ヒュンケルがダイを呼ぶシーン。

原作ヒュンケル「ダイ……!」
アニメヒュンケル「ダイ……ダイーーッ!」

 ポップが死亡時の叫びもそうでしたが、ヒュンケルが弟弟子達に感情的になっているのはいい傾向と思えます。

 ダイが消滅したと誤解し、バランが高笑うシーンは原作にもありますが、アニメではその笑いがさらに狂喜じみた感があり、クロコダインやヒュンケルがそれを非難する言葉がくわえられているのがいいですね。

 戦いにのめり込むあまり、勝利の快感だけに酔いしれているバランの危うさと、ダイとバランを親子と知っているからこそ、バランの変貌に心を痛めているクロコダインやヒュンケルの差が印象的です。

 ダイのアバンストラッシュから、ナイフが崩れるシーンの演出もすごかったです。崩壊シーンで敢えて音を消し、白光化した中でナイフが崩れていく演出、さらには黒みを強めたダイとバランのシルエットじみた姿と、一連の流れが素晴らしい!

 そう言えばダイとバランの対決シーンの最中、メルルがクロコダインの治療からヒュンケルの治療へ場所移動していました。原作通りなのですが、メルルが移動する際にちょっとした演出が欲しかったですねー。
 クロコダインがもういいと押しやるとか、メルルの自主的な判断で移動したのか、気になります。

 ところで、バランが真魔剛竜剣を手にする際、クルクルと回していました。コレもアニメの改変演出ですが、この回し方、ラーハルトと同じ!
 というか、ラーハルトがバランのまねっこしていた!?(笑) 

 クロコダインがバランの足を掴んだ時のセリフ、改変されていましたね。かっこよくて、いかにもクロコダインっぽい感じ。

 レオナがザオラル前に迷い、決意する表情、いいですねえ〜。
 でも、レオナのザオラル、十字架では無くなっていました。やはり、特定の宗教に対する配慮ですかね? なんか、人の字にみえるんですが(笑)

 そして、ザオラル、思っていたのと発音が違っていました〜。オにアクセントを置くとばかり思っていたら、ラにアクセントが来るとは。

 クロコダインがバランにギガブレイクを要求するシーンもアニメの改変ですが、未だにクロコダインがダイのためにバランの体力と魔法力を削る作戦を実行中なんだと思って嬉しくなります。

 しかし「死に損ないは死んでおれ」の台詞はカットされなかったのは、ちょっと驚きでした。自殺未遂とか自殺志願者はダメなのは分かりますが、この台詞の方が過激な気がするんですが(笑)

 ダイとバランの空中戦ッ、思いっきり感動しました!
 ええ、こういう戦いが見たかったんです! 速いスピードで飛びながら攻撃を仕掛ける迫力、いいですねえ。

 ヒュンケルがメルルの呪文を止める際、無言で彼女の手を掴んでスッと押しのける動作が、めっちゃイケメンでした。うわー、仕草までイケメンとは(笑) 
 ヒュンケルの台詞が、かっこよい感じに改変されていました! 
 
 追われるダイの、追い詰められたような目のアップで終わりになっていましたが……続きがスッゴク気になりますよ〜。

 次回予告、タイトルで盛大にネタバレしているような……?
 とりあえず、画像では激しいバトルが待っていることしか分かりませんでしたけどね(笑)


《おまけ・新装版コミックス18〜19巻》

 18巻の表紙は超魔ハドラーとダイ!
 不敵な笑みを浮かべ、髪をなびかせたハドラーと、最終装備を身に包んで苦戦している風なダイの対比がいい感じ♪ 

 片目を閉じ、苦しそうながらも戦う気迫を見せているダイの姿がいいですね。周囲に風が渦巻いているかのような描写が入っているのは、ダイとハドラーの対決の真竜の戦いを表しているのかな?
 前巻の続きで、左端の見切れる位置にポップの腕だけが見えてます(笑)

 キャラが大きすぎて背景が目立たないけれど、たぶんバーンパレスっぽいですね。
 今回はフルカラーがなく、二色カラーが一話のみ。巻末の特集も技特集のみなのがちょっと残念。

 19巻の表紙は復活アバン先生とキルバーン&ピロロ。
 白い勇者服と青いマントの対比が綺麗です。そして、背景ではベースの仮面顔のキルバーンと、小さく描かれたピロロが。

 飄々とした顔のアバンと、偽りの笑顔を浮かべたキルバーンの対比が素晴らしいですね。背景は前巻と続いていて、ようやくバージンパレスと確信が持てました。バーンの居場所である、円型の不思議な塔が見えています。

 しかし、二色カラーが3ページっきりってのは寂しすぎます〜。巻末特集もキャラ名鑑でしたし。

 20巻の表紙は、プロモーション・ヒムと、ヒュンケル。
 ヒートナックルを放っているところなのか、ヒムの拳が金色に輝いています。全身に傷を負っている上半身裸のヒュンケルもまた、輝く拳を握り込んでいる描写。……は、いいけれど、首にアバンのしるしがないのが残念!

 ヒュンケルの髪が茶色身を帯びた灰色で丁寧に塗っている感じで、見応えがあります。前巻のアバンのイラストと合わせれると、ちょうどアバンがヒュンケルの成長ぶりを見守っている感じがあって、実にいいですねえ〜。
 ……その解釈だと、18巻のダイの苦戦にはアバン先生は背を向けている解釈になるのですが(笑)

 悲しいことに二色カラーすらないのですが、巻末にはジャンプや旧コミックス、テレカ系のカラーイラストが豊富にあるのはいいですね。欲を言えば、もう少しカラーイラストを大きく撮って欲しいのですけど。

 多少の不満はあれど、マァムの和服姿は必見の価値があります!
 紫っぽい色合いにボタンの花が艶やかな大振り袖を着ていますね。

 実はこのイラスト、ジャンプのヒロインらが集合したポスターの新春記念のイラストだったのですが、すぐそばに『ジャングルの王者○ーちゃん』のヒロインぢぇー○がいて、めっちゃバランスが悪かったものです(笑)
 今回、マァム単独で見ることが出来て嬉しかったです♪

 また、この三巻は赤紫→紫→濃紺と背景を右へ濃くしていくグラデーションが実に美しいです。かなり濃い色なのでバックには不向きに見えるのですが、エアブラシのような白い線で風の流れや集中線を表現しているため、暗さも緩和されて動きが生まれていますしね。

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