『父と子の戦い』(2021.5.8) |
《粗筋》 竜の紋章を共鳴させるバランの精神攻撃に耐え、拳へと紋章を移したダイ。バランを殴り飛ばしたダイに、一同は驚愕を隠せなかった。 紋章が移動した理由を、ヒュンケルはダイ自身の意志だと推理した。バランの頭脳支配から逃れ、彼以上の攻撃力を得るために、ダイは本能的に紋章を額以外の場所に移すしかないと感じたのだろう、と。 全闘気ではバランに劣ったとしても、紋章の力を一点に集中させれば、一撃の破壊力では上回れる――従来の竜の騎士にも出来ないであろう、奇跡……その証拠として、バラン自身が驚いていることを指摘するヒュンケル。 ダイの怒りに呼応して、竜闘気が噴き荒れる。 それを平然と待ち受けるダイは、バランの拳に自分の拳を打ち付ける。互いの拳をぶつけ合いながら、にらみ合う竜の親子。 焦りを感じたように、バランは両手を組んでそれを振り下ろした。が、ダイは後ろに飛んで攻撃を躱す。 だが、バランもその攻撃は読んでいた。 あれほどの強さを見せつけたバランと、互角に戦っているダイを見てクロコダインは息を飲む。 倒れているポップを見やり、友を思う心が竜と魔の力を腕に追いやり、逆に支配したのだと語るヒュンケル。 その間も、バランとダイの戦いは続いていた。 バラン(ソアラよ……おまえまでも、私が間違っているというのか……!?) 怒りも露わに、ダイを蹴り飛ばすバラン。飛ばされたダイは身体を一回転させて体勢を立て直し、再び殴りかかってくる。 雄叫びを上げて殴りかかった来たダイの拳は、その竜闘気をも貫き、森を裂いて大きな地割れを作り上げた。 一撃の破壊力では、ダイは確かにバランを上回っている。それを確信するクロコダインとヒュンケルだったが、不安は拭えなかった。 本気になれば、風穴を開けると言われてもダイは動じない。 ダイ「……だから、なんだっていうんだ……?」 ダイに向けて、紋章閃を放つバラン。
一方、バランの紋章閃を払いのけたダイは、その姿勢のまま怒っていた。 ダイ「本気でやれよ……ポップやみんなには出来て、おれにはできないのかあッ!?」 怒りのあまり、咆哮するバラン。
レオナに気づいたメルルは、ホイミをかけようと屈み込んだ。 だが、レオナはポップのことは任せて欲しいと言う。
二人が拳を握り、攻撃に出たのは全く同じタイミングだった。 しかし、ヒュンケルは上だと叫ぶ。 どちらも手加減なしでの攻撃であり、地上戦と違ってダメージを負った時は大きく後ろへと飛ばされるが、それでも互いに全く怯むことなく相手に殴りかかっていた。 一度、山にぶつかりそうになったダイは体勢を立て直してバランに突進し、頭突きで突っ込んだ。 空高く飛ばされたダイを、翼を広げ、追って飛ぶバラン。 ダイの拳が、バランの頬を見事に捉えた。 が、その瞬間、バランの反撃が始まった。 さらにダイを手にしたまま、今度は地面に叩きつけた。それでもなお、バランの攻撃の手は止まらない。ダイを引きずったまま飛び、今度はテラン城の城壁へと叩き込む。
城の一部を瓦礫に変えながら、バランは空中でじっと下を見下ろしていた。 同じようにダイを見つめながら、ヒュンケルはその一歩先まで読んでいた。 自分の息子であっても、殺さずにはいられない竜魔人となってしまった……空中にいるダイは両手を高々と上げ、組み合わせる。 徐々に開かれる指の間から生まれるのは、眩いまでの光と強烈なエネルギー。開かれた手が竜の顎を描く時、秘呪文ドルオーラが放たれる。
その声でハッと意識を取り戻したダイは空を見上げ、今にも呪文を打ち出そうとしているバランを発見する。 しかし、バランはダイを逃す気は無い。 驚愕に目を見開いたダイを、光が包み込む。 と、その時、空から人影が降ってきて地面に激突する。 それを見たダイは、一瞬、仲間達の方を見やる。 仲間達がドルオーラの巻き添えを食らわないように、ダイが自らの意志で空へと舞い上がったことを。バランと違い、ダイは怒りの中でも自分を見失っていない。 それに感動したクロコダインはメルルに、立てる程度で構わないから早く回復呪文をかけるようにとせがむ。
ダイは、バランのドルオーラに耐えるつもりでいる。 竜の騎士最強の呪文に耐えられるものなどいないと言い放つバランに、ダイは全く怯まない。 ダイ「竜の騎士には撃ったことがないだろ!? おれだって、竜の騎士だ!」 ダイの挑発に、バランは完全に理性を飛ばし、ダイを消し飛ばそうと全力で呪文を放った。 竜闘気同士がぶつかり合い、空が発光した。 クロコダイン「何がおかしい!?」 身をのけぞらせて笑っていたバランは、突如、その笑いを止めた。 ダイ「バラン! これでもう、あんたは打つ手なしだ!」 ダイは腰からパプニカのナイフを引き抜き、身構える。アバンストラッシュの構えを取り、斬りかかる。 しかし、バランの身体に刃が当たる寸前に、パプニカのナイフは音もなく崩れていく。 が、そんなダイの衝撃は、今度はバランにとって絶好の攻撃の隙となった。 竜の騎士の力には、並の武器は耐えられない。まして、右手に全エネルギーを集中させたダイの力に敵う武器など、この世には存在しない、と。 もうドルオーラを使えるほどの魔法力はないが、これで勝負は見えたとバランは剣を抜き放ち、ダイに斬りかかろうとした。 流れる血もそのまま、完全には体力が回復しきっていないはずのクロコダインは、渾身の力を込めてバランを地べたに叩きつける。 クロコダイン「オレとて獣王と呼ばれた男! 何もせず座するつもりなどない!」 バランの足を掴み、そのままぐるぐると振り回すクロコダイン。 自分の力で呪文が成功させられるかどうか危ぶみながらも、レオナは決意して両手を空に伸ばし、呪文を唱え出す。 メルルからその話を聞き、ポップが生き返るのかと希望を持つヒュンケル。だが、ザオラルの成功率は熟練の僧侶でも50%以下……レオナの腕次第だ。 一方、自分を振り回すクロコダインに苛立ったバランは、剣で何度も彼の腕を切りつける。しかし、クロコダインは全く手を緩める気配もない。 クロコダイン「オレの腕を切りたくば、ギガブレイクでも作ることだ!」 クロコダインの挑発にのせられたのか、バランは雷雲を呼んでライディンで彼を気絶させる。 剣を手に、空中に飛び上がるバラン。 バランの攻撃を辛うじて躱すも、バランの一撃は森を破壊するほどの威力がある。拳を握り込んでバランに殴りかかったが、バランの一撃で胸元を切られてしまった。 その頃、地上でメルルの回復呪文を受けていたヒュンケルが、それを止めさせた。 ヒュンケル「クロコダイン、しっかりしろ。立て。ダイを助けねば……力を貸してくれ。――オレに策がある」 地上でそんなやり取りが躱されているとも知らず、ダイとバランは空を駆け巡る。バランの猛進撃に追いつかれそうになるダイの目が、大きく見開かれた――。 《感想》 『そんなぁっ、殺生なところで止めないでっ!?』 今回の冒頭は前回のラストをそのまま引っ張ってきましたね。連続物の話だとそうなるのは仕方が無いですが、少しは変化をつけて欲しいと思ってしまう今日のこの頃。 しかし、ヒュンケルの説明が原作より簡略化、なおかつ分かりやすくなっているのには感心します。従来の竜の騎士にはできないという推理を述べる際に、バランが驚いていることを指摘しているのはアニメでの改変ですが、すっごく説得力がありますね。 ダイの台詞も、微妙な改変があります。 原作ダイ「……あんたは……おれの大事なものをたくさん奪った……!」 アニメのダイは倒置法を使っています。倒置法は本来、言葉を強調するための小洒落た文章という印象が強いですが、ダイの場合はむしろ、怒りのあまり言葉遣いがたどたどしくなっているような印象ですね。 バランもそうですが、ダイも感情が高ぶると竜闘気の発動を抑えられないみたいですね。どんなにいがみ合っても、やっぱり親子だと強く感じます。 バランとのバトルにも、改編が! が、アニメでは拳同士をぶつけ合う真っ向からの殴り合い! その後の殴り合いも、すごい! 殴ろうとするだけじゃなく、蹴りも使う辺りが素晴らしいです。個人的に、ボクシングよりムエタイ系の動きの方が好きなので、見応えがありました。 ヒュンケルの解説を、まとめてではなく別けて語るのも好印象。 原作では血の量の割に、服の切れ目は極小さく描写し、傷口を見せない方向性だったのに、なぜそこは踏襲しなかったのか。 でも、バランがダイの抵抗にソアラの意志を感じ取るシーンの追加は嬉しいですね。 そして、バランは気がついていませんが、ソアラの意志を自分への否定と感じている辺り、バランは無意識下で、今の自分をソアラが認めてくれないことを自覚しているのだと思います。 死者を思い返す際、当たり前の話ですがそれはその人死者本人ではなく、思い出す人の知っている死者に他なりません。ですので本物のソアラがバランを認めないのではなく、バランの思い返すソアラが今の自分を認めてくれないだけです。 認めたくないからこそ、息子であるディーノを自分の味方に引き入れ、心の奥底の罪悪感を宥めようとしていたんじゃないですかね。 殴られたバランが血反吐を吐くシーンも、アニメの改変ですね。 紋章閃を放つ直前のダイとバランのセリフのやり取りも、アニメの改変ですね。 後、バランが紋章を放つシーンで、白黒の荒っぽい線画のシーンがあって、その荒さが逆に迫力があっていいなと感心しました。 テラン王、城の中にいるだけなのに地震や地響きの原因が竜の騎士だと確信していましたね。……やっぱり、テランの災害の大本って竜の騎士のせいだったんじゃ(笑) それはさておき、原作ではスピード戦で表現したいたダイやバランの怒りが、身体から噴き荒れる竜闘気で表されているのがいいですね。 そして! よくよく見ればちゃんと服を着ているのですが、なまじ服が薄いピンクなせいで、光が当たっている部分は顔の色と同じぐらいの白さに見えるせいで、胸がむき出しに見えちゃって驚きもいいところでしたよっ。 ベージュのシャツが一見何も着ていないように見えるのと同じ感覚で、焦りました。 メルルの登場シーン、彼女がまっしぐらにポップを目指して走っていましたね! でも、レオナに呼ばれると即、彼女を助けに来るところが可愛い……けど、原作と同じくポップを気にしているのか、目をチラッと横に向けていました! 目立たないシーンですが、何回も見返して確認しちゃいましたよ。 ダイとバランのぶつかり合い、原作ではぶつかることで爆発が起こったかのような演出でしたが、アニメではしっかりと拳をぶつけ合うシーンが描かれていましたね。 本来、相手の攻撃を受けるのに拳で受けちゃうと、あっさりと拳が割れたりダメージを受けるので本来はやらない行為なんですが、そこを敢えてやるあたりが人外の戦い感を感じます。 ダイとバランがぶつかった後、クロコダインが即座に消えたと叫んでいますが、ここにワンカットでもいいから原作のように俯瞰から大きくえぐれた森の図を見せて欲しかったですよー。 戦っていたはずの二人がいなくなった、どこ? と、見ている側にも思わせて欲しかったです。クロコダインが叫ぶのが早過ぎて、読者視点でダイ達がどこにいったのか疑問に思う前に、話が展開しちゃっていますね。 でも、その分、バトルの充実振りはすごいです! 空中戦もたっぷりと尺が増えていますよっ。地上戦でも拳と蹴りを使っていましたが、空中でも同じく拳と蹴りを使い、更には動きが上下左右と派手になっているのがナイスでした。 特に、ダメージを受けたダイから竜闘気が消え、山に叩きつけられそうになったのに、竜闘気が復活して再度バランに戦いを挑むシーンの動きの迫力ときたら! 小さな点のような姿から、目が大きくアップになるカットまでの動きの速さと迫力、そこから親子でガチの頭突きと、荒っぽい動きの連続に惚れ惚れしました。 洗練されてない荒い動きが、竜の騎士の本性を現しているようで、とても気に入りました。 バランがダイを痛めつけにかかるシーン、原作ではダイが悲鳴を上げていましたが、アニメではダイの悲鳴はカットされていましたね。ポップの悲鳴などは延々と描写していたので(笑)、これはダイとポップの性格の差による演出の違いでしょうか。 また、テラン王の台詞も追加されていました! メルルの台詞で「自殺行為」という言葉が削られていましたね。やはり、言語に関してはずいぶんと気を配っているようです。しかし、空を見上げるメルルが可愛い♪ それと、バランの二発目のドルオーラの際、原作ではダイはバランの正面に飛び上がっていましたが、アニメではバランの背後に飛び上がるように改変されていました。 ヒュンケルの「ダイはオレ達のダイのまま〜」の台詞、泣き出しそうに声を震わせた演技なのに感心しました。原作ではヒュンケルはいたってクールに戦いを見ている様子だったのですが、アニメのヒュンケルは原作よりも感情的な印象ですね。 クロコダインに早く回復呪文を、と急かされて「はい」と応えた時のメルルの毅然とした表情、走り出す動きに合わせて揺れる黒髪の美しいこと! 原作では「グフフフフッ」と台詞だけで表現した笑いが、身をよじって高笑うというオーバーアクションになっています。悪役張りの笑いなのに、かっこよく聞こえるのは声優さんの力量か。 ダイが呪文に耐えるために身構えるシーン、腕を小さく畳んで頭を振るシーンを見て、思わず「○じめの一歩」のピーカブースタイルを連想しちゃいました(笑) ドルオーラの爆風が地上に及ぶシーンで、クロコダインがメルルを抱き寄せて庇っていました! やっぱり、クロコダインが一番頼りになるなぁと思いますねー。 原作にはないシーンですが、クロコダインは爆風やダメージがある場合、側にいるか弱い者(高確率でポップ)を庇っていたりするので、この状況下ならメルルを庇うのは納得です! ドルオーラ直後に、ヒュンケルがダイを呼ぶシーン。 原作ヒュンケル「ダイ……!」 ポップが死亡時の叫びもそうでしたが、ヒュンケルが弟弟子達に感情的になっているのはいい傾向と思えます。 ダイが消滅したと誤解し、バランが高笑うシーンは原作にもありますが、アニメではその笑いがさらに狂喜じみた感があり、クロコダインやヒュンケルがそれを非難する言葉がくわえられているのがいいですね。 戦いにのめり込むあまり、勝利の快感だけに酔いしれているバランの危うさと、ダイとバランを親子と知っているからこそ、バランの変貌に心を痛めているクロコダインやヒュンケルの差が印象的です。 ダイのアバンストラッシュから、ナイフが崩れるシーンの演出もすごかったです。崩壊シーンで敢えて音を消し、白光化した中でナイフが崩れていく演出、さらには黒みを強めたダイとバランのシルエットじみた姿と、一連の流れが素晴らしい! そう言えばダイとバランの対決シーンの最中、メルルがクロコダインの治療からヒュンケルの治療へ場所移動していました。原作通りなのですが、メルルが移動する際にちょっとした演出が欲しかったですねー。 ところで、バランが真魔剛竜剣を手にする際、クルクルと回していました。コレもアニメの改変演出ですが、この回し方、ラーハルトと同じ! クロコダインがバランの足を掴んだ時のセリフ、改変されていましたね。かっこよくて、いかにもクロコダインっぽい感じ。 レオナがザオラル前に迷い、決意する表情、いいですねえ〜。 そして、ザオラル、思っていたのと発音が違っていました〜。オにアクセントを置くとばかり思っていたら、ラにアクセントが来るとは。 クロコダインがバランにギガブレイクを要求するシーンもアニメの改変ですが、未だにクロコダインがダイのためにバランの体力と魔法力を削る作戦を実行中なんだと思って嬉しくなります。 しかし「死に損ないは死んでおれ」の台詞はカットされなかったのは、ちょっと驚きでした。自殺未遂とか自殺志願者はダメなのは分かりますが、この台詞の方が過激な気がするんですが(笑) ダイとバランの空中戦ッ、思いっきり感動しました! ヒュンケルがメルルの呪文を止める際、無言で彼女の手を掴んでスッと押しのける動作が、めっちゃイケメンでした。うわー、仕草までイケメンとは(笑) 次回予告、タイトルで盛大にネタバレしているような……? 《おまけ・新装版コミックス18〜19巻》 18巻の表紙は超魔ハドラーとダイ! 片目を閉じ、苦しそうながらも戦う気迫を見せているダイの姿がいいですね。周囲に風が渦巻いているかのような描写が入っているのは、ダイとハドラーの対決の真竜の戦いを表しているのかな? キャラが大きすぎて背景が目立たないけれど、たぶんバーンパレスっぽいですね。 19巻の表紙は復活アバン先生とキルバーン&ピロロ。 飄々とした顔のアバンと、偽りの笑顔を浮かべたキルバーンの対比が素晴らしいですね。背景は前巻と続いていて、ようやくバージンパレスと確信が持てました。バーンの居場所である、円型の不思議な塔が見えています。 しかし、二色カラーが3ページっきりってのは寂しすぎます〜。巻末特集もキャラ名鑑でしたし。 20巻の表紙は、プロモーション・ヒムと、ヒュンケル。 ヒュンケルの髪が茶色身を帯びた灰色で丁寧に塗っている感じで、見応えがあります。前巻のアバンのイラストと合わせれると、ちょうどアバンがヒュンケルの成長ぶりを見守っている感じがあって、実にいいですねえ〜。 悲しいことに二色カラーすらないのですが、巻末にはジャンプや旧コミックス、テレカ系のカラーイラストが豊富にあるのはいいですね。欲を言えば、もう少しカラーイラストを大きく撮って欲しいのですけど。 多少の不満はあれど、マァムの和服姿は必見の価値があります! 実はこのイラスト、ジャンプのヒロインらが集合したポスターの新春記念のイラストだったのですが、すぐそばに『ジャングルの王者○ーちゃん』のヒロインぢぇー○がいて、めっちゃバランスが悪かったものです(笑) また、この三巻は赤紫→紫→濃紺と背景を右へ濃くしていくグラデーションが実に美しいです。かなり濃い色なのでバックには不向きに見えるのですが、エアブラシのような白い線で風の流れや集中線を表現しているため、暗さも緩和されて動きが生まれていますしね。 |