『父との決別』(2021.5.15)

 

《粗筋》

 翼を広げ、ものすごい勢いでダイめがけて飛ぶバラン。真魔剛竜剣を振るうバランの猛攻をダイは避けるだけで精一杯だ。
 そんなダイの奮闘を見上げながら、ヒュンケルはクロコダインに自分を上空まで飛ばせる力は残っているか、と問う。

 バランに空中戦を挑んでも無駄だとクロコダインは止めるが、ヒュンケルはそれも覚悟の上で、倒れているポップへと目をやる。

ヒュンケル「あの死に様を見て、じっとしていられるようなヤツは男じゃない」

 ヒュンケルのその言葉に、クロコダインも決意を固めたように頷いた。





 一方、空中を飛び回ってバランの攻撃を避けていたダイは、自分の拳に一瞬目を落とし、決意したように拳を握りしめる。その直後から、空を高速で飛ぶダイとバランの軌跡が変化する。
 逃げる光の線を追う線、と言った動きではなく、互いにぶつかり合うような激しい軌跡に――。


 それを見上げながら、ヒュンケルはクロコダインに放り投げられる体勢を保ち、タイミングを計っていた。

 そんなことは知らないダイは、拳を使って精一杯バランと戦っていた。
 しかし、いくら一撃の破壊力ではダイの方が上とは言え、体術ではダイよりバランの方が上だ。

 ダイの拳をいなし、逆に強烈な拳を放ってくるバランは、痛みにダイの動きが止まった一瞬を狙って剣で切り裂いてくる。
 胸を切られ、痛みに思わずうめくダイ。
 そこを狙って、バランが止めを刺そうとする。

 だが、その瞬間こそがヒュンケルが狙っていたタイミングだった。
 クロコダインの豪腕で空へと放り投げられたヒュンケル。戦いの最中でも、自分に接近する気配を見逃すバランではなかった。

 雄叫びを上げ、剣を投げつけるヒュンケルに対して、バランはライディンを呼んで迎撃する。
 落下するヒュンケルに、そんな攻撃など効かないと言いかけたバランは、あることに気づき、後方を見やる。

 そこには、驚いたような顔でヒュンケルの剣を手にしたダイがいた。
 地面に落ちながら、ヒュンケルは自分の剣を使うようにとダイにアドバイスを送る。

 ヒュンケルの目的を知ったバランは、ダイへと向き直る。
 怒りと共に振り下ろしたバランの剣を、ダイは受けとったばかりのヒュンケルの魔剣でがっちりと受け止める。






 一方、落下したヒュンケルの元に、メルルは駆けて、クロコダインは這いずりながら近寄った。
 メルルはヒュンケルを心配して回復魔法をかけようとしているが、ヒュンケルの意識はダイへと集中されていた。

 ヒュンケルは、ダイが一発で勝負を決めることを願っていた。
 いかに魔剣だろうとも、今のダイの力には長くは耐えられないと悟っているかたから――。





 互いに剣を打ち合わせたダイとバランは、同時に後ろに下がって距離を取った。
 ダイは魔剣を手に「これなら……」と手応えを感じていた。

 しかし、バランは嘲笑い、剣を振りかざす。
 たちまち暗雲が立ちこめ、雷鳴が轟き出す。今の剣戟により、バランは魔剣が真魔剛竜剣よりも強度的に劣ると悟った。
 だからこそギガブレイクで一気にカタをつけようとするバラン。

 だが、ダイは恐れる様子はない。
 じっとバランを見てから、それは完全なギガブレイクではないと宣言する。バランが今使ったのは、ライディン……もう、バランにはギガディンを使う魔法力はない。

ダイ「同じ条件なら……おれ達が勝つ!」

 魔剣を振りかざしたダイはライディンを剣に宿らせ、逆手に構え直す。

ダイ「おれのパワーと……」

 ダイの右手の紋章。

ダイ「先生の技と……」

 胸に下げられた、アバンのしるし。

ダイ「ヒュンケルの剣と……」

 闘気の宿る魔剣。

ダイ「そして……ポップが取り戻してくれたおれの思い出を全て一つにして……おまえにぶつけてやる!」

 思い出すのは、ポップとの記憶。
 二人でデルムリン島を旅だった日のこと。
 パプニカの神殿跡地で、ダイがうっかり地下倉庫の火薬に火をつけてしまって、二人そろって命からがら逃げたこと。

 マァムを助けるために雨の中、二人でライディンの特訓をしたこと。
 テランの湖で、バランを前にしてダイを仲間だと言いきり、ポップが庇ってくれたこと。

 ロモス王国でクロコダインを倒した後、小さな勇者とみんなに認められた時のこと。
 記憶を失っていた時、雨の中でダイに剣を取れと強く迫ったポップのこと。
 ダイとポップが初めて会い、握手を交わした時のこと――。

 様々な思い出を胸に、ダイはアバンストラッシュの構えを取る。
 それを否定するかのごとく、突っ込んでくるバラン。
 互いに必殺の技を宿らせた剣を片手に、ダイとバランは凄絶な殴り合いを始め出す。

 激しく空を飛び交い、バランの殴りかかった拳をダイが受け止めたかと思えば、今度はダイが放った脳天蹴りをバランが剣で払う。
 ダイの連続の蹴りを、バランが頭突きから続く攻撃で崩し、地べたにたたき落とす。

 しかし、ダイは諦めることなく技を宿したままの剣を片手に滑空し、バランへ殴りかかった。
 互いの拳がぶつかり合い、雷鳴にも似た光が轟く。壮絶な殴り合いを続けるダイ達を、地上にいるメルルは不思議そうに見つめていた。

 メルルにしてみれば、なぜ彼らが技を出さないのかが理解できない。
 だが、ヒュンケルにはその理由が分かる。
 最後の一撃となるからこそ、互いに隙を窺っているのだ。

 ダイを応援しながら、ポップの方へ目を向けるメルル。
 レオナは、ずっと魔法をかけ続けていた。

 しかし、蘇生呪文の効果が無いことに、レオナは焦りを感じていた。祈るような思いで、呪文をかけ続けるレオナ。
 その思いに応えるように、ポップに寄り添う形で気絶していたゴメちゃんの身体が、金色に輝きだす。
 だが、そのかすかな光には、誰も気がついていなかった――。





 その頃……天上から光が差しこむ青空の中に、ポップはいた。
 真っ白な雲の上を歩きながら、ポップは自分がどうなったのかと考えていた。
 メガンテを使ったんだからやっぱり死んだのか、と納得しているポップ。

 あれこれ考えながらも、ポップは自分が死んだことを納得し、一方向へと歩いていた。
 そこへ、突然やってきたのはゴメちゃん。

 しゃべれるようになったゴメちゃんは、ポップを引き留めようと必死だ。このまま進んでは、ポップは本当に死んでしまう、と。
 だが、ポップは進もうと思って進んでいるわけではなく、勝手に足が進んでしまうだけだ。

 それに自分はもうダメだと諦めているポップは、自分の未熟さや自分の死を受け入れている。それを聞いて、ポロポロと涙をこぼすゴメちゃん。
 が、次の瞬間、ゴメちゃんは大声で叫んでいた。

ゴメちゃん「ポップのバカ! 弱虫ーっ!」

 それを聞いて、ポップの足が止まる。
 怒ったように振り返るポップの顔には、本来の負けん気の強い表情が浮かんでいた――。





 地上では、親子竜の戦いが続いていた。
 激しい格闘が続く中、バランが着地した際、膝を落としたわずかな隙を見逃さず、チャンスと斬りかかるダイ。
 だが、バランは額から紋章閃を打ち出し、ダイの肩を貫いた。
 隙を見せたのは、バランの誘いだったのだ――。





 同じ頃、雲の上ではゴメちゃんがポップを責めていた。

ゴメちゃん「ポップなんか嫌いだ! まだアバン先生の仇も討っていないのに諦めちゃうなんて、ポップは弱虫だよ!」

 弱虫と言われたのが気に障ったのか、ムキになって言い返すポップ。自分なりに一生懸命やったというポップに、嘘だと言い切るゴメちゃん。
 それを聞いて、ポップはわずかに怯んだ。






 一方、戦いの趨勢はバランへと傾いていた。
 戦いの年季において、バランの方がはるかに上。雷の宿る剣を手に迫ってくるバランを見て、さすがのダイにも怯えの表情が浮かぶ。

 が、それでもダイは歯を食いしばり、戦う意志を見せる。
 バランに腹に蹴りを入れるダイは、まだ諦めていない。どこまでも戦い抜くとばかりに、決意に満ちた目をしていた――。






 雲の上では、ゴメちゃんは容赦なくポップを責めていた。
 ダイはまだ戦っているんだ、と。それを聞いたポップの顔には、はっきりとした怯みが生まれていた。






 ダイの足を掴み、放り投げるバラン。
 続けざまに蹴りを仕掛け、殴り飛ばそうとする彼には、もはや我が子に対する手加減など微塵も見られなかった。






 ダイを見捨てるなんて弱虫だと叫ぶゴメちゃん。






 地上では、ダイはバランに吹き飛ばされていた。その余波で木々が揺れ、仲間達も強風に耐える。
 死体となったポップもまた、その風を浴びていた――。





 雲の上の世界……そこにも、風が吹き始める。
 怒りの感情を見せるポップに、驚くゴメちゃん。

ポップ「ふざけるなよ、ゴメ公……たとえ、死んだっておれは……おれは……」

 叫びながら、ポップはダイのことを思い出していた。
 デルムリン島を出発する時、小舟から手を差し伸べてたダイの姿を。
 元気いっぱいにガッツポーズを取る姿を。

 雨の中、一緒にライディンの訓練をやりきった後の、力が抜けたような笑顔を。
 新しい装備を着て、元気いっぱいに走る姿を。

ポップ「おれはダイを、見捨てたりしねえぞぉおお!」

 叫び、拳を天に突き上げるポップ。
 その手が、光を放っていた――。






 地上での戦いで、ダイに止めを刺すべく、バランはギガブレイクで葬ろうとしていた。
 だが、その時、かすかな光が見えた。

 一瞬の光は、爆苑へと取って代わる。
 それは空中のバランの背中を直撃する、魔法の光だった。
 驚いたバランが見たものは、地上で倒れているポップの姿だった。突き上げられた手からは、魔法の光が確かに光っていた。

 死人が呪文を使ったことに、驚くバラン。
 戦いの最中だというのに、視線をそらしてしまったバラン――その隙を、ダイが見逃すはずがなかった。

 複雑な軌道のトベルーラで勢いを載せ、ダイは千載一遇のチャンスに己の全てを駆けた一撃を叩き込む。
 ダイのアバンストラッシュと、バランのギガブレイクは真っ向からぶつかり合った。

 凄まじい咆哮の中、打ち砕かれたのはバランの剣の方だった。その勢いのまま、ダイの剣はバランの胸を切り裂いた。
 爆風の後、それぞれ反対方向へと飛ばされるダイとバラン。

クロコダイン「相打ち……!?」

 






 ダイの落下のせいで、クレーター状にへこんだ地面。
 ダイを心配し、メルルが真っ先に駆けよろうとする。呻きながらも起き上がるダイを見て、ダイの無事に安堵する仲間達。

 だが、さすがにあれほどの激闘の直後に立とうとするのは無理があったのか、ふらつくダイをメルルが受け止める。
 だが、笑顔でみんなに礼を言った途端、ダイの握っていた魔剣が砂となって崩れ去った。

 鎧の魔剣が完全に消滅したと、淡々と説明するヒュンケル。謝るダイだが、ヒュンケルは気にするなと言う。
 再度礼を告げた後、ポップのことを思い出すダイ。
 ポップも無事だったと喜ぶメルルを初めとして、全員が一斉にポップの方を見る。誰の顔にも、笑みが浮かんでいた。

 しかし、ポップに付き添っていたレオナは――泣いていた。
 ポップは生き返らなかった……蘇生呪文は失敗したと、辛そうに告げるレオナ。

 驚き、そんなはずはないと食い下がるダイ達。
 さっき、ポップは確かに呪文を使った――だが、その理由はレオナには分からない。
 だが、蘇生呪文は失敗した。自分の力不足を嘆き、涙をこぼすレオナ。

ダイ「うそ、だろ……ポップ。……いやだ……目を覚ましてよ、ポップ……!」

 よろめきながらポップに近寄り、揺さぶるダイだが、反応はなかった。
 ポップの名を叫ぶダイに、誰も、何も言えなかった。

 メルルは肩をふるわせて泣き、ヒュンケルは目を伏せたままだ。クロコダインも見るのが辛いとばかりに目を伏せる。
 しかし、森の方から聞こえてきたかすかな音に、クロコダインはいち早く反応する。

 ヒュンケルもまた、音の気配へ警戒を見せる。
 ふらつきながら歩いてくる、男の影。
 ポップを前に泣いていたダイも、ようやくその接近者に気づく。

 大怪我を負い、歩くのもやっとと言った様子でこちらに向かってくるのは、バランだった。肩で息をしているが、折れて柄だけになった剣を手に、険しい目をダイ達に向ける。

 立ち上がり、身構えるダイ。それに続いて、ヒュンケルやクロコダインも同じく身構える。
 それが見えているだろうに、バランは歩くのを止めなかった。

 ダイも歩いてバランに近づくが、ダメージが大きく崩れ込みそうになってしまう。
 そんなダイの隣を、バランは平然と通り過ぎた。

バラン「虚勢を張るな……もう戦う力など一握りも残っていないことは分かっている……お互いにな」

 自分に見向きもせず、ポップの方へ向かうバランを、ダイは驚いたように見つめていた。
 
 ポップの死亡を確認したバラン、なぜポップが死んだにも拘わらず魔法をつかったのかと考えていた。
 友を思う心が、死してもなお身体を突き動かしたというのか――奇跡を目の当たりにして、バランは心を揺り動かされる。

 竜の力、魔族の魔力、人の心……竜の騎士に与えられた力のうち、もっとも下らぬと思って捨てた人の心。
 それに、これほど強く打ちのめされたことに驚きと――感動を味わうバラン。

 死を覚悟して自分に向かってきたポップのことを思い返し、バランは目を開ける。
 拳を握りしめ、力を込めるとそこからは数滴の赤い血がしたたり落ちた。それは、図ったように正確にポップの口元に落ちる。

クロコダイン「何の真似だ……?」

 クロコダインの問いに、バランは答えない。
 大きくふらついたかと彼はきびすを返し、今度はダイの方へと向かう。ダイの脇を通り過ぎるかと思った時、ちょうど彼の真横でバランは足を止めた。

バラン「ディーノよ……もはや、何も言わん。おまえはおまえの信じた道を進むがいい」

 だが、バランは竜の騎士はこの世に二人は要らないと言い切った。いずれ、雌雄を決する思惑をあかしたバランは、もはや魔王軍も眼中にはない。

バラン「おまえが私に勝てたら、人間のために魔王軍を滅ぼすがいい! だが、私が勝てば……私は人間を滅ぼす……!」

 頑なに自分の考えを譲らないバランに向かって、ダイは叫ぶ。

ダイ「わからずや――っ!」

 言い訳もせず、そのまま去って行くバラン。
 それを呆然と見送っていた一同だったが、レオナはポップの指がかすかに動いたのに気づき、驚く。
 胸に耳を当て、心臓の音を確認したレオナの目が、喜びに見開かれる。

 ポップの蘇生の知らせに、感極まったように泣き出すメルル。

バラン「見かけによらずしぶとい小僧だ。……敵に塩を送るのは、これが最初で最後だ」

 夕日に向かって歩いて行くバランの後ろ姿を、ダイはじっと見送っていた。まるで、光に飲み込まれようとするかのように、バランは光に向かって歩いて行く。

 最後に、ディーノとではなくダイと呼びかけ、バランは去って行く。
 その後ろ姿を見送るヒュンケルは、彼の心理に寄り添っていた。
 バランが人の心を取り戻したこと、だからこそ自分の息子に打たれることを望む贖罪の思い……孤高の騎士の思いを感じ取るヒュンケル。

 一方ダイは、呆然としたようにバランを見送っていた。何も言わず、だが、吸い付けられたようにじっと父の後ろ姿だけを見つめながら――。





 その頃。
 すでに映像の途絶えた悪魔の目玉の下で、ハドラーが最悪の展開に身体を震わせていた。
 怯え、追い詰められながら何か手がないかと必死に模索するハドラー。だが、その思考の時間すら与えないとばかりに、ミストバーンが彼を呼び出しに来る

 大魔王バーンの御前に喚びだされたハドラーは、怯えが強いせいか顔を上げることすらままならない。
 バランの失態を自分の責任だと先手を打って言い訳し、土下座するハドラー。

 だが、そんなハドラーの思惑を見抜いているバーンは、一喝し、ハドラーの言い訳を封じる。
 容赦なくハドラーを責めるバーン。
 
 三本の指を突き出し、ハドラーの失態を数え上げるバーン。
 クロコダインとヒュンケルという軍団長を失ったこと。
 バルジの島で全軍総攻撃でダイを打ち漏らしたこと。
 そして、今回の一件……。

 指が折られる度に、追い詰められた表情で怯えを見せるハドラー。
 全部の指が折り畳まれたのを見たハドラーは、絶望しきったように目を伏せる。

 しかし、バーンは指を一本立て、アバンを倒した功績を認める。
 最後のチャンスだといい、バーンは次に自分の前に来る時までにダイ達を全滅させるように命令する。
 勢い込んで拝命し、そのまま出立するハドラー。

 だが、ハドラーが去った途端、キルバーンは言う。

キルバーン「もう始末しちゃってもいいんじゃないですか?」

 彼の手にした大鎌が、キラリと光を放つ。
 しかし、バーンは殺すのはいつでもできると余裕たっぷりだ。屈強な肉体を持ちながら、精神的な脆さを持つハドラーが化けることを期待して、追い詰めることを楽しんでいる。
 
 ハドラー軍団の最後の戦いを、見世物気分で楽しんでいるバーン。そして、その側に付き従うキルバーンとミストバーン。





 一方のハドラーは、そんな風に自分が見世物になっているとも知らぬまま、追い詰められた表情で静かに闘志を燃やしていた――。

 
 


《感想》

 空中でのダイとバラン戦、バランの動きにナチュラルに蹴りが混じっているのがすごい!
 原作以上にダイもバランも蹴りを戦いに組み入れているので、純粋な剣士というよりも、より戦闘特化した実戦派という印象。

 ヒュンケルとクロコダインの会話の最中、離れた所に佇んでいるメルルを発見! 小さな姿が、控え目なメルルっぽくていいですねえ♪
 それとは別に、クロコダインがヒュンケルの話を聞いて頷くシーン、決意した目が実に渋くて格好いいです!

 また、ヒュンケルが鎧の弱点がライディンであり、バランがそれを使ってくると予想していた解説部分がまるっとカットされていましたね(笑)
 ヒュンケルは戦いの最中でも、長々と解説をするシーンが多かったのですが、アニメでは割と省略されちゃっています。

 空中戦でダイが自分の拳を見て、決意するシーンも見逃せないです。
 それまで回避に専念していたダイが、分が悪くても拳だけで戦うしかないと決意する感じがなんとも言えません。

 それまでは逃げるダイを追う感じだった二本のトベルーラの軌跡も、ダイの決意と同時にぶつかり合うような動きに変化しているし、ダイの心境の変化がよく現れている感じがします。

 ダイの拳を、バランが肘で受け止めているシーンに感心しました。
 小柄なダイがリーチをかいくぐって懐に飛び込んでくるのを、体捌きで上手くいなしていますね。

 ヒュンケルが剣を渡した後、落下しつつ必死にアドバイスを送っていましたが……忠告よりも受け身を取ろうよ! と、つい叫びたくなりましたよ! せめて、足から降りるようにもうちょっともがいてっ!

 バランがヒュンケルの目的を悟るシーン、アニメでは落ち着き払った感じがいいですね。原作では、しまったと大げさに驚いているのですが、アニメではヒュンケルへの台詞を途中で止め、後ろを見た時にはすでにヒュンケルの意図に気がついていた風に思えます。

 ヒュンケルの側に駆け寄ったメルルが回復魔法をかけようとするシーン、原作ではなかっただけに嬉しい改変ですね。
 ちゃんと、後のコマでメルルはヒュンケルに回復魔法をかけているのですが、駆け寄るシーンなどはなかったので。

 原作ではどうしても非戦闘員のメルルの出番は薄かったのですが、アニメでは回復要員が動くタイミングなども組み入れてくれているのが嬉しいです。

 ダイがバランが使ったのはライディンだと指摘するシーンで、メルルに介抱されるヒュンケルのカットと共に「そうか……!」と呟くシーンが追加されていましたね。

 原作にはないカットですし、台詞も一言ですが、個人的にはこれは

「そうか……!(バランの魔法力を削ろうとしたクロコダインの頑張りは無駄じゃなかったんだな!)」

 と、納得しているシーンであって欲しいですね。クロコダインは最後の最後まで、バランに余分に魔法力を使わせようと必死でしたし。

 ダイとポップの回想シーンが、すごくよかったです! 原作では言葉だけだったので、時間を取って丁寧にポップとの思い出を流してくれたのはいい感じでした。

 ただ、一つだけ言わせてもらうのなら……テランの湖でポップがバランを前にしてダイを庇う名シーン、ダイの姿が邪魔でポップが完全に見えなくなっておりましたがっ!?(笑)

 ダイとバランの空中戦パート2では、ダイの攻撃が蹴りが多くなっているのが楽しかったです。ネリチャギ風の脳天かかと落としや、ソバット風の回し蹴りと、ダイの蹴り技の多彩さに感心しちゃいました。

 しかし、蹴りに対してバランが頭突きを噛ますとは(笑)
 本当に、荒っぽい殴り合いシーンが増えましたね、大好物です! 特に、ダイとバランが拳をぶつけ合うように打ち合うシーン、いいですよねえ。

 親子の対話、と言うには荒っぽすぎる気がしますが、真正面からぶつかり合う不器用さに親子の血を感じます。

 地上でメルルがヒュンケルを半ば抱きかかえて手当てしていますが……いつも思うのですが、女性の助け手には恵まれすぎてませんか、ヒュンケルって!?(笑)

 死後の世界、もっと空が白一色で光に溢れた神々しい場所かと想像していたのですが、予想以上に青空が普通っぽかったです。

 そして、つい笑っちゃったのが、ポップのあまりにも暢気な感想と、シリアスなメガンテ時の回想の差(笑)
 驚く顔のギャグっぽさとか、バランを探して焦るシーンとか、死んでいる割にはなんか余裕あるなと思っちゃいましたよ。

 ポップとゴメちゃんの会話が、実によかったです!
 ゴメちゃんの声、可愛いーっ。元々、ピーピー鳴く声も可愛いと思っていましたが、幼い男の子風な声もいいですね。

 泣いている顔からポップのバカと叫ぶシーン、いい感じでした♪
 ダイ大でところどころ挟まれる、バカと叫ぶシーンは好きなシーンが多いですが、ゴメちゃんの叫びもしっかりと魅せてくれたのは嬉しい限りです。

 ポップがすでに諦めていたのに、『弱虫』の言葉をきっかけに負けん気の強さを取り戻すシーンは前から好きなのですが、アニメではポップとゴメちゃんの会話とダイ達の戦いの光景の見せ方が、少し違っていますね。

 どちらも交互に見せていることには変わりは無いですが、原作ではゴメちゃんとの会話の区切り目をポップの諦めシーンで切っていたのが、アニメではポップの再奮起シーンで切っているのが面白いところ。

 ゴメちゃんのセリフも、ちょっと改変されていますね。
 原作のゴメちゃんは理由を言ってから、ポップを嫌いだと言っていますが、アニメのゴメちゃんは嫌いだと言ってから、理由を言っています。

 後、ポップに「嘘だーい」と叫ぶシーンで、ポップがちょっと怯んでいるのはいい改変ですね。
 原作では、ポップは自分は全力でやったと、徹頭徹尾主張しているんですが、アニメではここで怯む辺り、「いや、もしかしたらもっと頑張れたんじゃないのか」と迷いを残しているように見えます。

 未練があった方が生き返りたい欲が強くなるでしょうから、ゴメちゃんの言葉に心を揺さぶられているのはいいですね。

 バランと戦うダイ、ところどころで怯えたような表情を見せつつも、必ず弱気をはね除けるような強い目をするのがいいです!
 原作ではバランに肩を打ち抜かれてから反撃するまでの流れが速いのですが、アニメではたっぷり格闘しまくっていますね。

 必死に戦うダイと、訴えるゴメちゃんを被らせるようなカットが素晴らしいです! ゴメちゃんは何らかの方法でダイの戦いを感知しつつ、ポップの精神世界に入り込んでいるのかな、と推察。
 ポップの回想で、ダイの単独アップが複数出てきたのもいいですね。

 ところで、バランパパン、どこまでも「ライディンではなくギガブレイクだ」と言い張りたいみたいですね(笑)
 後、今だと叫んだ時のダイの、トベルーラの無駄な飛行っぷりにも笑いました。な、なぜ、そんな遠回りをするの!?(笑) 最後、岩まで割っているし!

 ポップが生きていると思ったシーンで、みんなが一斉にそっちを見る時に笑顔なのが辛いですね。ヒュンケルさえ、少し口元がにやけていたのに。
 ザオラルの失敗を嘆くレオナや、ポップの詩に衝撃を受けるダイのシーンが、見ていて泣けてきました。

 二人とも、さっきまであんなに気丈に振る舞い、頑張っていたのに……っ。
 バランに殺されそうになって怯えても、すぐに気持ちを立て直していたダイが、衝撃を受けたままなのが悲しいですね。
 アニメのダイの台詞に、「いやだ」とくわえられていたのが、さらに泣けました。

 傷ついたバランの歩き方、不自然さを強調していて驚きました。もう少し、スムーズに歩いていたかと思ったけど、思いっきり満身創痍ですね。

 バランがポップの側で考えにふけっている時、ダイが険しい目でバランをじっと見ているのがいいです。
 原作では、ダイは戸惑った表情を見せているんですが、アニメではダイがまだバランを警戒しているというか、ポップにこれ以上何かするつもりなのかと気を張っている感じですね。

 理屈で言えば、もうポップは死んでしまったのだからバランがどう手出しをしたとしても何の変わりは無いのですが、そこまで割り切れずにまだポップを守ろうとする姿勢に泣かされます〜。

バラン「今更、生き方は変えられん……大人とはそういうものだ」

 この台詞は、連載当時は頭の固い大人だと呆れたものですが、いざ自分が大人になってみると(笑)……大人だからこそ、自分自身の人生以上に、子供に見せるべき生き方を重視したのかな、と思います。

 自分が間違っていたことを悟ったバランは、ヒュンケルやクロコダインのように改心するのではなく、敢えてそのままの道を進むことでダイへの道標になろうと決意したんでしょう。

 間違っている道を目の当たりにすれば、それを避けることで正解ルートが見えてくる……自分を倒すことでダイが正しい道へと進めるように、と。

 ポップが生き返る際、レオナが耳を当てるシーンや、バランの台詞が追加されていたのは嬉しいですね。
 しかし、バランの目にはやっぱりポップは「すぐ死にそうな見かけ」として映っていたようです。……マトリフ師匠と気が合うかも(笑)

 ついでに、敵に塩を送るの言い回しを聞いて、「あ、やっぱりバランがラーハルトに諺を教えていてんだな」と妙にッ実感しました(爆笑)

 ポップの蘇生に泣くメルルが、めっちゃ可愛いです! 
 夕日に向かって歩いて行くバランが、思っていた以上に格好いい! 確かに、シーン的に夕方だと原作でも分かっていましたが、アニメだと色彩が素晴らしく美しいですね。

 そして、モノローグを一切カットしたため、ダイの心理を視聴者が自由に考える余地が生まれています。
 多分、ダイはヒュンケルほど理論だてて考えてなさそうですが(笑)

 驚いたのが、キルバーンとミストバーンの出番が削られたこと!
 ええっ、ここでこの二人のシーンをカットするとはっ。展開的に、ずっと鬼岩城にいた感じになってる?

 しかし、ハドラーが悪魔の目玉の下で青ざめているシーンを見て、ついつい「あ、一点買いで注ぎ込んだ馬券が、思いっきり外れてしまった人の顔だ」と思ってしまって、すみません(笑)
 悪魔の目玉の画像が消えている辺りも、競馬場の最終戦後の電光掲示板のむなしさが表れているような気が……。

 嫌な目つきでハドラーを値踏んでいるザボちゃんが、悪役っぽくていい感じです。

 バーン様のお説教、さりげなく原作と順序が変えられていましたね。しかし、それ以上に、咳払いする振りをしつつハドラーを小馬鹿にして笑うキルバーンの姿が目につきます。
 原作にはないシーンで、ちょいちょい遊んでいますね、キルバーンは。

 追い詰められるハドラーの演出がすごい! キルバーンのこまめな動きがいい! ミストバーンは……呼び出し以外、台詞はありませんでしたね。

 化ける寸前の小心者ハドラーのうろたえっぷりと、恐ろしいまでに迫力のあるバーン様の会話は実に楽しかったです。
 それはいいけど、最後がコレでは親子の別れやらポップの生還の喜びもすっ飛びそう(笑)

 ところで、次回予告を見て大ショック。
 予告でメルルの家って言った!? メルルんち!? あそこがメルルの家だと、初めて知ったぁああああっ。

 しかし、マァムを一瞬チラ見せするのはまだしも、ザボエラとハドラーを見せてしまっては奇襲予定が丸わかりなんですが(笑)
 「背水の魔軍司令ハドラー」って、切羽詰まりすぎな尊称なのに、妙にカッコイイですね。

 っていうか、どうせ映すのならマァムの誘惑シーンではなく、彼女が助っ人に来る風な所だけを映していかにも助かった感を演出し、来週の放送で地獄につき落として欲しかったな……連載当時のジャンプがそうだったように!
 上げて落とす演出は、鬼畜だと思いました(笑)

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