『父との決別』(2021.5.15) |
《粗筋》 翼を広げ、ものすごい勢いでダイめがけて飛ぶバラン。真魔剛竜剣を振るうバランの猛攻をダイは避けるだけで精一杯だ。 バランに空中戦を挑んでも無駄だとクロコダインは止めるが、ヒュンケルはそれも覚悟の上で、倒れているポップへと目をやる。 ヒュンケル「あの死に様を見て、じっとしていられるようなヤツは男じゃない」 ヒュンケルのその言葉に、クロコダインも決意を固めたように頷いた。 一方、空中を飛び回ってバランの攻撃を避けていたダイは、自分の拳に一瞬目を落とし、決意したように拳を握りしめる。その直後から、空を高速で飛ぶダイとバランの軌跡が変化する。
そんなことは知らないダイは、拳を使って精一杯バランと戦っていた。 ダイの拳をいなし、逆に強烈な拳を放ってくるバランは、痛みにダイの動きが止まった一瞬を狙って剣で切り裂いてくる。 だが、その瞬間こそがヒュンケルが狙っていたタイミングだった。 雄叫びを上げ、剣を投げつけるヒュンケルに対して、バランはライディンを呼んで迎撃する。 そこには、驚いたような顔でヒュンケルの剣を手にしたダイがいた。 ヒュンケルの目的を知ったバランは、ダイへと向き直る。
ヒュンケルは、ダイが一発で勝負を決めることを願っていた。 互いに剣を打ち合わせたダイとバランは、同時に後ろに下がって距離を取った。 しかし、バランは嘲笑い、剣を振りかざす。 だが、ダイは恐れる様子はない。 ダイ「同じ条件なら……おれ達が勝つ!」 魔剣を振りかざしたダイはライディンを剣に宿らせ、逆手に構え直す。 ダイ「おれのパワーと……」 ダイの右手の紋章。 ダイ「先生の技と……」 胸に下げられた、アバンのしるし。 ダイ「ヒュンケルの剣と……」 闘気の宿る魔剣。 ダイ「そして……ポップが取り戻してくれたおれの思い出を全て一つにして……おまえにぶつけてやる!」 思い出すのは、ポップとの記憶。 マァムを助けるために雨の中、二人でライディンの特訓をしたこと。 ロモス王国でクロコダインを倒した後、小さな勇者とみんなに認められた時のこと。 様々な思い出を胸に、ダイはアバンストラッシュの構えを取る。 激しく空を飛び交い、バランの殴りかかった拳をダイが受け止めたかと思えば、今度はダイが放った脳天蹴りをバランが剣で払う。 しかし、ダイは諦めることなく技を宿したままの剣を片手に滑空し、バランへ殴りかかった。 メルルにしてみれば、なぜ彼らが技を出さないのかが理解できない。 ダイを応援しながら、ポップの方へ目を向けるメルル。 しかし、蘇生呪文の効果が無いことに、レオナは焦りを感じていた。祈るような思いで、呪文をかけ続けるレオナ。 その頃……天上から光が差しこむ青空の中に、ポップはいた。 あれこれ考えながらも、ポップは自分が死んだことを納得し、一方向へと歩いていた。 しゃべれるようになったゴメちゃんは、ポップを引き留めようと必死だ。このまま進んでは、ポップは本当に死んでしまう、と。 それに自分はもうダメだと諦めているポップは、自分の未熟さや自分の死を受け入れている。それを聞いて、ポロポロと涙をこぼすゴメちゃん。 ゴメちゃん「ポップのバカ! 弱虫ーっ!」 それを聞いて、ポップの足が止まる。 地上では、親子竜の戦いが続いていた。 同じ頃、雲の上ではゴメちゃんがポップを責めていた。 ゴメちゃん「ポップなんか嫌いだ! まだアバン先生の仇も討っていないのに諦めちゃうなんて、ポップは弱虫だよ!」 弱虫と言われたのが気に障ったのか、ムキになって言い返すポップ。自分なりに一生懸命やったというポップに、嘘だと言い切るゴメちゃん。
が、それでもダイは歯を食いしばり、戦う意志を見せる。
雲の上の世界……そこにも、風が吹き始める。 ポップ「ふざけるなよ、ゴメ公……たとえ、死んだっておれは……おれは……」 叫びながら、ポップはダイのことを思い出していた。 雨の中、一緒にライディンの訓練をやりきった後の、力が抜けたような笑顔を。 ポップ「おれはダイを、見捨てたりしねえぞぉおお!」 叫び、拳を天に突き上げるポップ。
一瞬の光は、爆苑へと取って代わる。 死人が呪文を使ったことに、驚くバラン。 複雑な軌道のトベルーラで勢いを載せ、ダイは千載一遇のチャンスに己の全てを駆けた一撃を叩き込む。 凄まじい咆哮の中、打ち砕かれたのはバランの剣の方だった。その勢いのまま、ダイの剣はバランの胸を切り裂いた。 クロコダイン「相打ち……!?」
だが、さすがにあれほどの激闘の直後に立とうとするのは無理があったのか、ふらつくダイをメルルが受け止める。 鎧の魔剣が完全に消滅したと、淡々と説明するヒュンケル。謝るダイだが、ヒュンケルは気にするなと言う。 しかし、ポップに付き添っていたレオナは――泣いていた。 驚き、そんなはずはないと食い下がるダイ達。 ダイ「うそ、だろ……ポップ。……いやだ……目を覚ましてよ、ポップ……!」 よろめきながらポップに近寄り、揺さぶるダイだが、反応はなかった。 メルルは肩をふるわせて泣き、ヒュンケルは目を伏せたままだ。クロコダインも見るのが辛いとばかりに目を伏せる。 ヒュンケルもまた、音の気配へ警戒を見せる。 大怪我を負い、歩くのもやっとと言った様子でこちらに向かってくるのは、バランだった。肩で息をしているが、折れて柄だけになった剣を手に、険しい目をダイ達に向ける。 立ち上がり、身構えるダイ。それに続いて、ヒュンケルやクロコダインも同じく身構える。 ダイも歩いてバランに近づくが、ダメージが大きく崩れ込みそうになってしまう。 バラン「虚勢を張るな……もう戦う力など一握りも残っていないことは分かっている……お互いにな」 自分に見向きもせず、ポップの方へ向かうバランを、ダイは驚いたように見つめていた。 竜の力、魔族の魔力、人の心……竜の騎士に与えられた力のうち、もっとも下らぬと思って捨てた人の心。 死を覚悟して自分に向かってきたポップのことを思い返し、バランは目を開ける。 クロコダイン「何の真似だ……?」 クロコダインの問いに、バランは答えない。 バラン「ディーノよ……もはや、何も言わん。おまえはおまえの信じた道を進むがいい」 だが、バランは竜の騎士はこの世に二人は要らないと言い切った。いずれ、雌雄を決する思惑をあかしたバランは、もはや魔王軍も眼中にはない。 バラン「おまえが私に勝てたら、人間のために魔王軍を滅ぼすがいい! だが、私が勝てば……私は人間を滅ぼす……!」 頑なに自分の考えを譲らないバランに向かって、ダイは叫ぶ。 ダイ「わからずや――っ!」 言い訳もせず、そのまま去って行くバラン。 ポップの蘇生の知らせに、感極まったように泣き出すメルル。 バラン「見かけによらずしぶとい小僧だ。……敵に塩を送るのは、これが最初で最後だ」 夕日に向かって歩いて行くバランの後ろ姿を、ダイはじっと見送っていた。まるで、光に飲み込まれようとするかのように、バランは光に向かって歩いて行く。 最後に、ディーノとではなくダイと呼びかけ、バランは去って行く。 一方ダイは、呆然としたようにバランを見送っていた。何も言わず、だが、吸い付けられたようにじっと父の後ろ姿だけを見つめながら――。 その頃。 大魔王バーンの御前に喚びだされたハドラーは、怯えが強いせいか顔を上げることすらままならない。 だが、そんなハドラーの思惑を見抜いているバーンは、一喝し、ハドラーの言い訳を封じる。 指が折られる度に、追い詰められた表情で怯えを見せるハドラー。 しかし、バーンは指を一本立て、アバンを倒した功績を認める。 だが、ハドラーが去った途端、キルバーンは言う。 キルバーン「もう始末しちゃってもいいんじゃないですか?」 彼の手にした大鎌が、キラリと光を放つ。 一方のハドラーは、そんな風に自分が見世物になっているとも知らぬまま、追い詰められた表情で静かに闘志を燃やしていた――。 《感想》 空中でのダイとバラン戦、バランの動きにナチュラルに蹴りが混じっているのがすごい! ヒュンケルとクロコダインの会話の最中、離れた所に佇んでいるメルルを発見! 小さな姿が、控え目なメルルっぽくていいですねえ♪ また、ヒュンケルが鎧の弱点がライディンであり、バランがそれを使ってくると予想していた解説部分がまるっとカットされていましたね(笑) 空中戦でダイが自分の拳を見て、決意するシーンも見逃せないです。 それまでは逃げるダイを追う感じだった二本のトベルーラの軌跡も、ダイの決意と同時にぶつかり合うような動きに変化しているし、ダイの心境の変化がよく現れている感じがします。 ダイの拳を、バランが肘で受け止めているシーンに感心しました。 ヒュンケルが剣を渡した後、落下しつつ必死にアドバイスを送っていましたが……忠告よりも受け身を取ろうよ! と、つい叫びたくなりましたよ! せめて、足から降りるようにもうちょっともがいてっ! バランがヒュンケルの目的を悟るシーン、アニメでは落ち着き払った感じがいいですね。原作では、しまったと大げさに驚いているのですが、アニメではヒュンケルへの台詞を途中で止め、後ろを見た時にはすでにヒュンケルの意図に気がついていた風に思えます。 ヒュンケルの側に駆け寄ったメルルが回復魔法をかけようとするシーン、原作ではなかっただけに嬉しい改変ですね。 原作ではどうしても非戦闘員のメルルの出番は薄かったのですが、アニメでは回復要員が動くタイミングなども組み入れてくれているのが嬉しいです。 ダイがバランが使ったのはライディンだと指摘するシーンで、メルルに介抱されるヒュンケルのカットと共に「そうか……!」と呟くシーンが追加されていましたね。 原作にはないカットですし、台詞も一言ですが、個人的にはこれは 「そうか……!(バランの魔法力を削ろうとしたクロコダインの頑張りは無駄じゃなかったんだな!)」 と、納得しているシーンであって欲しいですね。クロコダインは最後の最後まで、バランに余分に魔法力を使わせようと必死でしたし。 ダイとポップの回想シーンが、すごくよかったです! 原作では言葉だけだったので、時間を取って丁寧にポップとの思い出を流してくれたのはいい感じでした。 ただ、一つだけ言わせてもらうのなら……テランの湖でポップがバランを前にしてダイを庇う名シーン、ダイの姿が邪魔でポップが完全に見えなくなっておりましたがっ!?(笑) ダイとバランの空中戦パート2では、ダイの攻撃が蹴りが多くなっているのが楽しかったです。ネリチャギ風の脳天かかと落としや、ソバット風の回し蹴りと、ダイの蹴り技の多彩さに感心しちゃいました。 しかし、蹴りに対してバランが頭突きを噛ますとは(笑) 親子の対話、と言うには荒っぽすぎる気がしますが、真正面からぶつかり合う不器用さに親子の血を感じます。 地上でメルルがヒュンケルを半ば抱きかかえて手当てしていますが……いつも思うのですが、女性の助け手には恵まれすぎてませんか、ヒュンケルって!?(笑) 死後の世界、もっと空が白一色で光に溢れた神々しい場所かと想像していたのですが、予想以上に青空が普通っぽかったです。 そして、つい笑っちゃったのが、ポップのあまりにも暢気な感想と、シリアスなメガンテ時の回想の差(笑) ポップとゴメちゃんの会話が、実によかったです! 泣いている顔からポップのバカと叫ぶシーン、いい感じでした♪ ポップがすでに諦めていたのに、『弱虫』の言葉をきっかけに負けん気の強さを取り戻すシーンは前から好きなのですが、アニメではポップとゴメちゃんの会話とダイ達の戦いの光景の見せ方が、少し違っていますね。 どちらも交互に見せていることには変わりは無いですが、原作ではゴメちゃんとの会話の区切り目をポップの諦めシーンで切っていたのが、アニメではポップの再奮起シーンで切っているのが面白いところ。 ゴメちゃんのセリフも、ちょっと改変されていますね。 後、ポップに「嘘だーい」と叫ぶシーンで、ポップがちょっと怯んでいるのはいい改変ですね。 未練があった方が生き返りたい欲が強くなるでしょうから、ゴメちゃんの言葉に心を揺さぶられているのはいいですね。 バランと戦うダイ、ところどころで怯えたような表情を見せつつも、必ず弱気をはね除けるような強い目をするのがいいです! 必死に戦うダイと、訴えるゴメちゃんを被らせるようなカットが素晴らしいです! ゴメちゃんは何らかの方法でダイの戦いを感知しつつ、ポップの精神世界に入り込んでいるのかな、と推察。 ところで、バランパパン、どこまでも「ライディンではなくギガブレイクだ」と言い張りたいみたいですね(笑) ポップが生きていると思ったシーンで、みんなが一斉にそっちを見る時に笑顔なのが辛いですね。ヒュンケルさえ、少し口元がにやけていたのに。 二人とも、さっきまであんなに気丈に振る舞い、頑張っていたのに……っ。 傷ついたバランの歩き方、不自然さを強調していて驚きました。もう少し、スムーズに歩いていたかと思ったけど、思いっきり満身創痍ですね。 バランがポップの側で考えにふけっている時、ダイが険しい目でバランをじっと見ているのがいいです。 理屈で言えば、もうポップは死んでしまったのだからバランがどう手出しをしたとしても何の変わりは無いのですが、そこまで割り切れずにまだポップを守ろうとする姿勢に泣かされます〜。 バラン「今更、生き方は変えられん……大人とはそういうものだ」 この台詞は、連載当時は頭の固い大人だと呆れたものですが、いざ自分が大人になってみると(笑)……大人だからこそ、自分自身の人生以上に、子供に見せるべき生き方を重視したのかな、と思います。 自分が間違っていたことを悟ったバランは、ヒュンケルやクロコダインのように改心するのではなく、敢えてそのままの道を進むことでダイへの道標になろうと決意したんでしょう。 間違っている道を目の当たりにすれば、それを避けることで正解ルートが見えてくる……自分を倒すことでダイが正しい道へと進めるように、と。 ポップが生き返る際、レオナが耳を当てるシーンや、バランの台詞が追加されていたのは嬉しいですね。 ついでに、敵に塩を送るの言い回しを聞いて、「あ、やっぱりバランがラーハルトに諺を教えていてんだな」と妙にッ実感しました(爆笑) ポップの蘇生に泣くメルルが、めっちゃ可愛いです! そして、モノローグを一切カットしたため、ダイの心理を視聴者が自由に考える余地が生まれています。 驚いたのが、キルバーンとミストバーンの出番が削られたこと! しかし、ハドラーが悪魔の目玉の下で青ざめているシーンを見て、ついつい「あ、一点買いで注ぎ込んだ馬券が、思いっきり外れてしまった人の顔だ」と思ってしまって、すみません(笑) 嫌な目つきでハドラーを値踏んでいるザボちゃんが、悪役っぽくていい感じです。 バーン様のお説教、さりげなく原作と順序が変えられていましたね。しかし、それ以上に、咳払いする振りをしつつハドラーを小馬鹿にして笑うキルバーンの姿が目につきます。 追い詰められるハドラーの演出がすごい! キルバーンのこまめな動きがいい! ミストバーンは……呼び出し以外、台詞はありませんでしたね。 化ける寸前の小心者ハドラーのうろたえっぷりと、恐ろしいまでに迫力のあるバーン様の会話は実に楽しかったです。 ところで、次回予告を見て大ショック。 しかし、マァムを一瞬チラ見せするのはまだしも、ザボエラとハドラーを見せてしまっては奇襲予定が丸わかりなんですが(笑) っていうか、どうせ映すのならマァムの誘惑シーンではなく、彼女が助っ人に来る風な所だけを映していかにも助かった感を演出し、来週の放送で地獄につき落として欲しかったな……連載当時のジャンプがそうだったように! |