『アバン流究極奥義』(2021.10.2)

 

《粗筋》

 荒涼とした死の大地に、不気味な風の音が響き渡る。
 ハドラー専用の王座では、胸を押さえ、苦しむハドラーの姿があった。ふらつくハドラーは、手近なサイドテーブルを倒してしまう。乗っていた酒瓶や杯が床に転がり、派手な音を立てた。

 同じ部屋にいたヒムとアルビナスは、そんなハドラーを驚きの目で見つめている。
 壁まで自力で辿り着いたハドラーは、壁にすがりつくように爪を立てる。無意識に力がこもったのか、くっきりと刻まれる爪跡。

 そして、鈍い咳と共にハドラーは喀血した。
 ハドラーを気遣うアルビナスだが、ハドラーは自嘲気味に自分の不調が短時間で超魔生物に改造したせいだろうと吐露する。自分の命が長くはないと承知しているハドラーに駆け寄る、ヒムとアルビナス。

 二人の肩を借りて歩くのがやっとの様子のハドラーに、アルビナスはそこまでしてダイ達に勝ちたいのか、と問いかける。

 間髪入れず、勝ちたいと答えるハドラー。
 己の全てを投げ捨て、自分の強さを確かめてみたいと語るハドラーの目には、飽くことなき強さへの挑戦に満ちていた。

 ヒム達の手を借りて、王座へと座るハドラー。
 ハドラーが特に拘りを持っているのは、やはりアバン。アバンを倒しても、アバンの弟子達がハドラーを脅かす……アバンを倒しただけで、勝ってはいなかったと自覚しているからこそ、ハドラーはアバンの使徒との対決に拘っている。

 その話を、真剣な表情で聞き入るヒム。
 ハドラーはヒム達を気遣い、謝罪する。禁呪法で作り出した分身体は、術者が死ねば生きてはいられない。

 だが、ハドラーの言葉を遮って、ヒムは構わないと言い切る。
 自分達は駒であり、ハドラーの望みを果たす道具だと彼は自認している。ハドラーのためになら粉々になったとしても本望だと叫ぶヒムの目からは、涙がこぼれていた。

 それを見て、ハドラーもアルビナスも驚く。
 ヒム自分も自分で自分の顔に触れ、人間のように目から水がでている事実に驚いていた。

 乱暴な手つきで、ヒムはその水を……涙を振り払った。空中に飛んだ水滴が、鮮やかにきらめく。
 それを見たハドラーは、ヒムが落涙した事実に目を見張る。

 と、わずかに聞こえてきた音に対し、ハドラーは険しい目を音の方へ向ける。
 王間に入り、膝を突いて頭を下げているのはフェンブレンだった。

フェンブレン「申し訳ありません……ハドラー様」
 
 頭を上げたフェンブレンの顔は、無残にも大きな傷が入り、目がつぶれていた。

アルビナス「フェンブレン!?」

 






 その頃、ポップ達は死の大地を歩いていた。
 先頭を歩いているのはポップで、ヒュンケル、クロコダインと続いている。
 死の大地に来るのはこれが初めてのクロコダインは物珍しそうに周囲を見回しているが、ポップはチウを早く見つけようと焦っている。

 三人は固まったまま走り出す。岩の向こう側を見たポップは、倒れているチウ達を発見する。
 チウの名を呼びながら、駆けつけるポップ。

 血にまみれ、ぐったりと目を閉じているチウをポップは抱え起こし、必死に呼びかける。その後ろに、そっと近づくヒュンケルとクロコダイン。
 うっすらと目を開けたチウは、ポップ達三人の姿を認めて、みんなが助けてくれたのかと呟く。

 チウの言葉の意味が分からず戸惑うポップの口に、輝きの杖が突っ込まれる。うめくも、なんとか杖を口から外すポップに対して、チウは杖を拾ったことや、最新情報を手に入れたことを自慢する。

 強がるチウを心配し、ポップはもう喋らないようにと注意するも、チウはそのまま気絶してしまう。
 心配の余りにチウの無茶さを詰り、泣かんばかりにチウを抱きしめるポップ。

 それを見ながら、クロコダインはヒュンケルとチウの勘違いや誰と戦ったかについて話し合う。
 傷跡から僧正(ビショップ)と戦ったと見当をつけるヒュンケルは、不意に表情を引き締める。

 明らかに様子が変わったヒュンケルに、どうしたのかと問いかけるクロコダイン。
 が、ヒュンケルにはそれに応える余裕はない。
 周囲の岩山が奇妙に回転する錯覚を覚えながら、冷や汗を流すヒュンケル。

ヒュンケル「ポップ……! チウ達を連れて戻れ!」

 ポップは全員一緒でも大丈夫だし、この場所にヒュンケル達を残していくのを心配して反論するが、それを遮ってヒュンケルは頼み込む。
 その表情を見て、ポップは納得は仕切れない様子ながらも素直に兄弟子の指示に従う。

ポップ「なんだかわかんねえけど、無理すんな!」

 ルーラで、その場から飛び去るポップを見送るヒュンケルとクロコダイン。彼が完全にその場からいなくなってから、クロコダインがヒュンケルに理由を問う。

 が、ヒュンケルはそれには答えず、険しい目を岩山に向け、怒鳴るように叫んだ。

ヒュンケル「出てこい! おまえだと言うことは分かっている!」

 岩陰から登場したのは、竜騎将バランだった。

バラン「久しいな、二人とも」

 バランの登場に、驚愕するクロコダイン。だが、バランは落ち着き払った態度で歩を進めると、気配を消していたのに勘づいたヒュンケルの腕前や、ポップを先に返した判断力を褒める。

 一見、友好的に見えるバランに対して、クロコダインは警戒を緩めない。バランの目的がダイとの対決にあるのではないかと、真っ先に問いただす。
 そして、答えを聞く前にクロコダインはそれはさせないと熱く訴える。

 人間達が力を合わせてバーンに挑む中、ダイは欠かせない存在だと訴えるクロコダインに、ヒュンケルも力強く続く。
 彼もまた、ダイとバランの悲痛な戦いを繰り返させる気は無い。命を賭けても止める覚悟を見せる二人に対して、バランは何処までも静かに答える。

 おまえ達だけでは、私に勝てない、と。
 十全の自信があるからこその台詞だが、それでも反発するクロコダインにバランは何処までも淡々と諭す。
 今の自分はヒュンケル達やダイにも眼中に無く、大魔王バーン打倒こそが目的だ、と。

 さすがに驚き、翻心の意味を問うヒュンケル達。だが、説明無用と言い放ち、その場から離れようとするバラン。
 が、クロコダインは手を広げて行く手を遮った。

 目的が同じなら、過去の行きがかりを捨てて共闘しようと申し出るクロコダイン。目を伏せたままのバランは、返事もしない。
 しかし、クロコダインはチウを救ってくれたバランを信じ、ダイのためにも力を貸してくれるように頼み込む。
 バランの肩に、手を置くクロコダイン。

 だが、ダイの名を聞いた途端、バランは目を開けた。
 その目に、不穏な気配を感じてハッとするヒュンケル。クロコダインに向かって離れろと警告するも、遅かった。

 一瞬、ヒュンケルの方に目を向けたクロコダインの頬に、バランの痛烈な拳が叩きつけられる。
 一撃でクロコダインを殴り飛ばしたバランは、額に竜の紋章を浮き上がらせ、怒りを露わにする。

 その怒りは凄まじく、吹っ飛ばされたクロコダインが地に落ちるよりも早く、続けざまの肘打ちで追撃を仕掛けた。
 口から血反吐を吐き、岩に投げ飛ばされるクロコダイン。

 クロコダインを心配して彼の側に駆け寄るヒュンケルだが、その背後に音も無く忍び寄るバラン。
 ハッとしたヒュンケルが振り返ったときには、すでにバランの拳が彼の顔を殴りつけていた。

 巨漢のクロコダインでさえ吹っ飛ばした一撃に、ヒュンケルは回転しつつ弾き飛ばされ、やはり岩山に叩きつけられる。その際、手放した槍が岩に当たって固い金属音を響かせた。

 ほんの数瞬で徹底的に打ちのめされたヒュンケル達……。苦痛に呻きながら倒れる彼らの目の前で、バランは己のマントを投げ捨てて見くびるなと言い放つ。

 人間も敵と言い切り、死んでも協力しないと宣言するバランは、どこまでも自分一人で戦う覚悟だった。剣を拾い上げて鞘に収め、背を向けるバランに対して、よろめきながらも辛うじて上半身を起こしたヒュンケルは、単独で敵地へ行く危険を説き、彼を止めようとする。

 しかし、危険を承知しているバランの心は微塵も揺らがない。
 この先の死闘を思い、一瞬、目を瞑るバラン。
 そして、バランは振り返ってヒュンケル達に告げる。

バラン「死にたくなかったら、早く帰れ。……ダイのところへ」

 振り返ったバランの額には、すでに竜の紋章は消えていた。振り返った瞬間に見えた目の鋭さも、ダイの名を呼ぶ時にはわずかにだが緩む。

 その目を見て、ヒュンケルは以前のバランとの差違を感じ取る。
 その目から、何かを察するヒュンケル。
 そんなヒュンケルの想いも知らず、再び前を向いたバラン。そのマントだけが、風に翻っていた。





 一方、拠点では大勢の怪我人が横たわったり、壁などにもたれかかって座り込んでいた。
 そんな中、怪我人に寄り添って回復魔法をかけるレオナの身体が、淡い白色に光り輝く。
 洗面器を両手で持ったエイミも、怪我人達の間を縫って歩いていた。

ダイ&ポップ「えっほえっほ」

 ポップとダイも、二人が借りて担架に怪我人を乗せて運んでいる。
 みんなが忙しく治療に当たる中、バウスン将軍は階段の手摺りに寄りかかって佇み、作戦基地のはずが野戦病院に早変わりしたと嘆く。
 そんなバウスン将軍に、レオナは明るく言葉を返す。

レオナ「でも、立て直しは出来ます」

 そこに、奥の扉からマァムとメルルが出てきて、チウ達の手当てが終了したことを告げる。それを喜ぶダイ。
 マァムは心配そうに、ヒュンケル達が無事に戻るといいのにと呟く。
 ポップに向かって、なぜ彼らをおいてきたのかと食ってかかるエイミ。

 ヒュンケルがあまりにも真剣に頼んだせいだと言い訳するポップに、ダイはなぜヒュンケルがそんな態度を取ったのか、疑問に思う。
 その時、右手が疼くのを感じるダイ。

ポップ「なんだ?」

 自分の右手を見て、ダイは戸惑ったような口調で答えた。

ダイ「……わかんない……」

 そんなダイの姿に覆い被さるように、竜の紋章の光が浮かぶ。
 バランの額に浮かんだ竜の紋章が大きくなり、場面はバランの視点へと移る。





 死の大地で、額に竜の紋章を宿してその場から立ち去ろうとするバラン。が、槍にすがって立ちあがったヒュンケルが、それを止めようと声をかける。だが、すでに振り向きもしないバラン。

 が、そんなバランに対して、ヒュンケルはバランの真意が読めたと告げる。
 わずかに、視線だけでヒュンケルを見やるバラン。
 ヒュンケルは、バランがダイのために捨て石になろうとしてうる覚悟を見抜いた。ダイのためにも、バランを止めようとするバラン。

 だが、バランはダイのためには自分を放っておいた方が得策だと諭す。なぜ止めるのかと問うバランに対し、ヒュンケルは死地へ一人赴くバランを見過ごせないと言い切る。

 ヒュンケルの脳裏をよぎるのは、死ぬとはとても思えない安らかな表情で、バランとディーノのことを自分に託したラーハルトの顔だった。
 ラーハルトの思いを、鎧の魔槍に例えて食い下がるヒュンケル。

 その姿が、一瞬ぼやけたように見える。瞬きをすると、そこにいるのはヒュンケルでは無く、ラーハルトの姿に見えた。
 無論、それは幻だが、思わず目を見張るバラン。

 最も信頼していた部下が自分を諫めようとしているのかと、驚きと共に振り返るバラン。
 が、そこにいたのはラーハルトでは無く、ヒュンケルだった。

 正対したヒュンケルに、自分がその説得を聞くと思うのかと問うバランに対し、ヒュンケルは力強く答える。

ヒュンケル「思わん!」

 言葉と同時に、槍を投げ捨てるように地面に突き立てるヒュンケル。ハドラー達が気づく前にバランを倒すしかないというヒュンケルは、足をわずかに開く構えを取った。
 だが、武器を手放した手はだらりと垂らしたままと言う、不思議な構えだ。

 バランでさえ戸惑う構え。
 次の瞬間、バランの目は大きく見開かれる。佇むヒュンケルに闘気がないと気がつき、驚きを感じるバラン。





 ヒュンケルの身体から闘気が完全に消えたことに、驚くバラン。
 やっと起き上がったクロコダインも、バラン相手に武器を捨てるヒュンケルの捨て身さに、驚く。

 だが、無防備な立ち姿に見えて、ヒュンケルの目には闘志が満ち、自信に溢れている。
 彼の不可解な構えの恐ろしさは、バランが誰よりも承知しているはずと告げるヒュンケル。

 戸惑うクロコダインは、ヒュンケルから闘気が感じられないことに気づく。それと同時に、バランもまた闘気を消し始めた。
 見物しているクロコダインの闘気が、一番大きく感じられる異常事態に大いに戸惑うクロコダイン。

 そんな中、バランは落ち着き払った声でこれが捨て身技……カウンター狙いの攻撃だと看破する。
 相手の攻撃をわざと受け、反撃する心積もりだと指摘するバラン。

 それに対し、ヒュンケルは師であるアバンの書の話を始める。
 アバンの書を読んで、これだけは真似できないと思った技――アバン流究極奥義無刀陣。

 敵を前に闘気を抑える境地に至るため、アバンは敢えて剣を捨ててその技を習得した。





 15年前。
 若き日のアバンが、荒い息をつきながらハドラーと戦っていた。アバンも体力の限界のようだが、対するハドラーも似たような状況だった。

 が、アバンは剣を地面に突き刺し、決然とした目でハドラーに勝負を挑んだ。

アバン「来いっ! ハドラー!」

 自ら武器を手放したアバンを見て、ハドラーは闘気を高めながら吠える。

ハドラー「バカめッ、勝負を捨ておったか!? これで終わりだぁあああーーっ!」

 闘気で拳を輝かせながら、一直線にアバンに向かってくるハドラー。その拳が、アバンの胴を思いっきり叩く。
 その勢いに、後ろに吹き飛ばされるアバン。

 が、回転しながら後ろに転がったアバンは、背後に突き立てた剣を手にして、反撃に転じた。
 驚愕に目を見開くハドラー。

 闘気を込めた一撃の直後で隙が出来たハドラーは、アバン渾身のアバンストラッシュをまともに受けてしまった。
 胴を一薙ぎにされ、倒れるハドラー。

 倒れた魔王を背に、しばし、しゃがみ込んでいたアバンはゆっくりと立ち上がる。壊れかけた遺跡のような建物に、夕焼けの光が差し込む中、振り返ったアバンは万感の思いを込めるように己の手で倒した魔王を見つめていた。
 アバンストラッシュが動の技ならば、無刀陣は静の技。
 静と動を合わせた最高奥義である。





 回想は飛んで、崖に面した川辺に立つアバンと幼いヒュンケルの姿が映る。卒業の証であるアバンのしるしをもらった直後、アバンに攻撃し、返り討ちに遭った時の回想。
 それを思い出しながら、ヒュンケルは復讐に囚われた自分には自ら剣を捨てる技など出来ないと思ったことを口にする。





 今の時系列に戻り、死の大地で相対するヒュンケルとバラン。
 自分に出来る技かどうか分からないが、バランに通じるのはこれしかないと考えているヒュンケル。

 それを聞いて、クロコダインはようやく彼らの意図を悟る。
 無刀陣はカウンターのため、闘気が高ければ高いほど反撃も大きくなる。それを防ぐため、バランも闘気を消したのだと理解するクロコダイン。

 だが、バランは自分ではヒュンケルのように上手く闘気を消せないと、ヒュンケルの成長ぶりに驚きつつも褒める。よほどの覚悟がなければそこまではできないと、バランは身をもって知ったのだ。





 その時、少し離れた岩山に、銀色の影が舞い降りる。それはアルビナスとヒムだったが、戦いに集中しているヒュンケル達が気づくことは無かった。
 ヒュンケルが誰かと戦っていることに、驚くヒム。
 バランに目を向けたアルビナスは、その正体に思い当たったのか、声色が険しくなる。






 一方、アルビナス達に気づかないまま、バランは背中の真魔剛竜剣を抜いた。その身体から白い靄が発生したかと思えるほど、闘気にあふれかえっている。
 
 これまでとは一転して闘気を高め始めたバランに、驚くクロコダイン。
 だが、ヒュンケルは驚く素振りも見せない。
 威力を抑えた闘気で一撃目を放ち、敵のカウンターに耐えた上で、二撃目で止めを刺す――その作戦しかないと確信しているからこそ、ヒュンケルはバランがそれを選んだことに微塵も動揺しない。

 そして、ヒュンケルはバランがカウンターに耐えるかと挑発的に言った。即ち、自分こそがカウンターで止めを刺すと、暗に口にしている。
 バランも捨て身を覚悟したのかと、クロコダインは驚きを隠せない。

 バランは両手でしっかりと剣を構え、身構える。
 彼もまたヒュンケルの狙いを読み切り、その上で真っ向から力でねじ伏せるつもりでいるのだ。

 バランと対峙しながら、ヒュンケルは一日たりとも忘れたことのなかったラーハルトのことを思い出す。
 自分の全てを懸けてバランを止める覚悟のヒュンケルは、止めきれなかったらあの世で笑ってくれと、今はこの世にはいない友を思う。






 一方、ヒムとアルビナスはヒュンケルの対戦相手が竜騎将バランと知り、揉めていた。
 バランをハドラーにとって危険な存在と考えるアルビナスは、これが好機とばかり二人まとめて始末しようとしている。

 ヒムは決闘に横槍を入れるのに、反対する。ハドラー様からもお叱りを受けると彼女を止めるが、アルビナスは動じない。
 責任は自分が取ると言い、全てはハドラー様のためにと宣言する彼女の目は、強い覚悟が見て取れた。

アルビナス「災い全て、燃え尽きるべし……!」






 女王の決意も知らぬまま、バランの額に竜の紋章が浮かび上がる。ついに本気を出し、吠え滾るバラン。
 彼の身体から発せられた闘気が寄り集まって青い竜を形取り、地面を穿ちながらヒュンケルへと向かう。

 激流のごとく襲いかかる幻の竜に、ヒュンケルは無反応だった。
 普通の人間なら恐怖するであろう闘気の竜に対して、まるで微風であるかのように涼しい顔で佇んでいるだけだ。
 ただ、それでもユラリ……とわずかにヒュンケルの上半身が泳ぐ。

 そのわずかな隙を見逃さないとばかりに、バランが挑みかかってきた。地面を強く切り、一気にヒュンケルへ距離を詰めようとする。
 それを、じっと見つめたまま微動だにしないヒュンケル。

 竜の紋章が襲ってくる――かのように見えたが、それは剣を振りかざし迫ってくるバランだった。
 勝負と叫び、斬りかかってくるバランに身構えるヒュンケル。
 
 だが、その時、何者かの影が割り込んできた。それは、女王アルビナスだった。
 必死の形相でそちらに目をやるヒュンケル。バランもまた、目だけをそちらへ向ける。

 銀色の身体を太陽のように輝かせたアルビナスの攻撃に、周囲も金色の光に包まれていく。
 光に飲み込まれるヒュンケル達。
 そして、二人が立っていた辺りの場所が、周囲の岩山事、破裂するように崩れ去った。

 驚愕の表情のまま、光に飲まれるクロコダイン。容赦なく広がる光に、全てが飲み込まれていく。





 砕けた小石が雨のように荒れ狂い、ようやく光の奔流が収まった頃、ヒムは地面に開いた大穴を覗き込んでいた。
 黒煙のせいでよく分からないが、それでも人影が立っているのが見える。
 アルビナスの名を呼びかけ、彼女の元へ走り寄るヒム。

 成果を問うヒムだが、アルビナスの右半身が大きく削られているのに気がつき、愕然とする。
 苦しそうながらも、ヒュンケルの実力を賞賛するような言葉を呟いたアルビナスは、ふらりと倒れかかった。

 それを真後ろから支えるヒム。
 弱りながらも、アルビナスはヒュンケルがいなくなってよかったとつぶやいた。





 赤い夕日に、死の大地が染まっている。
 不気味な山がそそり立つ異形の光景だが、それでも夕日に染まる死の島は美しく見えた。

 死の大地を眺めることが出来る森の中で、クロコダインは木にもたれかかって座りこみ、自分を助けてくれたバランに話しかけていた。
 だが、バランはクロコダインに背を向けたままで返事もしない。

 ヒュンケルを心配して立ち上がったクロコダインは、バランが見つめる先に倒れている彼がいるのを発見する。
 あまりにひどい姿に、驚愕するクロコダイン。
 傷つき、倒れたヒュンケルはピクリと動かない。

 その姿の衝撃を受け、膝から崩れ落ちるクロコダイン。両腕で地面を殴り、思わず彼の名前を叫んでいた。
 嘆くクロコダインに対して、バランは淡々とヒュンケルの現状を語る。生きてはいるが、二度と戦えない……戦士としての死刑宣告に、クロコダインはなぜそうなったのかと問いかけをぶつける。

 アルビナスが割りこんできた際、ヒュンケルに集中していたバランは、何も出来なかった。というよりも、ヒュンケルへの攻撃を止める気は無く、そのまま攻撃を続けようとした。
 そのままなら、隙を突かれて二人ともやられていたに違いない。

 しかし、ヒュンケルは一瞬の驚きから立ち直ると、身体の向きを変えてアルビナスに向き直った。その背後に、魔槍の柄が銀色に輝く。

アルビナス「ニードルサウザンド」

 女王の放つ無数の雷針が、ヒュンケルを打つ。
 前進を揺るがせるその攻撃に耐え、ヒュンケルは槍を手に取ってブラッディースクライドを仕掛けた。
 無刀陣によるヒュンケルの反撃は、物の見事にアルビナスを貫く。

 だが、その瞬間、バランの剣もまた、ヒュンケルを捉えていた。
 それを覚悟の上で、命がけでバランを救ったヒュンケルに、さすがのバランも心を動かされているようだった。

 クロコダインは無言のまま、ヒュンケルの側へと歩み寄る。ヒュンケルの側に座り込んだ獣王に対し、バランは問いかけた。

バラン「クロコダインよ。私はどうすればいいと思う?」

 何をすればヒュンケルに報いることが出来るのか、真剣に尋ねるバラン。
 だが、クロコダインは自分に聞かないでくれと吠えた。
 涙を流しながら、クロコダインは自分の内心を吐露する。

 バランをバーンと戦わせた方が、人間達にとって得だと思ってしまったことを、クロコダインは恥じていた。自分ではバランに勝てないと諦めたクロコダインは、自分には何も言う資格がないと思っている。

 号泣しながらヒュンケルを抱き寄せたクロコダインは、不器用な友の心意気だけは汲み取って欲しいと頼んだ。
 それを聞いたバランはしばし瞑目した後、一言だけ答えた。

バラン「……そうか」





 その頃、拠点では死の大地の地図を見つめながら、レオナが呟いていた。

レオナ「大魔宮……バーンパレス」

ポップ「その魔宮の門が、海底にある……か。チウの奴、よくも見つけてくれたもんだぜ」

 チウから聞いた情報を元に、どうやって魔宮の門を攻めるか作戦を立てている勇者一行。
 ダイはみんなに地上でハドラー親衛騎団を引きつけてもらい、単身で魔宮の門を攻める思惑だ。

 だが、レオナは一人では危険だと止める。
 もう一人、誰かと行かなければと提案するレオナ。
 ポップが名乗りでるが、マァムはポップは親衛騎団に対する切り札だからと止め、自分が行くと発言する。

 そこに、足音と共に登場したのはバラン。

バラン「行くのは私だ」

 その声に一瞬ビクッとし、顔を上げるダイ。その近くではポップが驚きのあまり腰を抜かして、床にへたり込んでいる。

ポップ「な、ななななな……っ」

 堂々と姿を現したは、バラン。
 その後ろには、ヒュンケルを抱きかかえたクロコダインもいた。

ポップ「バランッ!?」

 警戒と驚きが等分に混じったような目で、バランを見上げるダイ。そんなダイを見下ろすバランは、一見落ち着き払っているように見える。
 しかし、その目がかすかに揺れているように見えた。

 
 


《感想》

 なんというストーリー性の高いオープニングかと、のっけから目を奪われました! 感動の余り、オープニングは単独で別に感想を書いちゃいましたよ。

 しかし、新オープニングの出だしがハドラーから始まるとは。誰が主役やねん(笑)
 本来はポップ達VS親衛騎団で語られるエピソードを出番を早めてここに持ってくるとは、驚きです。

 でも、新アニメではキャラクターが回想するのでは無く本来の時間の流れに沿って話を進める方針みたいなので、これはこれでいい気がします。

 ハドラーの喀血の量、原作よりも控え目になっていますね。
 ヒムの熱い台詞に感動! 初登場の時の、どこか他人事のように無機質な口調だったのが嘘のように熱いキャラに変化しているのが嬉しい限りです。
 最初から熱血漢を前面に出すのでは無く、ハドラーへの忠誠心や戦いを通じて人間味を獲得しつつある演技が、実にいいですねえ。

 ハドラーが上には上がいると呟くシーン、ダイ、バラン、大魔王バーンの順に並んでいたのが、彼の中での強さの基準みたいです。

 フェンブレンがハドラーの元に戻るシーンや、アルビナスが彼を心配したように呼ぶシーン、アニメでの改変ですね。
 
 死の大地を歩くポップ達、クロコダインが歩くシーンから始まって、画面が引く形で前にヒュンケル、ポップが歩いているのが分かるという画面構成になっていました。

 見事に、背が低い順から並んでいますね。歩く時も走る時も、さりげなくポップの足に合わせて二人の優しさが好きです♪

 チウがポップの口に輝きの杖をツッコむシーン、どう見ても無理がある気が(笑)
 元々、アニメでは武器が原作よりも一回り大きめに描かれているから、こーゆー時は大変そうです。

 ポップの台詞やチウの自慢台詞、一部カットされていました。ポップの台詞はあまりたいしたことがない部分だったので問題ないのですが、チウの「羨ましかったらおまえも努力したまえ」の偉そうな台詞を聞いてみたかったので、そこが無くなったのはちょっと残念。

 ヒュンケルがバランの気配を感じて動揺するシーン、原作では集中戦やおどろ線で表現されていましたが、アニメでは目眩風に表現されているのが興味深かったです。

 ポップに戻れと言う台詞、原作では

ヒュンケル「……ポップ!! チウ達を連れて一足早くルーラで戻れ!!」

 だったのですが、アニメでは台詞から説明部分を削り落としたことで切迫感、緊張感が強まったように感じられました。
 そして、ポップに頼むときの表情も原作よりも余裕がない感じで、ポップを心配している様子を強く出しているように思えました。

 ポップがチウ達をルーラで運ぶ前、原作ではガバッとまとめて抱きついていましたが、アニメではゴメちゃんとマリンスライムは拾い上げ、パピラスは足を掴むというアクションが入るのが楽しかったです♪
 ポップの台詞からも「すぐに戻ってこいよ〜」部分がカットされていましたね。

 ヒュンケルがポップを見送るシーン、髪がルーラの巻き起こす風に揺れているのが細かくて感心しました。その風が収まってから、クロコダインが声をかけているのもいいですね。
 ポップ達が確実に安全圏まで遠ざかるのを待っていた感が、すごくいいです。

 ヒュンケルのバランへの呼びかけ、原作ではもっと余裕綽々なイメージかと思っていたのですが、アニメでのヒュンケルにはそこまでの余裕がない感じですね。
 強敵を相手にした緊張感や警戒が強く、アニメヒュンケルの人間味を感じさせてくれます♪

 後、バランの登場、思ったよりも早かったです(笑)
 原作ではもっと勿体ぶって、焦らすように出てくるイメージだったのですが、アニメだとノータイムで出現していました。

 原作では、ヒュンケルの腕前を褒めた後で口にした久しいなという挨拶を、再会した段階で言わせたことで、ずいぶんと友好度が上がったように感じられます。
 挨拶って、やっぱり重要ですね(笑)

 それはともかく、ヒュンケルやクロコダインの台詞も、大幅カットされとります。これまでの説明的な部分は省いてもいいという判断みたいですね。
 でも、ヒュンケルの説得のシーンでダイとバランの戦いの回想シーンが流れたのは、嬉しかったです。

 クロコダインのバラン説得のシーン、目がキラキラと輝いていましたよ! あれだけひどい目にあったのに、全く悪意を抱いていないクロコダインの潔さ……かっこいいです。

 原作では、マントの下のバランが拳を握り込んだ気配をヒュンケルが察知する演出がありましたが、アニメではこのシーンは省略されていましたね。

 怒りのバラン、すっごい迫力! 
 ダイの名をきっかけに、いきなり荒ぶる竜の怒りっぷりが実にいい感じです。原作よりも、キレた時と冷静さの振り幅が強く感じちゃいますね。
 原作と見比べると、台詞も行動も同じなのですが(笑)

 やはり、アニメという動きが加えられたことと、声優さんの演技も加わったことで演出がより際だって見える印象です。
 バランがマントを脱ぎ捨てるシーンなど、究極的にかっこいいですし♪
 原作では余り目立たない演出だったのが、アニメではこんなにも映えるだなんて……十数年、再アニメ化を待ち続けた甲斐がありました!

 バランが振り返ってダイのところへ帰れと言うシーン、実に、実に素晴らしかったです!
 原作ではここでも額に竜の紋章が浮いたままなのですが、アニメでは紋章が消えていました。

 息子を思うことで、荒れ狂う竜の怒りを静めたのだと解釈します。また、ダイの名を呟く時だけ、目元が和らぐのがいいですね。
 ダイの父だと分かる前までは、バランが常に余裕のある落ち着き払った態度を貫いていたことと合わせて考えると、今となっては、息子の存在だけがバランの心をかき乱す存在なのだと思えます。

 拠点に戻っての怪我人治療光景、アニメで見るとカラフルなだけにより惨憺な印象ですねえ。しかし、怪我人がもたれかかっている宝箱の大きさにびっくり。いや、原作通りのサイズ感なんですけど、色がつくとやたら大きく感じます。

 座り込んだ人間を並べて3、4人ぐらい入れそう。これだけ大きいと、中の物を取るだけでも一苦労しそうですよ! つい、○ルダの伝説の宝箱を思い出しました(笑)

 担架を運ぶポップとダイが、小さくかけ声を合わせているのがめっちゃ可愛いです! 原作では怪我人の様子を気にしながらゆっくり運んでいる印象でしたが、アニメでは元気よく駆けていますね。怪我人は揺らさない方がいいですよ〜?

 そしてバウスン将軍……原作の時点から思っていましたが、あなたも棒立ちになって愚痴っていないで働きなさいっ(笑) 落ち込んだ時に自分の悩みに囚われて動こうとしなかったノヴァの資質が、父親譲りじゃないかと思えてなりませんよ〜。

 レオナの台詞「死人が出なくて良かった」とか「生きていれば」など、生死に関わる部分がカットされていますね。
 表情も笑顔になっていて、原作よりも指導者としての強さが薄れた代わりに、親しみ深い庶民派王女になった印象です。王女だけど、明るくて芯の強い女の子って感じですね。

 マァムとメルルが並んで登場するシーン、いいですね。一歩引いた一から突いてくるメルルの慎ましさが、なんとも可愛らしいです。台詞を一言ぐらい、つけて欲しかったです〜。
 まあ、ダイの台詞さえもカットの方向性に端折っているんですから、メルルの台詞を加える余裕などないかもしれませんが。

 しかし、上目遣いマァムの表情はちょっと残念。原作の表情や角度が気に入っていただけに、真正面からの上目遣いはちょっとイメージが違いました。ついでに、ぷんすこエイミさんのシーン、彼女が後ろ姿だったのも残念です。
 声音だけで十分に怒っているのは伝わりましたが、表情を見たかったですねえ。

 でも、その分、目をキョドらせながら言い分けするポップの表情が楽しめたのは、素直に嬉しいですが

 ダイが右手の疼きを感じるシーン、原作ではダイ一人だけが気がつき、口にしないまま疑問に思っていましたが、アニメではポップとの会話があるのが嬉しいです。

 ダイの些細な異変にポップが気がついたのも嬉しいし、ダイが全く理由が分からずに戸惑っているのも可愛らしくて、いいですね。
 原作ではダイは、拳を見る時に手の甲の方を見つめていましたが、握りしめた手をそのまま見ていました。

 と、そこから幻のようにバランの額の紋章を浮かび上がらせることで、ダイの手の甲の紋章とバランの額の紋章が重なっているかのような演出には見惚れましたとも!

 最初はダイが実体でバランが幻のような薄さですが、濃淡が逆転して視点が入れ替わるシーン切り替えもいい感じです。

 ヒュンケルの説得シーン、思いっきりカットしたり、場面を先取りしたりと、改変が大胆でしたね。
 特に、ヒュンケルを見ているバランの瞬きに合わせ、ラーハルトの姿が見える演出は気に入りました。

 アイキャッチの時の音楽、音が微妙に変化したような? 
 闘気の消えたヒュンケルを白い線で表現し、背景の青い空と青い海に紛れ込むような水色で満たした表現は、面白くも美しい『無』の表現だと思いました。

 原作ではトーンの中に白いシルエットで表現していたシーンを、鎧等の細かい線までを白い線で描きつつも、顔が描かないことで虚無感を演出しているのはいいですね。

 バランの台詞、改変されています。

原作バラン「読めた。これは捨て身のカウンター攻撃(アタック)だ」
アニメバラン「読めた。これは捨て身技だ」

 原作ではわかりやすさを優先して説明過多気味だったのを、あっさり一言で済ませています。カウンターでは無く、捨て身技の方を残す辺り、ポケモンなどで『捨て身』という攻撃方法が周知されたのが利いている気がします。

 ヒュンケルの回想シーンに出てくるアバンの書のアップ、文字は読めないけど何やらかっこいい感じですね。たまに『!』や、アンダーラインなどもあるのは面白かったです。

 もしや○撃の巨人のような仕掛けが混じっているのかとワクワクしましたが、じっくりと見た結果、左右のページで同じ文が最低でも3つあることを発見しました。

 残念なことに、それっぽい文字をコピーしまくっている可能性の方が高そうです。
 たまに『!』や、アンダーラインなどもあるのは面白かったです。

 アバン先生の回想シーン……15年前のハドラーの方が老けて見えるのはこれいかに(笑) 
 超魔ハドラーになってマッチョになった彼に比べると、昔のハドラーってローブ姿のせいかどうしても魔道士に見えるんですよねえ。

 アバンが剣を床に突き刺すシーン、剣をアップにしているせいで自分のすぐ背後に捨てたという位置関係が明らかにされないのが残念です。
 アバン流無刀陣は、剣の位置こそが重要だと思うのに〜。

 アバン先生の戦いも、やや不満が。
 原作のコマ割が実に格好良かったので、そちらを再現して欲しかったですよ。
 ハドラーの拳を受けた際、アバンの表情のアップと、彼の身体が大きく吹き飛ぶシーンをハドラーの視点から見せることで、ハドラーが勝ったと一瞬思わせる。

 が、倒されたはずのアバンが反転し、剣を掴んで反撃する所こそがこの技の醍醐味だと思います!

 なのに、アニメではアバンの後ろ姿からの構図でカメラ視点を固定し、アバンが後ろに吹っ飛ばされ、身体を反転し反撃する流れを描いています。技術的には、こちらの方はむしろ難しいとは分かっていますが……っ、せめてアバン先生のアップぐらいは欲しかったですよ。

 アバンストラッシュの輝きは綺麗でしたが、原作のように真っ二つに両断もせず、むしろハドラーが倒れるシーンはぐっと遠景の俯瞰図にして、殺伐さを消した代わりに迫力も軽減しまくりでした。

 ヒュンケルの説明が削られまくるのは覚悟していましたが、一番好きな『そして、これなら確実におまえを殺さずに勝つことができる』が削られていたのが、非常に残念です。

 ヒム達の登場、原作では普通に歩いていますが、アニメではルーラで飛んできています。いや、ルーラだと気づかれそうな気がするんですが(笑)
 ヒムの台詞にも改変が。

原作ヒム「なっ……、なんだ、あいつら? 敵陣で仲間割れか?」
アニメヒム「ヒュンケル!? 誰と戦っているんだ?」

 原作では、ヒムはバランの正体を知らないどころか、ダイ達の仲間と判断しているみたいですね。
 多分、自分達側の人材ではない=勇者一行側の者という思考だと思いますが。
 そしてアニメのヒムちゃんは、ヒュンケルしか目に入っていません(笑)

 ヒュンケルとバランの対峙シーン、めっちゃかっこいいです!
 ヒュンケルがラーハルトを回想するシーンで、ヒュンケルの着ている鎧の魔槍の胸部分を透かして彼との戦い風景が映っているのが、雰囲気が合っていいですね。

 単に回想を流すよりも、両者に共通する武器を通じて流すことで、よりドラマチックな感じがします。

 アルビナスが『全てはハドラー様のため……』と言うシーン、まるでこちらを見下すかのような目線に、上から入った暗いグラデーションのせいで、恐ろしいぐらいに迫力がありましたよ!

 あ、あれ、おかしいな、原作ではここはただのアルビナスの顔のアップで、彼女のハドラーへの思いが垣間見えるシーンだと思っていたのですが……なんか、女王様気質のヤンデレが入ってきた模様です(笑)

 しかも続いてここで、『災い全て燃え尽きるべし』の台詞を言っちゃっています!
 上からのグラデーションが入ったせいで、下から懐中電灯で照らしたかのごとく、アルビナスの顔のアップがものすごく怖いことになっちゃっていますっ。

 バランとの対決シーン、幻の竜が暴れるシーンが迫力がありました♪
 原作にはないアニメの改変シーンです。
 襲いかかってくるバランが、紋章から膨れ上がって人の姿に変わる演出も実に良かったですよ、かっこいいです。

 小説で、日本刀で襲いかかってくる敵が身を縮めて気配を消すせいで、敵から見るとあたかも一本の刀だけで襲いかかってくるように見えたという、戦闘シーンを見たことがありますが、それを思い出しました。

 アルビナスのニードルサウザンド、アニメでは敢えて技名を叫ばず、白く消滅させていく雰囲気がお見事。
 でも、クロコダインが光に飲み込まれるシーン、原作ではしっかりとバランの手で助けられるコマがあるのですが、アニメではその辺がはっきり見えませんっ。

 何回か見返したものの『ううーん、もしかしたらルーラしているのかな?』レベルにしか分からないですよ。ただでさえ画面全体が白く光って見えにくいのに、超スローにして見返さないと分からないぐらいの駿足描写、止めて欲しいです〜。

 ヒムの「おっ、おいおい……!! 本当にかたづけちまったのかよ、あの鎧の男まで……」の台詞が削られていました。ちょっと残念。

 そして、ここには文句をつけたい……! なぜに、ふらついたアルビナスをヒムが支えるシーンを、真下から見上げるという妙な姿勢で描写したっ!?
 後ろ姿だと、アルビナスの女性的要素皆無な上、ヒムだって顔が見えずにチェスのコマ然とした二体が組み合わさった無機物なカットになっちゃっているのですがっ!?

 その直後のシーンでも、ヒムのアルビナスの支え方が原作と違って支えているのではなく、しっかりと掴んで保定しているように見えるのですが〜。
 アルビナスから徹底的に、ヒロイン要素が削られていますよ、とほほ。

 また、アルビナスがヒュンケルがいなくなったと呟いた後の、ヒムの『いなくなった?』の台詞がカットされたのも不満です。
 ヒュンケルに拘り抜いていたヒムが、ヒュンケルが死亡したと聞いて感情を見せるシーンを見たかったのに。

 死の大地が夕焼けで真っ赤に染まる風景が映ったのは、非常に美しい光景で満足です♪
 しかし、倒れているヒュンケルの姿にはやや不満。

 あまり重傷さを感じないのは、なぜなのか。
 原作でもここは流血がないシーンだったし、鎧のひび割れ具合で傷のひどさを表現しているのでアニメでも問題が無いと思っていたのですが、アニメだとただ気絶しているだけに見えてしまいます。

 なまじ、鎧が壊れてもピカピカ感があって、夕日の差し込む背景が美しすぎるせいか、凄惨さがかんじられませんでした。
 ヒュンケルの様子よりも、クロコダインの衝撃具合で重傷具合が表現されている気がします。

 クロコダインが膝から崩れ落ちるシーンとか、両手で地面を叩くシーンなど、彼らしい情の厚さを感じてすごく好きです。

 バラン視点での三すくみな戦いの図、素晴らしく格好良かったですよ。白い発酵したかのような背景の中、アルビナス、バラン、ヒュンケルの三人のシルエットのみが描かれるシーンの美しいこと!

 砕かれるアルビナスに、青い竜の紋章だけがくっきりと浮かぶバラン、血を吐き、切られた胴部分が赤く表現されたヒュンケルの図が、静止画として動きを止めて表現されるのが、まさに戦いの場を一瞬切り取った感があってよかったです。
 それにしても、シルエットだと思うと大胆に流血しますね(笑)
 
 ヒュンケルのしたことを懺悔のように語った後で、目を閉じるバランの顔が男の渋みに溢れた感じで惚れ惚れするほど素敵です。
 あまりにも格好良すぎて『この勝負、私の負けかもしれん』がカットされていたことに気づくのが遅れたぐらいです。

 でも、そのかっこよさの直後、クロコダインに判断を丸投げしているのには、思わず「いやっ、人に聞くんかいっ!」とツッコミましたよ!(笑)

 クロコダインがヒュンケルを抱き上げるシーン、原作では控え目な抱き起こしでしたが、アニメでは顔を擦り付ける程しっかりとした抱擁になっています。なぜ、この抱擁シーンだけは派手目に変えたのか?(笑)

 最後に三人の遠景場面になり、バランがクロコダインとヒュンケルを見つめるシーンは、背景の木々が夕日に照らされてまるで紅葉のようにきれいで、実にいいシーンでした。
 原作にはない構図ですが、アニメでの遠景からのカットは背景がとにかく美しい場面が多く、満足です。

 レオナ達の話合いシーン、冒頭にレオナとポップの台詞が追加されたせいか、ずいぶんと穏やかな話合いになったように思えます。
 原作ではみんな、血気に逸っている印象でしたが。

 ところで、レオナがもう一人と提案した直後、バウスン将軍、ノヴァ、マァム、ポップの順に顔が次々と映し出されるシーンがありましたが、これもアニメの改変ですね。

 原作ではすぐにポップが名乗り出ていますが、アニメではみんなの顔を見せた後で名乗っている分、熟考の末の発言に思えます。
 それにしても、バウスン将軍も戦力に数えられていたみたいですね(笑)

 マァムが自分が行くわと言うシーン、身を乗り出して発言しているのがいいですね。すごくやる気を感じます。そして、ノヴァは台詞さえカットされている始末。

 バランがやってくる直前、円型の卓を頭上から見下ろす構図になったのが面白かったです。

 バランの声に、ダイが反応しているのも細かくていいですね。
 バランの声だけで、誰だか分かるぐらいにダイにとってバランの印象が強いと感じられました。

 ポップの腰を抜かすシーン、原作よりも思いっきり表情を崩して鼻水も垂れまくりなのには笑っちゃいましたよ。原作ではただ驚いて腰を抜かしているだけですが、アニメではバランを指さして何かを言おうとして、壊れたレコードみたいにうめいています(笑)

 バラン、ダイと顔を合わせた時、目の輝きだけがわずかに揺らいでいるのに感動。
 新エンディングもストーリー性の高さが魅力♪ 気に入ったので、こちらも細かく書いて感想を書いてみました。

 次週予告では……あのーもしもし、プレゼントの応募方法が画面のL字部分で紹介されているせいで、なんか集中できないのですが!
 とりあえず、親衛騎団とポップ達の戦いが待っているっぽいことと、ダイとバランがフェンブレンと戦うことだけは分かりましたが。

 さりげに、エイミさんとヒュンケルのシーンも混じっていたりしましたが、そこは触れないのですね、アバン先生(笑)

 予告の最後に、ダイとバランが背中合わせに立つ姿が公開されていましたが、原作でもお気に入りのシーンだけに感無量です!

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