『ハドラーの挑戦』(2021.10.16)
  
 

《粗筋》

 奇襲のような攻撃が、武器を手放したバランを襲う。

ダイ「うぉおおおおっ!」

 だが、その瞬間、拳の紋章を光らせたダイが背中の剣を引き抜き、バランとフェンブレンの間を一瞬で通り抜け、海底に着地した。
 敵をそっちのけで、ダイの動きを目で追うバラン。

 まだきりもみ状に激しく回転しているフェンブレンだが、その動きは次第に弱まり、やがて止まった彼の身体は見事なまでに真っ二つに断ち切られていた。

 フェンブレンは今の技がアバンストラッシュだったと悟り、バランではなくダイに敗北したことを知った。
 自分よりも強い存在が世の中にこんなにいることに不満を抱きながら、深い底へと沈んでいくフェンブレンの身体は激しい爆発を起こす。

 バランはその様子を見ていたが、ダイはアバンストラッシュを放った姿勢のまま、戸惑ったように自分の剣を見ていた。
 初めて、意識せずに剣を抜けたことに戸惑いを感じるダイ。
 封印のことを忘れ、剣と一体になった原動力は、ただ、バランを助けたいと思う気持ちだった……思いふけるダイに、バランが声をかける。

 思念派でバランに剣を褒められ、ダイはようやく彼らしい笑顔でバラン員向かって頷いた。
 親子は、そろって魔宮の門へと向き直る。

 二人で力を合わせれば必ず門を破れると鼓舞するバランと共に、門へ向かって泳ぐダイ。
 バランはギガブレイクの、ダイはアバンストラッシュの構えだ。

 両者とも竜の紋章を光らせ、必殺の一撃を同時に門へと叩きつける。その瞬間、眩い光が目の前一杯に広がった。
 閉ざされた門にヒビが入り、砕け散る。開いた穴から、ものすごい勢いで海水がバーンパレス内へと流れ込みだした。






 その頃、地上でも海底での振動が伝わっていた。
 地震のような揺れに、親衛騎団達やポップ達も驚きの声を上げる。






 同時に、その震動は大魔王バーンのいる玉座にも届いていた。だが、さすがに玉座の間は頑丈に作られているのか、死の大地ほど揺れは激しくはなく、天井から石のかけらが多少降る程度にとどまっていた。
 ミストバーンは、ダイとバランが魔宮の門を壊したことを悟る。

 天井から落ちてきた石のかけらが杯に落ちたのを見たバーンは、鼻で笑ってそれを放り捨てた。バーンの手から離れた杯は、中に入っていた酒をこぼすこともなく、空中で灰となって消え失せる。

バーン「代わりを持ってこさせろ」

ミストバーン「はっ」

 さすがの大魔王も竜の親子の力を認めたのか、一言、呟く。

バーン「……たいしたものだな」





 海水を吸い込む魔宮の門の穴を見て、素直に喜ぶダイ。だが、バランは当然の結果だと冷静に言う。
 門を砕くのが最終目的では無いと言い、気を引き締めるように忠告するバランに、素直に頷くダイ。
 大魔王バーンを目指し、竜の親子は魔宮の門をくぐった。






 同じ頃、死の大地の地表部分にいたクロコダインは地下から伝わる震動から、ダイとバランが魔宮の門を砕いたことを悟る。
 それを聞いてポップは嬉しそうな顔でマァムを振り向き、マァムもまた、笑みを持ってそれに応える。
 二人はどちらからともなく、しっかりと手を握り合った。

 喜びに浸る勇者一行と違い、親衛騎団はフェンブレンがこの場へ送ってきたエンブレムがひび割れたことで、魔宮の門の決着を悟る。
 それを察知し、動揺するヒム。

 いきり立ち、フェンブレンの敵討ちをしようとヒムの手をシグマが止める。
 そして、アルビナスも冷静な口調でヒムを諫め、ハドラーとの誓いを思い出させる。
 血を吐くハドラーの姿を思い出すヒム。

 フェンブレンが暴走した今、自分達がここを離れるわけにはいかないと諫めるアルビナスの言葉に、ヒムはポップ達に向き直る。
 ハドラーが、ダイとバランと心置きなく戦えるようにするのが、自分達の使命だと言い放つヒム。

 それを聞いて驚くポップ達。
 ヒムはカキンといい音を立てて拳を打ち鳴らし、戦いを宣言する。それに会わせ、身構えるポップ達。
 だが、ポップは内心、ハドラーがダイとバラン、二人のドラゴンの騎士を相手にするつもりだったことに驚いていた。





 一方、地底ではダイとバランは海に没した階段を抜け、そろって空気のある層へと飛び出していた。海水の浸食が及んでいない階段を、駆け上がる竜の親子。
 その階段の先に待っていたのは、ハドラーだった。
 マントを羽織り、以前とは比べものにならない覇気を漂わせた魔王が、そこにはいた。
 しかも、単身で待ち構えている姿に、さすがのバランも驚きを隠せない。
 そんな彼らを、ハドラーは落ち着き払った顔で見下ろしていた。






 その頃、死の大地ではクロコダインの叫びが響き渡っていた。
 巨体のブロックにベアバックを仕掛けられていた。足が完全に空に浮き、抵抗できない状態のまま苦痛に吠えるクロコダイン。

 マァムが素早い動きで大きくジャンプをする隣では、ポップがトベルーラで同じ高さを飛んでいた。寄り添い合って空を行く二人は、それぞれ反対側に向かって警戒心を向けている。
 その後ろを追うのは、ヒム、アルビナス、シグマの三名だ。

 飛ぶポップを、バッタのように跳ねながら追うマァム。その後ろを、さらに親衛騎団の三名が追う。
 ポップに追いつこうと、一際大きめに飛ぶマァム。

 と、その時、シグマが手にしたランスを投げつけた。狙いは、言うまでも無くポップ。
 振り向くポップとゴメちゃん。
 ゴメちゃんが悲鳴を上げた時、下の方から閃光が走った。

 ランスになにかがぶつかった衝撃で爆破が起こり、親衛騎団とポップ達はそれぞれ反対の方向へと飛ばされた。

 なんとか姿勢を整え、猫のように四つん這いになって地面に落ちるマァム。ポップは受け身を取る余裕もなく、背中から落っこちてうめく。それでもなんとか身を起こしたポップの前に、銀色の足当て(グリーブ)が近づく。

 それを見て、いつになく驚いた表情を見せるアルビナス。
 静かに着地を決めるアルビナス、シグマ、ヒムの三名。
 だが、ヒムは喜びも露わにやってきた男を睨みつける。

 銀色の鎧を纏い、槍を持った戦士――それは紛れもなく、ヒュンケルだった。
 驚くポップの呼びかけに、もたもたするなと返事をするヒュンケル。
 敵を一掃し、ダイ達を追うというヒュンケルに気を取られながらも、ポップとマァムはよろめきながら立ち上がった。

 アルビナスもヒュンケルが重傷を負ったことを知っているだけに、彼の戦線復帰に驚きを隠せない。
 が、ヒムはヒュンケルの不死身さを喜び、歓迎している様子だ。

 敵を前にして、身構えるヒュンケルとポップ。が、マァムは心配そうな表情をヒュンケルへ向けていた。
 ヒュンケルの無茶さを心配し、彼の身を案じるマァム。

 だが、クロコダインはヒュンケルの無茶さに力づけられ、一気に気力を取り戻した。やおら、腕を出して相手の頭をつかんがクロコダインは、一気に反撃に出てブロームの巨体を担ぎ上げ、地面に叩きつける。重量差のせいか、その弾みでクロコダインも弾き飛ばされてしまうが、力勝負で負けた琴がショックだったのか、倒れたまま一声、うめくブロック。

 ゴメちゃんはヒュンケルの参戦を喜び、歓迎の鳴き声を上げていた。
 が、マァムはヒュンケルを心配し、彼を気遣う。心配は要らないと言うヒュンケル。

 その言葉を受けて、「どうせ突っ立っているしかできないんだから心配することはない」と、スタスタと数歩前へ進み出るポップ。
 憎まれ口を叩きだしたポップを、咎めるように呼ぶマァム。

 が、ポップは振り返りもしないまま、いつになく真剣な口調で突っ立っているだけでいい、と語る。
 そこにはアバンの使徒の長兄であるヒュンケルへの信頼が込められていた。

 その言葉を噛みしめるように、一瞬、目を閉じるヒュンケル。ポップの真意を知ったマァムは、またもポップの名を呼ぶが、その声音はさっきまでよりもずっと柔らかかった。
 クロコダインもまた、仲間達の所へ戻ってきて寄り添う。

 たとえ戦えなくても、来てくれただけで勇気をくれたと考えるポップは、ヒュンケルを振り返って「安心して突っ立っていろ」と言う。
 が、ヒュンケルはそれに感謝の意を示しながらも、槍を手に、ポップと並ぶように前に出る。

 突っ立っているだけの方が疲れるから遠慮するというヒュンケルに、ポップは素直じゃないヤツと不機嫌そうだ。
 意地っ張りさ加減では似たり寄ったりの兄弟弟子を見て、顔を見合わせて微笑むマァムとクロコダイン。

 一方、敵陣営ではブロックが仲間の側へと戻ってきた。
 勢揃いした敵を見て、ヒュンケルはフェンブレンの不在に気がつき、倒したのかと問う。

 クロコダインが、多分、ダイ達が倒したことを教える。
 ポップも敵がこちらの作戦を読んでいたこと、ハドラーがダイとバランを相手に戦っていることを告げる。

 竜の騎士二人を相手にするとは、よほどの自信があるのか、捨て身の覚悟なのか……もしくはその両方なのか。
 思い巡らせたヒュンケルは、急いで敵を倒すようにみんなに檄を飛ばす。

 それに応じるように、ヒムも自分達の決意を露わにする。
 負けられないのは、彼らも同じ……敵を片付け、味方の元へ駆けつけられるのは果たしてどちらか。
 ポップ達と親衛騎団は、互いに身構え合う。
 その背後で、雷鳴が轟いていた――。






 その頃、ハドラーはダイ達に向かってどちらから来るかと問いかけていた。その余裕の態度が気に入らないとばかりに、バランは竜の騎士を侮っているのかと敵意を剥き出しにする。

 だが、ハドラーは苦笑しながらそれを否定する。
 むしろ、ハドラーは竜の騎士へ脅威を感じ続けていた。配下となったバランの実力に怯え、ダイの正体が竜の騎士と知り、二人が手を組むことに恐怖を覚えた。

 しかし、今、ダイとバランが戦いを挑んできたことを望んでいるというハドラー。
 それを聞いて、ダイはハドラーが最初から自分達二人を相手にするつもりだったと悟る。

 ハドラーはフェンブレンの暴走が予想外だったと言った。
 捨てたつもりだったハドラーの功名心や虚栄心が、フェンブレンには反映されていた。子は黙っていても親に似る物だと言うハドラーの言葉に、何かを感じ取るバラン。

 ハドラーは声を張り上げ、勇者ダイ打倒を宣言した。
 バランがダイを庇うなら、二人まとめて倒すと言うハドラー。それに応じるように、ダイは剣を構える。

 だが、バランはそんなハドラーの自惚れを一喝し、自分一人で引導を渡してやると剣を身構えた。






 ハドラーとバランの息詰まる睨み合い。
 そのバランのマントの裾を掴み、ダイは超魔生物になったハドラーの強さを力説する。
 さすがにそれは初耳なのか、振り返って聞きかえすバラン。

 ダイはハドラーの強さを竜の騎士二人と互角と見ており、確実に相手を倒すために一緒に戦おうと説得する。
 バランはあそこまで言われて二人がかりで戦うことを屈辱と捉えており、ダイに竜の騎士としての誇りは無いのかと諫める。

 が、ダイは誇りよりも実利優先だ。
 理に適った反論に、詰まるバラン。ダイは重ねて、最終目的がバーンにあることを思い出させようとする。
 それを聞いても納得がいかないのか、不満そうにハドラーを見上げるバラン。






 その光景を、水晶玉越しに大魔王バーンは観戦していた。バーンは側に居るミストバーンに、勝負の決着を問いかける。
 ハドラーに肩入れしていたはずのミストバーンだが、有利なのはダイとバランであり、親衛騎団を別行動させたのは自殺行為とまで言い切る。

 バーンはハドラーが敢えて背水の陣を敷いたと評価しているが、ミストバーンはすでにダイ達が王宮に乗り込んでくることを心配していた。
 しかし、バーンは「それはない」と否定する。

 戸惑うミストバーンに、バーンは確信を持った口調で、ダイ達が自分の顔を見ることは決してないと宣言した。


 






 バーン達に見られているとも知らず、ダイとバランはまだ内輪もめを続けていた。
 竜の騎士の誇りを重んじるバランと、拘りやプライドを否定するダイの意見は正反対であり、妥協点がない。

 そんな二人に、どちらが戦うのかと、急かすハドラー。
 二人で来るかと挑発するハドラーに向き直るバランだが、その前にダイが剣を持って前に出た。

 ハドラーに向かって戦うのは自分だと宣言するダイは、言葉ではなく行動でハドラーの強さをバランに分からせるつもりだ。

 身構え、階段を一気にジャンプするダイ。
 ハドラーはその場に立ったまま、腕から覇者の剣を突き出させた。今まで見たことのない武器に、目を見張るバラン。

 一足飛びでハドラーに打ち込むダイだが、その剣はしっかりと受け止められる。剣戟だけで、その場に闘気が漏れ出して空気をふるわせた。

 初撃と共にハドラーと距離を取ったダイは、またもハドラーに斬りかかった。
 剣と剣がぶつかり合って、火花が散る。

 動き回るダイにたいし、ハドラーはその場を動きもせず、片腕だけでダイの猛攻をあしらっていた。ダイの成長を、まるで喜んでいるかのよう笑うハドラー。

 ダイの攻撃を紙一重で躱すハドラー。その斬撃が背後の壁を大きく砕いても、ハドラーは動じもせず、不敵に笑ってさえいた。

 その光景を、階段下から見上げるバランは驚愕の表情で見上げる。
 第三者視点で見ればダイが未熟なのではなく、ハドラーが腕を上げたのがはっきりと分かる。
 ダイの攻撃はバランと大差の無い物なのに、ハドラーの強さはそれを上回っているのだ。

 ハドラーはダイに向かって、健気だなと話しかける。
 ダイの攻撃が、予備知識の無い父親にハドラーの実力を見せるための物だと、彼は承知しているのだ。

 だが、ダイ自身もハドラーの全てを見切っているわけではないと指摘するハドラー。
 ハドラーが左手を広げると、そこには不自然な突起があり、かすかな音を立てて蓋が開いた。

 左手に武器があることに驚くダイだが、そこから一直線に地獄の鎖(減る図チェーン)が発射される。槍のようについてくる攻撃を、辛うじて躱すダイ。
 だが、それでも完全に回避は出来ず、頬が切れて血が飛び散った。

 ハドラーが左手をふるうと、チェーンは生き物のように動き、一瞬でダイに巻き付いて締め付ける。身動きを封じられた上に、棘のついたチェーンで捕縛され、悲鳴を上げるダイ。
 そんなダイをわずかに引き寄せるハドラーを見て、顔色を変えるバラン。

 身動きできないダイに向かって、ハドラーは自由な右手でイオラを放つ。
 避けることも出来ず、まともに魔法を喰らうダイ。単発ではなく、次々とイオラを叩き込むハドラー。
 巻き上がる爆炎を、バランは険しい表情で見上げていた。

 チェーンを手元に回収したハドラーは、一瞬の間も置かず両手から魔法の光を放ち出す。イオナズンの予備動作を見せるハドラーは、油断なく黒煙を見つめ続けていた。

 と、煙を裂いて青い光に覆われたダイが飛び出してきた。アバンストラッシュを仕掛けてきたダイを、イオナズンで迎え撃つハドラー。
 両者の必殺技がぶつかり合い、一際大きな爆炎が舞い上がる。
 畏怖の表情でそれを見上げていたバランは、上へと大きく投げされたダイを発見する。

 トベルーラで飛び上がり、ダイを受け止めるバラン。
 しっかりしろと呼びかけると、ダイは苦痛に呻きながらもバランを見上げ、「だから、言ったろ?」と言って、笑みを浮かべた。

 文字通り身体を張ってハドラーの実力を証明したダイに、バランも納得し、今こそハドラーの力を認めた。

 薄れゆく黒煙の中、ハドラーは平然と立っていた。
 ダイの底知らぬ力を賞賛するも、ダイはそれを言葉通りに受け止める気は無い。

 アバンストラッシュの威力をイオナズンで相殺されてしまった。
 胸に傷が見えるものの、すぐに再生する程度の傷に過ぎない。

 だが、ハドラーの胸の傷を見て、バランは血相を変える。
 黒の核晶を見て、驚愕するバラン。ダイはわけが分からないまま、バランの様子を見て戸惑うばかりだ。
 しかし、バランは黒の核晶がハドラーの身体に仕掛けられていることから、それが大魔王バーンの仕業だと気づき、部下に対するものとも思えぬ非情な処置に、戦慄を感じていた。






 水晶玉越しに全てを見ていたミストバーンも、初めて知った事実に驚いていた。
 しかし、バーンは最初からわかりきっているとばかりに落ち着き払っている。

 ハドラーが負けても、黒の核晶を爆発させて相打ちさせる予定だったのだ。死の大地は吹き飛ぶかもしれないが、バーンパレスに影響はないとバーンは全く気に懸けた様子もない。

 すでに、ハドラーを捨て駒として見るバーンの目は、どこまでも冷酷だった。






 一方、ダイはバランから黒の核晶が爆弾と聞き、驚いていた。
 バランは魔界で実際に見た黒の核晶の体験談を交え、ヴェルザーでさえ一度しか使用しなかった恐ろしさをダイに伝える。大陸ごと吹き飛ばす威力を持つ恐るべき爆弾だと説明しながら、バーンの目的が地上征服ではなく地上所梅津だということを実感するバラン。





 一方、バーンの玉座では、ステンドグラスの光を浴びながらバーンがハドラーについて語っていた。
 最初から捨て駒とする気は無かったが、万一のために仕掛けておいただけだという。

 ハドラーが勝手に超魔生物に改造したのは、バーンにとっても想定外だった。改造の影響で、黒の核晶はいつ爆破してもおかしくない状態になっているという。

 それを聞いて、息をのむミストバーン。
 だが、バーンは淡々とハドラーの最後が近いことを語る。結果の見えた勝負はつまらないと言い、片手を伸ばしただけでサイドテーブルごとチェス盤を吹き飛ばしてしまった。

 しかし、それでもバーンはハドラーの最後を見届けてやると言う。
 自分の片腕と見なした男の死を、原因を与えたというのに罪悪感も持たず、まるで同情しているかのように寛大に見守るバーン。

 それに比べ、ハドラーへ友情じみた感情を抱くミストバーンは、彼の生存を望みたいと考えている。だが、破れたのなら、華々しく散るようにと思うミストバーン。
 ミストバーンにとって、ハドラーの死すらバーンに優先する物ではなかった――。





 傍観を決め込むバーン達と違い、実際にハドラーと正対するダイ達はこれ以上無いほどの緊迫感を味わっていた。

ダイ「どうしよう……?」
バラン「分からん」

 驚くダイに、バランは魔法や魔法剣を使わないように忠告する。それじゃ勝てないと言い返すダイに、言うことを聞くように強く言い聞かせるバラン。
 魔法力を吸い込む黒の核晶は、魔法をぶつけると誘爆する危険が高いという。
 不利すぎる条件に、目を見張るダイ。

 だが、ダイ達の会話が聞こえていないハドラーは、二人のやり取りを作戦会議と受け止めていた。
 作戦が決まったのなら自分から行くといい、気合いを高め出すハドラー。

 咆哮と共に兜やマントがはじけ飛び、超魔生物ハドラーの全身が露わになる。
 あふれかえるような覇気に、さすがのバランも驚きを隠せない。

 肩当てを広げ、そこから風を吹き出して飛び上がるハドラー。彼は一直線に、ダイとバランへと向かってきた――。 






《感想》

 親子の共闘に感動! 
 ダイがバランを、バランがダイをさりげなく庇うのに感激しましたが、けど、それを上回って思うのは……『ハドラー、めっちゃ主人公やんっ!』でした(笑)

 冒頭のダイがバランを庇うシーン、原作では「やめろ」と叫んでいましたが、アニメでは吠えるような叫び声になっていましたね。いかにも我を忘れている夢中さが強く感じられて、いい改変です。

 しかし、血が出ないと思ってフェンブレンの真っ二つシーンは容赦なくやっていましたね。これまでの敵の中で、一番、原作に忠実なやられぐあいかも。
 
 バーン様、原作では「代わりを持て」とミストバーンに命じていますが、アニメではミストバーンに代わりを持ってくる誰かを手配しろ、と命じています。
 中世期、身分の高い者は直接下々と話すことなどなく、側近に命令し、その側近がさらに下の身分の者に命令をする、という迂遠な形をとっていたので、バーンの権力の強さが良く表れていて好きな改変です。

 ポップとマァムがダイ達が魔宮の門を壊したと知り、がっちりと手を握り合うシーン、いいですね♪
 マァムは右手を、ポップは左手をという、ちょっと変わった握手シーンなのですが、阿吽の呼吸でぴったりと動きがあっています。

 敵討ちだと騒ぐヒムをアルビナスが諫めるシーン、本来ならばここでハドラーとのやりとりがあるはずが、前回やったためか回想シーンのみに鳴っていましたね。
 ストーリーの流れ的には、アニメの方がスッキリしている気がします。

 ただ、残念なのはヒムに向かって「おおっと、そうはさせるかよ!!」身構えるポップのシーンや、アルビナスの声にビビるポップのシーンがなくなっていたこと。
 かっこつけておいてビビる、ポップの姿を見たかったのに〜。

 ポップの驚きのナレーションと、海底魔城を走るダイとバランのカットをだぶらせた演出はいい感じでした。ダイ側のBGMが、いかにもラスボス前っぽい曲になっているのが、ものすごくDQっぽいです。

 バランの台詞、さりげなく改変されていましたね。

原作バラン「正気か? 一人で来るとは……」
アニメバラン「一人……だと?」

 意味合いは同じでありながら、問題にはならず、さらに短く改変する辺りにシナリオ担当様の苦労を感じます。こうやって短くした台詞の意味を通じやすくするのは、声優さんの演技力も大きいと思います。

 クロコダインがブロックに攻撃を仕掛けられているシーン、とりあえずベアバックと判断しましたが、どちらかというと相撲の鯖折りに近い気もします。

 相撲の鯖折りなら自分より小柄な相手にかける技ですし、突っ立って手で締めていただけ、しかも下半身が見えなかった原作と違って、アニメでは十分にのしかかっている上、クロコダインの足が完全に浮いてしまっていたので、尚更背骨への負担が心配になります。

 ポップとマァムが親衛騎団から逃げるシーン、ゴメちゃんが真剣な表情で先頭を切って飛んでいるのが実に可愛いです♪
 しかし、ポップや親衛騎団達が飛んでいるのに、マァムだけが跳ねているのがすごく大変そう。

 でもポップの動きに合わせて、マァムが動いているのは嬉しかった点。ポッ
プの護衛をしようと、健気に動いているように見えます。

 ランスが爆破後、ポップとマァムが地面にへたり込んでいる図は原作にもありましたが、マァムが辛うじて着地を決め、ポップが着地失敗するのはアニメの改変ですね。いかにもありそうです(笑)

 二人のところに足だけが見えるシーン、原作にもありますが、アニメだと色が同じなのとちょっとぼやかしていることから、一瞬、敵かと思わせる演出でいいですね〜。

 クロコダインの反撃シーンはかっこよかったですが、動きがよく見えなかったです、も少し詳しく見たかった。っていうか、あの姿勢からどうやって反撃したの!?
 原作では見事に投げを決めたクロコダインでしたが、アニメではブロックの巨体を投げた反動で、後ろに飛ばされていましたね。

 ショックを受けたような「ブ、ブローム……」の一言が、妙に可愛かったです。

 ゴメちゃんがヒュンケルを歓迎するシーン、原作ではヒュンケルの周囲を飛び回っているのに、アニメでは思いっきり省略されとりました(泣) ゴメちゃんの八の字飛行、見たかったのに〜。

 ポップとヒュンケルのやり取り、いいですねえ。ポップがヒュンケルを兄貴分と呼んだ時、ヒュンケルは感動したように瞑目し、マァム、クロコダインは柔らかい表情でポップを見ています。
 がっ!

 隅っこにいるゴメちゃんが白目を剥いているのはどういうこと!?
 ゴメちゃん視点では、そんなにも驚く展開だとでもいうんでしょうか。単に、目の玉を塗り忘れただけであって欲しいです(笑)

 ヒュンケルに対しての状況説明シーンは、やっぱり大胆に端折っていますね。まあ、その辺は仕方が無いですが。
 対決シーンに雷が鳴るのは実にかっこよかったですが、ポップ達の戦いをもう少し、見たかったです〜。
 見せ場が結局クロコダインだけだったのが、ちょっと寂しいですよ。

 ハドラーとバランの台詞、カットされつつも重厚なやり取りがいい感じ♪
 原作では「子は黙っていても〜」のシーン、バランは無言でしたが、アニメではわずかに息をのむ改変がされていました。

 ハドラーの言葉に、バランが心を動かされたといった印象で、いい感じです。バランはダイが自分よりもソアラに似ていると思っているので、他人から親子だと認められるような言葉に動揺したように見えました。
 多分、今まで一度も言われたことはないでしょうしね(笑)

 CM後、ダイがバランのマントを掴んで止めるシーンと、父親を見上げるシーンがめっちゃかわいいのなんの♪ バラン視点からだと、いつもダイはこんな風にちっちゃく、上目遣いに見えるわけですね。

 バーンとミストバーンの会話、渋くてかっこいいですね。バーンの悪役感が、ものすごいです!

 ダイとバラン、この時点ではまだ共闘出来ないのだなぁと実感。ダイとポップが向かったのなら、最初から協力するのを目的に動いていたでしょうに。
 そして、ダイは言葉で言っても分からない相手への対応に慣れていますね(笑)

 ダイとハドラー戦、動かないハドラー相手に何度も打ちかかるダイの姿を見ていると、デルムリン島でのダイとアバンの訓練を思い出しました。あの時とは、迫力もダイの動きも段違いですが。

 ハドラーのヘルズチェーン、さすがに巻き付いた時に血飛沫が飛ぶシーンはカットされていましたね。頬の掠り傷は良くても、やっぱり重傷は避けたい模様。

 黒の核晶、初見ではすごく見えにくい、としか。
 ただでさえ傷口は余り見せない方針なのに、黒いマントの中にうっすら傷跡があり、その中が黒いのでは、なにがなんだかよく分かりませんよ〜。バランパパン、すごく目がいいですね。

 バーンとミストバーンのやり取りはよかったですが、バーンがミストバーンの身体には黒の核晶をつけていないと言う発言が削られていましたね。
 ミストバーンの正体を示す伏線と思っていただけに、削られたのは残念です。

 バランの魔界の回想シーン、バランのみがモノクロっぽいカラーで、ヴェルザーがセピア色の背景に線画だけで描写されているという変わった画風だったのが印象的でした。
 一枚絵に、煙のような画像をだぶらせながらゆっくりと引いて全体図を見せるという手法で、枚数を上手く節約しつつ迫力をだしているなぁと感心。

 バランの話に驚いているダイが、何度も瞬きを繰り返しているのが可愛くて良かったです。

 バーンの王座のステンドグラス、ちょっと稚拙な印象で歪んだ感じがする感じに表現されていました。パプニカのステンドグラスが芸術性を高められていた感じなのに対して、バーンのステンドグラスは原作寄りもさらに歪さを残すことで、不気味さをアップさせた感じです。

 なまじ玉座や白の他の部分のデザインが秀麗なだけに、一部分だけそうではない部分があると、かえって深い意味があるように深読みしてしまいそう。

 バーン様がチェス盤を吹き飛ばすシーンを見て、思わず「ぁああああっ、330万円がっ!」と叫んでしまったのは、現実とごったにしちゃっていますね(笑)

 ダイとバランのやり取り、シンプルすぎて爆笑しました。
 ダイもバランも、竜の騎士のデータにある戦略に基づいた行動には強くても、自力で考えるのって苦手なんですね、さすがは親子(笑)

 分からんと言われて、ダイが「えっ!?」と聞きかえすのはアニメの改変ですが、まったく同感です! 見ている立場でさえ、思わず聞きかえしたくなる反応でしたからね!
 それにしても、超魔ハドラー、やっぱりかっこいいです。

 次週予告、完全にハドラーとバランがメインに。ダイの見せ場が欠片もないのですが……。ポップ達にいたっては、カットゼロの上に一言も触れていないし!

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