『生存者たち』(2021.11.27)

 

《粗筋》

 自然豊かな場所に広がる、平和な町並み……そこは、ロモス王国、ボルトスの街だった。
 そこに、地響きのような音を立てながら巨大な影が迫ってくる。
 
 骨組みの鳥を思わせる巨大な空中要塞……それは、紛れもなくバーンパレスだった。
 異様な物体に怯えた町の人達が、騒ぎ出す。

初老の男「みんな、逃げろ!」

子供を連れた母親「走って、早く!」

 身一つで逃げ出す彼らとは裏腹に、一定の速度で飛ぶ白い飛行城。張り出した翼の先端部が動き出し、白い槍のような物が真下に射出される。
 その威力は凄まじく、街は一瞬で爆炎に包まれた。
 大勢の人達が逃げる間もなく光に巻かれ、跡形もなく消え去った。





 街を飲み込むドーム型の爆炎は、遠くからでも視認できた。

兵士A「うおお……」

兵士B「オレ達の街が……!」

 ロモス城では、ロモス王や兵士達が城のテラスからその光景を見ていた。と、そこに空にルーラの軌跡が光る。
 ロモス王の背後に降りたったその光に、兵士達は警戒を露わにする。

 だが、やってきたのは頭を深く下げて跪く魔法使いの男――フォブスターだった。

フォブスター「急な時ゆえ、失礼をお許しくださいませ。カール王国、フローラ様の命により、現状を伝えに参りました」

 顔を上げたフォブスターを、ロモス王は目を瞬かせながら見返した――。






 所は変わって、一面の雪景色。吹雪が吹き荒れる中にぽつんとあるカマクラの中で、辛うじて暖を取っているのは偽勇者のでろりんと、僧侶ずるぽんだった。
 寒すぎると愚痴るずるぽんだが、でろりんは世界中魔王軍が暴れまくっているから、しかたがないと言い張る。
 
 そこに、魚を捕ったへろへろとまぞっほが帰ってきて、喜び勇んだでろりん達は外に飛び出して仲間を迎える。
 だが、外に出たでろりん達は空を見上げて引きつった。まぞっほ達も、遅れて空を見上げる。

 雪空の中でも威容を見せつけるバーンパレスに、驚く偽勇者一行。
 巨大な槍が落とされ用としているのを見て、彼らは血相を変えて逃げにかかる。槍のもたらす爆発の余波だけで吹き飛ばされかける彼らは、必死になって互いに捕まり合う。

 岩にしがみついて爆風に耐えながら、本物の勇者は何をやってるんだと叫ぶでろりん。だが、手が滑り、結局仲間と一緒に吹き飛ばされてしまう。





 地面に巨大な槍がまたも突き刺さり、爆炎の後には大きなクレーターとそこに塔のように突き立つピラァ・オブ・バーンのみが残される。
 それを、上から見下ろし、愉快そうに笑っているのはザボエラだった。

 バーンパレスから下を見下ろし、ピラァ・オブ・バーンの破壊力を我がことのように喜び、悦にいっているザボエラ。
 その背後から、静かにミストバーンが歩み寄る。
 ザボエラは魔軍総司令となったミストバーンを主と呼び、ハドラーをこき下ろしながら露骨にごまをする。

 だが、ハドラーを貶した際、ミストバーンは目を光らせる。
 ハドラーを超魔生物に改造する際、黒の核晶に気づかなかったのかと質問するミストバーン。

 ザボエラは気づいていたが、放っておいたと得意げに笑う。
 それを聞いて、激昂するミストバーン。
 ハドラーを貶したことを詰り、裏切りを重ねるザボエラを信じないとミストバーンは彼の額に指を当てる。
 
 鋭い爪が食い込み、ザボエラの額に緑色の血が一筋流れた。
 バーン様を裏切ったら殺すと言い捨て、ミストバーンは身を翻してその場から立ち去った。

 取り残されたザボエラは、なんと言われようとも生き残った者が勝者だと、独りごちる。
 自分のやり方で最後には笑ってみせると不敵に呟くザボエラの目には、歪んではいても強固な意志が感じられた――。






 場面は変わって、青空の広がる浜辺。
 波の音が響く中、ぼんやりと目を開けたポップは、砂に半分、顔が埋もれている。
 遠くから見ると、その浜辺にはポップとマァムが寄り添ったまま倒れ、ゴメちゃんもその近くに転がっていた。

 助かったのかと身を起こそうとしたポップは、自分のすぐ隣にいるマァムに気がついた。目を閉じたまま倒れているマァムが、自分を抱えてここまで泳ぎ切ったと悟り、感心したような目で彼女を見返す。

ポップ(おまえ、ホントすげえなぁ……)

 その時、獣の鳴き声が聞こえた。
 ハッとして顔を上げたポップは、声の方へ警戒を向ける。林の奥から姿を現したのは、グリズリーだった。

 魔法力が空になったポップでは強敵過ぎる相手だが、マァムだけは守ると決意したポップはふらつきながらも立ち上がり、両手を大きく振り回してクマの気を引く。

 グリズリーを挑発しながら横へ移動し、差し違えてでも相手を倒す覚悟を見せるポップ。
 そんなポップに応じるように林から浜辺に出てきたグリズリーは、鋭い目でポップを一瞥した後、不意に愛嬌のある声で鳴きながら手をブンブンと振り回した。

ポップ(なんだ?)

 攻撃とは無縁な行動を見て、戸惑うポップ。
 その声に応じるように、チウやアキーム、ノヴァがやってくる。仲間の顔を見て、ホッとする余りその場にへたり込むポップ。

アキーム「しっかりしてください、今、森の砦にお連れします!」

 アキームがポップの所に駆け寄り、ノヴァも後を追う中、チウはクマチャの肩の上に飛び乗り、部下を労う。

チウ「よく見つけたな」

クマチャ「アォーオ」

 ちょっと照れくさそうに頭をかくクマチャ。

ポップ「森の砦……?」

ノヴァ「ボク達はカール騎士団に助けられ、今、そこにいるんだ」

 マァムの側に屈み込んだノヴァが、ポップの疑問に答える。そして、アキームはポップの真ん前に陣取っていた。

アキーム「カール騎士団は生き残っていたのです! そして、フローラ様も」

 なにやら、ジト目でノヴァの方を見ていたポップだが、それを聞いて正面に向き直った。。

ポップ「は?」






 夜。兵士が見張りに立つ、森の砦。
 あれから4日も経ったことを聞かされるポップは、寝間着に着替え、ベッドで休んでいた。隣のベッドにいるマァムも、同じような格好で、二人ともベッドの上に座り込み、レオナ達と状況を報告し合っていた。

 魔王軍はバーンパレスを使い、世界のあちこちを爆撃していたのだという。
 首都を攻撃しないことを不審に思っていたレオナだが、ポップ達の話を聞き、大魔王の目的が地上消滅だと知ってしまう。
 誰もが暗い表情で俯く。

 そんな中、レオナはパンと手を打ち合わせ、敢えて明るい声でポップ達の生還を喜び、ダイやヒュンケル達もきっと無事だと言おうとする。

 が、ベッドに横たわったポップは、それを遮って淡々と現況を話す。ダイがマザードラゴンに連れ去られたこと、ヒュンケルとクロコダインが大魔王の必殺技をまともに食らったこと……。
 ハドラーに助けられてポップ達はかろうじて命拾いしたが、惨敗だと呟く彼にいつもの元気や明るさはない。
 
 落ち込むポップを見て、レオナは憂い顔で俯く。
 大魔王の脅威を肌身で味わったポップ達に、自分達が励ましを言っても効果が無いと悟り、落ち込むレオナ。
 
 諦めたようなことを呟くポップだが、それに対して優しく、だが芯の強さが感じられる声がかけられる。
 ポップとマァムをアバンの使徒と呼ぶ、金髪の美女。

 部屋に入ってきたその女性を見て、レオナは嬉しそうに「フローラ様」と呼びかける。
 カール王国の女王、フローラ。
 彼女は一握りの騎士達と難を逃れ、魔王軍に反撃する機会を窺っていたと説明するレオナ。

 近づいてくるフローラに対して、ポップは身を起こす。マァムは座っていた姿勢から立ち上がろうとするが、頭痛を感じたのかふらつき、側にいたエイミが慌てて彼女を支える。
 フローラは軽く手を上げることで二人を制止し、優しく話しかけてきた。

 事情を知った上で、アバンの遺志を継ぐなら弱音を吐いてはだめだと語りかけるフローラ。
 先生を知っているのかと問うポップに対し、フローラはアバンとロカがカール王国の騎士団長だったという過去を話す。

 ロカ……自分の父親の話を、マァムは目を見張って聞き入っていた。そんなマァムを優しく見つめ、微笑むフローラ。
 父の話に、マァムは嬉しそうな笑顔を見せて大きく頷いた。

 フローラは15年前にハドラーが襲ってきた時の話をする。
 病に倒れた父に代わり、フローラが軍を導いていた。騎士の装束に身を包んだ若き日のフローラは、凜々しい表情を見せていた。

 だが、本心では恐怖を感じていた。
 王座に居心地が悪そうに腰掛ける王女のドレス姿のフローラは、表情を強ばらせていた。

 魔王に怯えていたのは彼女だけでなく、兵士や重臣達も同じだった。
 お馬にいる人々は、直立不動の姿勢でフローラの近くを守るロカ以外は、数人ずつ寄り集まり、不安に頭を抱えていた。

 だが、その時、のんきな口調で発言したのがアバンだった。
 ジタバタしか出来ない状態なら、ジタバタしましょうと明るく呼びかけるアバンに、フローラは呆れ、周囲の人々もあっけにとられたような顔を見せた。

 しかし、その顔はすぐに笑いを堪える表情へと変わる。周囲の人々が吹き出す中、我慢していたロカもついに吹き出し、爆笑が広がった。
 先程までとは段違いに緩んだ空気の中で、頭をかいて笑うアバンを見ながら、フローラもまた苦笑し……耐えきれずに、声を立てて笑い出す。

 そんなアバンの明るさ、人々に希望を与える姿に、フローラは勇者の資質を見いだした。
 だからこそフローラは、あの時のアバンを見習って最後まで頑張るつもりでいると語る。

 その姿には、アバンへの強い信頼と、それ以上の感情が込められているのが一目で分かった。
 それに気づいたポップは、遠慮がちにフローラにアバンのことを語ろうとする。

 しかし、フローラはポップに辛い報告をさせるよりも早く、優しい声音でアバンが死を承知していると告げた。
 アバンをよく知っているフローラだからこそ、故郷の危機に彼が何もしないことだけで、彼がすでにこの世にいないと悟ることが出来る。

 その言葉を聞いたポップは、悲しそうに顔を伏せる。マァムも、今にも泣きそうなほど目を潤ませていた。
 フローラがアバンを好きだったと、悟るアバンの弟子達。

 ギュッとシーツを握りしめる手。
 ポップはベッドから降り、スリッパを履いて立ち上がる。マァムも立ち上がるのを、エイミは驚いたように見送った。

 レオナ達が驚く中、ポップとマァムは自力で立ち上がっていた。その目には、強い光が浮かんでいた。
 師を思い出し、もう一度頑張ろうと決意したのだ。

 フローラの手を、それぞれ両手で握りしめるポップとマァム。そんな二人に礼を言い、先の計画はあるから今は休むようにと告げてフローラは立ち去った。

 頼りがいのある女王に、ノヴァは感服した様子だ。マァムも、レオナの尊敬している人だと納得している。
 それを、自分のことのように嬉しそうに聞くレオナ。
 しかし、ポップの褒め言葉はどうにも下世話な物だった。

ポップ「アバン先生の恋人かぁ……大人の魅力って言うか、なんていうかぁ……うぇへっへっへ」

 鼻の下を伸ばして笑うポップの頭に、マァムとレオナの鉄拳が同時に叩き込まれる。

マァム&レオナ「「下品!」」

 頭にたんこぶ二つを作り、蹲るポップに、まだ怒り足りないとばかりに胸を張るマァムとレオナ。
 と、そこにバウスン将軍が駆け込んできた。

バウスン将軍「レオナ姫! すぐに司令室へ! 今度は我がリンガイアに魔王軍が!」

 その場にいた一同が、その凶報に息をのんだ――。





夕闇に染まる町並みに、突如として落とされるピラァ・オブ・バーン。街は一瞬で壊滅した。
 夕闇の空に、白いバーンパレスはまさに優美な鳥のようにゆったりと飛翔している。

 その城の中で、バーンは酒杯を手の中で揺らしながら、味気ないと呟いていた。あまりにも簡単に進む地上攻略に退屈を感じているバーンに、すかさず追従するザボエラ。

 だが、キルバーンは器用にトランプを操り、必ず当たるという占いを披露した。何度やってもスペードのエースが出てくるのが不吉だという。
 まだ自分にたてつく者がいるのかと考えたバーンは、それらをいぶり出すだそうとする。
 そのために『あれ』と捕らえてあると語るバーンの目は、鋭さを増していた。






 夜。月明かりの照らすテラン城では、いつになく兵士達が騒いでいた。王に、外を見るようにと促す兵士達。
 兵士の方を借りて窓際に寄ったテラン王は、夜空に輝く光を目撃する。

 光の源は、大切そうに球を抱えた聖母竜だった。
 竜の神をたたえるテランの地で、竜の騎士が今、生涯を終えようとしている……異変を悟ったテランの民達もそろって空を見上げていた。
 聖母竜はテラン湖の壊れた神殿の上に浮かび上がった。






 目を覚ましたダイは、白い雲の上のような場所にいることに気づいた。ダイは知るよしもなかったが、そこはポップがメガンテを唱えた時にいた場所に酷似していた。
 立ち上がり、助かったのかと呟くダイに、冷静な女性の声が『いいえ。あなたは死にました』と告げる。

 振り返った先にいたのは、眩いほどに白く、神々しいドラゴンだった。
 警戒するダイに、ドラゴンは自分が聖母竜であると告げる。
 竜の騎士が死ぬと、マザードラゴンが迎えに来るという伝説を思い出し、じっと自分の手を見つめるダイ。

 静かに、ダイに死を告げるマザードラゴン。
 ダイは自分の代わりに新しい竜の騎士が生まれるのかと尋ねるが、マザードラゴンにその意志はない。
 ダイが、最後の竜の騎士だと言う。

 竜の騎士は世界のバランスを保つために生み出された存在だが、今はもうその役割を果たせなくなっている。
 なにより、大魔王バーンは神を上回る力を持っている。
 生命力も失ったマザードラゴンは、竜の騎士の歴史を終わらせるつもりだった。

 その場に膝をつき、大魔王バーンを誰にも止められないことに絶望するダイ。
 そんなダイに優しく声をかけ、一緒に天へ還ろうとするマザードラゴン。

 だが、何も起きないことをいぶかしんで、ダイは顔を上げる。
 そんなダイに、マザードラゴンは魂が二つあると告げる。その時、ダイの背後から光が生じ、バランが姿を現した。

 思わず、「父さん」と呼びかけるダイ。
 しかし、バランはダイにではなく、マザードラゴンに向かって自分こそが最後の竜の騎士だと主張し、ダイの延命を嘆願する。

 マザードラゴンはバーンに勝てない以上、生き返らせても苦しませるだけだと止めようとするが、バランはダイの力を信じ、マザードラゴンに食い下がって説得する。
 母に対し、頼み込むバラン。

 真摯な懇願に、マザードラゴンは頷いた。自分に残された最後の力を、ダイに与えるという。
 力を振り絞るように、マザードラゴンは輝き出す。

 そして、バランはダイに対して遺言を残す。
 ダイに竜の騎士の歴史を託し、愛する女性と子を育てることを望み、そのためにも大魔王バーンを倒すようにと告げた。

 出来ないと弱音を吐くダイだが、バランは息子に対して一人ではないと言った。
 ダイには仲間が、それに自分やソアラも側にいると言うバランの姿は光の靄のように崩れ、溶けていく。

 行かないでと引き留めるダイの目の前で、バランは光の粒子となって消えた。
 一途に父を呼ぶダイは、真っ白な光に包まれる。

 そして、テラン湖の上では、マザードラゴンの発する光が膨れ上がっていた。マザードラゴンが大きくのけぞって発光し、消える。
 それと引き換えのように、光に包まれたダイが空から降ってきた。

 テラン王を初めとするテランの民達は、それを驚きの目で見上げていた。
 光に包まれたダイは、ゆっくりと壊れた神殿跡へと舞い降りる。光は、まるでダイを守るかのように地上まで光り続け、ダイが地上に降りると同時に消えた。

 神殿の柱に寄りかかるダイは、気絶しているのか目を閉じたまま動かない。だが、小さな声で父を呼んでいた。
 行かないでと呟くダイの目から、涙がこぼれ落ちる。

 それを見たテラン王は、ルーラの出来る者を呼ぶように周囲に命じる。急いでフローラの元へ送り届けるよう、手配するテラン王。
 そんな騒ぎも知らず、ダイはただ、眠っていた――。





 北の砦。
 ベッドに寝かされたダイを、マァム、ポップ、エイミ、メルルは少し離れたところから見つめていた。
 レオナはダイの手を握りしめ、今にも泣き出しそうな顔で彼から離れない。

 それに気遣ったのか、ポップはマァムにこの場は離れようとこっそり囁き、マァムも賛成して頷いた。静かにその場を去り、扉が閉められる。

 ダイとレオナだけが取り残された部屋で、レオナは涙をポロポロとこぼしながら、ダイの手を頬ずりし、彼の生還を喜んでいた。
 しかし、眠っているダイはそれも知らないままだった。





 ポップ達はフローラのいる司令室へと移動し、ダイの無事を報告する。
 それを喜ぶフローラだが、彼女は憂い顔で手にした書類に目を落とす。良くない知らせだと、魔王軍から鏡を使った通信があったことを告げる。
 文面を読み上げ出すフローラ。






 鏡を使った通信は、世界各国で同時に通達されていた。
 ロモス王も、巨大な鏡に浮かぶ文字を見上げていた。
 ベンガーナでも、心配そうに鏡を見せる臣下の前で、ワインを片手にしたベンガーナ王がそれを悠然と見やる。
 パプニカでも、アポロとマリンを初めとした兵士達がそれを見ていた。






 魔王軍からは、あと数日で世界が滅ぶことを告げ、裏切り者であるヒュンケルとクロコダインの処刑を告知していた。
 見物に来いと、日時や場所まで知らせる挑発的な文章に、ポップやチウは悔しそうな表情を見せる。

ポップ「処刑だと!? ふざけやがって!」

マァム「ヒュンケルとクロコダインは、魔王軍の捕虜になっていたのね……」

 フローラはすっくと立ち上がり、宣言した。

フローラ「ただちに会議を始めます!」






 翌日。
 青空に浮かぶ白亜の城、バーンパレス。その内部の暗い地下室には、頑丈な鉄格子の中、鎖に繋がれ、囚われたヒュンケルとクロコダインの姿があった――。

 
 


《感想》

 ポップとマァムの遭難シーン、なぜに省いたぁあああああーーっ!?
 すごく好きなシーンだったのにぃいいいいっ。告白しようとして力尽きるポップを、必死に助けようとするマァムが好きだったのにぃっ。

 と、嘆きはさておき、冒頭のピラァ・オブ・バーンの攻撃シーンで、直接攻撃の前に全景が入ったのが嬉しかったです。緑に囲まれるような牧歌的な町並みが、いかにもロモスっぽかったです。

 爆撃を受けるシーン、原作では顔がきちんと描かれていますが、アニメではシルエットのみになっていました。……なんか、より爆破の強さが感じられて、悲痛なのですが(笑)

 フォブスターとロモス王のシーンは、アニメの改変ですね♪ しかし、ポップ達が出会う前からフローラ様の名前を思いっきり出しちゃっていますよっ。

 そもそも、今回の作戦の指導者はどう考えてもレオナだったことを思えば、ここはレオナからの命で来た方と言った方がよかったんじゃないかと思うのですが。

 世界会議まで行って作戦を立てたのに、現場の判断でいきなり指導者を変更しちゃったことになりますからねー。

 上層部にしてみれば、命令系統の混乱を招くような行動は厳禁でしょう。結果的にプラスになったとしても、後でぐちぐちと文句をつけてくるのがお偉いさんというもの……所詮、現場の苦労は偉い人には分からんのですよ(笑)

 久々の偽勇者一行の登場は嬉しいですが、でろりんの台詞が大幅カットされたのは悲しい〜。意外と戦況を見る目のあるでろりんの台詞、割と好きだったのですが。
 そして疑問なのが、オーザムという地名テロップは流れないのですね(笑)

 ロモスの街の名前はしっかりと出したのに、なぜ原作でもテロップが流れたオーザムの地名はナシなのか疑問です。

 ザボちゃんとミストバーンの会話、動きが細かくていいですね♪
 特に、ザボちゃんが黒の核晶に気づかなかったかと聞かれるシーン、頬をかく仕草や、その後、自慢そうに腕を組む仕草など、原作通りなのに妙に可愛いです。

 ポップ達の漂流シーンがカットされたのは残念ですが、倒れているマァムの黒ストッキングの破れ方が、これまた実に色っぽい!
 二人そろって、原作よりも服がボロボロになっていますね。

 しかし、ポップの台詞や表情が改変されていました。

原作ポップ(とんでもねえ女だ。おれ、考え直しちゃおうかな……)

 と、原作では呆れている感じの台詞を言っているのが好きだったのですが、アニメでは素直にマァムに感謝している感じに見えます。
 
 そして獣王遊撃隊、クマチャ、登場!
 林にいる時は黒みの強い焦げ茶で、ゲームに登場するダースリカントっぽいと思ったのですが、日が当たるところで見たら明るい茶色になっていました。
 
 まさにテディベアのような可愛らしいキャラメル色で、思っていた以上にラブリーな配色にビックリしましたよ。鳴き声も『アォーン』と、愛嬌がありますし。

 しかし、いくらチウも一緒だったとは言え、アキームさんの台詞&登場と同時にチウのテーマソングが流れると……アキームさんの曲と勘違いしてしまいそうです(笑)

 アキームさんの走り方、手を直角に曲げてキビキビ走るのがなんだか教本っぽくて笑えます。
 チウがクマチャを褒める台詞と、その直後のクマチャの反応にも改変が。

 原作では「よくやったぞ、エライ!」と読め、クマチャが嬉しそうに鳴いているだけですが、アニメではより仲良しな感じの上、クマチャの動きが人間っぽくなっていますね。

 原作ではアキーム達がポップ達に駆け寄ったシーンから後の台詞はないので、アニメでの改変は嬉しいです。
 ノヴァがさりげなく、ポップじゃなくてマァムに駆け寄っているのには注目したいところ!

 原作では、クマチャがマァムをお姫様抱っこし、ポップはノヴァに肩を借りて移動しているのですが、アニメではノヴァがマァムを運んでいるのかもと、想像する余地がありますね。

 マァムに「私が運びましょうか?」と凄まれたのをやり返して、今はボクがキミを運ぶと言い返すシーンなどが頭に浮かびます♪
 ノヴァがマァムを意識し、言い合っているのなら、ポップがそれを気にしてジト目で見ているのも納得なのですが。

 あ、でも、チウがそれを見逃すとも思えないので、騒ぎが起こりそうな感じが実にナイスです♪ 運ぶシーンがまるっとカットされ、ついでにポップ達とレオナ達の再会シーンもすっとばされたのが残念でなりませんっ。
 ポップの無事を喜ぶメルルを、見たかったのにーーっ!

 マァムの寝間着、淡いピンクになっていましたっ。女の子用の寝間着、ちゃんと用意していたのかとビックリ。
 ポップは白いシャツに、下は灰色のだぶっとしたズボンという、やけに地味なパジャマでした。

 原作ではエイミさんは、洗面器にタオルを入れた物をもって歩いていましたが、アニメではエイミさんは手を揃えて立っているだけですね。
 また、原作では普通に立っていたノヴァが、腰に手を当てて立っている姿が、なんだかえらそう(笑)

 後、原作ではこの時、すでにピラァ・オブ・バーンが落ちた場所を明確にして地図で表していたのですが、アニメでは省略されていて残念。
 後に、ピラァの落下地点からバーンの戦略が明らかになる伏線シーンなだけに、ここは地図として描写して欲しかったです。

 フローラ様、お美しい!
 それに、なんと言っても声が素敵です。包み込むような優しい声音が、実に魅力的♪

 ですが服のデザイン的に思いっきり肩幅が広がっているのに体格は華奢なせいか、少々バランスが悪く見える気が。原作ではいい感じのバランスのデザインと思ったのですが、アニメではややバランスが悪い気がします。欲を言えば、もう少し洗練された感じがほしかったかも。

 これまでのダイ大男性キャラの筋肉質な体型が、アニメのデザインになっているのには何の不満も無かったのですが、女性の鎧って難しいのかなぁと改めて思いました。

 そう言えばロード○島戦記のヒロインのデザインも肩幅が広い癖に皮鎧で、耳が極端に尖っているという独自のスタイルだったせいか、アニメ化などメディアでのイラストが落ち着くまではずいぶんと違和感があったことを思い出しましたよ。

 それまではエルフと言っても耳はほんの少し尖っているに止められるか、あるいは上に伸びる形が多かったので、初めて目にした頃は彼女のエルフ耳は独特に感じられました。

 が、彼女以降はエルフや異人種の耳が横に長いデザインが主流になり、デザインが洗練されてきて今ではすっかりと好みなのですが♪
 エルフ、大好きです! ダイ大にも登場して欲しかったですねー。

 それはさておき、フローラ様に対して姿勢を正そうとしてマァムがふらつくシーン、原作には全くない改変ですね。エイミさんが不自然な場所に居るなとは思っていましたが、この演出のためにわざわざ!

 っていうか、このマァムがふらつくシーン、なぜ付け加えたのか疑問ですが。まあ、弱っているマァムがすごく可愛いので、これはこれで目の保養です♪

 また、フローラがロカについて語るシーンでマァムを見ているシーンや、マァムが笑顔で頷くシーンなど、地味だけどいい改変ですね。
 原作ではマァムは父親のことを意識しつつも無言で聞いている印象でしたが、アニメのマァムは原作よりも感情的で、無邪気な気がします。

 若き日のフローラ様、旧アニメのレオナに見えてなりません(笑)
 騎士の鎧が、紺と銀色だったのは、イマイチ地味な色彩でがっかり。他のカール騎士団と同じ色合いとは言え、せっかくの女性将軍ならもっと派手な色でも良かった気がします。

 フローラ様のドレス、淡いオレンジ色でこちらもいまいちなイメージが。この色合いだと、せっかくの金髪が引き立たないと思うんですけど!?
 これなら、ピンクのドレスの方がよっぽど華やいだのにと思っちゃいましたよ。

 アバンの台詞にみんなが吹き出すシーン、原作ではみんなが呆れ、真っ先にロカが笑いを堪え、その後他の人達に笑いが伝播し、最後にはフローラまで笑い出すという順番でした。
 
 アニメでは、笑い出したのが名も無い兵士や臣下だったのが、ちょっと不満。できるなら、フローラに真っ先に笑って欲しかったです。王女が笑うことで、周囲に影響を与えて欲しかったですね。

 どちらかというとロカに我慢に我慢した挙げ句に最後に笑うか、もしくは最初にうっかり笑ってしまった後で口を押さえるかであって欲しかったのですが……とりあえず、笑った瞬間のフローラがすごく可愛らしくて、笑うアバンと兵士達の図もいい感じでした。水彩画風のほのぼのとした塗りが、すっごくグッドでしたよ♪

 フローラの話を聞いているポップとマァム、身体の向きを完全にフローラへと向けているのもアニメの改変ですね。
 原作ではポップもマァムもベッドの上で座ったまま、顔だけをフローラに向けている感じでしたが、アニメでは二人とも座り方を変えて完全にフローラの方を向いていました。

 ポップがあぐらをかいているのに対し、マァムはきちんと正座している辺りが行儀の良さの差って感じがします。

 ポップとマァムがやる気を取り戻すシーン、ポップが「へへっ」と笑うシーンで見せる一瞬の笑顔、すごくよかったです! 笑ってから、やる気のある表情を見せる変化が、実にいいですねえ。

 ところで、ポップがフローラについて語ってマァム達を怒らせるシーン、アニメでは随分改変されていますね。
 原作では、ポップはフローラがアバンの恋人なら30近いだろうにそんな風に見えないと発言しています。つまり、女性の年齢に対してあれこれ言っているんですよね。

 それに対し、マァム達は「失礼なことゆーーなっ!」と怒っています。
 怒りの余り、石畳な床を崩してポップを埋め込んでしまうぐらい、怒っています(笑)

 アニメではポップは、フローラ様の大人の魅力にデレデレしていますが、はたしてどっちが失礼かは大いに疑問ですね。

 バウスン将軍のセリフも、やや改変されています。
 原作で、リンガイアが攻撃されていると知ってノヴァがショックを受けているカットが好きだったのですが、アニメでは省略されちゃってガッカリです。

 バーン様が味気ないとぼやくシーン、原作では左手で酒杯を扱っていましたが、アニメでは右手になっていました。
 それにしても、ワイングラスを揺らして香りを楽しむにしても、揺らし方が派手すぎませんか、バーン様?(笑) 

 キルバーンの占い、トランプの動きが派手でいいですね。
 原作と同じ動きのはずですが、アニメだと一段と派手に見えます。

 テラン王が窓際に行くシーン、原作では杖をついて腕を支えて貰う程度であり、窓は自分で開けていました。
 が、アニメではがっつり肩を借りて寄りかかっており、窓もすでに開いていました。
 テラン王、アニメの方が病弱度が増していませんか!?

 聖母竜……なんだか……絵がごつい……。もう少し、もう少しだけでもなんとかならなかったものか(涙)

 首が太くて短く、腕が筋肉質で発達しすぎているのが気に入りません。もう少し優美なデザインに改良して欲しかったですよー。飛んでいる時はあんなに優美に見えたのにっ。

 原作のデザインに沿っていると言えば沿っているのですが、漫画では違和感なく見えた聖母竜が、アニメでは筋肉質に見えてしまうのが不思議です。
 いや、色合いと、硬質でいて理知的な声音は申し分無く気に入ったのですが。

 それにしても、聖母竜の説明で「邪悪な力によって生命がつきようとしている〜」の部分がカットされなかったのは、感激ですよっ。
 ここは魔界編に繋がる伏線とされていた説明でしたし、ダイ大魔界編を意識した台詞がアニメでも取り上げられたと言うことは、希望があるってことですよね!

 マザードラゴンに説得されるダイも、バランとの別れの際のダイも、ひどく弱っている感じで可哀相。
 ようやく父さんと呼べるようになったのに、お別れなシーンが泣けてきます。

 テラン湖に降りたダイもまた、幼い感じで可愛いです。
 しかし、原作ではここでナバラさんが登場していたはずなのに、出番がカットされていますね(笑)

 ダイが生還し、皆がそれを喜ぶシーン。
 原作通りと言えば原作通りなのですが、もうちょっと改変が欲しかったですよーっ。ポップ達が後から駆けつけてきたが、レオナを気遣って下がるとか、逆にポップ達が先にダイの側にいたのに後から来たレオナが、他の人など目に入らない様子でダイに駆け寄るシーンとか、見たかったです。

 ついでに言うなら、アニメではゴメちゃんとチウが欠けていましたね(笑)
 でも、フローラ様の部屋に行くシーンではチウはしっかりと出てくるので、下にいて見えなかっただけかも。ゴメちゃんはやっぱり、いないのが悲しいですけど。
 
 鏡文字を見た時の各国の王達の反応で、ベンガーナ王の意外な度量の大きさが好きだったのに、思いっきり省略されていて残念でなりませんっ。
 あれでは、鏡文字を直視しない呑兵衛じゃないですか……っ(笑)

 ヒュンケル達の処刑を聞いた直後の、ポップ達の反応はアニメの改変ですね。そこを作り込んでくれたのは、嬉しいです♪

 しかし、予告を見て気がつきましたが、ヒュンケル達が囚われているバーンパレスを表現するのに一度青空を映し出していますが、会議がすぐ開かれてダイが目覚めることを考えれば、夜空でもよかったような気が。
 いや、それともダイが一日、眠っていた……という解釈なんですかね?

 次回予告では、ダイが落ちこんでいるカットが全くないので、予告内容と絵があっていない気がします(笑)
 いや、ここはダイが逃げたシーンを入れて、焦ったり心配するみんなのカットを中心に入れる方が、次回への引きになりそうだと思うのですが。

 でも、原作屈指のお気に入り回なだけに、期待はうなぎ登り♪
 原作通りの月夜の散歩ではなく、ダイとポップというタイトルにジーンとしました。

60に進む
58に戻る
アニメ道場に戻る
トップに戻る

inserted by FC2 system