『暗黒のヒュンケル』(2021.1.15)

  
 

《粗筋》
 
 不気味な駆動音を立てて、バーンパレスが青空を飛ぶ。鳥に似た異形な姿は、下から見上げると太陽と重なってみた。
 そして、バーンパレスの真下には十字架に貼り付けにされたヒュンケルとクロコダインの姿があった。

 二人とも手を広げた形で拘束され、足首も鎖付きの脚輪で戒められている。
 無残な姿だが、二人はそれでも堂々と胸を張って前を見ていた。

 そんな彼らのいる処刑場は、四方に柱が設置された正方形の白い石で作られおり、鎧系怪物達がきちんと列を成して彼らを取り囲んでいる。

 その様子を、周囲の岩穴から観察しているのはフローラとメルル、それにカールの兵士達だった。
 別の岩穴には、チウや遊撃隊、ロモスの武術メンバーがいた。その中には、槍を大切そうに抱えたエイミも混じっていた。

 ヒュンケルをひたすらに案じるエイミに、クロコダインを助けると息巻くチウ。ゴメちゃんも気合いを入れて、ピィと鳴く。

 アキームとバウスン将軍は別の穴に、ノヴァとロン・ベルクもさらに別の穴にいた。四箇所に別れ、潜んでいる計算だ。

 誰もが不安そうにヒュンケル達に注目する中、ロン・ベルクは無関心そうに風に背を預けて佇み、目を閉じていた。
 だが、その目が突然開き、「止まった」と発言する。

 見上げれば、バーンパレスがその動きを止めていた。
 移動していた時の音が途絶えたが、翼が風を切る音のような、先程よりも静かな音を立てている。

 そして、バーンパレス内の王間には酒杯を片手にしたバーンと、キルバーンがいた。彼らは、水晶玉越しにヒュンケル達の様子を眺めている。
 バーンは光が溢れる天井のモザイク画に向けて、まるで乾杯でもするかのように高く杯を掲げる。

 ちょうど、正午になった時、ミストバーンが処刑場に降り立った。
 彼の姿を見て、睨みつけるヒュンケルとクロコダイン。






 一方、フローラはメルルに敵の数の確認させていた。
 目を瞑り、真剣な表情で感知能力を高めるメルル。ミストバーンと鎧のモンスターを全部合わせて、36体。
 バーンパレス内には恐ろしい程の気配は感じるが、地上にいるのはそれだけだけという。

 自分達でも相手に出来る数だと考えるフローラだが、ミストバーンだけは別格だと警戒していた。







 一方、クロコダインは懐から黒い霧の立ち上る不気味な杯を取り出した。
 牢の中で誘いをかけたように、暗黒闘気を飲み干して配下になるか否か、答えを迫るミストバーン。

 それに対し、ヒュンケルは答えを知りたければ自由にしろと挑発する。
 意外にも機嫌良さそうに笑ったミストバーンは、軽く手を振って見せた。それだけで、ヒュンケルを戒めていた枷は砕け散る。

 自由の身になったヒュンケルは、支えが無くなったせいかその場にがっくりと崩れ込み、膝をついた。
 そんなヒュンケルの眼前に、杯を差し出すミストバーン。念を押すミストバーンの手から、杯を受けとるヒュンケル。

 じっと手の中の杯を見つめるヒュンケルに、クロコダインは止めるようにと叫ぶ。だが、ヒュンケルは意を決したように一息にそれを飲み干してしまった。

 絶叫するように、ヒュンケルの名を叫ぶクロコダイン。
 杯を飲み干したヒュンケルは、苦しげにクロコダインに告げる。オレの言葉をわすれないでくれ、と――しかし、それを言い終える前にヒュンケルの手から力が抜け落ち、杯が地面に落ちて砕け散った。

 その光景をみて、衝撃を受けるフローラ達。
 そして、ヒュンケルは突然、頭を抱え込んでうめきだした。苦しそうに叫び、身をよじるヒュンケルからは、杯が発していたのと同じ黒い靄状のものが漂い出す。

 その苦しみようは尋常ではなかった。
 異様な光に目を滾らせ、吠え立てるヒュンケルの身体は筋肉がはち切れんばかりに盛り上がり、巻いていた包帯が千切れ飛ぶ。

 苦痛に吠えるヒュンケルに対して、ミストバーンは淡々と語る。
 彼は、ヒュンケルが自分に従ったふりをしてこの場を凌ごうとしていたのを見抜いていた。

 だが、暗黒闘気はそんな生やさしい物ではないと言い、本人の意志とは無関係におまえは自分のものだと言い切るミストバーン。
 叫び続けるヒュンケルには、その言葉は耳に届いているかどうかも定かではない。

 噴き上がる暗黒闘気に髪が逆立ち、見る見るうちに黒く染まっていく。やがて、暗黒闘気が一旦落ち着いたのか、ヒュンケルは叫ぶのを止めた。
 だが、肩で息をしながらふらついているヒュンケルの銀髪は、漆黒に染まっていた。

 表情も一変し、憎しみにギラついた目には光は見えない。かつてのハドラーがそうだったように、左目を横切る傷跡めいた入れ墨が浮かび上がっていた。







 アキームやノヴァは、ヒュンケルの変貌に驚きを隠せない。
 メルルはヒュンケルの変化が、暗黒闘気によるものだと正確に見抜いていた。
 アバンの使徒ででありながら自ら悪の影響を受け入れたのかと、驚くフローラ。







 驚いていたのは、クロコダインも同じだった。
 顔立ちは同じでも、髪が黒く染まり、淀んだ目には光が全くないヒュンケルは、別人としか思えない。

 そんなヒュンケルに対し、ミストバーンはいつになく饒舌に語りかける。
 人の首をはねろを言われたら、まるで花を摘むようにたやすく行えそうな気がするだろうと語るミストバーンに、ヒュンケルは何の反論もしない。

 ヒュンケルが元の鞘に戻ったと満足げなミストバーンに、そんなはずはないと食い下がるクロコダイン。
 
 だが、ミストバーンはクロコダイン自身の目で闘気を確かめろと言う。
 闘気に集中したクロコダインの目には、ヒュンケルが圧倒的な暗黒闘気で覆い尽くされ、胸に一欠片だけかすかな光の闘気が揺らいでいるのが見えた。
 しかも、その光は今にも闇に食われそうだった。

 荒い息をついているヒュンケルに、ミストバーンは彼の失敗をことさら上げ連ねる。
 暗黒闘気を受け入れても、自分の光の闘気でなんとかできると思いあがった愚か者と決めつける。

 それを聞いて、クロコダインは辛そうに目を伏せる。
 ヒュンケルの最後の賭けが失敗してしまったと、嘆くクロコダイン。

 苦しそうなヒュンケルに対し、ミストバーンは暗黒闘気が身体の傷をすべて癒やしたはずなのに苦しむのは、体内に良心を残しているのが原因だという。
 完璧な戦士に戻る方法として、ミストバーンは衣の下から一振りの剣を取り出す。

 それでクロコダインを処刑するように命じるミストバーン。
 己の手でかつての仲間を処刑することで、彼に残された最後の良心を消し去り、完全なる暗黒剣士に戻れるのだと言う。

 差し出された剣を、素直に受けとるヒュンケル。 
 剣を構えてクロコダインに向き直る彼には、微塵の迷いも感じられない。
 だが、クロコダインの方は動揺し、信じられないとばかりに彼の名を呼ぶ。それに対して、ヒュンケルは反応しない。
 そんなヒュンケルを、クロコダインはただ、黙って見返していた。







 それを見ていたエイミは、走り出そうとした。が、チウはとっさに彼女を抱き留める。チウの尻尾を掴み、引っ張って援護するのはフォブスターだ。
 チウやゴメスは、ダイ達が二人を助け出してから雪崩れ込む作戦だからとエイミをなだめようとするが、エイミはダイ君達でもあれでは二人を救えないと言う。

 さすがにそれには反論できず、息をのんでわずかに目をそらすゴメスとフォブスター。

ノヴァ「くそっ……!」
 
 別の洞窟では、ノヴァが悔しそうに岩壁を叩いていた。それに対し、ロン・ベルクは何も言わず、ただ見ているだけだ。






 剣を構えるヒュンケルを前にして、クロコダインは今や彼が完全に敵になったと瞑目する。
 だが、自分で自分の弱気を、クロコダインは強く否定した。

 思い出すのは、牢の中で何があっても自分を信じてくれと言ったヒュンケルのことだった。
 ヒュンケルがまだ戦っていると考え、信じようと決めたクロコダインは、暗黒闘気に負けるなと、声に出してヒュンケルを励ましだした。

 その声に、わずかに反応を見せるヒュンケル。
 しかし、ミストバーンはそんな迷いを許さないとばかりに、殺すようにと命令を下す。
 剣を握り直すヒュンケルだが、その手がかすかに震えだした。

 そんな彼に対し、クロコダインはありったけの信頼をぶつける。
 殺されたとしてもヒュンケルを信じ抜くという強い決意のまま、暗黒の心と戦うように呼びかけるクロコダインと、仲間を殺せと命じるミストバーンの呼びかけがヒュンケルにぶつけられる。

 真逆の呼びかけに、またも頭を抱えて呻き始めるヒュンケル。
 再び雄叫びを上げだしたヒュンケルの身体は、今度は純白に光り出した。噴き上がる強い闘気に、ミストバーンでさえ驚きを見せる。

 闘気の奔流が収まった後には、本来の髪の色に戻ったヒュンケルの姿があった。だが、全身から靄のようなものを立ち上らせたヒュンケルは白目を剥いており、そのまま前にバッタリと倒れ込んでしまう。






 倒れたヒュンケルを見て、悲痛に呼びかけるエイミ。







 同じく、倒れたヒュンケルを見て、ミストバーンは淡々と「死んだか……」と呟く。
 さすがに動揺するクロコダイン。
 






 エイミはそれを聞いて、目から涙を溢れさせる。
 バウスン将軍達も、驚きに目を見張るばかりだった。







 ミストバーンは、暗黒闘気を受け入れずに自滅したヒュンケルをこき下ろす。その声音には、仮にも弟子と呼んだ者を失った悲しみは全く感じられなかった。






 ヒュンケルの生命エネルギーが消えてしまったと嘆くメルルに、フローラは目を閉じて、深く絶望する。
 これでもう、自分達は五人のアバンの使徒を揃えることは出来ない、と――。






 ノヴァは未だに姿を見せないダイ達に苛立ち、我慢できないと背負った剣の柄に手をかける。
 だが、ロン・ベルクはその手を掴んで止める。

 放せと逆らうノヴァだが、ロン・ベルクの手は微動だにしない。彼は落ち着き払った口調で、ダイ達が出てこないのはヒュンケルを知り抜いているからだと説明する。







 処刑場では、ヒュンケルの落とした剣をミストバーンが拾い上げたところだった。その剣をクロコダインに向け、冥土の道連れを増やしてやると言った。
 それに対し、クロコダイン不満も命乞いも口にしない。
 ただ、目を閉じて、心の中でヒュンケルの名を呼ぶだけだった。

 クロコダインを殺すため、一歩足を踏み出すミストバーン。が、その足首をヒュンケルの手が鷲掴んだ。
 死んだと思っていた男の動きに、珍しくも驚きを露わにするミストバーン。
 だが、ヒュンケルは腕をつき、当然のように起き上がってきた。

ヒュンケル「いい気分で目覚めたよ……ミストバーン。今ならおまえの首でも、簡単に落とせそうな気がする……まるで……花を摘むようにな」

 不敵な笑みを浮かべてそう言ったヒュンケルの目は、本来の強さや光をしっかりと取り戻していた――。






 ヒュンケルが生き返ったと、エイミは声を潤ませて、チウは両手ガッツポーズを取りながら叫んだ。






 一方、ミストバーンは生命エネルギーが完全に途絶えたはずのヒュンケルが生きていることに混乱していた。
 ヒュンケルは腕にさらに力を込めてミストバーンの足を握りしめながら、自分の中には光と闇、二つの闘気が戦っていたことを暴露する。途絶えたのは闇の闘気だとこともなげに答えたヒュンケルは、それを証明するかのように光の問う気をみなぎらせ出した。

 まばゆさに驚くミストバーンを、ヒュンケルは光の闘気で弾き飛ばした。処刑台を取り巻く鎧系モンスターのところへ、吹っ飛ばされるミストバーン。

 処刑台の上では、これ以上無いほど光り輝くヒュンケルの姿があった。そのまばゆさに、仲間達までもが目を見張る。
 なぜ、ここまで光の闘気がと問うミストバーンに対し、ヒュンケルは答える。

 暗黒闘気により、一度は消滅されそうになったヒュンケルだが、悪に負けまいとする心が光の闘気を強くした。
 それを最初から狙っていたのかと、激昂するミストバーン。

 ヒュンケルは以前、ミストバーンに悪の闘気を捨ててから弱くなったと言われたことを覚えていた。

 悪の剣士だった頃は正義を憎み、正義に目覚めてからは悪を憎むことで、それぞれの闘気を爆発的に高める――それこそが自分の力の根源だと悟ったヒュンケルは、敢えて暗黒闘気を受け入れることでより強くなることが出来るチャンスだと考えた。

 ヒュンケルの光の闘気が自分の暗黒闘気を上回ったと言っているような説明に、激怒するミストバーン。
 だが、ヒュンケルはどこまでも冷静に、自分の目で確かめろと言う。

 集中したミストバーンの目に、先程とは全く逆に、ヒュンケルの体内に圧倒する光の闘気の中、今にも消えそうに揺らいでいるかすかな暗黒闘気が見える。

 それが我慢できないとばかりに、ミストバーンは手の爪をひとまとめにして打ちだし、ヒュンケルの胸を貫こうとした。
 だが、鎧さえ身につけていないのに、必殺のヒュート・デストリンガーはヒュンケルの胸板に食い止められ、皮一枚も傷つけることは出来ない。

 全身から光の闘気を溢れさせるヒュンケルは、ミストバーンの爪を握りしめたかと思うと、力を込めてそれを引き寄せた。
 巨大な魚を一本釣りするようにミストバーンを引き寄せたヒュンケルは、その顔面に拳を叩きつける。

 再び、鎧系モンスターのところまで弾き飛ばされるミストバーン。
 その時になって、ようやく鎧系モンスターが動き出した。そろった動きでヒュンケルの方へと向かってくるモンスター達。

 だが、ヒュンケルは自分から先に飛び出して攻撃に打って出た。
 ヒュンケルの放った手刀は、あっさりと鎧の背中まで貫通する。

クロコダイン「おおーっ、素手でさまよう鎧をっ!」

 近づいてきたモンスターの顎を掴み、一瞬で下まで引き裂くヒュンケル。素手にも関わらず、金属製の鎧を紙のように容易く引き裂いた。
 続いて、身体をひねって近くにいたモンスターに回し蹴りを喰らわせる。切れ味の鋭い刃物で斬られたように、モンスターは真横に両断された。
 崩れ落ち、バラバラに壊れるモンスター。






 その様子を、エイミ達の集まる洞窟からみんなが見ていた。
 腕を腰に当て、胸を張った姿勢で、ブロキーナ老師ならぬビースト君は、ヒュンケルが想像以上のパワーアップを果たしたことを語る。
 
 最初からヒュンケルの意図を見抜いていたのかと、師に問うチウ。
 それを肯定するビースト君。

 危険な賭けだとは思ったが、成功して良かったと喜んでいる。彼らもきっと、そう思っているだろうと言うビースト君に、『彼ら』とは誰かと尋ねるチウ。






 顔を押さえ、怒りに燃えるミストバーン。
 ヒュンケルは一旦クロコダインのところへと戻る。ヒュンケルの無茶さを咎めるようなことを言いながらも、クロコダインの目には涙が滲んでいた。

 そんなクロコダインに、ヒュンケルはすぐに片付けて自由にしてやると約束する。その口調は、心なしか優しさが感じられた。

 怒りに吠えるミストバーン。
 ヒュンケル達二人を八つ裂きにすると叫ぶその白い衣の中には、うっすらとだか人の顔が浮かび上がっていた。

 しかし、ヒュンケルは挑発的に言い返す。

ヒュンケル「オレ達ふたり……? ミストバーン、貴様、逆上すると足下も見えなくなるらしいな」

 どこからか響く、地響き。
 不意に、ヒュンケルとミストバーンの間の地面が裂けた。それに巻き込まれた鎧系モンスター達は、爆発的な光と共に瓦礫となって吹き飛ばされる。
 光の中、砕け散っていくモンスター達。

 その光に押され、ミストバーンは今度は崖に叩きつけられた。
 その彼の目の前で、手を高く上に突き上げた姿勢のダイがいた。
 驚きの表情でそれを見ていたヒュンケルとクロコダインだが、それはすぐに笑顔へと取って代わる。
 地面に降り立ったダイを、驚きの目で見つめるミストバーン。







 その様子を、バーンも水晶玉を通して見ていた。
 生きておったのかと呟くバーンに、キルバーンは得意げに、自分のカード占いは外れたことがないと言ってのける。

 バーンはダイを見て、この前とは別人のように覇気があると見て取った。口元に笑みを浮かべるバーンは、あたかもダイの居直りを歓迎しているかのようだった。






 地上では、クロコダインがダイに呼びかけていた。
 肩越しに振り返り、にこりと笑って頷くダイ。その時、わずかな音と同時にマァムとレオナを抱きかかえたポップがその場にやってきた。
 ポップやマァムだけでなく、レオナ姫まで来たことに驚くクロコダイン。

 ポップは笑いながらレオナを地面に下ろし、クロコダイン流の地底移動の技だと得意げに言う。どうやら、穴を掘ったのはポップの火炎呪文のようだ。

マァム「今、外すから!」

 クロコダインに駆け寄ったマァムは、その勢いのまま拳を彼の手首の枷に打ち付ける。

マァム「はぁああっ!」
 
 その一撃で、見事に手枷は砕け散った。続いて、マァムの蹴りが足枷も砕く。それを見て、ため息をつくクロコダイン。
 ダイは大きく後ろへ後方宙返りを決め、処刑台の上に飛び乗ってきた。

 そんなダイを褒めるように、ヒュンケルはよく飛び出さなかったなと声をかける。
 ダイは、ヒュンケルの中の光の闘気が強くなるのが、すぐに分かったという。だから、地中から攻める作戦に切り替えたのだと嬉しそうに言うダイに、自分を信じてくれたことへ礼を告げるヒュンケル。







 この時、生き延びていた鎧系モンスター達は、一斉にミストバーンの元へと走りより、集結していた。







 ヒュンケルを信じていたのは、ダイだけではないと告げ、目線でそれを知らせるように後ろを見ながら目を伏せるレオナ。
 そこには、心配そうな顔をしたマァムの姿があった。

 そんなマァムに変わって、ちょっと不機嫌そうなポップが事情を話す。
 人相が変わった段階で、自分達は焦って飛び込もうとしたが、マァムがそれとを止めたのだ、と。

 ヒュンケルが何の勝算もなくああするとは思えないし、彼を信じて様子を見るように言ったマァム――それを、面白くなさそうな顔で打ち明けるポップ。

マァム「正解だったでしょう?」

 そう言って微笑もうとしたマァムの目からは、ついに涙がこぼれ落ちる。
 ヒュンケルは嬉しそうに頷き、生涯、光の力で戦うことを誓ったことを口にする。
 余人に入り込めない二人のやり取りを、頬をかきながら後ろで見ているポップ。







 その時、倒れていた鎧系怪物達が金属音を立てながら起き上がろうとしていた。
 いち早くそれに気づき、まだ動ける奴らがいるようだと檄を飛ばすクロコダイン。

 一体のモンスターが、ダイのお株を奪うような高々としたジャンプを決めて襲いかかってきた。
 が、モンスターに剣が突き刺さり、彼はあえなく落下する。

 そのモンスターの側に降り立ち、剣を抜いたのはノヴァだった。
 
ノヴァ「しびれをきらせたぞ、ダイ。みんな、爆発寸前だ!」

 その言葉が終わるか終わらないかかのうちに、雄叫びを共に大勢の戦士達が一斉に飛び出してきた。崖に近い坂道をものともせず、土煙を上げ、雄叫びを上げながら走り込んでくる戦士達。
 その中にはロン・ベルクやアキームも混じっていた。

 ゴメスは水にでも飛び込む勢いで、洞穴から飛び出した。バダックやチウ、遊撃隊メンバーも突撃する。
 処刑台のある平地に降り立った戦士達は、鎧系モンスター達と激しい剣戟を始めた。

 鬱憤晴らしに大暴れしてくると、余裕たっぷりにウインクするノヴァ。ダイはそれに元気よく頷いて送り出すが、クロコダインはなぜ彼らに戦いを任せるのかと疑問に思う。

 話すと長いと、説明に困った風な様子を見せるポップ。
 レオナはヒュンケルにアバンのしるしをもっているか、尋ねる。これだけは手放さないと、ズボンからしるしを取り出すヒュンケル。

 レオナはそれを握って、心に思いを描くようにと指示する。戸惑うヒュンケルに丁寧に説明するレオナの話を聞きながら、ポップは息をのむ。
 ヒュンケルが出来ないなら、自分もしょうがない――そんな風にヒュンケルの石が光らないことを期待していたことに気づき、自責の念に駆られるポップ。
 
 ヒュンケルは目を瞑り、言われるままにアバンのしるしを握り込む。その様子を、不安そうに見つめるポップ。
 程なく、ヒュンケルの手の中から紫がかった光が強く輝きだした。さすがに驚くヒュンケルとクロコダイン。
 ダイは、その光に見とれるように目を見開いていた。

 レオナはヒュンケルの闘志がアバンのしるしに呼応したことを喜び、五人の使徒と五つのしるしがそろったと言い、ミナカトールの完成を確信する。
 だが、レオナの後ろでは、ポップが顔を強ばらせて立ち尽くしていた。






 空中に元気よく飛び上がったチウは、回転した勢いのまま鎧系モンスターに跳び蹴りをかます。その隣では、クマチャが豪腕をふるっていた。
 人間達が必死に戦う中、岩壁に叩きつけられたミストバーンは、まだその場にとどまっていた。

 ダメージを受け、動けなかったのではない。
 ダイやヒュンケルへの怒りに震えるミストバーンは、屈辱に打ち震え、手近な岩に爪を食い込ませていた。

 鋭い爪が岩に食い込んで傷跡を残すが、そんな物で気が晴れるはずもない。拳を握り込み、岩を叩くミストバーン。
 ずっと手にしたままの剣を手に荒れ狂うミストバーンに対して、バーンより念話がかけられる。

 動揺しているミストバーンを言葉だけでなだめ、落ち着きを取り戻させるバーン。
 その上でバーンは、自分に刃向かう者に地獄を味合わせるように命じた。

 バーンに謝罪したミストバーンは、すでに落ち着きを取り戻していた。命令をすぐさま実行しようと、まとめて全員を千切るために広範囲の闘魔滅砕陣を放つ。
 ミストバーンの足下から、蜘蛛の巣を思わせる紫色の光が伸びる。

 が、その光が獲物を絡め取るよりも早く、地面に突き立てられた剣が滅砕陣を消滅させた。
 息をのむミストバーン。

 土煙に紛れてよくは見えないが、長身の男が投げた剣の方へゆっくりと歩み寄ってくる。近づくにつれ、その姿はよく見えるようになっていく。

ロン・ベルク「あいつらには、やることがある。おまえには、用はないとさ……遊びたいなら、オレが遊んでやるぞ……ミストバーン」

 剣を拾い上げて、近づいてくるロン・ベルクの姿を見たミストバーンが、はっきりとした動揺を見せる。

ミストバーン「お……おまえは……」

 ミストバーンの真正面に、ロン・ベルクは剣を手に向かい合った。


《感想》

 ダークヒュンケル、なんて無双状態ッ(笑)
 ヒュンケルが髪を黒く染め上げるシーン、ダークなスーパーサイヤ人かと思っちゃいましたよ。
 ああ、でも、黒髪なヒュンケルの方が外見的には好みかも……っ。基本的に、筆者は黒髪好みなんですよね〜(←ものすごくどうでもいい情報)

 それはさておき、処刑場の場面でクルクルと視点が回り込む演出は妙にかっこよかったです♪ CG技術の進歩って、すごいですね。

 後、僧侶の胸の十字架や、ザオラルをかける時の十字架も修正されていたので、貼り付けシーンにも修正が入るかなと思いましたが、ここはいいみたいですね。修正の意図と目安が、本気で分かりません。
 
 フローラ達が複数の班に分かれ、岩穴に潜んで様子を伺うのは原作通りですが、アニメでは原作よりももっと深く岩穴の中に入り込んで隠れている感じですね。原作だと、外から丸見えな印象だったので(笑)

 メルルが目を閉じて敵を察知するシーン、毅然とした表情がいつにない凜々しさがあって良かったです。メルルは気弱そうな表情の時が多いのですが、たまに凜々しい表情をするのもいいですね。

 ヒュンケルが暗黒闘気にのたうつシーン、なんだか時間をかけてたっぷりと見せていますね(笑)
 しかし、ミストバーンの衣って暗黒闘気入りの杯が入っていたり、長剣が入っていたりと、中がどうなっているのかすごく気になります。

 エイミさんが飛び誘うとするシーン、チウとフォブスターが止めているのは原作通りですが、非力な大ネズミと魔法使いに任せていないで、ここは怪力のゴメスが引き留めるべきだったような気が(笑)

 感心したのが、この時のチウ以下のメンバーの声。
 ちゃんと、囁き声というか抑えた声で会話していました。原作だと普通に騒いでいる感じで見付からない心配になりましたが、アニメでは声の演技で彼らの潜伏への気遣いを見事に表現しています。

ノヴァが壁を叩くシーン、改変されていますね。

原作ノヴァ「ど……っ、どうしたらいいんだっ!!」

 ノヴァの場合、たいして意味のあるセリフを言っているわけでもないので、略しちゃうのもアリでしょう。

 今回はノリノリなミストバーンと、友情をどこまでも信じ抜くクロコダインのセリフの対比がいいですね。
 ヒュンケルは出番が多い割には、息づかいとか叫びが多くて、声優さんが大変そうだと思ってしまいました。

 ヒュンケルがミストバーンの脚を掴むシーン、腕の血管がピキピキ言うほど強く浮き上がっていたのは、アニメの改変ですね。
 原作では黒ヒュンケルに変身前後に血管が目立ったぐらいで、後は至って普通でした。

 でも、アニメではヒュンケルの筋肉増量や血管描写をやたら丁寧に行っています。……女性のお色気シーンは徹底排除なのに、男性の筋肉美は追求しても良かったとは(笑)

 ヒュンケルとミストバーンの説明、すごく長いのにほぼそのまま使っていますね。

 しかし、さすがに説明ばかりで絵面が動かないのはどうかと思ったのか、ヒュンケルが自分が悪の戦士だった時と説明するときには魔剣戦士の時のアムド化したヒュンケルを、正義の時には今のヒュンケルを、それぞれ横顔で正反対を向かせる演出はかっこよかったです♪

 魔槍のアムドがすでにスタンダードになっているので、魔剣ヒュンケルがなんだか懐かしかったですよ。

 ヒュンケルの胸にミストバーンの爪が食い込むシーン、原作では背中側からの演出だったので直撃シーンはありませんでしたが、アニメではバッチリ真正面からでした!

 原作ではほんの僅か、爪の先が胸に刺さったような表現でしたが、アニメでは完全に弾かれています。
 しかも、原作では爪の先がバラバラだったのに、アニメでは一つにまとめられ、突進力を高めている感じなのに無傷でした。……どんだけ、闘気で身体を硬くしていたのやら。

 ミストバーンを引き寄せるシーン、鰹の一本釣りに見えて仕方がありませんでした(笑)
 引き寄せられるミストバーン、アニメではぐるりと一回転させられていますね。

 ミストバーンへの顔面パンチのシーン、殴った瞬間に一瞬動きを止め、それから振り切って殴らせる演出がよかったです。本当に格闘シーンには半端ない拘りを感じますよ。

 ヒュンケルが鎧モンスターを倒した時のクロコダインの台詞が、改変されています。

原作クロコダイン「おおーっ、素手で鋼鉄兵士を……っ!!」

 鋼鉄兵士なんて怪物はダイ大連載当時はいませんでしたし、今もいません(多分) さまよう鎧は当時からいたモンスターなので、実際の登場モンスターに寄せていますね。

 チウの台詞は、一部カットされていました。
 これが、ヒュンケルとチウの格差というものでしょうか(笑)

 ダイの登場シーン、原作では地面の中から登場するだけでしたが、アニメでは地面を裂いて空中高く飛び上がるという、より派手な登場になっています。まるでガゼルパンチ♪

 パンチを放った後に地上に降りた時も、目を閉じたまま高く手を突き上げた姿勢が、妙にカッコイイです。『○ングにかけろ』でよく見た光景ですね(笑)

 しかし、水晶玉越しに見えるダイの画像にはには一言、文句を言いたいです!
 なんだか、手足のバランスが妙に悪く見えるんですが!? 腕の太さや体つきが妙にずんぐりして成人の体つきに、子供の顔をのせたようなバランスの悪さを感じます。

 バーン様がダイの居直りを喜ぶシーン、口元のアップでニヤリとさせてからの顔のアップは、素晴らしくかっこよかったです。
 
 ポップ、マァム、レオナがルーラで登場するシーン……ここの作画にももの申したいですよっ。

 なんか……っ、なんか、線が荒いというか、描き込みが足りていない感じ出します! それに、影の指定を細かいところまできちんと入れていないせいか、色合いも今一歩。

 まだ、この三人だけならともかく、背景にいるヒュンケルとクロコダインの方の線画や塗りは普通なのに、手前側にいる三人が雑なので差が目立つのが悲しいです〜。
 次のシーンの絵では普通に戻っているので、ルーラの一瞬だけの不満でしたけど。
 
 マァムがクロコダインの手枷をこの時点で壊すのは、アニメの改変です。
 原作ではロン・ベルクとミストバーン戦が始まった後、ミナカトールの説明をヒュンケル達に話す時に枷を壊しています。

 枷を壊していたのはやっぱりマァムですが、原作では走って勢いをつける描写はなくて、その場に突っ立って姿勢からのパンチで壊していました(笑)

 ダイとレオナの台詞の合間で、さまよう鎧達がミストバーンのところに集まるのは、アニメの改変ですね。原作のさまよう鎧達は、ミストバーンにそこまで忠実じゃないです。っていうか、ほぼ彼を無視して行動していましたが(笑)

 ヒュンケルと再会した時のマァムの表情、アニメでは心配そうな感じで、今にも泣き出しそうなのを我慢しているように目を潤ませていました。

 原作では、この時のマァムはわずかに眉を寄せつつも、口元には微笑みを浮かべていて聖母風だったことを思えば、アニメのマァムは普通の少女らしさを強調しているように見えます。
 どちらも可愛いので、どっちでもよし!

 しかし、マァムとヒュンケルが見つめ合う中、ポップとレオナがそろって目を閉じて、同じ方向を見てそっぽを向いているシーンになっていたのには笑っちゃいました。

 マァムがヒュンケルを信じるセリフの回想シーン、いいですねえ。
 辛そうに目を伏せるマァムの憂い顔から、顔を上げて微笑む表情の変化が実にいいです!
 その後の、ヒュンケルの前で涙をこぼすシーンもいい感じ。

 しかし、さまよう鎧の大ジャンプは原作にもあるシーンとは言え、アニメでは一貫してゲームデザインに沿った丸っこい感じなので、どうしても可愛さが先に立つ気がします。
 原作では、人間系モンスター達は大抵は人に近い頭身なのですが、アニメはDQ1〜3のデザインにすごく拘っていますね。

 隠れていたみんなが一斉に戦うに打ってでるシーン、オープニングが実現したみたいで嬉しくなりました。
 でも、野暮を承知で一言言いたいです……坂道を駆け降りる時は武器を掲げると危ないので、下に降りてから抜刀した方がよくはないですか?(笑)

 ポップがヒュンケルの失敗を無意識に期待して息をのむシーンで、ポップの顎が妙に角張った絵になっていましたよ! なんだか、今回は絵の崩れがあちこちにあるような……っ。

 その直後に、真っ白な背景の中、顔を俯き加減にして落ち込むポップの構図や白黒のメリハリの利いたイラストが秀逸だっただけに、落差の大きさに戸惑います。

 ダイがヒュンケルのアバンのしるしが光るのを見て驚いていますが、考えて見ればダイはしるしが光る説明を聞いていませんし、マァムのしるしが光るところも見てもいなかったから、初見なんですよね。驚くのも無理ないです。

 ミストバーン、感情的に荒れ狂って岩に八つ当たりするシーンは、アニメの改変ですね。原作にはないシーンです。

 ロン・ベルク、最後の最後で美味しいところを持っていきましたっ。
 最後の最後のアップのシーンで、水彩画風のイラストにさえなっていましたよ!

 予告、戦い風景を中心に、レオナをメインにミナカトール成功に挑む雰囲気がいい感じです。感の術が失敗することとはバラさない、正統派予告っていいですね。
 でも、クロコダインも五人を守るために戦うとナレーションしたのなら、せめてワンカットでもいいから映してあげて欲しいです(笑)

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