『暗黒のヒュンケル』(2021.1.15) |
《粗筋》 二人とも手を広げた形で拘束され、足首も鎖付きの脚輪で戒められている。 そんな彼らのいる処刑場は、四方に柱が設置された正方形の白い石で作られおり、鎧系怪物達がきちんと列を成して彼らを取り囲んでいる。 その様子を、周囲の岩穴から観察しているのはフローラとメルル、それにカールの兵士達だった。 ヒュンケルをひたすらに案じるエイミに、クロコダインを助けると息巻くチウ。ゴメちゃんも気合いを入れて、ピィと鳴く。 アキームとバウスン将軍は別の穴に、ノヴァとロン・ベルクもさらに別の穴にいた。四箇所に別れ、潜んでいる計算だ。 誰もが不安そうにヒュンケル達に注目する中、ロン・ベルクは無関心そうに風に背を預けて佇み、目を閉じていた。 見上げれば、バーンパレスがその動きを止めていた。 そして、バーンパレス内の王間には酒杯を片手にしたバーンと、キルバーンがいた。彼らは、水晶玉越しにヒュンケル達の様子を眺めている。 ちょうど、正午になった時、ミストバーンが処刑場に降り立った。 一方、フローラはメルルに敵の数の確認させていた。 自分達でも相手に出来る数だと考えるフローラだが、ミストバーンだけは別格だと警戒していた。
それに対し、ヒュンケルは答えを知りたければ自由にしろと挑発する。 自由の身になったヒュンケルは、支えが無くなったせいかその場にがっくりと崩れ込み、膝をついた。 じっと手の中の杯を見つめるヒュンケルに、クロコダインは止めるようにと叫ぶ。だが、ヒュンケルは意を決したように一息にそれを飲み干してしまった。 絶叫するように、ヒュンケルの名を叫ぶクロコダイン。 その光景をみて、衝撃を受けるフローラ達。 その苦しみようは尋常ではなかった。 苦痛に吠えるヒュンケルに対して、ミストバーンは淡々と語る。 だが、暗黒闘気はそんな生やさしい物ではないと言い、本人の意志とは無関係におまえは自分のものだと言い切るミストバーン。 噴き上がる暗黒闘気に髪が逆立ち、見る見るうちに黒く染まっていく。やがて、暗黒闘気が一旦落ち着いたのか、ヒュンケルは叫ぶのを止めた。 表情も一変し、憎しみにギラついた目には光は見えない。かつてのハドラーがそうだったように、左目を横切る傷跡めいた入れ墨が浮かび上がっていた。
そんなヒュンケルに対し、ミストバーンはいつになく饒舌に語りかける。 ヒュンケルが元の鞘に戻ったと満足げなミストバーンに、そんなはずはないと食い下がるクロコダイン。 荒い息をついているヒュンケルに、ミストバーンは彼の失敗をことさら上げ連ねる。 それを聞いて、クロコダインは辛そうに目を伏せる。 苦しそうなヒュンケルに対し、ミストバーンは暗黒闘気が身体の傷をすべて癒やしたはずなのに苦しむのは、体内に良心を残しているのが原因だという。 それでクロコダインを処刑するように命じるミストバーン。 差し出された剣を、素直に受けとるヒュンケル。
さすがにそれには反論できず、息をのんでわずかに目をそらすゴメスとフォブスター。 ノヴァ「くそっ……!」 剣を構えるヒュンケルを前にして、クロコダインは今や彼が完全に敵になったと瞑目する。 思い出すのは、牢の中で何があっても自分を信じてくれと言ったヒュンケルのことだった。 その声に、わずかに反応を見せるヒュンケル。 そんな彼に対し、クロコダインはありったけの信頼をぶつける。 真逆の呼びかけに、またも頭を抱えて呻き始めるヒュンケル。 闘気の奔流が収まった後には、本来の髪の色に戻ったヒュンケルの姿があった。だが、全身から靄のようなものを立ち上らせたヒュンケルは白目を剥いており、そのまま前にバッタリと倒れ込んでしまう。 倒れたヒュンケルを見て、悲痛に呼びかけるエイミ。
エイミはそれを聞いて、目から涙を溢れさせる。
ヒュンケルの生命エネルギーが消えてしまったと嘆くメルルに、フローラは目を閉じて、深く絶望する。 ノヴァは未だに姿を見せないダイ達に苛立ち、我慢できないと背負った剣の柄に手をかける。 放せと逆らうノヴァだが、ロン・ベルクの手は微動だにしない。彼は落ち着き払った口調で、ダイ達が出てこないのはヒュンケルを知り抜いているからだと説明する。
クロコダインを殺すため、一歩足を踏み出すミストバーン。が、その足首をヒュンケルの手が鷲掴んだ。 ヒュンケル「いい気分で目覚めたよ……ミストバーン。今ならおまえの首でも、簡単に落とせそうな気がする……まるで……花を摘むようにな」 不敵な笑みを浮かべてそう言ったヒュンケルの目は、本来の強さや光をしっかりと取り戻していた――。 ヒュンケルが生き返ったと、エイミは声を潤ませて、チウは両手ガッツポーズを取りながら叫んだ。 一方、ミストバーンは生命エネルギーが完全に途絶えたはずのヒュンケルが生きていることに混乱していた。 まばゆさに驚くミストバーンを、ヒュンケルは光の闘気で弾き飛ばした。処刑台を取り巻く鎧系モンスターのところへ、吹っ飛ばされるミストバーン。 処刑台の上では、これ以上無いほど光り輝くヒュンケルの姿があった。そのまばゆさに、仲間達までもが目を見張る。 暗黒闘気により、一度は消滅されそうになったヒュンケルだが、悪に負けまいとする心が光の闘気を強くした。 ヒュンケルは以前、ミストバーンに悪の闘気を捨ててから弱くなったと言われたことを覚えていた。 悪の剣士だった頃は正義を憎み、正義に目覚めてからは悪を憎むことで、それぞれの闘気を爆発的に高める――それこそが自分の力の根源だと悟ったヒュンケルは、敢えて暗黒闘気を受け入れることでより強くなることが出来るチャンスだと考えた。 ヒュンケルの光の闘気が自分の暗黒闘気を上回ったと言っているような説明に、激怒するミストバーン。 集中したミストバーンの目に、先程とは全く逆に、ヒュンケルの体内に圧倒する光の闘気の中、今にも消えそうに揺らいでいるかすかな暗黒闘気が見える。 それが我慢できないとばかりに、ミストバーンは手の爪をひとまとめにして打ちだし、ヒュンケルの胸を貫こうとした。 全身から光の闘気を溢れさせるヒュンケルは、ミストバーンの爪を握りしめたかと思うと、力を込めてそれを引き寄せた。 再び、鎧系モンスターのところまで弾き飛ばされるミストバーン。 だが、ヒュンケルは自分から先に飛び出して攻撃に打って出た。 クロコダイン「おおーっ、素手でさまよう鎧をっ!」 近づいてきたモンスターの顎を掴み、一瞬で下まで引き裂くヒュンケル。素手にも関わらず、金属製の鎧を紙のように容易く引き裂いた。 その様子を、エイミ達の集まる洞窟からみんなが見ていた。 危険な賭けだとは思ったが、成功して良かったと喜んでいる。彼らもきっと、そう思っているだろうと言うビースト君に、『彼ら』とは誰かと尋ねるチウ。 顔を押さえ、怒りに燃えるミストバーン。 そんなクロコダインに、ヒュンケルはすぐに片付けて自由にしてやると約束する。その口調は、心なしか優しさが感じられた。 怒りに吠えるミストバーン。 しかし、ヒュンケルは挑発的に言い返す。 ヒュンケル「オレ達ふたり……? ミストバーン、貴様、逆上すると足下も見えなくなるらしいな」 どこからか響く、地響き。 その光に押され、ミストバーンは今度は崖に叩きつけられた。
バーンはダイを見て、この前とは別人のように覇気があると見て取った。口元に笑みを浮かべるバーンは、あたかもダイの居直りを歓迎しているかのようだった。 地上では、クロコダインがダイに呼びかけていた。 ポップは笑いながらレオナを地面に下ろし、クロコダイン流の地底移動の技だと得意げに言う。どうやら、穴を掘ったのはポップの火炎呪文のようだ。 マァム「今、外すから!」 クロコダインに駆け寄ったマァムは、その勢いのまま拳を彼の手首の枷に打ち付ける。 マァム「はぁああっ!」 そんなダイを褒めるように、ヒュンケルはよく飛び出さなかったなと声をかける。
そんなマァムに変わって、ちょっと不機嫌そうなポップが事情を話す。 ヒュンケルが何の勝算もなくああするとは思えないし、彼を信じて様子を見るように言ったマァム――それを、面白くなさそうな顔で打ち明けるポップ。 マァム「正解だったでしょう?」 そう言って微笑もうとしたマァムの目からは、ついに涙がこぼれ落ちる。
一体のモンスターが、ダイのお株を奪うような高々としたジャンプを決めて襲いかかってきた。 そのモンスターの側に降り立ち、剣を抜いたのはノヴァだった。 その言葉が終わるか終わらないかかのうちに、雄叫びを共に大勢の戦士達が一斉に飛び出してきた。崖に近い坂道をものともせず、土煙を上げ、雄叫びを上げながら走り込んでくる戦士達。 ゴメスは水にでも飛び込む勢いで、洞穴から飛び出した。バダックやチウ、遊撃隊メンバーも突撃する。 鬱憤晴らしに大暴れしてくると、余裕たっぷりにウインクするノヴァ。ダイはそれに元気よく頷いて送り出すが、クロコダインはなぜ彼らに戦いを任せるのかと疑問に思う。 話すと長いと、説明に困った風な様子を見せるポップ。 レオナはそれを握って、心に思いを描くようにと指示する。戸惑うヒュンケルに丁寧に説明するレオナの話を聞きながら、ポップは息をのむ。 レオナはヒュンケルの闘志がアバンのしるしに呼応したことを喜び、五人の使徒と五つのしるしがそろったと言い、ミナカトールの完成を確信する。 空中に元気よく飛び上がったチウは、回転した勢いのまま鎧系モンスターに跳び蹴りをかます。その隣では、クマチャが豪腕をふるっていた。 ダメージを受け、動けなかったのではない。 鋭い爪が岩に食い込んで傷跡を残すが、そんな物で気が晴れるはずもない。拳を握り込み、岩を叩くミストバーン。 動揺しているミストバーンを言葉だけでなだめ、落ち着きを取り戻させるバーン。 バーンに謝罪したミストバーンは、すでに落ち着きを取り戻していた。命令をすぐさま実行しようと、まとめて全員を千切るために広範囲の闘魔滅砕陣を放つ。 が、その光が獲物を絡め取るよりも早く、地面に突き立てられた剣が滅砕陣を消滅させた。 土煙に紛れてよくは見えないが、長身の男が投げた剣の方へゆっくりと歩み寄ってくる。近づくにつれ、その姿はよく見えるようになっていく。 ロン・ベルク「あいつらには、やることがある。おまえには、用はないとさ……遊びたいなら、オレが遊んでやるぞ……ミストバーン」 剣を拾い上げて、近づいてくるロン・ベルクの姿を見たミストバーンが、はっきりとした動揺を見せる。 ミストバーン「お……おまえは……」 ミストバーンの真正面に、ロン・ベルクは剣を手に向かい合った。 《感想》 ダークヒュンケル、なんて無双状態ッ(笑) それはさておき、処刑場の場面でクルクルと視点が回り込む演出は妙にかっこよかったです♪ CG技術の進歩って、すごいですね。 後、僧侶の胸の十字架や、ザオラルをかける時の十字架も修正されていたので、貼り付けシーンにも修正が入るかなと思いましたが、ここはいいみたいですね。修正の意図と目安が、本気で分かりません。 メルルが目を閉じて敵を察知するシーン、毅然とした表情がいつにない凜々しさがあって良かったです。メルルは気弱そうな表情の時が多いのですが、たまに凜々しい表情をするのもいいですね。 ヒュンケルが暗黒闘気にのたうつシーン、なんだか時間をかけてたっぷりと見せていますね(笑) エイミさんが飛び誘うとするシーン、チウとフォブスターが止めているのは原作通りですが、非力な大ネズミと魔法使いに任せていないで、ここは怪力のゴメスが引き留めるべきだったような気が(笑) 感心したのが、この時のチウ以下のメンバーの声。 ノヴァが壁を叩くシーン、改変されていますね。 原作ノヴァ「ど……っ、どうしたらいいんだっ!!」 ノヴァの場合、たいして意味のあるセリフを言っているわけでもないので、略しちゃうのもアリでしょう。 今回はノリノリなミストバーンと、友情をどこまでも信じ抜くクロコダインのセリフの対比がいいですね。 ヒュンケルがミストバーンの脚を掴むシーン、腕の血管がピキピキ言うほど強く浮き上がっていたのは、アニメの改変ですね。 でも、アニメではヒュンケルの筋肉増量や血管描写をやたら丁寧に行っています。……女性のお色気シーンは徹底排除なのに、男性の筋肉美は追求しても良かったとは(笑) ヒュンケルとミストバーンの説明、すごく長いのにほぼそのまま使っていますね。 しかし、さすがに説明ばかりで絵面が動かないのはどうかと思ったのか、ヒュンケルが自分が悪の戦士だった時と説明するときには魔剣戦士の時のアムド化したヒュンケルを、正義の時には今のヒュンケルを、それぞれ横顔で正反対を向かせる演出はかっこよかったです♪ 魔槍のアムドがすでにスタンダードになっているので、魔剣ヒュンケルがなんだか懐かしかったですよ。 ヒュンケルの胸にミストバーンの爪が食い込むシーン、原作では背中側からの演出だったので直撃シーンはありませんでしたが、アニメではバッチリ真正面からでした! 原作ではほんの僅か、爪の先が胸に刺さったような表現でしたが、アニメでは完全に弾かれています。 ミストバーンを引き寄せるシーン、鰹の一本釣りに見えて仕方がありませんでした(笑) ミストバーンへの顔面パンチのシーン、殴った瞬間に一瞬動きを止め、それから振り切って殴らせる演出がよかったです。本当に格闘シーンには半端ない拘りを感じますよ。 ヒュンケルが鎧モンスターを倒した時のクロコダインの台詞が、改変されています。 原作クロコダイン「おおーっ、素手で鋼鉄兵士を……っ!!」 鋼鉄兵士なんて怪物はダイ大連載当時はいませんでしたし、今もいません(多分) さまよう鎧は当時からいたモンスターなので、実際の登場モンスターに寄せていますね。 チウの台詞は、一部カットされていました。 ダイの登場シーン、原作では地面の中から登場するだけでしたが、アニメでは地面を裂いて空中高く飛び上がるという、より派手な登場になっています。まるでガゼルパンチ♪ パンチを放った後に地上に降りた時も、目を閉じたまま高く手を突き上げた姿勢が、妙にカッコイイです。『○ングにかけろ』でよく見た光景ですね(笑) しかし、水晶玉越しに見えるダイの画像にはには一言、文句を言いたいです! バーン様がダイの居直りを喜ぶシーン、口元のアップでニヤリとさせてからの顔のアップは、素晴らしくかっこよかったです。 なんか……っ、なんか、線が荒いというか、描き込みが足りていない感じ出します! それに、影の指定を細かいところまできちんと入れていないせいか、色合いも今一歩。 まだ、この三人だけならともかく、背景にいるヒュンケルとクロコダインの方の線画や塗りは普通なのに、手前側にいる三人が雑なので差が目立つのが悲しいです〜。 枷を壊していたのはやっぱりマァムですが、原作では走って勢いをつける描写はなくて、その場に突っ立って姿勢からのパンチで壊していました(笑) ダイとレオナの台詞の合間で、さまよう鎧達がミストバーンのところに集まるのは、アニメの改変ですね。原作のさまよう鎧達は、ミストバーンにそこまで忠実じゃないです。っていうか、ほぼ彼を無視して行動していましたが(笑) ヒュンケルと再会した時のマァムの表情、アニメでは心配そうな感じで、今にも泣き出しそうなのを我慢しているように目を潤ませていました。 原作では、この時のマァムはわずかに眉を寄せつつも、口元には微笑みを浮かべていて聖母風だったことを思えば、アニメのマァムは普通の少女らしさを強調しているように見えます。 しかし、マァムとヒュンケルが見つめ合う中、ポップとレオナがそろって目を閉じて、同じ方向を見てそっぽを向いているシーンになっていたのには笑っちゃいました。 マァムがヒュンケルを信じるセリフの回想シーン、いいですねえ。 しかし、さまよう鎧の大ジャンプは原作にもあるシーンとは言え、アニメでは一貫してゲームデザインに沿った丸っこい感じなので、どうしても可愛さが先に立つ気がします。 隠れていたみんなが一斉に戦うに打ってでるシーン、オープニングが実現したみたいで嬉しくなりました。 ポップがヒュンケルの失敗を無意識に期待して息をのむシーンで、ポップの顎が妙に角張った絵になっていましたよ! なんだか、今回は絵の崩れがあちこちにあるような……っ。 その直後に、真っ白な背景の中、顔を俯き加減にして落ち込むポップの構図や白黒のメリハリの利いたイラストが秀逸だっただけに、落差の大きさに戸惑います。 ダイがヒュンケルのアバンのしるしが光るのを見て驚いていますが、考えて見ればダイはしるしが光る説明を聞いていませんし、マァムのしるしが光るところも見てもいなかったから、初見なんですよね。驚くのも無理ないです。 ミストバーン、感情的に荒れ狂って岩に八つ当たりするシーンは、アニメの改変ですね。原作にはないシーンです。 ロン・ベルク、最後の最後で美味しいところを持っていきましたっ。 予告、戦い風景を中心に、レオナをメインにミナカトール成功に挑む雰囲気がいい感じです。感の術が失敗することとはバラさない、正統派予告っていいですね。 |