『大破邪呪文(ミナカトール)の危機』(2021.1.29)

  
 

《粗筋》

 立ち上る四色の光の柱――だが、決死の思いで挑んだポップのアバンのしるしは、全く反応を見せなかった。
 ショックを受けて膝をつくポップ。

 その光景を、ザボエラは空中から見下ろしていた。いやらしい笑みを浮かべる彼の真下には、数え切れないほどの異形のモンスター達がいた。

 祈るように手を組み合わせ、ポップ達の方を見ていたメルルが何かに気づき、怯えながら後ろを振り返る。
 煙に覆われて何も見えない中、メルルは大量のモンスターの気配を感じ取っていた。

 しかし、ダイ達はまだそれを知らない。仲間達は次々と、ポップに呼びかける。レオナはポップを落ち着かせ、もう一度挑戦するようにと説得するが、それを遮ったのはポップだった。

 震える手を握りしめ、ポップは自分のアバンのしるしが光らなかったことを打ち明ける。
 試しても駄目だったと暴露するポップに、息をのむレオナ。
 魂の力やしるしについて知っていたと言い、みんなと違って自分だけは光らせられなかったと、泣きながら告白する。

 特訓もしたが効果が無く、最後の手段としてぶっつけ本番で挑んだものの、やっぱり駄目だったと、ポップは強く地面を叩く。
 自分の失敗を仲間に詫び、力不足を嘆くポップに対して、仲間達はかける言葉すらなかった。

 辛うじてマァムがポップに呼びかけるが、今の彼にはそれさえ耳に届かない。
 どん底まで落ち込むポップが呼びかける名は、今は亡き師の名前だった。
 アバンの名を呟きながら、なぜ、自分のような半端物にこんなものを与えたのかと、強くアバンのしるしを握り込むポップ。







 その様子を少し離れたところから見守っていたフローラは、こんな状況ではミナカトールの威力が半減してしまうと危機感を抱いていた。フローラの近くにいるメルルは、手を組みながら一心にポップを見つめていた。
 ポップを案じるメルルだが、不気味な声を聞いて振り返り、ハッとする。

 煙の奥からは、またも新たなシルエットの怪物が増えていた。
 フローラ、ノヴァや兵士達、クロコダインもそれらを見て驚愕する。モンスターの気配に、チウ、バダックも目を見開いた。

 空に浮かんがザボエラの後ろ……処刑場をぐるりと囲む岩山には、今や無数の怪物達がいた。岩山の中腹にずらりと並んだ怪物達は、下にいる人間達を取り囲んでいる。

 巨大な鉄球を持つ鉄球魔人は鎖を鳴らし、盾と剣を手にしたソルジャーブルは、高々とそれらを突き上げる。
 横に大きく張り出した二本角が特徴的なライオネックは、翼をはためかせてその辺を一回り飛び、猿に似た獣系怪物達は興奮を抑えきれないように吠え立てた。

 そんな怪物達を見て、目を見開くロン・ベルク。彼と戦っているミストバーンは、嬉しそうに含み笑った。

 上から見下ろせば、絶望的なまでの戦力差が見て取れる。
 そんな中、上空にいるザボエラが気取って手を伸ばし、笑い声を立てた。
 周囲をすべて囲まれたと判断するクロコダイン。ノヴァも、警戒しながらどれも見たことの無いモンスターだと呟く。

 こんなにたくさんの気配を察知できなかったと、嘆くメルル。フローラは、魔法の球のせいだろうと判断し、罠が張られていたことを再確認する。

 斧を構えるサイ男達の前に、ゆっくりと降りてきたザボエラは、新生魔王軍の精鋭達を自慢し、魔界のモンスター達だと紹介する。
 魔界のモンスターは地上のモンスターとは比較にならないほど強いと、得意げに語るザボエラ。

 同じ怪物のせいか、獣王遊撃隊達の怯えは特にひどい。が、チウだけは負けん気も露わにザボエラを睨み返していた。
 もっとも、ザボエラは文字通りネズミなど気にもかけない。
 ザボエラの指示に従い、一斉に身構え出す魔界のモンスター達。

 大きく手を振り上げたザボエラは、殺せと命令を下した。
 命令と同時に、すべてのモンスター達が雪崩うって処刑場へと駆け降りてくる。

 それはほんの少し前、人間達がそうしたのと同じ光景だったが、その数は倍以上……下手をすれば三倍以上の軍勢差があった。

 危機を感じたダイが、あのモンスター達はヤバいと警告を飛ばす。ヒュンケルはマァムの顔を見ながら、自分達も行くと言った。それに即座に頷いたマァムだったが、フローラの声がそれを止めた。

 処刑台の上に乗った彼女は、ダイ達にミナカトールを完成させるようにと強く言い聞かせる。今、動けばせっかく4つまで揃えた光が消えてしまうから、と。

 それを聞いて、目を見張るポップ。
 フローラは戦いは自分達に任せるようにと言い、身を翻そうとした。そんな彼女を、ポップがよろけながらも立ち上がり呼び止める。

 足を止めたフローラは、静かに振り返って微笑みかける。

フローラ「ポップ……アバンは決して間違った者を選ばない」

 驚くポップに向かって、フローラは大丈夫だと言い切り、魔王軍は私達でなんとかすると言って今度こそ身を翻してかけ去った。
 自信に満ちあふれていたフローラとは対照的に、ポップの表情は暗い。
 なんとかならないことは、ポップが一番良く分かっているのだ。

ポップ(おれたちが動けなきゃ、こっちの戦力は……!)






 地響きを立てて、迫り来る怪物達を眺めながら、ノヴァとクロコダインは何匹ぐらい倒せるかと会話を交わしていた。
 恐れを感じつつも、ノヴァは4、50体は倒してみせると強がる。ダイ達がミナカトール完成のために動けない分、自分達が敵を全滅しなければならないという使命を感じているようだ。

 それを聞いて、クロコダインも元百獣の王なだけに百匹は目指すと豪語する。







 一方、獣王遊撃隊メンバーは誰もが怯え、怖がっていた。
 だが、喝を入れたのはチウだった。
 魔界のモンスターに臆すること無く、檄を飛ばす隊長を見て、隊員達は心から感心する。

 メンバー三人ずつに別け、それぞれ防御、攻撃、攪乱の役目をふるチウ。ゴメちゃんには、ダイ達に急ぐようにとの伝令役を与えた。
 喜んで請け負ってから、ゴメちゃんは不思議そうに周囲を見回す。

 その疑問を読み取り、余裕の笑みを浮かべながらチウはビースト君はあそこだと一方を指さす。
 そこには、怪物の大群を前に全く怯むこと無く、フラフラと歩くビースト君の姿があった。

 驚く遊撃隊達。
 だが、ビースト君は飄々と歩を進める。その勇気を褒め称え、自分達も続くのだとみんなを鼓舞するチウ。

 その時、一匹のサイ男が大斧を大きく振りかぶってビースト君に振り下ろした。真横へ大きく振った斧が一閃する。
 が、ビースト君は身をかがめてそれを避けた。

 そして、両手をつき、足だけでモンスターの膝へと蹴りを食らわす。軽く蹴っただけに思えたが、ぶわっと勢いよく煙が噴き上がり、モンスターはもんどり打って吹っ飛ばされた。

 






 ゴメスは兵士達を前に、声を張り上げていた。
 勝とうと思わなくてもいいから、壁になりきれ、と。ミカナトール完成のために時間を稼げばいいと念を押す彼の言葉を、真剣に聞いている兵士達。
 ゴメスの声に強く応じ、剣を振り上げる一般兵ら。

 ノヴァとクロコダインが、チウ達獣王遊撃隊が、アキームやバウスン将軍、バダック達兵士達が、一斉に走り出す。
 四色の光の柱を背景に、魔界のモンスター軍団と人間の連合軍が真っ向からぶつかり合った。

 怒号と共に激しい剣戟が交わされる。
 それを見たロン・ベルクは、身を翻そうとした。だが、ミストバーンに刃で打ちかかられ、剣で止めざるを得なかった。

 皮肉たっぷりに、ミストバーンは先程の言葉をロン・ベルクに返す。
 今度は、ミストバーンがロン・ベルクを足止めし、人間達の勝機を奪う立場だった。

 形勢逆転だと告げるミストバーンの言葉を、歯がみしながら聞くしかないロン・ベルクの背後では、一人だけ光の柱を生み出せないままのポップの姿があった。

 ちらりとそちらに目をやり、何をとろとろやっているのかと焦りを感じるロン・ベルク。






 キリッとした顔で精一杯速く飛ぶゴメちゃん。
 が、いざダイ達のところに来て、戸惑ったような声で鳴く。
 呪文を唱える様子もなく、ただ立ちすくんでいる彼らの異常さに気がついたのだ。

戸惑いながら、ダイの肩に乗るゴメちゃん。
 落ち込んだ表情をしていたダイも、ゴメちゃんが実際に肩に乗ると笑顔を作り、「わかっている」となだめるように撫でた。

 それからポップに対して、みんながモンスター軍団を食い止めているからもう一度挑戦するようにと促すダイ。

 だが、ポップはそれに応えず、レオナに向かって一時撤退を訴えた。その言葉に、ショックを受けたようにポップを見つめる仲間達。
 その目から目を背けながら、ポップは粘っても出来そうな気がしないから出直そうと弱気に言う。

 しかし、レオナは淡々と答えた。二度目はない、と。
 ここまで手の内を明かした以上、バーンは二度とダイ達をバーンパレスに近づけさせないと彼女は予測していた。

 それに、アバンのしるしを光らせるのは魂の力……難しい技術が必要なわけでは無い。逃げたら、もう二度と光りはしないだろうと告げるレオナ。
 レオナの指摘は正しいだけに、ポップは反論も出来ずに黙り込むしかできない。







 それを、処刑場のすぐ下からメルルは心配そうに見つめていた。
 なぜ、ポップにはできないのかと、自分のことのようにもどかしげに見つめるメルル。ポップの優しさや立派さを信じるメルルには、彼がなぜできないのが不思議でならない。







 ポップはアバンのしるしを握りしめ、紐を千切って毟り取る。
 これを他の奴に渡してやらせればいいと、怒鳴るポップ。自棄を起こしたようなポップの怒りっぷりに、戸惑うダイとレオナ。

 自分はみんなとは違うと、声の限りに叫ぶポップ。王族でも無ければ生まれつきの戦士でもないと、自分のコンプレックスをさらけ出して叫ぶポップを、仲間達はただ見つめるばかりだ。

「ポップさん……」

 そして、メルルもポップのその言葉をすぐ近くで聞いていた――。






 ポップは、血を吐くような声で訴える。
 勇気、闘志、正義、愛、他になにがあるのか、と。自分にしか無い心の力は何だと、ポップは怒りにまかせて問いかける。
 やり方を教えてくれるなら、生命でもなんでもくれてやると叫ぶポップの目には、追い詰められたような光を放っていた。

 そんなポップを、心配そうに見つめるマァム、ダイ、レオナ。ヒュンケルだけはいつもの冷静さを失わず、静かに彼を見つめている。

 レオナに撤退を求め、自分のせいでみんなが死んだら耐えられないと、うな垂れるポップ。

 そんなポップに、ヒュンケルは淡々と告げる。
 どうせ、日を置いたら自分達は死ぬ、と。それも、地上にいる何千、何万もの人達と一緒に。
 それを聞いて、ビクッとして顔をあげるポップ。

 ヒュンケルはポップに、雑念を捨てるようにと説得する。
 悪に走った自分にさえ出来たことが、正義を邁進してきたお前にできないはずはない、と当たり前のことのように言うヒュンケル。

 ダイもまた、熱意を込めてポップへの信頼を語る。
 自分に最後の勇気を与えてくれたポップを、ダイもまた信じている。
 マァムもまた、ポップへの信頼を口にした。ポップの心の強さを信じている彼女の言葉はどこまでも衒いが無く、優しい。

 聞いていられないとばかりに、目を背けるポップ。
 が、マァムはそれに気がつかない様子で、ポップを尊敬していると告げる。しかし、それを聞いたポップは一際強く、マァムを拒絶する。

 おまえに尊敬なんかされても、全然嬉しくない――本気の怒気の感じられる拒否に、マァムはショックを受ける。






 魔王軍と人間達の戦いは続いていた。
 剣を構える人間に突進するモンスター。処刑場を取り囲んで戦う人間達を、さらに取り囲む形でモンスター達は襲いかかる。
 ザボエラはそれを、安全な上空から見下ろしていた。

 ニヤニヤ笑いながら配下をけしかけていたザボエラは、ダイ達の目を向ける。彼らが光の魔法陣を組もうとしていると気がつくザボエラ。

ザボエラ「一人、光が出ておらん……あの魔法使いの小僧か」

 この時、ザボエラは閃く。
 人間を全滅させるだけでなく、呪文を阻止することでバーンの覚えがめでたくなるだろう、と。そうなればミストバーンに毛嫌いされたとしても出世できると考え、どこからか小型のナイフを取り出す。

 それは、見るからに禍々しいナイフだった。
 中央に目玉に似た飾りがつき、刃も、それをとり囲む六枚の風切り羽じみた飾りも、薄い赤地に血管を想わせる赤い模様が刻まれている。

 鎖のついたそのナイフを手に摘まみ、自分の揚々たる未来のためにくたばって貰おうと、ザボエラは不気味にほくそ笑んだ。






 地上では、チウはバダックから貰ったズタズタヌンチャクを両手に構えていた。正義の心で戦うのだと、勢いよくそれを振り回すチウ。

 兵士達も頑張って戦っている。ゴメスも必死に戦っていたが、何者かに吹っ飛ばされていた。
 その背後では、クロコダインが鉄球魔人ら鉄の鎖でがんじがらめにされていた。

 ノヴァも剣で敵を切りつけ、フローラは鞭で敵を近寄らせまいと払いのける。処刑場を背に庇いながら、フローラは声に出さないまま、ポップへの励ます。

 迷いを振り切るよう願い、紛れもなくあなたはアバンの使徒だと思いながら、ポップの方を肩越しに振り返るフローラ。







 それを同じ頃、ショックを受けたマァムはポップに対して、どうしていつもそんな言い方をするのかと、責めるように言う。
 それに答えず、アバンのしるしを強く握りしめるポップ。
 マァムは泣きそうな声で、自分は素直な気持ちを言っただけなのにと訴える。

 その様子を見つめているメルルは、まるで自分のことのように二人の気持ちのすれ違いを嘆いていた。

メルル(それは……ポップさんがマァムさんを好きだから……。なのに、マァムさんのポップさんへの気持ちが尊敬だって言われて……っ)

 何か、ポップのために少しでもいいからしてあげられることは無いのかと、憂うメルル。
 その時、不吉を感じ取る。
 邪悪な力を感知し、ハッとして振り向いたメルルは周囲を見回す。

メルル「どこにいるの!?」

 ミナカトールが停止しているあいだも、人間達の戦いは続いている。
 乱戦の中、メルルは必死にあちこちを見回して恐ろしい殺意と魔力の気配を探ろうとしていた。







 毒牙の鎖に魔力を染みこませたザボエラは、それを振り子のように揺らし、更には勢いをつけてブンブン振り回しはじめた。
 ザボエラの魔力を染みこませた毒牙の鎖は、光弾となって敵を討つ力がある。一掠りで毒が回るため、聖なる光に包まれた四人はともかくポップの命は確実に奪えるだろう。

 ザボエラがほくそ笑んだその時、メルルはついに殺意の源を発見した。空を見上げたメルルは、ザボエラを発見する。






 レオナはポップに手を伸ばし、もう一度挑戦するように促した。ダイも、熱意を込めてポップを励ます。
 ヒュンケル、マァムもポップを促すが、ポップは震える足を一歩、後ろへとずらした。
 その意味に気づいたのか、ハッとポップを見上げるダイ。

 ポップは誰とも目を合わせないまま、俯いて言う。

ポップ「みんな、おれをかいかぶりすぎだぜ……!」







 その時、ダイ達を守るため、巨大なグレイトドラゴンに押されつつも、数名の兵士が戦っていた。







 ポップが、さらに一歩後ろに下がる。
 このまま自分が逃げ出したら、もうみんなもここに居続けたりはしないだろうと、ポップは考えていた。







 サイ男と戦う兵士達もまた、複数で組んで戦っていた。その中には、ボロボロに欠けた剣を持つ者もいたし、及び腰で槍を構える者もいた。
 何より目につくのは、倒れて動けなくなった兵士を中ば抱きかかえ、怯えた顔でモンスターを見つめている若い兵士の姿だった。

 身がまえる兵士の後ろでは、坊主頭の兵士が泣きながら別の兵士を抱きかかえていた。鎧の色から見て、カールの兵士か……戦いの中に、確かに悲劇が刻まれつつあった――。







 ポップは泣きながら、さらに一歩下がる。彼の背後では、激しい戦いが繰り広げられていた。
 固く目を閉じたポップは、これ以上自分のせいでみんなが傷つくのが耐えられないと叫び、軽蔑するなら勝手にしてくれと、身を反転させて逃げ出した。

 それを見て、思わず手を伸ばすメルル。
 そして、ザボエラもその隙を逃さなかった。勢いをつけて、毒牙の鎖を投げつける。
 それは光弾となって凄まじい速さで飛ぶ。

 その光を見たロン・ベルクは、身を翻しかけるが、斬りかかってくるミストバーンが邪魔をした。ロン・ベルクは必死になって、誰かにそれを止めるように叫ぶ。

 ノヴァとクロコダインもその光弾に気づくが、それぞれ戦っている相手がいて手を離せず、目で追うだけで精一杯だ。
 止めろと、再度叫ぶロン・ベルク。

 光弾は走るポップに向かって、一直線に進む。前すら見ていないポップの横腹に、光弾が当たる寸前になってから彼はようやく顔を上げた。
 そこに、駆け込んでくるメルル。
 血飛沫が上がったのを見て、ザボエラはやったと歓喜する。

 だが、毒牙の鎖を腹に受けたのはメルルだった。
 驚くポップの目の前で、スローモーションのようにメルルの身体が反転する。血飛沫の中、声にならない悲鳴を上げるメルル。

 反転するメルルの腹に刺さった光弾は光を失い、本来のナイフへと戻っていく。驚愕の声も出せないポップの目の前で、メルルは仰向けに倒れこんだ。
 メルルの長い髪が、うねるように広がる。

 ショックを受けたポップは、メルルの名を呼びながら倒れた彼女を抱き起こす。
 その光景にフローラとエイミも戦いの中で手を止めるほど、深いショックを受けていた。

フローラ&エイミ「そんな……っ」
 







 上空にいたザボエラは、小娘に邪魔をされたと腹を立て、器用にも空で地団駄を踏む。
 ショックを受けたようにメルルの方を見、地上でそれを聞いていたノヴァは、全身に闘気をみなぎらせ、怒りのままに空中高くジャンプしてザボエラに斬りかかる。
 それを辛うじて躱すザボエラ。






 地上では、ジワジワと血が広がっていくメルルを抱きかかえたポップが、必死になってホイミをかけてくれと叫んでいた。
 それを聞きつけ、剣を片手に必死に駆け寄ろうとするエイミだが、ソルジャーブルに邪魔をされ、応戦せざるを得なかった。
 
ポップ「だれかーーっ!」

 切迫して叫ぶポップ。
 マァムが自分がやると言い、動こうとするが、当のメルルがそれを止めた。
 自分はもう助からないから、せっかくの魔法円を崩さないようにと、苦しい息の下で頼み込むメルル。
 彼女は、ポップが五つ目の星になると信じている。

 メルルを抱きかかえながら、どうしてこんな無茶をしたのかと問うポップ。
 ポップの力になりたかったから、と答えるメルルに対して、ポップは自分のような最低なヤツのためになぜメルルが死ななければ鳴らないのかと嘆く。

 それを聞くメルルの表情は、深い痛みに耐えているかのように見える。しかし、彼女が感じているのはおそらく肉体的な苦痛ではないのだろう――何か言いたげな目が閉じられ、涙がメルルの頬を伝う。

 その瞬間、耐えかねたように、レオナが怒り出した。

レオナ「この鈍感! メルルはね、誰よりもキミのことを信じてるの! 彼女はね……キミが好きなのよ!」

 予想もしていなかったとばかりに、目を見開くポップ。
 マァムもハッとして、息をのむ。

 メルルは軽口めかせて、いつか自分で言うつもりだったのにひどいと、レオナを責めるが、すぐにそれを自分で否定する。
 勇気が無いから、きっと一生言えなかっただろう、と。

 それでも、瀕死のメルルはポップへ自分の気持ちを打ち明ける。
 初めて会ったときから、ずっと好きだったこと……ポップの明るさや強さに憧れていたことを、切々と告白するメルル。

 だが、告白すれば今の関係さえ壊してしまいそうなのが怖くて、打ち明けられなかったのだと言う。そんな弱い自分が嫌いだったというメルルは、ポップの手を両手で包み、初めて彼の役に立てたことを褒めてくれと訴えた。
 そんなメルルの手を握り返し、彼女の名を呼ぶポップ。

 ようやく駆けつけたエイミは、一目でメルルの傷の深さを見抜き、猛毒に侵されていることを知り、愕然とする。

ポップ「いいから早くホイミをかけてくれッ!!」

 怒ったようにエイミを急かすポップ。
 しかし、メルルはポップに最後の願いをねだる。答えの分かっている意地悪なお願いだと言い置いてから、ポップの好きな人の名を訪ねるメルル。

 ハッとし、目を泳がせるポップに、メルルは重ねて、自分はその人を知っているとも言う。
 しかし、メルルは諦めるために――そして、生まれ変わったときに勇気のある自分になるために、その名をポップの口から聞きたいのだとねだる。

 すぐには答えられず、目を潤ませるポップ。
 何かを言おうとして口を開くも、それは言葉にはなりきらない。今にも泣き出しそうな顔で唇を噛みしめるポップを、痛ましそうに見つめるマァム。

 その時、メルルが身をよじって苦しみだした。あれほど大切そうに握りしめていたポップの手も手放し、胸を押さえて苦しむメルル。
 それを見かねたように、ついにポップが暴露する。

ポップ「……ごめんよ、メルル……おれは……おれはっ……」

 途切れがちで、目をそらしがちのポップの言葉を、メルルは苦しい息の下、わずかに目を開けて聞こうとしていた。
 アバンのしるしを強く握りしめ、ポップは叫ぶ。

ポップ「……マァムが好きなんだよぉおおっ」

 その言葉に、衝撃を受けるマァム。
 対して、瀕死のはずのメルルは苦痛の最中にもかかわらず、どこか安らいだ表情を見せた――ような気がした。

 固く目を閉じたポップを、緑色の光が照らす。
 眩い光に目を開けたポップは、その光がメルルの後ろ……正確に言うのならば、メルルの頭を抱え込んでいた自分の右手から発しているのに気づく。

 恐れるような目でそれをみながら、ゆっくりと手を開くポップ。
 そこには、確かに緑色の光を放つアバンのしるしがあった。驚くポップ。ダイやレオナも、息をのむ。

 どうして光ったのか――そう考えたポップには、思い当たることがあった。
 メルルが勇気が無くて告白できなかった……そう言ったことを思い出しながら、ポップは自分の力こそが勇気だったと確信する。
 離れたところから見ていたレオナも、同じ判断をしたところだった。

レオナ(ダイ君じゃなかったんだわ……! 勇気の魂の力を持っていたのは、ポップ君……!) 

 自分もメルルと同じで、マァムやみんなと仲間はずれになるのが怖かった事実を認めたポップは、メルルにしるしを見せようと声をかける。
 だが、メルルの顔を覗き込んだポップは驚愕する。

 先程までと違って、メルルはもう苦しんではいなかった。アバンのしるしの光に包まれ、安らかな顔で目を瞑っている。
 激しく動揺し、目を開けるようにとメルルに何度も呼びかけるポップ。
 自分のために死なないでくれと、ポップはメルルを抱き上げたまま立ち上がる。

 その瞬間、ポップの全身から真っ白な光が放たれた。
 ミナカトールの光をしのぐばかりのその光は、周囲をも圧倒する。ダイ達も、それに驚きを隠せない。ヒュンケルでさえ、目を見開いてそれを見ていた。

 その光の影響か、メルルに刺さったままだった毒牙の鎖が抜け落ち、ボロボロに崩れ去って消えてしまう。
 その激しいエネルギーの余波に髪をなびかせながら、エイミは驚きのまま口走る。

エイミ「魔法使いのポップ君が、回復エネルギーを使っているわ!?」

 今や、ポップは決意を浮かべた目で、メルルを抱いたまましっかりとそこに立っていた。それだけのなのに、溢れるような回復エネルギーを放っている。

エイミ「まるで……まるで、賢者だわ!」
 


《感想》

 メルル、大活躍回っ!
 うわー、先の展開を知っていても泣けました……っ。メルル、死なないでと祈らずにはいられない可憐さ、切なさに胸を打たれましたよ……!
 ポップの苦悩と、魔界の怪物達の迫力も、実に見応えがありました!

 冒頭部分、ポップにしては珍しくものすごく時間を取って繰り返しています。ミナカトールに挑むところから、失敗して膝をつくところまでまるっと繰り返し。まあ、本人にとっては嫌な繰り返しかもしれませんが(笑)

 メルルが敵の存在に気づくタイミングが、原作よりもやや速くなっています。
 原作ではポップが仲間達に泣き言をぶつけた後で、メルルが敵の存在を感知しています。

 後、メルルの能力が原作よりも強く表現されていますね。
 原作ではメルルが怯えて反応を見せたときには、すでに多数の怪物が姿を現していました。

 アニメでは煙に隠れて見えていないのに、メルルはいち早くモンスターの存在に気づいています。

 ポップの失敗に、仲間達が同様を見せる呼びかけシーンがいいですね。特にレオナの、焦りを感じつつも落ち着いているように振る舞う態度がいいです。
 ポップが手を握りしめるシーン、最初は肩幅程度に離れていた手が、ギュッと握りしめられながら揃えられる動きが細かくてよかったです。

 最初は四つん這いの姿勢だったのに、それさえ耐えきれないとばかりに腰を落とす動きもいい感じでした。
 原作でもポップはこの通りにポーズを変化させていますが、アニメだとやっぱり動きがあるのがいいですね。
 心理描写メインのシーンなだけに、動きがすごく細やかです。

 ポップの告白を、驚きと心配の入り交じった表情で見つめているダイの横顔のアップも良かったですし〜。このダイの横顔は、実は原作にはないアニメの改変シーンです。

 ポップが「やっぱり駄目だった」と、地面(正確には処刑台の床)を叩くシーンも、アニメの改変ですね。

 後、細かい動きの差ですが、ポップがアバンのしるしを握り込むシーン、原作ではポップは掌でしるしをすくい上げるような持ち方、つまり下から握り込んでいましたが、アニメでは横から握り込んでいました。

 魔界の怪物達、ここぞとばかりに動かしまくっていますね(笑)
 しかし、ダイがでろりん達と戦った時に出てきた怪物達が魔界のモンスターだったのだと回想するシーンはカットされていました。

 元々ダイ大はDQ4が発売する前に読み切りがスタートした作品だったので、最初にダイに力を貸したモンスターには4のモンスターも混じっていたのは懐かしい記憶です。
 でも、アニメではその辺は深く語る気は無いみたいですね。

 後、アニメではザボエラの「殺せ」と言う命令のタイミングが速くなっています。原作ではフローラが動くなと指示を出した後でザボちゃんの命令という順番ですが、アニメでは逆になっていますね。
 フローラ様のセリフにも、微妙な改変が。 

原作フローラ「ポップ……アバンは決して間違った者を選ばない。私に言えるのはそれだけです」

 原作では後半についていた部分が、アニメではなくなっていました。

 フローラ様の台詞が、優しく、染み入るようなお言葉なのに感動! 原作ではもっと凜々しくも厳しさを秘めた印象だったのですが、アニメのフローラ様は包み込むような優しさを一番に強く感じます。
 ダントツの包容力……これが、声優さんの力なんでしょうか。

 戦力差を嘆くポップのセリフにも改変がありますね。

原作ポップ「おれたちが動けねぇんじゃっ……こっちの戦力は半分以下じゃねえかあっ!!」

 アニメでは言葉を濁すことで漠然とした不安感を強めていますが、原作ではポップははっきりとアバンの使徒達が主戦力だと認識しています。

 アニメでノヴァの台詞を聞いて、初めて気づきましたが、敵を『体』で数えていますね。『匹』だと動物っぽいし、人間では無いから『人』とは言えないからでしょうか。

 ノヴァとクロコダインの会話、いいですね。
 初めて登場してきた頃の傲慢さから敵を見下すのでは無く、敵の恐ろしさを感じていながらも、敢えて強気な言葉で自分や仲間を鼓舞するノヴァの口調がいい感じです。

 そして、そんなノヴァの気持ちを汲み取ってやれるクロコダインの余裕と優しさが、さらにいいですね。

 獣王遊撃隊達の頑張りが可愛い!
 怯えているメンバーの中、ゴメちゃんだけは特に怖がっている風でも無くきょとんとしているのも可愛かったです。

 もしかしたら省略されるんじゃないかと思っていましたが、メンバーの名前を全員呼んでくれたのは嬉しい限り♪
 かつて、○ャンプで公募して決定された名前が、こんな形でアニメに登場するとは。

 それにしてもチウ、本当にリーダーの資質はありますね。
 迫り来るモンスター軍団を前に、腕を組んで背中を向ける雄姿には、つい爆笑しつつも惚れ惚れしました。あ、このシーンは、アニメの改変です。

 大群の敵に全く恐れる様子を見せず、尚且つ仲間達に的確に指示を送る当たりがすごいです。そして、ブロキーナ老師に頼らず、それでいて彼を一隊員としてきちんと動きを見守っているのもすごい。

 しかし、遊撃隊メンバーが喜びの表情と共に、いかにもファミコン風なビット音が流れ、

「みんなは『さすがたいちょうだ!!』とおもった!!」

 の、ファミコン風テロップが流れたのには笑いました。
 原作にもあったシーンですが、原作では『隊長』は漢字だったのに、アニメでは全てをファミコン風のひらがなにしたあたりに拘りを感じます(笑)

 チウの指示を出す際のアクションや、指さす時の動きがいちいちオーバーで、すっごくいい感じ。
 ビースト君のフラフラ〜とした動きも、実にいいのですが……なぜ、アニメスタッフは彼の足をリアルに描写しないと気が済まないのか(笑)

 可愛い感じの上半身に比べ、はみ出ている日焼けした足のリアルさが、すごくイヤンな感じです。

 そして、軽い蹴りなのに敵を吹っ飛ばすシーン……最初、足の動きに気づかず、土煙がただのおならに見えてしまいましたよっ!(笑) ここだけコロコロアニメになったのかと、一瞬目を疑いましたっ。

 ロン・ベルクとミストバーンの戦いシーン、やっぱりカッコイイです。そして、ちょっとでも有利になると語りたがるミストバーン(笑)

 伝令のゴメちゃん、原作ではきちんと危険な戦場を飛びぬけているのですが、アニメではアップになっていて飛ぶ途中経過は表現されていなかったのが残念!

 ダイ達のところについた時も、原作ではゴメちゃんはダイ達五人の周りをくるっと一周回るのですが、アニメではただその場で上下にフワフワするにとどまったのが残念でなりません。ゴメちゃんの動きは、モンスターの中でも省略されがちですね。

 ポップの撤退宣言の時、仲間達がショックを受けたような顔を見せるのは原作通りですが、アニメではその反応にポップがさらにショックを受け、目を背ける改変が加わっているのがいいですね。

 原作では、ショックを受けた仲間の顔の後、ポップはすでに目を背けているので、コマとコマの隙間が補完されたようで嬉しくなりました。

 ポップがアバンのしるしを光らせられずにブチ切れるシーン、原作ではレオナがポップの名を呼ぶだけでしたが、アニメではダイもそれに加わっているのもなんだか嬉しいです。

 説得や説明は基本的にレオナがやっているのですが、呼びかけがあるとダイもずっとポップに心を沿わせて見ているんだなという印象が強まります。

 ポップが悩みをぶちまけた後、メルルのアップの後で再びポップの姿を映してのCMを挟む展開には正直驚きました。
 もう少し、区切りがいいところで持っていくかと思ったのですが、ポップの悩みを強調するような区切りでしたね。

 俯き加減で顔が影になって表情が見えず、片手でアバンのしるしを握りしめ、もう片手で拳を作っているポップの姿が、なんだかものすごく悩んでいるっぽくて気に入りました。原作には無かった止め絵なのですが、すっごくポップっぽいです。

 嘆くポップの演技もよかったですが、仲間達からポップへの説得シーンもいいですね。
 レオナはとにかく理詰めで、感情を抑えて淡々と現状を話すことでポップに冷静さを取り戻させようとしている感じでした。

 ヒュンケルも淡々系ですが、レオナと違ってポップなら出来て当然と思っているような印象を受けました。だから、バランやラーハルトの時と違って、熱意が感じられないんですよね(笑)

 だからこそ、ダイの熱意が際立って聞こえたような気がします。
 ダイはただ一生懸命な感じで、でも、そこがいい♪

 ポップの良さを語るマァムは実に可愛らしくて、それはそれでうっとりものでしたが……でも、残念ながらこの優等生的な信頼じゃ、ポップを動かせないだろうなって思っちゃいました。

 この信頼の言葉って、正直、ポップだけにしか適応しない言葉には聞こえませんでしたし。ポップじゃなく、ダイやヒュンケルに置き換えてもまったく同じ言葉を言いそうなイメージでした。

 アニメで、マァムの言葉を聞いて目をそらすポップと、それに気づいていないマァムの改変がすごくよかったです。

 原作でポップに拒否された時、マァムはただただ驚いている感じでしたが、アニメではショックを受けている感じですね。

 ザボエラがポップを見た時の台詞が、微妙に改変されています。

原作ザボエラ「……一人、手こずっているやつがおる……あの小僧か」

 アニメの方が分かりやすい言葉になっていますね。ザボちゃん、マァムに化けた時にはポップの名前を呼んでいたのに、必要が無ければ個別認識しようとも思わないみたいです(笑)

 ザボちゃんが悪辣なことを思いついたとき、紫がかった灰色でのモノクロ画面になったのは意外にもかっこよかったです!
 ザボちゃんの毒牙の鎖、カラーだと思っていた以上に不気味でした……っ、
 でも、ベースが緑色と黄緑、飾り部分が赤という色彩はザボちゃんの服と同じと言えば同じなので、センスは同一なんですね。

 チウがヌンチャクを構えるシーン、横向きはともかく、縦に構えている図はなかなか頑張っているなと思いました。原作では敵と同時に自分も傷つける武器になっていましたが、アニメでは割と普通に使っていましたし。

 原作ではここで、裏切り小僧(もしくは鬼小僧)二匹とのやり取りがありましたが、アニメではなかったですね。次週に期待!

 マァムがポップの台詞にショックを受けた時の台詞、思っていた以上に傷ついていた感じなのが驚きでした。
 原作では、マァムはこのシーンではもっと落ち着いている印象だったので、アニメだといかにも自分の気持ちを抑えきれない普通の女の子っぽいですね。

 正直、原作よりも脈を感じます(笑)
 後、メルルの台詞も改変されています。

原作メルル(それは……ポップさんがマァムさんを好きだから……。マァムさ
んだけには自分の弱さを見せたくないと思っているから……。……だから……マァムさんのポップさんへの気持ちが、仲間同士の尊敬に過ぎないって知って……!!)

 原作の方が理屈っぽいですが、アニメでは短くまとめ、代わりに声優さんが感情をのせることでメルルの気持ちを強く表現している印象です。

 メルルがザボエラの悪意に気づいた瞬間、画面がネガポジ逆転して、色が変わる演出、いいですね!

 毒牙の鎖、ノーマルの配色でも十分に不気味でしたが、紫色っぽい魔力が込められた色合いはもっともっと不気味でした(笑) 中央の目玉が生っぽくて、よけいに嫌な印象です。

 毒牙の鎖を振り回す際、ザボちゃんはまったく手を動かさないので、魔力で回しているっぽいですね。

 ポップが足を後ろに引いた時、ダイがすぐにハッと気づいたシーンはアニメの改変です。原作ではこのシーン、ダイとヒュンケルは後ろ姿なので表情は見えませんでした。

 戦いの最中に、倒れた仲間の兵士を泣きながら抱きしめている兵士の図がいたのが、実にいいですねえ。これもアニメの改変ですが、ダイ達視点とは違う一般兵らの悲哀を感じます。

 みんなが傷つくのを見たくないというポップの主張と同時に流れる映像名だけに、威力があります。

 ザボちゃんが毒牙の鎖を投げるシーン、身をのけぞらせて勢いよく投げていました。ザボちゃんのこんなアクティブなアクションを見たのは、初めてかもしれません(笑)

 ザボエラの光弾に対して、ロン・ベルクが原作よりも必死さがアップしています。原作では一度きりでしたが、アニメでは二度、止めろと叫んでいました。

 光弾、原作ではポップに真正面から投げつけられた雰囲気でしたが、アニメでは横からポップを狙った形になっていました。
 原作ではポップが寸前で弾に気づき、ザボちゃんがやったと喜び、血飛沫をあげたメルルのカット、という順番でした。

 アニメでは、ポップが寸前で弾に気づき、駆け出すメルルの足元のカット、白い世界に上がる血飛沫、ザボちゃんの喜びの後、メルルの腹に毒牙の鎖が刺さっているカット、という順番になっています。

 メルルがポップを庇うシーン、原作通りの構図ながら、色味をぐっと抑えた渋い色彩で描かれていたのが印象的でした。

 原作ではメルルは毒牙の鎖が刺さった瞬間から、ずっと目を瞑り、口もほぼ閉じているのですが、アニメでは目を閉じたまま叫び声を上げるようなカットが含まれていましたね。ちょっと色っぽい……とか思ってはいけないシーンなのですが(笑)

 倒れているメルルがまた、実に美しい……っ。
 黒髪の乱れ具合が、素晴らしく絵になっていました。原作の構図よりも、もっと真上から見た俯瞰図になっていましたね。
 
 メルルの様子に、エイミやフローラすぐに気づいたのもアニメの改変です。メルルを大切に思ってくれて、庇おうとしてくれたんだなと嬉しくなります。
 また、原作ではエイミはポップのホイミ要求の声で異変に初めて気づいた雰囲気でした。
 すぐに駆けつけるも、怪物に邪魔をされるのもアニメの改変です。

 メルルの出血、アニメでは水たまりのように広がっていました。原作の歪な血の広がり方はある程度吸い込まれてたかのような感じだったのですが、アニメではどうやら処刑台の岩は水を完全に弾く防水仕様のようです。

 レオナの台詞も、微妙な改変があります。

原作レオナ「マァムも鈍感だけど……キミも相当なものよ! メルルはね、誰よりもキミのことを信じてるの! ……彼女はね! キミが好きなのよっ!!」

 原作の方では、ポップとマァムを比較する余裕がある感じですね。アニメでは、レオナはどちらかというとメルル寄りっぽい気がします。
 
 メルルからポップへの告白シーン、メルルを抱きかかえるポップの後ろから見た光景になっていましたが、青空が美しく、戦いは土煙に紛れて見えない仕様になっていました。

 ……そりゃ、さっきまでみたいに空にザボちゃんが浮いていて、人間と怪物の死闘が繰り広げられていた日には、せっかくの告白シーンが殺伐化してしまいますしねえ。百歩譲って戦いは許しても、ザボちゃんは絶許です。

 メルルの告白シーン、回想シーンが見事なまでにポップの姿ばかりでした。
 
1 ベンガーナデパートで、レオナがドラゴンキラーを買うと言い出した時のひょうきんな驚き顔のポップ。

2 同じくベンガーナデパートで、ドラゴン襲来時、表情を引き締めて窓からトベルーラで飛ぶポップ。

3 テランの地下牢、ダイを見捨てて逃げる振りをした時の悪ぶった演技をしているポップ。

4 バランへのメガンテ直前、ダイに別れを告げたときの泣き顔のポップ。

5 バラン戦後、テランの森の小屋で見張りを買って出て、次は絶対に外さないと決意するポップ。

6 同じくテランの森の小屋で、ゴメちゃんのほっぺたを引っ張って遊んでいるポップ。遠くの木陰に、メルルの姿が見える。

7 ランカークスに、武器屋を見に行ったときのポップ。母親の姿を見て、目を見開き驚いているポップ。彼のすぐ後ろにはマァムがいる。ほとんど見えないが、彼の後ろにはダイもいて、髪の毛の先っぽだけ見える。

8 同じくランカークス。母スティーヌと抱き合うポップ。

9 死の大地へ向かう時の気球船の中。エイミがヒュンケルに好意を持っていると気づき、マァムにそれを耳打ちしているポップのスケベ面。それを少し離れたところで見ているメルル。

10 同じく気球船で、ダイとポップ、それにゴメちゃんが拳を打ち合わせて笑っている。

11 親衛騎団との初戦後、チウ達を救出に行く寸前。パプニカの法衣を着ているポップが陽気にウインクをしている。

 メルルの回想シーンは、悲しいことにポップとメルルが直接関わっている思い出が無いんですよね。傍観者の立場でポップを見つめていると言った感じで、もっといいシーンを選んでもいいのにと言いたくなりましたよ!
 
 死の大地へ向かう寸前に、落ち込んでいるメルルをポップが励まして肩を叩くシーンとか、テランの山小屋でポップがメルルの帰りを迎えてくれたシーンとか、映像にはなっていなかったとは言えポップの服を直してあげるシーンとか!
 ああ、回想シーンの選択まで切ない……!

 エイミが駆けつけてくるシーン、剣が納められていたのが残念。原作ではメルルの元に辿り着くのと同時に、剣を納めていました。走りながら剣を鞘に収めるアクション、見たかったです。

 後、ポップのセリフが改変されています。

原作ポップ「むっ、無駄でもいいっ!! ホイミをかけ続けてくれっ!!」

 原作に比べ、アニメのポップは必死すぎてエイミさんに失礼なぐらい急かしていますね。

 ポップのアバンのしるしが光るシーン、ポップとレオナの台詞の順番や内容が、微妙に改変されています。

原作レオナ(ダイ君じゃなかったんだわ……! ポップ君の魂の力こそ……!)

 それにしても、メルルと柔らかな緑の光がものすごく似合っていますね。光の中で気を失ったメルルが、まるで天使のよう……♪

 ポップの覚醒シーン、思っていた以上に綺麗でびっくりしました。レオナのミナカトール覚醒のように、白く眩い光なんですね。さすがのヒュンケルさえ驚いているのが印象的でした。……原作では、ここでも平気な顔していたのですが(笑)
 後、エイミさんの台詞がかなり改変されています。

原作エイミ「あ、あああっ!! この凄まじい魔法力はっ……!! 回復系のパワー!? まっ……、まさか、ポップ君……っ!! 賢者にっ!?」

 大抵は原作の台詞の方が説明的で、アニメの方が端的でぶつ切りな感じが多いのですが、この台詞に関してはアニメの方が落ち着いている気がします。
 ポップの悩みと覚醒にたっぷりと時間を取った展開に、大満足♪

 次回予告、ネタバレをしないギリギリさで、思わぬ敵の存在を匂わせたのにホッとしました。タイトルの『最後の挑戦』も、『誰』のものか書いていなかっただけに、ダイ達の挑戦と取れるところがいいですね。
 ようやく、普通の予告になった気が(笑)

 でも、内容を知っている人には、バーンパレスに入った途端、みんなが分断されるピンチ展開が見て取れるのが嬉しいところ。
 

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