『正義の快進撃』(2021.5.7)

  
 

《粗筋》

 アバンの呪文により、閉ざされていたバーンパレスへの扉は見事に開いた。
 驚くダイ達の目の前で、扉は完全に開ききった。
 それを見たポップは、扉が「ようこそいらっしゃい」とばかりに勝手に開いたと、ことさら陽気にはしゃぐ。

 アバンがみんなに呼びかけ、先へと進む。
 が、ダイだけはその場にとどまっていた。それに気づいたアバンが、彼に優しく声をかけた。

ダイ「先生、ありがとう……!」

 嬉しそうな笑顔で、ダイはアバンに礼を言う。
 今こそ、ダイは先生が助けに来てくれて良かったと心の底から喜んでいた。魔宮の門を父と壊した経験から、今度はどうやって壊すかとしか考えていなかったダイにとって、アバンの見せてくれた解決策は目からウロコが落ちる思いだった。

 アバンのやり方を見て、ダイは力が正義だと言い切るバーンが間違っていると確信を持てたのだ。
 アバンも、優しくそれを肯定する。
 力だけが全てでは無いと言いながら、本当の戦いはこれからだとダイの後ろに回り込んでダイの背を軽く叩く。

 元気よく頷き、門をくぐって先に進むダイ。その行く手には、ポップ、マァム、レオナの三人が足を止めて待っていた。
 彼らの元へ向かうダイを見送ってから、アバンは後ろを振り返る。

 そこには、数え切れないぐらい群がる怪物達と、こちらを振り向いているヒュンケルの姿があった。
 落ち着いた表情で、アバンを見つめているヒュンケル。

 アバンは姿勢を正すと、頭を深く下げて一礼する。その背に見えるバーンパレス内は暗闇に包まれていて、先を行ったはずのダイ達の姿も見えない。
 頭を上げたアバンは、身を翻して城の奥へ向かって走り出した。

 怪物達も全員が城に突入したことを知り、ヒュンケルを倒して追撃しようと騒ぎ出す。

 が、ヒュンケルは不敵にも怪物達に背を向けたまま、ぶっきらぼうに言い切った。

ヒュンケル「無理だな」

 意外な発言に、その場にいた怪物達は一斉にヒュンケルに注目する。
 本当の父親が帰った以上、不慣れな長兄役は終わりだと言うヒュンケル。これからは一介の戦士に戻ると言うヒュンケルの背中に、少しばかり力が込められる。

 怪物達はヒュンケルの発言の意図が分からず、いらつきのままに一斉に襲いかかってきた。
 が、ヒュンケルは全く焦る様子も見せずに、腕の盾に仕込まれた槍の柄を握りしめる。

ヒュンケル「……わからんか? 今からオレは、後先考えずに思う存分暴れられると言うことだ」 

 まるで、時間がゆっくりと流れているかのように全ての動きが遅くなって見える。食うに跳び上がり襲いかかってくる怪物達の動きも、振り返るヒュンケルの動きさえもスローモーションのよう。

 振り返りながら槍を垂直に構えたヒュンケルは、それを両手で力強く石の床に打ち付けた。
 十字型の槍の刃の合間から、怪物達の姿がはっきりと見える。

ヒュンケル「いくらでも来い! 今日のオレは疲れを知らん!!」

 不敵にそう言い放つヒュンケルの顔には、隠しきれない喜びが溢れていた。刃先から生み出される光が、その顔を照らして輝く。






 その頃、バーンパレス内を走っていたポップとマァムは、背後からの光に気づいて振り返った。二人とも、驚きを隠せない。

マァム「まさか……!?」

ポップ「今日、二発めェ!?」






ヒュンケル「グランドクルス!」
 
 ヒュンケルの掲げた槍から強烈な光が迸り、怪物達を吹っ飛ばした。
 真上から見れば、城へと続く一本道をそのまま引き裂くように伸びた光が、範囲内の敵を見事なまでに一掃していた。
 
 運良く、左右に分かれた道部分にいた怪物達はその場に取り残されていたが、数が半減し、しかも左右に分断されてしまっている。
 凄まじすぎる攻撃に、残った怪物達が呻く。
 そんな怪物達の前でヒュンケルは槍を回転させながら持ち替え、身がまえた。

ヒュンケル「決してここは通さんぞ!!」







 その頃、ダイ達はアバンを先頭にバーンパレス内をひた走っていた。
 敵の本拠地であるはずのそこは、意外にも白亜の美しい城だった。
 単に広いだけでは無く、壁や天井にも細かな装飾も施されていて優雅ささえ漂わせている。

 その美しさにマァムだけでなく、城を見慣れているはずのレオナでさえ超一流の宮廷だと驚きを隠せない。

ポップ「どこの城より豪勢だよっ……」

 どこか不機嫌そうに、ポップもそう認める。
 アバンは、あまりにも一本道過ぎることを指摘した。その理由は、二つあるという。

 一つは、城の美しさを誇るため、ルートを決めている可能性。
 そしてもう一つは、万一敵が潜入してきた場合、直進しかできないようにして挟みうちにするため。
 神妙な顔で、それを聞きながら走るダイ達。

 







 彼らは、竜の石像の口から水が流れる噴水の前で足を止めた。
 見上げるような階段を前にした踊り場のような場所は、これまでの回廊と違って開放感があった。

マァム「ここも一見素敵な場所だけど……」

 レオナはアバンの言う通り、どれだけ進んでも道が別れないことを気にしていた。
 アバンは後続はヒュンケルが断ってくれているので、これからの課題は行く手を遮る敵をどう倒すかだと言う。

 と、そこにゼイゼイと荒い息をつくポップが、ちょっと待ってくれと頼み込む。
 壁により掛かってバテているポップは、もう駄目だとそのままズルズルと座り込む。
 魔法力が空の上、走っているせいで体力が戻ってもすぐに減ってしまうと愚痴るポップ。

ダイ「そういや、ポップはずっとヘトヘトのまんまだっけ」

 レオナはダイを振り返り、ダイもヘトヘトだったんじゃないかと問うが、ダイは走ってたらそこそこ元気になったとあっけらかんと答える。
 どーゆー身体の構造をしているのかと、レオナは内心、呆れ顔だ。

 ヨロヨロしながらポップはマァムに近づき、回復呪文をかけてくれるようにねだる。

 が、両手でマァムに抱きつこうとしたポップを、マァムは無表情のままスッと後ろに下がって躱した。手が空ぶって、自分で自分を抱きしめるようなお間抜けな格好になったポップは、その場で転んでしまう。
 が、少しもくじけず、マァムの足元にすがりつくポップ。

ポップ「死にそうなオレをほっとくのかよぉお〜?」

 足元に頬ずりしてせがむポップに、マァムは怒りの表情を浮かべて拳を握りしめる。

マァム「じゃあ、こっちの方で楽にしてあげようかしら……?」

 その後、逃げ出したポップと、ポップの髪を掴んで追いかけるマァムが、じゃれ合う子犬のようにその場をぐるぐると駆け回る。

ポップ「いてでっ、いてっ!」

マァム「逃げないでよぉっ」

 そんな二人の騒ぎを横に、腕を組んで考え込んだアバンは、手をポンと打ち、あそこで一休みしていきましょうと決定する。
 これには追いかけっこをしていたポップとマァムだけでなく、ダイとレオナも驚いた。

ポップ「敵の城の中で?」

アバン「ええ!」

 にっこりと笑ったアバンは、両手で「魔法の筒」を取り出して見せた。






 その頃、バーンパレスの奥では瞑目するバーンのところに、重々しい足音が近づいていた。金属的なその音に、バーンは表情一つ変えず、振り返りもしない。

???「出番が近そうですな、バーン様」

 その声を聞いて、バーンはようやく目を開ける。

バーン「おまえか」

 バーンの玉座のすぐ後ろ、紗のカーテン越しに見えるのは巨体の影だった。謎の人物は、ミストバーンだけに任せておけないと自信満々だ。慇懃に、だがしっかりと、バーンパレス最強の守護神の自分を売り込んでくる男に対し、バーンは振り向きせず答えた。

バーン「好きにしろ」

???「はっ」

 短い答えと共に、金属的な足音が遠ざかっていく。それを聞きながら、バーンは再び目を閉じた。






 その頃、アバンはカラフルなピクニックシートの上に皿やカラトリーなどを鼻歌交じりに広げていた。
 その様子を、キョトンとして見ているダイ達。

アバン「いやぁ〜、よかった、よかったぁ〜♪ こんなこともあろうかとぉ〜♪ ピクニックセットを持ってきておいてぇ〜♪」

 どんな事態を予測していたのかしらと、仲間達にこっそり耳打ちするレオナ。ダイやマァムは困ったように苦笑するが、ポップはどこか不機嫌そうだ。
 突然、敵陣で休憩を取ろうとしているのが気に入らないとばかりに、ブツクサと文句を言い出す。

 ヒュンケルが一人で戦っているのを気にして、声高に不満を口にするポップを、マァムは困ったような顔で横目で見ていた。
 休憩しているなら動いた方がいいと言い切り、よろめきながら立ち上がろうとするポップ。

 が、そのポップの後頭部に白い羽根が突き刺さった。
 その瞬間、白目を剥いて前のめりに倒れ込むポップ。
 突然のことに驚く一同。心配そうにポップを呼ぶマァムの横では、ダイがポップとアバンを見比べつつ、事情を聞こうとする。

 しかし、ポップの身体が淡い緑色に光ったかと思うと、彼はすぐにむくっと起き上がった。
 自分の手を見つめたポップは、身体の向きを変えて仲間達に向き直り、魔法力が回復していると呟く。
 それを聞いて、驚くダイ達。

 弟子達の驚きを楽しんでいるかのように笑い、アバンは金色の羽を掌に載せて一同に見せながら、説明をする。
 先程使用した金色の羽は攻撃用の羽、ゴールドフェザー。
 輝聖石の簡易版の輝石を使い、使用魔法の増幅をするアイテムだという。

 もう一本、銀色の羽を取り出しながらアバンは、ポップに放ったのは主に回復用に使うシルバーフェザーだと説明した。
 こちらの宝玉には聖石があり、魔法力を蓄積できるのだという。マァムの魔弾銃の弾と同じものだ。

 説明を聞いたマァムは、その両方の特性を併せ持ったのがアバンのしるしなのかと問いかける。
 アバンはそれを肯定する。

 話を聞いて、ダイは自分の胸元からアバンのしるしを掌に載せ、じっと見た。

 輝聖石は熟成に時間がかかるので、破邪の洞窟では金と銀の二種類の羽しか作れなかったとアバンは説明する。
 ポップの後に回り込んだアバンは、彼の頭を抑えて羽を引っ込ぬいた。

ポップ「ァテッ」

 抜き取った羽を眺めたアバンは意外そうに、ポップの魔法力が満タンになっていないことを指摘する。並の魔法使いなら2、3人満タンにできる魔法力を入れていたのに、空になったと語るアバン。

 それを聞いて、ポップはいつの間にか自分が成長していたことに驚く。
 アバンはすました顔でもう一本シルバーフェザーを取り出し、念のためもう一本と薦めてきた。
 が、ポップはもういいと、嫌がって及び腰になる。

 しかし、ぐいっと詰め寄るアバンは、そうはいかないと強く言い聞かせる。
 心や身体が少々痛んでも、万全の体調を整えることも使命の一つだと言い、そうしなければ身体をはっている人に申し訳ないのではと諭した。
 それを聞いて、ハッと真顔になるポップ。

 納得したポップを見て、アバンは笑顔を浮かべ、二本のシルバーフェザーをマァムの両手の上に乗せた。
 それでみんなの魔法力を回復させるように指示し、ついでに体力の回復も委任する。

 素直に頷きつつも、先生はどうするのかと問うマァム。
 アバンはその間、先を調べてくると言う。この先には強力なトラップがあるはずだから、先手を打ってそれを潰してくるといい、マントの下から巨大なハンマー…… 「罠潰しのハンマー」を取り出した。

 どこに隠し持っていたのか疑問に思う大きさに、ダイ達は目を丸くするばかりだ。

 同時に城の構造も調べてくると言うアバンを、一人では危険じゃないかと心配するダイ。

アバン「ええ、そうですね。そこで、レオナ姫」

 突然指名され、戸惑いながら返事をするレオナ。
 手伝いを頼まれて、さらに戸惑いを強める。だが、優しく微笑みアバンを見て、彼女は笑顔で承知した。

 立ち上がり、マァムにダイ達のことを頼むレオナ。マァムはいささか心配そうだ。
 だが、アバンはすぐに戻るから大丈夫だと言い、ダイ達は回復が済んでも個々を動かないようにと指示する。
 お弁当でも堪能しておいてくださいと言うアバン。
 
 笑いながら、隣に並んだレオナの背後にスッと回り込むアバン。いきなり、レオナの肩を掴んだかと思うと、そのままものすごい勢いで階段を駆け上りだした。そのスピードに驚いたのか、悲鳴を上げるレオナ。
 
 それを座り込んだ姿勢のまま、呆然と見上げるダイ、ポップ、マァム。アバンの立てていった煙が薄れた頃、ポップは気の抜けたように呟いた。

ポップ「……どうする?」

マァム「回復しましょ……」

 マァムもまた、気が抜けた様子だ。
 
ダイ「お弁当ってこれだよね」

 ダイは中央に置かれたお弁当箱に手を伸ばす。
 蓋を開けると、中にはアバンの顔を模したキャラ弁が入っていた。

ダイ「うわぁ、変わんないなぁ、先生」

 ダイとポップは嬉しそうに、マァムはどこか心配そうな表情でお弁当を囲む。
 ポップはこのままバーンまでやっつけちゃいそうな勢いだと苦笑するが、マァムはそれをたしなめる。

マァム「先生が来てくれたからって、安心してはダメよ。これまで通り、私達だけで頑張るつもりでいないと」

 マァムの優等生的発言に、ちょっとげんなりした表情を浮かべるポップ。

ポップ「う〜ん、なんだよぉ〜」

 そこに、ダイが真面目な声で話しかけた。

ダイ「今は先生の言う通り、おれたち、完璧に回復しておこう。いざという時、全力で戦えるように。もう二度と……先生が命を賭けて戦わなくてもいいように……」

 最後には俯きがちにそう言ったダイの言葉に、ポップは服の袖をまくり上げ、腕を剥き出しにする。
 早く回復をやっちまおうと、開き直ったように催促するポップを唖然と見つめるダイとマァム。

 頭に刺されるのは勘弁なと言うポップに、ダイとマァムは思わず噴き出していた。笑い出した二人に、ポップはさらにおどけた口調でせめて腕にとねだる。

ポップ「そーっと、な」

マァム「一緒でしょ!」
 
 より一層、笑い声が大きくなる中、お弁当のアバンの顔も笑っているかのようだった――。







 先行して回廊を進むレオナは、少し思い詰めたような口調でアバンに話しかける。
 自分が何をお手伝いすればいいのか、問うレオナ。破邪呪文ではミナカトールしか使えないことを気にしているレオナだが、アバンは優しく答えた。

アバン「いいのですよ、姫」

 レオナに来て貰ったのは、これを受けとって欲しいからだと言い、ゴールドフェザーとシルバーフェザーの入った入れ物を差し出すアバン。

レオナ「これを、私に……?」

 戸惑いながらも、フェザーを受けとるレオナ。

レオナ「でも、どうして……」

アバン「あなたなら、私の代わりが務まると思ったからです」

レオナ「私が!?」

 アバンの思いも掛けぬ言動に、レオナはただ、驚くばかりだった。


 







 その頃、地上ではロン・ベルクとミストバーンが地上に降り立って剣を交えていた。激しい動きで相手を切りつけ、互いに己の武器でその一撃を受け止めている。
 めまぐるしく攻守が入れ替わる戦いの最中、ザボエラが情けない声でミストバーンに呼びかける。

ザボエラ「ミストバーン様ぁ〜」

 地面を走ってミストバーンの方へ駆け寄ってくるザボエラは、こんなはずではと泣き言を漏らしていた。

 ノヴァが大きく振りかぶり、自分よりも巨大な怪物を一刀両断する。
 クロコダインは空を飛ぶ怪物の尻尾を掴み、その怪物を武器のごとくぶん回して近くにいた怪物ごとぶっ飛ばした。

 バダックのパプニカ一刀流と、カールの騎士の協力プレイで敵を確実に仕留めていく。
 チウもズタズタヌンチャクを見事に敵の顔面に決めた。勢い余って自分の脳天にも当ててダメージを受けるも、敵は完全にひっくり返る。
 ふらつきながらも堪えきったチウは、不敵な笑みを浮かべて言い切った。

チウ「へ、へへへ……魔界のモンスターも、たいしたことなかったな……! こらえきったぞ!」

 見れば、魔王軍側で立っているのはすでにミストバーンとザボエラのみ。怪物達は軒並み、倒れていた。
 ロン・ベルクが淡々とした口調で、ミストバーンらの侮りを指摘する。

 魔界の怪物達はしょせん獣の群れであり、協力することを知らない。ここにいる人間達の方が、少々使命感が上だったようだと断言するロン・ベルク。
 彼の言葉の正しさを証明するかのように、ノヴァやその場にいる戦士達の目は気迫に満ちており、確固たる信念が感じられる。

 彼らが守っているミナカトールの魔法陣の中には、毅然と佇むフローラが、そしてメルルを抱きかかえて治療するエイミの姿があった。

 それを、感情の読めない双眸で見返すミストバーン。顔を引きつらせたザボエラは、心の中でミストバーンと人間達をぶつけ合う策を立てる。その間に自分だけは逃げるというセコい作戦だが、ザボエラは躊躇なくそれを実行した。

 ミストバーンにすがりつくようにして、彼を持ち上げる形で戦うようにとそそのかし、その間に自分はバーンパレスに戻ってバーン様をお守りするとまくし立てる。

 だが、ミストバーンはそれを一笑した。
 苦しい言い訳だと言い、こんな連中も倒せないザボエラがダイたちのいるバーンパレスに戻って何が出来るかと、問い返す。
 答えに詰まるザボエラ。

ノヴァ(仲間割れ……?)

 剣を構えたまま、成り行きを見守るノヴァ。ロン・ベルクも、静かに魔族の会話を見守っている。

 ザボエラを自業自得とばかりに、突き放すミストバーン。

ミストバーン「今まで己のためにいろいろな奴を利用してきたおまえだが、最後の最後で悪い相手を選んだな……!」

 おののくザボエラに背を向け、バーンパレスに戻り、バーン様を守るのは自分だと宣言するミストバーン。ザボエラを助ける義理はないと言い、すがりつくザボエラに怒りを露わにして怒鳴りつける。

ミストバーン「たまにはッ! 自分の手足を動かせっ!!」

 ショックを受け、絶句するザボエラ。
 そんなザボエラを鞭打つがごとく、ミストバーンは容赦なく言葉で彼を追い込む。どうせこのまま成果を上げなれば処刑されると言い、せめて人間と光の魔法陣を始末するように命令した。

 怒りに手を震わせながらも、ザボエラは彼の背に必死に話しかける。

ザボエラ「ミストバーン様……いや、ミストバーン!」

 かつて同じ六団長だったという仲間意識を揺さぶりかけ、仲間を見捨てるのかと訴えかける。
 だが、正義の使徒の真似事のような薄っぺらな呼びかけを、ミストバーンは鼻で笑い飛ばす。

 まるで揚げ足を取るように、それほど付き合いの長い仲間なら、こちらがこんな時に言う言葉ぐらい分かるだろうと、揶揄するミストバーン。
 肩越しに振り返るミストバーンを見て、ザボエラは雷に打たれたような衝撃に震える。
 もちろん、彼は知っていた。

ザボエラ「だ、……大魔王様のお言葉は……」

 覚えていないのでは無く、衝撃からそこまでしか呟くことの出来ないザボエラ。

ミストバーン「そう、全てに優先するのだ!」

 俯き、ザボエラは今度こそ言葉を失う。崩れ落ちるように、その場に膝をつくザボエラ。
 クロコダインはそれを見て、ザボエラが捨てられたことを悟る。これまで数々の戦士を踏み台にし、捨ててきた彼が、逆に捨てられる立場になったのだ。
 打ちひしがれたザボエラの小さな背中を、静かに見つめるクロコダイン。

 ザボエラが了解したようだと満足げなミストバーン。
 が、そんな彼にロン・ベルクが声をかける。自分との決着がまだだと挑発するが、ミストバーンはそれを笑ってやり過ごす。

ミストバーン「フッ……そうとってもらっても結構」
 
 自分と互角の男はそうはいないと、ロン・ベルクを手放しに賞賛するミストバーン。しかし、同時に彼はロン・ベルクも自分も本気で攻撃して居鳴ったことも承知していた。
 全てを見透かしたように笑うミストバーンを、険しい目で見つめるロン・ベルク。

 ミストバーンはロン・ベルクに、そして、思ったよりも骨があった人間達に別れを告げる。
 強靱な肉体と精神を持った者を敵味方問わず尊敬するというミストバーンは、諸君らの活躍を永久に心にとどめておくことを約束し、その場から消え去った。

 ミストバーンは消え、ザボエラだけが取り残される。

ノヴァ「そして、味方のくせに尊敬されなかった奴がここにいるってわけか」

 クロコダインはザボエラに、もう他に手はないから降伏するようにと呼びかける。バーンパレスに戻っても処刑されるし、この人数と戦って勝てると思うほどバカではあるまいと声をかけたのは、明らかにクロコダインの善意だった。

 が、ザボエラは「バカ」と言う言葉に過敏なまでに反応を見せる。

ザボエラ「……ばか? バカ、か……」

 含み笑いながら、立ち上がるザボエラ。その笑いは、哄笑へと変化した。
 
ザボエラ「笑わせよる! よりによって、バカの見本のようなおまえに、このワシがバカ呼ばわりされるとはな!」

 嘲りの表情のままに、クロコダインを笑うザボエラ。
 それに怒りを見せたのは、クロコダイン本人では無くバダックだった。が、ザボエラは人間には目もくれず、クロコダインに向かって同情を払いのけ、強気に言い返す。
 
 ミストバーンは利用し損なったが、頭の出来が違う自分は切り札を用意していると豪語するザボエラ。
 自分の手を汚さなくとも、この場にいる怪物達が自分の身を守ってくれると自信満々だ。

 そんなザボエラに対して、彼の自慢の怪物達はどいつもこいつも虫の息だと言い返すバダック。
 意外にも、ザボエラはそれに反応した。
 
ザボエラ「なぁにィ? 虫の息?」

 確かめるように周囲を見ると、地面に倒れた怪物達が苦しそうに喘いでいる。動くことは出来ないが、息はあるようだ。

ザボエラ「……困る……そいつは困るな」

 どこかイッてしまった目をぎらつかせ、ザボエラが魔法力を高める。

ノヴァ「呪文か……来るぞ!」

 ノヴァの注意に、兵士達が魔法攻撃に備えて身がまえる。
 魔法力を高めたザボエラは、全身を光らせて無数の魔法団を四方八方へと打ちだした。

 驚く人間達。
 が、魔法弾は人間の頭上を飛び越えて空高く舞い上がり、地上にいる怪物達を貫いた!

 味方のはずの怪物に攻撃するザボエラに、驚くバダックとクロコダイン。
 無数の魔法は次々に怪物を貫き、苦悶の声と共に彼らは次々と絶命していく。
 打ち込まれた魔法は、球として彼らの胸に残された。

 瀕死の部下を自らの手を殺したことに、憤慨するクロコダイン。
 だが、ザボエラは全く動じる気配もない。クロコダインの頭の悪さを蔑み、死体で無ければ最終兵器のパーツにならないと言う。

ザボエラ「超魔合成!」

 手を広げ、ザボエラがそう叫んだ瞬間、怪物達に埋め込まれた魔法の球が発行して浮き上がる。埋め込まれた死体ごと浮いた球は見る間に集まり、ザボエラの方へと引き寄せられていく。

 不自然な姿のまま飛んでいく怪物の死体に、兵士やチウは目を見張るばかりだ。
 ザボエラからの光が強まり、みんな、そのまぶしさに目を瞑る。

 白光の後、見えた者は無数の怪物達が寄り集まって作られた不気味な人型だった。怪物達は原型を残しつつも半ば溶けて融合し合い、より不気味な様相を呈している。
 寄り集まった身体から、怨念じみた呻き声が聞こえるような気さえする。
 
 不気味な人型は、ザボエラの声で語る。
 考えた末、ザボエラが選んだ究極のパワーアップのことを。

 怪物達の身体が不意に色を失って膨れ上がり、一つの肉体になるように統合されていく。腕が、爪の生えた足が、次々に形作られる中、ザボエラは得意げに語る。

 超魔生物は圧倒的に強いが、生命力を消費するという欠点がある。人に実験するのはいいが、自分ではやりたくないと考えるザボエラ。

 変化していくザボエラを、チウは驚いて見つめていた。
 変わっていく身体に、ふさふさとして毛並みが伸びていく。

 ザボエラの理想とは、自分が一切痛みを感じること無く、他者をいたぶれること。

ノヴァ「さ……、最低の発想だ……ッ!」

 引きつった顔で、変化していく怪物を見つめるノヴァ。
 角が生え、額に目が浮かぶ。骸骨じみた眼下の奥に、光が宿った。

ザボエラ「それは……こいつじゃぁあ!」

 クロコダインをはるかに凌ぐ巨体の怪物が、上からその場にいた者を見下ろしていた。超魔生物よりも格段に細いながら、猛々しさと禍々しさでははるかに勝る怪物――超魔ゾンビの誕生だった。

 驚きと恐れの入り交じった顔で見上げる人間達。
 だが、ロン・ベルクは恐れること無く剣を構える。その刃に、ロン・ベルクの不敵な顔が映り込んでいた。

 デカい図体をこけおどしと決めつけ、大きくジャンプして斬りかかるロン・ベルク。
 彼の剣は見事に、超魔ゾンビの脳天を捕らえ、血が吹き出る。

チウ「やった!」

 喜ぶチウや人間達。
 が、次の瞬間、ロン・ベルクの剣にヒビが入った。あっさりと砕け散る剣。さすがのロン・ベルクの顔にも、驚愕が浮かぶ。

ノヴァ「ああっ!?」

 地面に降り立ったロン・ベルクは、信じられないように折れた自分の剣を見つめる。
 ザボエラは全くダメージの感じられない声で、ヌケヌケと言ってのけた。

ザボエラ「強烈な一撃をありがとう、ロン・ベルク。これで結論が出た……! これこそまさに、究極の超魔じゃよぉっ!」

 折れた剣を頭に突き刺したまま、勝ち誇る超魔ゾンビ。
 ロン・ベルクの顔に、怒りと焦りの色合いが浮かぶ。それは、他の人間達も同じだ。
 クロコダインも、あのミストバーンを圧倒したロン・ベルクの攻撃が効かなかったことに驚きを隠せない。

 眼科の奥から片目だけを光らせ、超魔ゾンビの笑い声だけがロロイの谷に響き渡った――。

 


《感想》

 門が開いた時の、ポップの喜びっぷりやはしゃぎ方がいいですね。原作のギャグ顔ではなく、割と普通っぽい嬉しそうな感じでした。

 アバン先生が立ち止まっているダイに気づいて声をかけるシーン、原作では戸惑いがある感じでしたが、アニメではごく自然に話しかけている感じでいいですね!

 どの弟子にもきちんと目を配っていて、こまめな声をかけを自然にしている感覚です。

 ダイが先生に背を押された後、ポップ達のところへ向かう際、三人が立ち止まって待っているのもなんだか嬉しかったです。原作ではないシーンなので。
 それを見送るアバン先生の優しい表情が、振り返る際、眼鏡が白く光って表情が見えなくなる演出には痺れました。

 原作でもたびたびアバン先生の眼鏡が光って表情が見えなくなる演出はあるんですが、なまじ表情が見えないだけに彼が今、どんな気持ちだろうと想像する余地が深まる気がします。
 このシーンでは、ヒュンケルへの心配の念を感じますね。

 ヒュンケルが一介の戦士に戻ると発言する時、少し、肩に力を入れたように見える後ろ姿がカッコいいです!
 ヒュンケルが槍を腕から引き抜くシーン、カッコいいですが、原作ではここでは普通に手に持っていましたね。
 アニメでは、ヒュンケルはこまめに槍を着脱している模様です(笑)

 グランドクルス直前のスローモーションと、炸裂後の上から見た図、実に良かったです!
 原作ではグランドクルスで数体の怪物が消滅したところで彼の出番は終わっているので、その後の動きやセリフの改変は嬉しいですね♪

 原作ではこの後、バーンとミストバーンのやり取りやキルバーンの仮面選びのシーンがあるのですが、アニメでは前回やったので当然のようにカット。
 地上組のシーンも後回しになります。

 バーンパレス内部、原作で見た感じでは、てっきりギリシャ風な白亜の城のイメージだったのですが、窓やら、床に近い部分などに青いマーブル模様の装飾が多数入っていたのにびっくりしました。

 透明感はないのですが絵にしては単調すぎるので、青をベースにしたレアな大理石なのか。
 それともガラスかそれに近い素材の窓で、日光がふんだんに入る仕組みなのかなと思いました。

 天井が茶色かったのは、ちょい驚きでした。
 その部分こそ、透明で光を通す素材かと思っていたので。

 窓枠などは、よく見ると金色だったりします。思っていた以上に豪華絢爛な城でした。
 カラーシーンが無かったからとは言え、これまでずっと白一色で想像していた自分のイメージの貧困さを思い知りましたよ(笑)

 ポップのバーンパレスの感想は、アニメの改変ですね。ちょっと不機嫌そうな言い方がいい感じ♪

 でも、ふと思ったのですが、レオナはともかくポップの知っている城って……

ロモス城……クロコダインが暴れたせいで、半壊状態。
パプニカ城……一応、人が住める状態ではあるものの、ヒュンケル率いる不死騎士団のせいで復興中。
テラン城……一応無傷だが、ごく小規模な大きさの城。後、バラン戦後は少々修理が必要かも……。
カール城……バランと超竜軍団のせいで、ほぼ壊滅状態。

 ……比べる対象が、そもそも普通じゃない気がします(笑)
 一番豪華そうなイメージのベンガーナ城には、行ってさえないですしね。

 西洋風の城の構造は、大抵は迷路のように複雑化しているパターンの方が多いんですが、出入り口付近の直進ルートがある場合だと、落とし穴やら、天井から槍だの熱した油だのを落とすスペースがあったりだとか、とにかく不吉なイメージがあります。

 特に、直線通路で上から鉄柵が降ってきて行く手を阻んだり、後続を断ったりするのは映画やマンガでは定番ですね。

 ダイ達が走るシーン、原作と同じようにレオナ、ダイ、マァム、ポップの順で走っているのですが、原作ではダイの側に浮いているゴメちゃんが、アニメではポップの側に居ます。
 
 噴水の前で、マァムが呟くセリフはアニメの改変ですね。
 言うほど素敵な場所かは、悩むところですが。噴水、ライオンじゃなくて竜の口なんですよねえ。
 どうしても、優美さよりも無骨さが前に出ている気がします。

 正直、ロモスの船の船首に飾られた水瓶を持つ乙女の像の方がずっと素敵だと思います。

 ダイとレオナの「ヘトヘト」なやり取り、カットされなくて嬉しかったです♪ レオナのしかめっ面を段階を追って変化してくれたのも、いい感じ。
 なにより、マァムに抱きつくポップの改変がいいですね!

 ポップを躱す際のマァムの無表情さに、爆笑しました。転んだポップを見下ろすマァムの表情がまた、「すんっ」とした感じで、思いっきり興味なさげなのがなんとも(笑)

 ポップの方は、不○二子に抱きつく某怪盗の子孫ばりに甘えた声で抱きつこうとしているのに(笑)
 台詞も微妙に改変されています。

原作ポップ「おれ、もう一発こずかれただけで死にそう……!」

 原作ではポップは最初から這ってマァムの足にすがりつき、太股やらお尻に手を這わせているのですが(笑)、アニメでは抱きつきに失敗してから彼女の足にしがみついていますね。メンタル、強い!

 足にスリスリとほっぺを擦り付けているという、かなり控え目なセクハラなのに、原作よりも怒られているのはアニメならではですね。
 ポップとマァムの追いかけっこが、自分の尻尾を追いかける子犬のじゃれ合いっぽくて可愛いです♪

 でも、アニメの展開だとツッコみたくなりますね……「ポップ、まだ元気に動けるじゃん」と(笑) あ、ボイスはダイでお願いします。

 お弁当の話を聞いた時のポップとアバンの台詞も、アニメの改変ですね。ポップの台詞は、まさに読者全員の代弁だと思います(笑)
 アバン先生がお弁当をどこに持っていたのかは気になっていたのですが、アニメでは魔法の筒の中に持ってきたという解釈なんですね。

 あの筒は中に入っているものを劣化させずに保存する機能があるっぽいので、お弁当入れにはちょうどいいかもしれません。

 ここで、原作通りにバーン様のターン。
 温度差の激しさがすごいです(笑)
 それにしてもマキシマム、出番あったのか……っ! 正直、無くてもいいかと思っていましたが(←ひどい)

 マキシマムの声、思っていたよりも男性的で渋めの声でした。
 しかし、アニメの改変のバーン様の突き放した返答がなんともぶっきらぼうですね。個人的に、バーンはマキシマムをどうでもいいと思っていたんじゃないかという仮説をたてていましたが、それを立証するかのような台詞に笑っちゃいました。

 アバン先生のお弁当を取り出すときの台詞は原作のままですが、歌うような節をつけていたのは予想外すぎっ。ミュージカル?(笑)

 ポップの不満シーン、原作ではもっと小声でブツブツ言っているのかと思っていましたが、アニメでははっきりとアバンを非難していますね。
 文句を言うポップを、横目で見ているマァムの表情がいいです。
 
 アバン先生を信頼し、正義感の強い彼女にしてみれば、師を非難するなんて悪いことだという意識があるんでしょう。だけど、ヒュンケルが一人で戦っていることは気になって仕方が無い部分では、マァムもポップと同じです。

 結果的にポップの非難に賛成も反対もしきれず、気になって横目で見ているしかできない不器用さが彼女らしいですね。

 ポップが白目を剥くシーン、全体を青っぽい色合いにしてスピード戦をかけた表現が気に入りました♪
 ポップが倒れたシーン、マァムが一番驚いているのが見ていて可愛いです。

 原作ではアバン先生が羽を投げるシーンがありましたが、アニメでは羽が飛んでいるシーンだけで、代わりに倒れたポップをみんなが見ている場面でアバン先生が羽を投げたままのポーズを見せるシーンになっていました。

 しかし、ピクニックシートでみんながきちんと正座して並んでいるのって、可愛くていいですね。日本人的にはシートの上なのに靴を脱いでないのは違和感があるし、そのままで正座はどうよと思わないでもないですが。

 フェザーの説明、羽の輝きがすごく綺麗でした。
 アバンの説明を聞いて、ダイが自分のアバンのしるしを確かめるシーンはアニメのオリジナルですね。

 ダイの頭の上からゴメちゃんが、横から一緒にアバンのしるしを見るレオナと、三人そろってしるしを見るシーンが可愛いです。
 でも、ダイとポップのペンダントはやっぱり鎖じゃなくて革紐なんですね(笑)

 アバン先生がポップから羽を抜くシーン、原作では片手で軽く抜いていますが、アニメでは頭を片手で押さえてから引っこ抜いていますね。……アニメの方が深く刺さっているイメージです(笑)

 アバンの説得シーン、原作だと普通に話していますが、アニメだとポップに思いっきり顔を寄せて圧をかけまくっています。
 ポップがヘラヘラ笑った顔で回避しようとしているのも、アニメの改変ですね。笑ってごまかそうとするのがらしくって、いい感じです。

 アバン先生がマァムに羽を渡すシーン、原作では二人とも立った状態で渡していますが、アニメではアバン先生は立っていますが、マァムだけでなく弟子達は座ったままですね。

 アバン先生が脇の下付近を探った挙げ句、巨大ハンマーを出すシーンはなんとも笑えました。しかも、音楽が某猫型ロボット風味(笑)
 アニメではほとんどテロップを流さないくせに、こんな時に限って「罠潰しのハンマー」と名称まで出していましたよ!

 っていうか、原作でも名前が出てなかったのに、まさかここで名前を知ることになろうとは(笑)

 手伝いにレオナを指定するアバン先生、眼鏡が真っ白なあたりがものすごく胡散臭いです!(笑) レオナの肩に手を掛ける動きや、人さらいのような連れ去り方なんか、めっちゃ怪しい!

 それにしても、今回はダイの頭の上にゴメちゃんが乗っているシーンが長く続いて、すごく癒やされます。ふわふわ浮いている姿も可愛いですが、ダイの頭を巣のようにペタッとしている姿は、もっと好きなんです♪

 アバン先生を見送った後の、ポップとマァムの気が抜けたようなやりとりはアニメの改変ですね。
 ダイ、回復よりもお弁当が気になってしかたがないみたいです、思いっきり爆笑しました。

 先生のお弁当、とっても美味しそう♪
 ものすごく原作に忠実に作られているなぁと感心してから、見比べたらブロッコリーの入っている位置が違っているのに気がつきました。右下に入っていたはずのブロッコリーが上にあるアスパラガスと一緒の場所に移動していて、代わりにケチャップとマヨネーズらしきものが添えられています。

 な、なんという心遣い!
 原作のままでも十分にキャラ弁として成り立っているのに、さらに食べる人への心遣いをプラスして味付けにまで思いを馳せるとは。
 アニメスタッフ様のお弁当愛を感じた一瞬でした♪

 にしても、このお弁当ってウインナー、串刺しミートボール、エビフライ、チキンナゲット、ローストポーク(もしくは焼き豚)などと、思いっきり肉食寄りですね。

 アバン先生の顔を作るのにハムやゆで卵も使っていますが、お野菜が少し足りない気が。
 アスパラガスにブロッコリー、プチトマトに彩り程度のレタスがあるので、色彩的にはバランスがいいんですけどね。

 まあ、他にりんごとオレンジを丸のまま用意していましたし、ビタミンはそっちで摂取する計算なのかもしれません。

 他に、複数の種類のパン、ジャムらしき瓶、さらに魔法瓶とMとかかれた瓶もありました。
 Mは当然ミルクでしょうから、魔法瓶の中には野菜スープなど野菜分補給の水分が入っていれば完璧ですね。

 中央の顔はご飯だったんですね。ダイ大世界、お米があった!(笑)
 もしかしたら、巨大コロッケかなと長年疑っていましたが、アニメでは米で、しかも眼鏡は海苔っぽいです!

 原作では、それこそケチャップでさらっと描いたような簡単な眼鏡だったので、なおさらコロッケかと思っていましたよ。

 ダイ、ポップ、マァムの三人になったら、みんなが足を崩して座っているのが見ていてなごみます。
 お弁当タイム、いいですね。久々にほのぼのした雰囲気がすっごく楽しい感じです。

 三人の反応の差も、楽しいところ。
 ダイは安心感を感じているようだし、ポップは先生への甘えが強い感じ。
 マァム、先生が戻ってきてかえって真面目になるところが、優等生的だと思いました。

 マァムの台詞は、原作と改変されています。

原作マァム「……そうかしら? 私……なんだか、先生が無理して明るく振る舞っているように見えるわ……。なにか、どうしても素直に安心できない……そんな気が……」

 原作のマァムの方が、勘が鋭いですね。
 アニメのマァムは、良くも悪くも天真爛漫で裏が読めない感じが強く出ています。

 ダイの台詞も短くカットされ、アバンに関する台詞が改編されています。

原作ダイ「……もう二度と……あんな悲しいのはごめんだ……!!」

 アバンのメガンテシーンを回想しながらのこの台詞、割と好きだったんですが。それに、ポップやマァムがしんみりした表情を見せるシーンもあったんですが、アニメではポップの胸元だけを暗めのシルエットで見せると言うシーンに改編されています。

 レオナやマァムの胸元がアップにされるシーンは割とありますが、ポップの胸元がアップされるシーンは少ないので、ちょっと意外でした。
 ポップがせめて腕にしてくれとねだり、ダイとマァムがつい笑い出すシーン、ポップの表情が少し残念。

 開き直ったようなとぼけた表情も悪くないですが、原作の注射を嫌がる子供のような表情が好きだったので、頭に刺されるのを嫌がる点を強調して、それをきっかけにダイとマァムに笑って欲しかったです。

 原作では、腕にしてくれとおちゃらけるタイミングで笑っているようにも見えるので、そっちでもよかったなぁ、と。

 笑い出した後のポップとマァムのアドリブ台詞は、いい感じ♪
 後、お弁当も一緒に笑っているかのような、お弁当のアップの演出はバッチリでした♪
 ここでCMなるタイミングも、ほのぼのな感じでいいですねえ。

 レオナとアバンの会話、原作ではレオナはアバンが死ぬ覚悟をしているのを見切ったような態度を取っているのですが、アニメでは戸惑っている感じですね。
 思わせぶりな沈黙が目立つ原作と違い、台詞も改編されています。

 そして、順番が入れ替わって、地上の人間軍のシーンに。
 キルバーンの仮面選びの後のシーンとまとめた形でのシーンになっていました。

 ロン・ベルクとミストバーンの戦いは、動きが速すぎて普通に見ていると目が追いつきません(笑)
 
 ノヴァやクロコダインは分かっていましたが、バダックさんの奮闘が意外でした。原作では、カール騎士団3人が協力して戦っている風に見えましたし。
 でも、個人的にはバダックさんが頑張ってくれた方が嬉しいです!

 チウの台詞、原作では「大口の割にはたいしたことなかったな」なのですが、悪戯小僧達との会話がこれまでなかったせいか、改変されていました。

 ザボちゃんとミストバーンのやり取りは、なかなか楽しかったです。
 ザボちゃん、大げさな言葉遣いとコロコロ変わる顔芸が愉快♪

 ノヴァとロン・ベルクのカットが混じっているのは、アニメの改変ですね。原作ではここで彼らの出番はないので、ちょっと嬉しかったです

 ミストバーンの台詞、一部改変されていますね。原作では「最後の最後で悪い相手にぶつかったな」でした。

 目をカッと見開いてのミストバーンの激昂シーン、かっこよかったです。それに引き換え、ザボちゃんはコミカルなぐらいショックさを強調されていますね(笑)

 クロコダインのザボエラが捨てられた時のモノローグ、彼目線からザボエラの後ろ姿を眺めるシーンが挿入されたのは秀逸な改変です!
 ザボエラにさえ同情を感じるクロコダインの人情味が、ひしひしと感じられますねえ〜。

 こうやって、しょんぼりした後ろ姿を見ているとなんか可哀相…………と、思う必要もないですか(笑)

 クロコダインの思いやりに満ちた降伏勧告に、煽ってくるスタイルで小馬鹿にしてくる上目遣いのにくったらしいことといったら!
 こんなにも、向かっ腹の立つ上目遣いは初めて見ました(笑)

 悪戯小僧、瀕死状態で倒れてはいました。お尻が妙にプリティー。
 
 原作では、ノヴァは「あ、危ない! 呪文が来るぞ!!」と逃げ腰になりながら注意を飛ばし、人間達も怯えていましたが、アニメでは協調性と勇気が強くなっています。

 しかし、怪物達へのトドメとか、死体の扱いとか、ひどいものですね。人外だと容赦ない気が……。
 悪戯小僧も死体となって吸い込まれていくのが見えました。
 結局、チウと悪戯小僧らの物語はオールカット……。マキシマムの代わりに、こっちをやって欲しかったですよ〜っ。

 超魔ゾンビの第一段階、くっついた怪物達が混じっているようで混じりきっていない図が、思っていた以上に生々しくて不気味すぎっ。原作だと白黒だから、ここまでカラフルだと思わなかったせいもありますが、なまじ色彩が鮮やかなだけにこんなにもブッキーになるとは……っ。

 超魔ゾンビ、逆光のせいかおどろおどろしい色彩に見えますね。カラフルだった超魔ザムザよりも迫力を感じます。
 格好良さでは、超魔ハドラーに思いっきり劣りますが(笑)

 ロン・ベルクが剣を構えた時、刃に顔が映り込む演出が実によかったです。
 ロン・ベルクの攻撃すら効かない演出と言い、ザボちゃんとは思えないほど不気味さと強さを見せつける超魔ゾンビ……っ、ここまで強そうに見えるとは、意外です。
 原作ではカラー化しないまま終わったモンスターの一匹でしたし(笑)

 予告では、超魔ゾンビがめっちゃ出張っています! 頑張っているロン・ベルクやノヴァ、クロコダインがいいなぁと思っていたら、最後の最後で頬がこけ、痩せ衰えたノヴァの姿が出てきたのは衝撃でした。
 いや、これ、ネタバレしまくりでは……ッ。

 ダイ達が一切出てきませんでしたが……これ、地上の仲間達が死に物狂いで戦っている中で、その頃の本家勇者は……

ダイ「あー、これ、すっごく美味しいよ!」

ポップ「てめー、一人でバクバクくってんじゃねえよー。ほら、おれにも食わせろって」

マァム「ちょっとポップ、ほっぺたに食べかすつけて……もう、だらしないんだから!」

ポップ「なっ、なんだよっ、ガキじゃあるまいし、一人で拭けるって!」

 ……などと、ラブコメ一歩手前の楽しいピクニックをやっているような気がしてなりません(笑)

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