『銀髪のヒム』(2021.5.28)

  

《粗筋》
 
 ヒュンケルの持つ槍の穂先が、光を反射してきらめく。
 槍を軽く振り回してから身がまえ直したヒュンケルは、すっかり闘志を取り戻していた。

 そして、槍を構えたまま走り、不意に腕を伸ばすようにして突き出す。頭部を正確に狙ったその一撃を、ヒムは軽く頭を振って躱し、逆に左拳でヒュンケルに殴りかかる。

 驚愕の表情でそれを見つめるヒュンケルの頬に、まともに拳がぶち当たった。頬を守る兜の一部が壊れ、破片が散る。すかさず右手で二撃目が叩き込まれ、ヒュンケルの鎧の肩部分が砕ける。

 だが、まだ連撃は止まらない。
 再び左拳が、ヒュンケルの腹を下から抉った。鎧がもっとも薄い部分を殴られ、思わず呻くヒュンケル。
 そこに、続け様にヒムは左右の拳を連打する。

 棒立ちで殴られるままになるヒュンケル。
 最後に当たった攻撃のせいで吹っ飛ばされ、石の床の上に倒されてしまう。わずかに恐れを含んだ表情で、ヒムを見上げるヒュンケル。

 そんなヒュンケルを、ヒムは至って冷静な目で見下ろす。
 拳を握りしめ、ヒムはヒュンケルに手を出してこいと不満をぶつける。必殺技も出さないことに疑問を感じているのか、ヒムの言葉はやけに挑発的だ。

 苦痛に耐えながら起き上がったヒュンケルは、槍を手にしながら撃っても無駄だと言い切った。
 ヒムはかつての兵士(ポーン)ではない。ブラッディースクライドでは捕らえきれず、虎空閃で命を奪える相手でもないとヒュンケルは判断していた。

 自分の技がほとんど通じないといいながら、ヒュンケルはゆっくりと立ち上がる。

 チェスのルールにある、敵陣深くに切り込んだ駒が昇格し、女王などの力を得るプロモーションになぞらえた説明に、ハッとした表情を見せるヒム。
 ヒュンケルはヒムの銀の髪がプロモーションの証だと考え、最強クラスの戦士に進化したかもしれないと言う。

 賞賛に等しいその台詞を聞いて、ヒムはむしろ腹を立てたように言い返す。手も足も出ない存在になったから諦めたのかと、再びヒュンケルの腹を狙って拳を打ち込むヒム。
 続け様に顔を左右から殴り、最後は回し蹴りで盛大に蹴っ飛ばした。

 再び、石床に投げ出されるヒュンケル。
 それを、肩越しに振り返って見やるヒムの目は、どこか冷ややかだった。が、ヒュンケルがまたも立ち上がるのを見て、その目が見開かれる。

 肩で息をし、即座に起き上がることも出来ずに片膝をついた姿勢で一度動きを止めているヒュンケルは、満身創痍だ。
 しかし、顔を上げた彼の目に宿る光は鋭く、闘志は微塵も失われていない。

 その目に驚愕し、自分の思い違いを悟るヒム。
 勝負を諦めた男の目ではないと、ヒュンケルがまだ奥の手を隠していることを確信したヒムは、警戒して身がまえ直した。

 ヒュンケルもまた、鋭い目をヒムへ向ける。
 戦いの中、ヒュンケルの目にはヒムの隙が見えてきた。ただ攻撃を食らっていたのではなく、彼はヒムの弱点を探していたのだ。

 ヒムが最大の破壊力を持つ左の拳を打つ際に、ほんのわずかだけ身体が硬直する一瞬があると回想するヒュンケル。
 その隙を狙い、自分の最大攻撃を叩き込もうとヒュンケルは考えた。

 槍をゆっくりと回し、穂先を下にした姿勢で身がまえるヒュンケル。
 その姿勢を見て、ヒムも覚悟を決めて構えた。
 距離を置いて睨みあう二人の間に、息詰まるような緊張感が走る。

 ヒュンケルの足が一瞬沈み、次の瞬間動き出した。同時に、ヒムも拳を構えて走り出す。
 吠えながら拳に力を込めるヒムに向かって、腕につけた盾兼ブーメランを投げつけるヒュンケル。

 そのブーメランを、ヒムは右手で一蹴した。一振りでバラバラに壊し、いまさらこんな玩具が利くかとご立腹だ。
 それを、息をのんでみているヒュンケル。

 真っ直ぐにつっこんでくるヒュンケルに向かって、渾身の左ストレートが打ち込まれる。が、ヒュンケルはジャンプしてそれを躱した。
 いきなり目標を失って動きを止めるヒムだが、髪の毛はその動きについて行けず、大きく靡く。

 驚きながら上を見上げたヒムの目に、空中に逆さまに飛び上がったヒュンケルの姿が映った。空中で右手の手甲から短い刃を出し、左手で鎧の胸元から壊れかけたナイフを取り出したヒュンケルは、そのままヒムの真後ろに舞い降りる。

 そして後ろからヒムを羽交い締めにし、二つの刃物を彼の胸元で十字に合わせた。ヒュンケルの身体に、白い闘気が宿る。
 合わされた十字からは、爆発的な光が発せられた。
 さすがに動揺するヒム。

ヒュンケル(グランドクルス……まともに放ったらかわされるが、このまま内側に放てば逃げようがない)

 ヒュンケルは自分自身もグランドクルスを受ける覚悟で、ヒムに自爆攻撃を仕掛けようとしていた。

ヒュンケル「ヒムッ、オレと一緒に地獄を味わえ!!」

 光が強まり、ヒムが絶叫じみた叫びを上げる。
 が、ヒムを抑えていたヒュンケルの目に、驚きが浮かんだ。

 吠え立てながら、肘鉄砲で後ろにいるヒュンケルを払いのけるヒム。そのまま身体を反転させたヒムは、よろめいているヒュンケルに対して左手でアッパーカットを食らわせた。

 身体ごと上に飛ばされる強烈なパンチに、のけぞった姿勢のまま飛ばされるヒュンケル。

 一方、ヒムは今の自爆技にヒュンケルが全てを懸けていたことを理解した。確かに食らったら終わりだったろうと呟くヒムの目の前で、落下したヒュンケルが床石にたたきつけられる。
 今度のダメージは、これまで以上に大きそうだった。
 拳をつきつけ、ヒムは勝利宣言をする。

ヒム「破ったぜ! オレの勝ちだ、ヒュンケル!!」

 誇らしげに自分の胸を叩くヒムを、ヒュンケルは見てはいなかった。目を閉じたまま、大の字に横たわるヒュンケルは、万全の態勢でなかったことを悔やむ。

 すでに二発のグランドクルスを放ったせいで収束に時間がかかってしまったと、悔しそうな表情を見せる。
 全ての武器を使い果たし、精も根も尽き果て、完全に打つ手がなくなったと絶望するヒュンケル。
 倒れたヒュンケルを、ヒムはじっと見つめ続けた――。







 ところは変わって、ダイ達のいる場所。
 ダイの肩に乗せられた手から、緑がかった暖かな光が広がる。回復呪文を使っているのはポップで、その光が消えてから、ダイは戸惑ったように言う。

ダイ「なんか、どうも違和感あるなぁ、ポップに回復してもらってるのって」

 ポップ自身もその意見に同感する。覚え立ての呪文で、まだ馴染んでいないらしい。

ダイ「でも、回復呪文使えるなら……わざわざマァムに甘えることなかったよね」

 ポップをからかうように、ニヤニヤ笑うダイ。ゴメちゃんまで同調するように、後ろでピーと鳴く。
 からかわれたポップはムキになって、あの時は本当に魔法力が空っぽだったと主張するが、どもっている辺り少しばかり怪しい感じだ。

 それが分かっているから、余計にニヤニヤするダイ。
 ゴメちゃんさえ、イヒヒとからかって笑っている。
 そんな風にじゃれているポップとダイを見て、フッと目を伏せるマァム。

マァム(……すごいわ、ポップ。なんだか、どんどん私の出番がなくなっちゃう感じ)

 わずかに頬を染め、柔らかな笑みを浮かべてポップを見やるマァムの表情は、弟の成長を喜ぶ姉のような慈愛深さがあった。

 手をついて立ち上がったポップは、ガッツポーズを取って完全回復完了だと言ってのける。それに釣られたように、並んで立つダイとマァム。

ポップ「いつでもかかってきやがれ、魔王軍!」

 威勢良くそう叫んだポップだが、広い城の中に吸い込まれるように消えるその声はかすかにこだまするだけで、かえって城の広さを意識させるだけのものだった。

 すぐにしずまりかえってしまった城を前にして、ポップはマァムの方を向き、その静けさが逆に不気味だと言う。
 マァムやダイは、戻ってこないアバン達を心配し始めた。

 ポップはダイに向かって、敵の本拠地で急に敵の出現率が少なくなるのはあまりよくないという話をする。
 と、その言葉を受けて、聞き覚えのある声が響き渡った。

ミストバーン「……そうだ! おまえの知る通り……」

 ハッとしてから、険しい目を声の方へ向けるダイ達。
 暗い回廊の一つから、足音が響いてくる。
 ミストバーンはポップの話を補足する形で、それは絶対的強者が守りについた証だと解説する。雑魚の番人はもはや不要だといいながら歩いてくるミストバーンが、姿を現した。

ポップ「ミ、ミストバーン!!」

 敵を前にして、身がまえる三人。
 そんな彼らに、ミストバーンは平然とした口調で、ここはホワイトガーデンだと説明する。
 バーンパレスの中心部といも言える場所で、バーン様の間へと繋がる場所でもあり、バーンパレスでもっとも美しい場所だと断言した。

 急に観光案内かといきり立つポップに、ミストバーンは余裕たっぷりに笑う。

ミストバーン「フフフ……あの世に行く前に、自分たちの死に場所の名前ぐらい、知りたかろうと思ってな」

 怒りを見せるポップ。ダイもまた、戦いを決意した険しい表情でミストバーンを睨みつけていた――。







 代わって、ヒュンケルサイド。
 雲が流れる青空に、風の音が響く。それを見上げながら、ヒュンケルは『まだだ』と自分に言い聞かせていた。

 彼は、まだ諦めない。
 歯を食いしばり、ヒュンケルの魂の力は闘志だと言ったレオナの言葉を信じようとする。
 手を握りしめた拍子に、手の中にあった石が砕け散った。
 
 一方、ヒムもまた、青空を見上げていた。
 今は亡きハドラーに、見ていてくれましたかと心の中で話しかけるヒム。ついにアバンの使徒を――そう報告しかけた時、物音が聞こえる。
 驚いてそちらに目をやったヒムは、ヒュンケルがまたも起き上がるのを見た。

 ふらつきながらもまだ立ち上がるヒュンケルを見て、不死身かと驚くヒム。
 自分の力を確かめるように拳を握りしめるヒュンケルを見て、ヒムは目を伏せて苦笑する。

 最後まで戦って死にたいのが望みなら、叶えてやるとばかりに、ヒムは近くに突き立ったままだった魔槍に手をかけた。それを、無造作にヒュンケルに向かって放り投げる。

 取りやすい速度、高さで投げられた槍を当然のように受けとったヒュンケルだが、彼は言い切った。

ヒュンケル「せっかくだが、この槍はもう使わん」

 槍を持ち替え、石突きで強く床石をついたヒュンケルは、槍だけではないと言い、全身から紫色の光を発しだした。
 それに驚くヒム。
 渦巻くような光の後、ヒュンケルの武装は解除され、鎧は槍に収納される。

 処刑台にいた時のまま、ズボンのみで上半身裸となったヒュンケルは、槍をほぼ真上に向かって高く放り投げた。
 ヒュンケルの突然の行動に、警戒した様子で「何の真似だ」と問うヒム。

 両手を組み合わせ、ヒュンケルは言う。

ヒュンケル「闘気には闘気! ヒムよ、おまえと互角に戦うため、オレはあえて全てを投げ打った」

 この拳で最後の勝負だと、右手を握りしめるヒュンケル。
 それと同時に、魔槍が床石の上に落ち、深く突き刺さった。土煙が一瞬、立ちこめる。

 振り返り、自分のはるか背後に落下した槍を見ていたヒムは、ヒュンケルの正気を疑う。
 自分の身体はオリハルコンで、人間が素手で砕けるわけがないと、怒ったように言うヒム。

 だが、ヒュンケルは落ち着き払った口調で言い返す。
 砕けようが砕けまいが、やるしかないと。今、ヒュンケルに残された武器は拳のみ……砕けねば、死が待つだけだという。

 その覚悟を見て、ヒムはヒュンケルが武装を解き、槍を捨てた意味を悟る。ヒュンケルは軽く目を閉じて、答えた。
 
ヒュンケル「オレ自身を背水の陣に追い込むため……」

 やはり、と納得するヒム。
 ヒュンケルは自分が新たな光の闘気に目覚めた時、素手で鋼鉄で引き裂いた話をする。

 残り少ない生命を全て闘気に換え、拳一点に集中すればヒムの身体を貫けるかもしれないと言うヒュンケル。

ヒュンケル「最後の力を、この拳に全て込める!」

 力強く、拳をヒムに向かって突きつけるヒュンケル。

 ヒムはその無謀すぎる決意に、驚きを通り越して呆れすら感じている様子だった。
 しかし、それでもヒュンケルの目に迷いはない。

 ヒムは、ヒュンケルに止めておけと忠告する。
 ヒュンケルの戦いへの執念に感心しつつも、ヒムは彼が大事なことを忘れているという。

 ヒムの髪が靡き、気合いを込めたヒムの手から闘気があふれ出す。毛を逆立て、吠えるヒムの身体全体が白い闘気の靄に覆われた――。







 ヒムが生み出した闘気による熱風が、ヒュンケルを襲う。が、彼は平然とそれを受け止めていた。
 やがて、闘気の奔流に一段落ついた時、ヒムは髪の毛を逆立てながら自らの拳を見せつける。

 ヒムの必殺技、ヒートナックル――それは、今や黄金に輝いていた。今はオーラナックルと呼ぶに相応しい拳を見せつけ、ヒュンケルがいくら闘気を込めても問題外だと決めつける。
 そう言われても、ヒュンケルは揺るがない。
 
 オーラナックルはオリハルコン以上だといい、武器を持ったハドラーやダイに素手で勝てるかとヒュンケルに問いかけるヒム。
 ヒュンケルは相変わらず無言のままだが、ヒムは答えを待たずに勝てないと決めつける。

 拳を見せつけ、この一撃が決まれば人間の身体など原型も残らないといい、ヒュンケルにはそんな惨めな死に方はして欲しくないと説くヒム。
 その言葉に、初めてヒュンケルは反応した。
 
ヒュンケル「……なに?」

 拳の闘気を一旦収めたヒムは、ヒュンケルを倒すことが自分が生まれて初めて持った生きがいだったと語る。

 最初に見た時から意識し、最強なんだと顔に書いているような奴だと思い、そのすまし顔を恐怖に変えてやることだけが夢であり、ハドラーへの甲拳になると信じた。

 だから、同じ死ぬなら見苦しい死に方はやめてくれと頼むヒム。最後までヒュンケルらしく、かっこよく散って欲しいと望んでいる。

 ヒュンケルはそれを聞き、初めて戦った時も同じようなことをヒムが言っていたことを思い出す。
 それを、今度はヒムが黙って聞く。

 確かに自分も死は恐れないと言うヒュンケル。
 ヒム同様、恥をさらすぐらいならいっそ死んだ方がいいと思ったこともあった……、だが、今は違うとヒュンケルは言い切った。
 その意見に、ムッとした表情を見せるヒム。

 しかし、ヒュンケルは揺るぎのない目で、仲間達が自分の目を覚ましてくれたことを語る。
 真の戦士ならば、使命を果たすまで最後の最後まで諦めてはならない、と。
 泥をすすってでも、課せられた使命を果たすのだ、と。

 無様でも、見苦しくても、わずかな勝算に懸けると、拳を握りしめるヒュンケル。
 ヒュンケルの拳もまた、闘気を帯びて黄金に輝き、虹色の色彩を放ち始めた。

 無言で、静かに佇むヒム。その表情は陰になっていて見えない。
 そんなヒムに、ヒュンケルは勝負を持ちかける。
 ヒュンケルの全てを懸けた拳か、ヒムの執念の拳か、どちらが上か今こそ勝負だと叫んだ。

 その発言を静かに聞いた後で、ヒムは空を見上げるようにしてしみじみと言う。

ヒム「たいした男だったよな、やっぱりあんたは……。オレは……あんたの何に勝ちたかったのか、今、やっと分かったぜ」

ヒュンケル「おまえもたいした男だ……ヒム。オレにここまでの覚悟をさせたのは……おまえが二人目だ」

 わずかに目に力を込めたヒュンケルが見つめる先は、ヒムではなく床石につき刺さった魔槍があった。
 今は亡き友に心の中で呼びかけ、ヒュンケルは最後の大博打に打って出る。

 まず、最初に動いたのはヒムだった。
 ヒムは大きく跳び上がり、後方へと距離を取る。
 気合いを入れるヒムを、冷静に分析するヒュンケル。

ヒュンケル(距離を取った! 今こそ、奴の渾身の力を込めた攻撃が来る!!)

 吠えるように叫びながら、ヒムが全力で走り込んでくる。闘気を込めた彼の左拳は、虹色に輝いていた。
 それを身がまえて迎え撃つヒュンケルの右拳もまた、虹の輝きに包まれる。
 互いに、次の一撃が最後だとわかりきっている二人は、真剣だった。

 ヒムの全てを込めた渾身のオーラナックルが、ヒュンケルに叩き込まれようとしていた。
 それを、これ以上ないぐらい真剣な眼差しで見つめるヒュンケル。何かを見切ったように、その目が一瞬、見開かれた。

 迫るヒムの拳。
 鈍い音が、青い空に響き渡る。
 緊迫した面持ちで、ヒュンケルを見やるヒム。ヒムの拳は、ヒュンケルの顔面に見事に突き刺さっていた。

 それを見て、歓喜の表情を浮かべて勝利を喜ぶヒム。が、次の瞬間、ヒムは嘔吐き、わずかな液体を吐き出した。
 力を失い、ヒュンケルを攻撃したはずの左手の拳が緩む。なぜ自分の方がダメージを受けたのかと驚愕するヒム。

 無防備に開かれたヒムの拳の隙間から、無傷のヒュンケルの顔が覗く。鋭い視線をヒムに向けながら、ヒュンケルはヒムの拳が自分には触れていないと告げる。
 その前に、自分の渾身の一撃がおまえに突き刺さった、とも――。
 その言葉通り、素手の拳はヒムの左胸に当たり、大きくヒビを入れていた。

ヒュンケル「勝ったのは、オレの拳だッ!!」

 ヒュンケルの勝利宣告を裏付けるように、ひび割れがさらに広がり、ヒムは苦悶の呻きと共に仰向けに倒れ込んだ。重い金属音を立て、床石に転がるヒム。

 震えの残る手を握りしめながら、ヒュンケルは敵の強さと勝利を噛みしめる。

 吐血し、ヒムは苦しげになぜオリハルコンの身体が砕けたのかと疑問を口にする。
 それに答える形で、ヒュンケルはヒムの攻撃の威力が強かったからだと説明する。

 ヒムを倒すために、ヒュンケルはカウンター……敵であるヒムの力を利用した。わずかに空を仰ぎ見、アバン流の奥義に似たような技があるが、それを自分なりの応用したと語るヒュンケル。
 ヒムは、ヒュンケルがバランと戦っていた時につかっていた技を思い出す。

 無刀陣は一度敵の攻撃を受けてから反撃する技のため、今のヒュンケルでは敵の拳が当たった時点で死んでしまう。だから、高めた闘気をヒムよりも先にぶち当てるしかなかったと説明する。

 奇跡的なタイミングで、それを成し遂げたヒュンケル。
 ヒムの間近によって彼を見下ろしながら、それはヒムが正々堂々と勝負を受けてくれたおかげだと言う。
 ヒムが格闘術で戦っていれば、彼の勝ちだったと言うヒュンケル。

ヒム「……やるもんか……」

 弱々しいその声に、驚いたようにヒムの方を見るヒュンケル。
 ヒム自身、そのやり方で勝てると気づいていた。だが、ヒュンケルには死んでも勝ちたかったが、そんなやり方で勝つぐらいなら死んだ方がマシだと言い切るヒム。

 痛みを感じ、呻くヒム。
 以前と違い、今のヒムは痛みを強く感じるようになっている。楽になるためにも、勝者からのとどめを望むヒム。
 それを聞いて、ヒュンケルは拳を握りしめる。

 死を急かし、瞑目するヒムだが、その目がハッと見開かれる。
 彼の目の前には、手が差し出されていた。
 なんの真似だと警戒するヒムに、ヒュンケルはおまえはこんなところで死ぬべき男ではないと言う。

 自分の仲間達に追いつけば回復呪文が受けられると言い、立つように促すヒュンケル。
 が、ヒムはそれに対し激昂する。
 ヒュンケルの提案を自分への同情と感じ、自分は全力で戦って敗れたのだからと情けを撥ね付けようとする。

ヒュンケル「情けではない。これは、オレの命令だ」

 ヒュンケルの言葉に、虚を突かれるヒム。
 もし勝者に敗者の命を奪う権利があるなら、自分は死を奪うと告げるヒュンケル。

 ヒュンケルはヒムを、悪ではないと判断した。
 ヒュンケルに勝ちたいと望む気持ちは純粋なものであり、戦いの中で決着をつけなくてもいいとヒュンケルは言う。

 それでもためらうヒムに、ヒュンケルはヒムの生命はヒム一人の物ではないと諭す。今のヒムにはハドラー親衛騎団の命も宿っていると考えるヒュンケルは、仲間の分まで生きる義務があると説得する。

 そこまで言われては言い返すことも出来ず、ただ、身体を震わすヒム。
 そんなヒムの側にしゃがみ込み、ヒュンケルは仲間になれとまでは言わないし、この戦いの後で生き残ったのなら再戦も辞さないと告げた上で、共に生きるようにと呼びかけた。

 それにも、ヒムは応えずに震えるばかりだ。
 ヒュンケルは苦笑し、上手くない言い方だと自嘲する。

ヒュンケル「……オレが仲間達から言われた時は、もっと優しさを感じたが……」

 拳を握りしめ、涙をこぼすヒム。

ヒム「……くそったれめ、えらそうに言いやがって……ッ! この身体が自由に動くなら、その面をぶん殴ってやるのに……っ!」

 ヒムの憎まれ口を、涼しい表情で聞くヒュンケルは静かに応える。

ヒュンケル「……生き延びてからにしろ」

 ヒムの手を、ヒュンケルの手が握る。涙の浮かぶ目で、彼を見返すヒム。
 が、その時、空に光が走る。
 いきなり黒い球状の物体が出現したかと思うと、それらは連続的に落下してきた。

 金属音を立て、チェスの兵士状の物体が複数降りてきた。それは、ヒムがポーン状態の時とそっくりの金属製の大きな駒だった。
 驚くヒュンケルとヒムの前で、兵士や僧正、城兵の駒も次々に原形のまま着地する。







 一方、その物音はホワイトガーデンにも届いていた。
 手から爪を出したミストバーンと、距離を置いて向かい合っているダイ達にもその音は聞こえ、戸惑うマァムとポップ。
 だが、ミストバーンは心当たりがある様子だった。

ミストバーン「……あいつか。とうとうしびれを切らしたな……バーンパレスの掃除役がな」

ダイ「掃除役……!?」







 その頃、ヒュンケル達の目の前には、すでに変形し終えたオリハルコンの戦士達がそろっていた。
 兵士が複数いるだけでなく、騎士や城兵、僧正らがそこにはいた。ただ、誰もが表情が窺えず、目に光を感じない。

 ヒュンケルも驚いているが、ヒムの動揺はそれ以上だ。
 自分とそっくりなのが7体、シグマやブロック、フェンブレンまでいることに戸惑っている。

 そこに、笑い声が響き渡る。
 声に釣られて上を見ると、城壁の上にゴーレムめいた姿の影が映った。
 ヒムをクズ駒と罵り、チェスの駒は本来16個あり、ハドラーが与えられた
のはそのうち5つだと指摘する。

 驚愕するヒムの前で、シルエットは16個の駒の中で、唯一意志を持った駒が自分だと自慢げに言う。

 城壁を蹴り、その巨体からは信じられない身軽さで飛び降りた彼は、バーンが信頼を寄せるバーンパレス最大再挙王の守護神、王(キング)マキシマムと名乗った。

 その光景を見て、弱気になるヒム。
 ヒュンケルもボロボロ、自分も動けない状態で、あれだけの数のオリハルコン戦士に襲われたらひとたまりもないと絶望を深くするヒム。
 
 ヒュンケルに向かって、自分に構わず逃げるようにと言うヒム。が、ヒュンケルは逃げなかった。

ヒュンケル「ヒム……おまえはこの場でじっとしていろ」

 ヒムをそっと床に横たえ、ヒュンケルはさっきの約束をもう守れなくなりそうだと謝罪する。

ヒュンケル「それでもおまえは生きろ……! いいな、必ずオレの仲間のもとへいけ。こいつらは絶対に倒す……!」

 覚悟を決めたような表情を見せるヒュンケル。
 何かを感じ取ったのか、ヒムは戦慄く。が、ヒュンケルはそれに答えず、無言で立ち上がった。

ヒュンケル(……戦ってきた。戦い抜いてきた)

 ヒュンケルは自らの足で、オリハルコン軍団に向かって歩を進めていく。

ヒュンケル(この身体に受ける痛みだけが、過去を忘れさせると思って……)

 ゆっくりと進むヒュンケルの背中が映る。
 贖罪のために戦ってきたことを思い返しながら、険しい表情で前に進むヒュンケル。
 その足を止め、ヒュンケルは肩幅ほどの広さに開いた。

 彼の目の前にいるのは、ハドラー親衛騎団と似た姿を持つオリハルコン軍団と、マキシマム。

ヒュンケル(今日……この戦いで終わる。間違いなく、これがオレの最後の戦いだッ!!)

 敵を見るヒュンケルの目には、一片の曇りもなかった。


 


感想》

 ヒュンケルの捨て身攻撃、無謀すぎてカッコいい……ッ!
 スマホゲームでは、これをやられるとあっと言う間にHPが減りまくって困るのですが(笑)

 それはさておき、原作ではいきなりの連打攻撃でやられまくっているコマから始まるシーンが、ヒュンケルの攻撃シーンから始まったのは嬉しいです。……すくやられちゃっていますけど(笑)

 倒された時のヒュンケルの表情、左右逆転な以上に、ちょっと怯えているように見えるのが印象的でした。原作では苦痛の余り片目を閉じているという感じでしたが、アニメではヒムの脅威の力に恐れを感じているように見えます。
 ヒュンケルにしては珍しい、弱気な表情がいい感じですね。

 プロモーションルールの時、原作には出てこなかったチェスの駒を使った説明が出てこないかなと期待したのですが、それはなくて残念!
 
 怒りのヒムちゃんの攻撃、ボディを打って相手の動きを止め、顔面にワンツーを叩き込むのはボクシングの基本ですね。その後、盛大に足を出していますが(笑)

 原作ではただの前蹴りだったのが、回し蹴りになっていました。動きが派手でいい感じです♪

 仰向けに倒れているヒュンケルの遠景に、後ろ姿のヒムが立つ構図が、めっちゃかっこよかったです! 床を斜めに捕らえた構図が、原作の水平構図とはまた違った不安定なイメージがありました。

 ヒムの蔑んだような目も、いい感じ。
 その程度だったのか、と期待外れなものを見るような表情から、わずかな金属音に反応して目を見開き、ヒュンケルが立ち上がる演出に繋げていますね。

 原作でもほぼ展開は同じですが、ヒムの目元が黒く影になっているので表情が窺えず、すでにヒュンケルを倒したと思い、その死を悼んでいるのかと思っていました。

 が、アニメでは表情がはっきりと見えているので、ヒュンケルの反応……というよりは、彼の反撃を期待しながらじっと観察しているように見えます。

 ヒムの隙について語るシーン、真っ黒な背景にヒムがスローモーションでパンチを放つ動きが綺麗。最後に、硬直した隙のシーンで画面が黄色にそまる変化もいいです。
 それにしても原作でも出てきましたが、ヒム、左ききだったんだなぁ、と改めて実感。

 まあ、大抵のスポーツでは左利き有利なので、戦闘特化のヒムが生まれながらに左利き設定になっているのは、納得できます。
 勝負寸前の緊張感のあるBGM、いい雰囲気♪

 ヒュンケルがヒムにブーメランを投げつけるシーン、原作ではヒムの左手が光っているのを見て投げていますが、アニメでは右手を前に出しているのを見て投げています。

 ということは、原作では左手の攻撃を抑える目的だったのに対し、アニメでは右手の攻撃を抑えるために投げたのかなと思いました。
 相手のストレートに合わせて一発勝負を懸けるつもりのヒュンケルにしてみれば、牽制のジャブを食らう方が困るからと解釈できそうです。

 ヒュンケルに空振りするシーン、原作ではピタッと動きを止めていましたが、アニメでは動きと止めつつも勢い余ったように髪の毛が逆に靡き、驚いて振り仰ぐ動きで髪の毛が戻るという細かい動きを演出!
 素晴らしいっ。

 グランドクルス不発だった時、ヒュンケルが薄目を開けてから悔しがる表情を見せているのがいいですね。
 原作では薄目を開けた後、次のコマは遠景になっていて表情が見えなかったので、コマとコマの隙間がアニメで補完されていくようで嬉しいです。

 原作ではここからヒュンケルは、すぐに諦めないと思い直すシーンが続くのですが、アニメではダイ達の出番がやってきました♪
 前回飛ばされたダイ達の回復シーンです。

 ポップの回復に戸惑っているダイが、妙に可愛いですね。
 原作ではちょっと自慢そうにしているポップが、アニメでは頭を掻いて照れ笑い風でした。

 ポップがどもりつつ言い訳するシーン、原作でもどもっているのですが、アニメで実際に聞くと動揺っぷりがすごいです(笑) 

 マァムの慈愛の表情、可愛くていいですね!
 ……でも、その目つきはどう見ても『ポップってすごいわ、素敵!』ではなく、いつの間にか成長した弟を喜ぶ姉目線っぽいのですが(笑)

 ところでお弁当、すでに綺麗に片付けられていました〜。食べているシーンを、ワンカットでも見たかったですよー。お弁当、美味しそうだっただけに……っ!

 原作ではレオナが連れ去られるように去った後で、すでにお弁当の箱が開けられて食べられていた形跡があるのですが、アニメではダイがお試しのように先に開けて、みんなで回復しようという話になっていましたから、後で楽しいお食事タイムがあると思って期待しまくっていたのにっ。

 見ただけでは食べた後で片付けたのか、それとも、アバン先生やレオナが戻ってきてから一緒に食べたいと思って手をつけていないのか、分からないですね。

 ポップが魔王軍に叫ぶシーン、背後にあるピクニックシートが恐ろしいまでに魔王がいる城に似合っていません(笑)

 ポップな黄緑色に、向日葵っぽい茶色の芯と黄色の花びらの模様入りなのがめっちゃ目立ちます。
 ついでに、アニメ版のピクニックシートは原作と模様は同じですが、原作よりも花柄の数が多くなっていました。

 ちょっと後のシーンになりますが、どんなに目が悪くて飲み逃すはずがないぐらい目立つのに、スルーしたミストバーンって、実はスルースキルが高いのかも(笑)

 ポップの声のこだま、もっと山彦みたいに派手に聞こえるかと思っていましたが、抑えたような演出でこだまが吸い込まれるような印象を受けました。不気味さが際立っていて、すっごくいい感じです♪

 真ん中の位置に居るポップが、最初はマァムの方を向いて、次はダイの方を向いて話すのがいいですね。

 ミストバーンの声が聞こえた時、ダイがきょとんとしたような顔から、警戒心に変化するシーンが気に入りました。

 ミストバーンが歩く足がアップになるシーンは、珍しくていいですね。原作では足音しか聞こえていませんでしたし。
 回廊の中では沈んだ色合いで登場したミストバーンが、中庭部分に出てきていつもの色合いに切り替わる細かさ、いいですねえ♪

 登場時にミストバーンの名前を呼んだの、アニメではポップになっていました。原作では特に誰のセリフとも分からない感じでしたし、三人の声がハモったのかと思っていましたよ。

 ミストバーンの観光案内、ちょっと略されていますね。
 原作では「もっとも美しい場所の一つなのだ」と言っていたのが「美しい場所だ」に改変されています。……ほかの観光スポットはどこにいった?(笑)

 ミストバーンを睨みつけるダイの隣に、怒り顔のゴメちゃんが浮かんでいるのはアニメの改変ですね。原作ではコマの大きさの関係上、出番が削られがちなゴメちゃんが、アニメでは密かに活躍の場が増えているのが嬉しいです。

 大の字に倒れているヒュンケルの上を、雲の影がよぎっていく描写、いいですね。
 でも、手の近くにあった石を砕くシーンのために、倒れたヒュンケルの周囲の石の床がもうちょっと壊れて破片が散っていて欲しかったです。

 原作では割とヒュンケルの周囲に破片が散っているのですが、アニメではヒビが入っているだけで結構綺麗なせいか、手の中に石を握り込んでいるのが唐突で、ちょっと不自然に見えました。

 原作では手の近くにあった石を握り込んでいるのですが、アニメでは最初から手の中に握り込んでいましたし〜。

 ヒムのハドラー追悼、青空を見上げるのがいい雰囲気でしたが、欲を言えばハドラーの幻が見たかったです〜。

 ヒムがヒュンケルに槍を投げるシーン、速度が緩やかでヒュンケルの頭の上辺りに投げられているのに感心しました。攻撃ではなく、本当に相手に受けとりやすいように投げていたんだなと軌道でも分かるのっていいですね。

 漫画だと、投げたコマの次にすぐ受けとっていたので、ヒムの狙い目が分かりませんでしたし。

 鎧化の解除、原作では一瞬で代わっていましたが、アニメでは光の後で渦巻きのようなものが身体を包んでいました。身につける時とは広がる動きとは逆回転の要領で部品が縮むのかなと思っていましたが、そうでもなかったようです。

 ヒュンケルの台詞、原作にあった『目には目を……歯には歯をという言葉もある……』という部分がカットされていますね。
 背水の陣の前の説明部分も、拳に全てをかけるシーンの台詞も、大胆にカットされています。

 細かな説明を飛ばし、原作より短くすることでテンポ良くする台詞回しは、正直、かなり気に入っています。

 ヒュンケルは原作だと意外と説明台詞が多いのですが、説明が理屈っぽい場合が多いので、アニメ版の熱さや若さを感じるヒュンケルの声には、説明を省いたパターンの方が合っている気がします。

 ヒムが闘気を高めるシーン、髪の毛がなんか……ハリセンボンに見えてしまうのですが(笑)
 原作ではそれなりに柔らかみを帯びた逆立ち方だったのに、アニメでは白光がアダになって、髪がまっすぐ針のように伸びているようにしか見えませんでした。

 ここでCMになるとは、予想外でしたね。
 ヒムの闘気による熱風に、原作ではヒュンケルは押された様子で目を顰めていましたが、アニメでは平然としているのがカッコいいです。

 ヒムのオーラナックル、黄金になっていたのは驚きです。そこから漏れる光も、ちょっと虹色っぽい光が混じっていました。
 ハドラーやノヴァの剣を思わせる虹の光は、生命を懸けた攻撃特有の色として表現されているのかなと思いました。

 ヒムがヒュンケルへのライバル心を語るシーン、原作では怒鳴るヒムの背後にヒュンケルのイラストが浮かぶ描写でしたが、アニメではヒムの横顔がアップになり、雷のような形で画面が二分割され、反対側にヒュンケルの横顔が浮かぶ演出になり、ライバル対決感がましています。

 ヒュンケルが「無様に生き残るぐらいなら〜」の台詞を言う時、原作ではノヴァと対決した時のヒムが回想されていたので期待していたのですが、回想シーンはありませんでした、ぐすん。……ノヴァ、ただでさえもう出番が皆無に近いのに〜。

 ヒュンケルの仲間達の回想に、ポップが一番先に思い出されていました。原作とほぼ画像で、一度に二人の人間が画面に映る形で下から上にスクロールしていました。
 普段の色合いにセピア色を被せたっぽい色彩なのですが、上から金色の光が差し込んでいるせいで、黄金色の思い出というイメージでした。
 
 ポップ、レオナ、アバン先生、エイミにマァム、ダイ、クロコダインの順ですね。エイミさんとレオナがさりげなく並んでいる辺り、ちょっと恋愛感情が気になります♪
 最後がクロコダインなのも、ちょっと嬉しいところ。

 ヒュンケルが仲間として一番、意識しているのはマァムだと思いますが、戦いに関する姿勢に対しての意識は別基準なのかなと思わせるシーンです。
 でも、メガンテを仕掛けるようなポップの生き様は、参考にしない方がいいとはおもいますがね(笑)

 ヒムがヒュンケルを認める台詞、過去形で語っているのに興味を引かれます。
 この台詞はヒムがヒュンケルを素直に認めているように見えて、実はすでにヒュンケルが確実に死ぬと見なした餞の言葉のようにも思えます。

 名前を出さずに、ラーハルトを思い出すヒュンケルの台詞、実にカッコいいですね!
 これと同じような台詞回しをチウも前に使っていましたが、格好良さと説得力が段違いです(笑)

 ヒムが距離を取った際のヒュンケルの分析で『あれは奴の全体重をのせる時の助走距離』という説明部分が削られていました。
 ダイとハドラーの戦いでは削りが少なかったのに、ヒム戦では削られる部分が多いですね。当人と傍観者という立場の差のせいでしょうか。

 ヒムとヒュンケルの激突シーン、大迫力!
 走るヒムと、待ち受けるヒュンケルを交互に映していくスピード感ある演出に惚れ惚れしました。なにより感心したのは、ヒムの拳を受ける寸前、ヒュンケルの目が見開かれた演出ですね。

 あの瞬間こそ、ヒュンケルはヒムの隙を見切ったのだと思えます。
 原作ではここでヒュンケルの目にヒムの拳が映り込む演出があったので、てっきりそれをやるのかと思っていましたが、それはなしでしたね。ヒュンケルが拳を放つ演出も省いていましたし。
 
 原作では集中線で表現した激突シーンを、青空を挟むことで間接的に表現していました。
 
 ヒムちゃんの吐血シーン、魔族特有の緑色の血かと思ったら、なんと意外にも黒かったです。ある意味、原作通りですな。

 ヒュンケルのお腹のアップを見ていて思いましたが、見事なまでに腹筋が六つに割れていますね。
 拳が震えるだけでなく、二の腕まで痙攣している辺りがリアル感があるなと思いました。

 ヒュンケルの無刀陣の説明、原作では名前を出さずに解説していましたが、アニメでは名前を言っていますね。
 回想シーンのヒュンケルVSバランにアルビナスが割り込む戦いが、懐かしかったです。

 ヒムを助け起こす際のヒュンケルの手の角度が、アニメで改変されています。

 握手のように伸ばされた手を普通に横から見た構図になっていましたが、原作ではヒムの視点……つまり真正面から見て、何かをすくい上げるような形で伸ばされた手が好きだったのにーっ。この改変はちょっと残念です。
 なまじ、次のシーンではちゃんと掌を上に向けた原作通りの手の差し伸べ方になっているだけに、余計に無念ですよー。

 ヒュンケルの説得の中、ハドラー親衛騎団が回想として登場したのは嬉しかったです。ただ、ヒム抜きのメンバーなのがちょっと寂しかったですが。
 原作ではヒム視点での回想でしたが、アニメではヒュンケルの回想っぽかったので、ヒムを中心に勢揃いの構図でも良かったような気もします。

 ヒュンケルの仲間の優しさの台詞、原作では「もっと優しさを感じられる言葉だったが……」でしたが、微妙に改変されていますね。

 ヒュンケルがヒムの手を掴むシーン、原作ではガシッと書き文字がありましたが、アニメだとギュッと控え目に指を包みこむイメージです。

 空から降ってくるチェスの駒、下から見ると丸いけれど、いざ降ってくるとポーンの駒だったのに妙に納得しました。確かに、あの形だと下からだとただの丸に見えますよねえ。

 ダイ達のシーンで、原作では両手から爪を生やしているミストバーンが、アニメでは片手しか見えませんでした〜。
 しかし、こんな場面ではやっぱり、ダイとマァムが前に出て、ポップが下がっていますね。

 ミストバーンの台詞に、微妙な改変が。

原作ミストバーン「バーンパレスの掃除屋……最大最悪の番人がっ……!!」

原作ダイ「……番人……!?」

 ……なぜでしょう、ミストバーンのマキシマムへの評価が、アニメでより下がっている気がします(笑)

 ヒムがオリハルコン軍団に驚くシーンで、仲間達の名を呼ぶ時に声に苦みが帯びていたのが、実にいい演技でした♪ 登場時のヒムの抑えた演技を思うと、どんどん人間味を強めて熱くなっていく変化がいいですね。

 マキシマム、初お目見え! ……本音をぶっちゃければ、こやつの出番こそなくなっても全然構わなかったんですが(笑) まあ、せいぜいお笑い要素に期待しましょう♪
 しかし、声が思いっきりダミ声系ですね。
 ○田哲章さんなら、本気ならめっちゃ渋くていい声が出せるでしょうにっ。

 ダイ大の敵方は美形声が多いからもしかしたら……と思わないでもなかったのですが、すでに『声だけはいい男♪』の夢は儚く来去りました(笑)
 尊大で勿体ぶった口調でありながら、バーン様の声よりも軽く聞こえるのが面白いところ。

 マキシマムが登場する前、シルエット部分の肩やら、足やら、胴、頭と、丁寧にゆっくりと映していましたが……なぜにここまでこやつに時間を使うのかと思いましたよ!

 手足を展開させたアルビナスの全身図さえ、ここまでじっくりゆっくりと魅せてはくれなかったのにー。いや、ほぼシルエットだから姿はしかとは見えないのですけどね。
 額の宝石っぽい部分がキラーンと光ったりしてましたよっ。

 ところで、マキシマムが飛び降りた際、足元の石床が砕けませんでしたね。
原作ではここで足元の石が思いっきり割れているのですが。

 アニメでは、踏み込みの強さを示すために足元を強く蹴られて足場が壊れる描写が多いのに、逆に原作よりも軽い表現に変えられていますよ、こやつ!
 まさかとは思いますが、……頭だけじゃなく中身も空っぽなんじゃないかという疑惑発生!(笑)

 ヒュンケルがヒムを抑えるシーンと台詞が改変されていました。

原作ヒュンケル「……しゃべるな、ヒム!! 屍のように、この場でじっとしているんだ……!!」

 ヒムの口を塞ぎながらのこの台詞、結構好きだったのですが削られて残念です。その代わり、アニメではヒュンケルがヒムを丁寧に横に寝かせるシーンが加わっています。

 ヒュンケルの最後の死闘の決意!
 原作の語り口調がなくても、余韻を感じさせるラストシーン。ヒュンケルの覚悟を決めた表情がいい感じでした。
 ここで次回に続くとは思わなかったタイミングには、意表を突かれましたが。

 ところで、髪が生えてから、ヒムの表情や輪郭線がハドラー寄りになってきた気がします。

 次回予告、ヒュンケル無双でしたね。とりあえずネタバレがなかったのにホッとしました♪


 

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