『チェックメイト』(2021.6.4)

 

《粗筋》

 バーンパレスで、ヒュンケルはマキシマム率いるオリハルコンの駒達と対峙していた。
 マキシマムが、声も高らかに叫ぶ。

マキシマム「キーングスキャン!!」

 マキシマムの目が光り、彼の視覚が機械を思わせるデータ解析画面へと切り替わる。ヒュンケルの残りHPがわずかと知り、愉快そうに嘲笑うマキシマム。

 思った通りだといい、ヒュンケルが後一撃で即死するほどの体力しか残っていないと言う発言に、ヒュンケルは無言のままだ。

 全身に大きなダメージを負っていて、兵士が小突いただけでもあの世行きだと蔑み、自分の頭脳と眼力の前ではどんな虚勢も意味は無いと宣言するマキシマム。

マキシマム「なにしろ我が頭脳には、悪魔の目玉が集めたおまえ達のこれまでの全戦闘記録が収まっているのだからなぁ」

 自分で自分の頭を軽くつつきながらそう言ったマキシマムは、その指をビシッとヒュンケルに突きつけた。
 無駄な抵抗をせず、一撃でやられるようにと薦めてくる。

 が、ヒュンケルは淡々とした口調で、一つ質問があると言った。
 わざとらしく何かなと聞きかえしながら、マキシマムは命乞いの類いなら受け付けないと拒否した。

 だが、ヒュンケルはそれには一切反応せず、マキシマムがバーンパレス最大最強の守護神なら、なぜバーンを守らないのかと厳しい表情で問う。

 それに対し、マキシマムはおまえのような一介の戦士には決して分かるまいと鼻で笑いつつも、自信満々に答える。
 自分の辞書に、敗北という文字はない、と。

 確実に、弱いものから痛めつけて数を減らしていくのが鉄則であり、自分達が出陣して敵を全滅させなかったことはない。

 常勝が自軍のポリシーだと言い、マキシマムは勇者達はミストバーンが必死に抑えていると説明する。
 それを、無言のまま聞いているヒュンケル。

 瀕死のヒュンケルを倒し、その後、ミストバーンが手こずっている勇者達を倒す……そうすれば、バーンパレスの侵入者は自分が全て一掃したことになると自慢げに語るマキシマム。
 倒れたままのヒムは、内心、憤慨していた。

ヒム(汚ねぇ……)

 理解したなら直ちに死んでもらおうと発言するマキシマムだが、ふと、気が変わったのか顎髭を撫でながら、ミストバーンを焦らすのも一興かと呟く。
 その様子も、じっと見つめているヒュンケル。

 ミストバーンがいつも掃除役呼ばわりしているのを根に持ち、彼に自分のありがたみを思い知らせるのもいいかもとほくそ笑む。







 その頃、ホワイトガーデン。
 水の音が涼しげに流れる中、ダイ達とミストバーンが対峙していた。

ダイ「バーンパレスの掃除役って、誰だ!?」

 パプニカのナイフを身がまえながら、詰問するダイ。

ミストバーン「オリハルコンのチェスの駒より生み出された金属生命体……」

ポップ「何ぃっ!? それって、ハドラー親衛騎団のことじゃねえか! そいつらは、おれ達がみんな倒したぜ!」

ミストバーン「チェスの駒は、おまえ達が倒した以上にある……おまえ達はキングと戦ったか……?」

 ミストバーンを、険しい表情で睨みつけるマァムの隣で、ポップは虚を突かれたような表情を見せる。

ポップ「キングはハドラーだろ……?」

 そんなポップの方にわずかに顔を向け、だが、目はミストバーンを見据えたまま、マァムはきつい口調で言う。

マァム「ハドラーは駒じゃないでしょ。……確かに、本来のキングの駒があっても、不思議じゃないわ。それに……二つずつある駒もある。
 じゃあ、ハドラー親衛騎団の他にも、オリハルコンの戦士達がいたのね!?」

 険しい目で、ミストバーンを睨みつけるマァム。

ミストバーン「……あやつらのように、意志を持つ駒ではないがな。だが、唯一キングの駒だけは、最初から自らの意志を持っていた。そいつが不遜にも動き出した……ということだろう」

 ミストバーンの説明を聞いて、ダイ達三人は険しい表情のまま睨みつける――。







 同じ頃、ヒュンケルはゆっくりと目を伏せ、よく分かったと呟いた。それを、面白がっているように聞きかえすマキシマム。
 目をカッと見開いたヒュンケルは、おまえはクズだと断言する。生かしておく値打ちもないと、怒りに満ちた声で叫ぶヒュンケル。

 それを聞いて、一瞬、目を細めたマキシマムは高らかに笑い出す。
 死に損ないのトドメは愉快だと言い、自分の指先一つで命が消えると脅すようにからかう。

 マキシマムが指を持ち上げるだけで、駒の兵士達が身がまえる。それを見て、焦りの表情を見せて息をのむヒム。
 だが、ヒュンケルは顔色一つ変えず、佇んでいた。

 マキシマムは指を高く上げ、指を鳴らしながら駒に命令を下す。
 兵士の駒達はそろって空中高く跳び上がり、そろったように同じ動きでヒュンケルを取り囲んだ。そして、全く同時にヒュンケルに殴りかかる。

 棒立ちのヒュンケルを取り囲み、サンドバッグでも叩くように機械的に殴りかかる兵士達。
 それを見て、驚愕するヒム。

 それを見て喜び、兵士の集中攻撃作戦を自画自賛するマキシマム。しばらくヒュンケルに攻撃させた後、戻れと合図を送る。
 その途端、兵士達はそろった動きで後ろへと跳びずさった。
 が、一体だけヒュンケルの元にとどまっている。

 自分の前に元通り駒を並べなおしたマキシマムは、訝しげに早く戻れと、取り残された駒を手招きする。
 手を身がまえた姿勢のまま固まっていた兵士だったが、その手が不意にだらりと垂れた。

 戸惑うマキシマムの目の前で、こちらに背中を向ける形の駒が、微妙に揺れる。手足をだらりと垂らしているように見えるポーンは、次の瞬間、背が割れた。
 同時に、身体そのものも弾けるように砕け散る。
 兵士が散った後には、右拳を突き上げた姿勢のヒュンケルがいた。

 信じられない光景を目の当たりにして、驚愕の叫びを上げるマキシマム。
 オリハルコンを素手で倒す――それを見たヒムは、嬉しそうな表情を浮かべる。
 
ヒム(あの野郎……やりやがったッ……!)

 音を立てて、兵士の駒が石床に落ちる。核を貫かれ、さらに上半身と下半身が真っ二つになって倒れた兵士は、どう見ても戦闘不能だった。
 静かに敵を見やった後、目を伏せたヒュンケルは小さく呟く。

ヒュンケル「……違うな」

 その言葉の意味を探るように、ヒュンケルに注目するマキシマム。

ヒュンケル「思った通りだ。こいつは、ヒムとは違う……!」

 強い光を秘めた目が、見開かれる。
 が、マキシマムはそれをわけの分からん発言と決めつけ、指を鳴らして騎士へ指示を出した。

 ジャンプ一閃で、ランスをヒュンケルへ突きつける騎士の駒。ランスの鋭い切っ先が、キラリと光る。
 だが、ヒュンケルは臆する様子も見せず、おまえもシグマじゃないと叫び、拳を突き上げる。天まで届とばかりに打ち上げた拳にオリハルコンの身体が砕け、四散する。

 驚きのあまり、顔がよじれてしまったマキシマムは攻撃指示の指さし姿勢のまま固まっていた。

 ヒュンケルは、言う。
 ハドラー親衛騎団……ヒムもシグマもアルビナスも、自分の意思を持った立派な戦士だった、と。主のために命を懸ける忠誠心を持った手強い戦士だった、と。

 だが、マキシマムの手下はただの駒……言いなりの人形に過ぎないと激昂するヒュンケルの背後で、壊れた兵士達が爆発する。その逆光を浴び、ヒュンケルのシルエットが浮かび上がって見えた。
 彼の言葉に何か感じるものがあるのか、じっとそれを見ているヒム。

ヒム(ヒュンケル……)

 驚きに目を見張った後、怒りの表情のまま再びキングスキャンをかけるマキシマム。目が先程よりも強く光り、HP1となったヒュンケルのデータが露わになる。

 やはり瀕死だとチェックして元気を取り戻したマキシマムは、悪運が強いヤツと決めつけ、指を鳴らして僧正をけしかける。
 ヒュンケルの足元を切り裂いていきなり出現したのは、僧正の駒だった。

 不意打ちのドリル攻撃が、見事にヒュンケルの肩を捕らえる。拳を振り上げ、喜ぶマキシマム。
 が、ほんの先端だけ刺さった刃に片手で抑え、ヒュンケルは残った手で僧正を粉砕した。

 驚きのあまり、変な悲鳴を上げるマキシマム。
 僧正の刃物化した手を平気で鷲づかみにし、その場で身がまえるヒュンケル。

 そんな彼に対し、マキシマムはしばし、恐れを成したように呻いていたが、それでも再び目を光らせてヒュンケルのステータスを確認する。
 ヒュンケルの残りHPは1のまま。

 狼狽するマキシマムに、ヒュンケルは決然と言い放す。
 今にも燃え尽きそうな自分の命だが、人形ごときに取らせてやるほど安くはない、と。

 それを聞いて、怒りに拳を振るわせるマキシマム。
 次に彼が命令を下したのは、城兵だった。巨体の駒が地響きを立てながらヒュンケルに歩み寄る。

 スッと腰を落として身がまえたヒュンケルは、今度は自分から空に飛び上がった。まだ手にしていた僧正の刃物の腕を放り投げて回転させ、刃物のついていない腕部分を掴み直すと、城兵めがけて飛び降りざまに一刀両断した。

ヒュンケル「おまえも……ッ!!」

 地面に着地したヒュンケルの目の前で、真っ二つになった城兵が左右に分かれて倒れる。

ヒュンケル「中身がないッ!」

 顔を引きつらせながら、マキシマムは兵士に全員でかかるように命じる。おかしなぐらいにそろった動きで攻撃にうってでる兵士達。
 自分に飛びかかってくる兵士達を前に、ヒュンケルは手にした僧正の腕を投げつけた。

 それは見事に真正面にいた兵士の胸に刺さり、爆破を呼び起こす。だが、心を持たない兵士達は仲間の死などなんの関係もないとばかりに、見向きもせずにヒュンケルに襲いかかってくる。
 城兵の身体の間に立ちながら、じっとそれを待ち受けるヒュンケル。
 倒れた城兵の身体から火花が散り、爆破の予兆を現した。

 殴りかかってきた兵士を、ヒュンケルは素早い動きで回避し、二体目の攻撃も避けた。三体目の攻撃は身体を大きく反らして避け、起き上がりざまに叩き込まれた四体目、五体目の拳も掠らせもしない。
 その頃には、倒れた城兵の身体は爆破寸前の色合いに染まっていた。

 ついに爆破する城兵。
 それを一瞬、振り返ったヒュンケルを、爆破の炎が覆い被さっていく。
 巨体に見合った爆炎を、マキシマムは安全圏から眺めていた。

マキシマム「おぉおお、おおおお……ッ」

 驚きに口をぱかんと大きく開きながらも、目を光らせてキングスキャンを仕掛けるマキシマム。
 彼の目は、爆炎の中にいるヒュンケルの輪郭を正確に捉えていた。

 一度はうつ伏せに倒れ込んだヒュンケルが、起き上がる姿が見て取れる。そのHPは1のままだ。

マキシマム「ひぇえええっ!」

 思いっきり驚くマキシマム。ガクガク顔を震わせ、彼は内心おののく。

マキシマム(減らない! あとわずか、後1ポイントのダメージがぁッ)

 煙が薄れ、よろめきながら立ち上がろうとしているヒュンケルの姿が見える。
 マキシマムは動揺しつつ、ヒュンケルが未だに死なない理由を探る。データバンクによると、不死身というヒュンケルの名はただの異名であり、彼はただの人間のはず。

 こうなったらと、マキシマムはこれまで以上に気迫を込めてスーパースキャンを仕掛ける。
 これまでの画像がモノクロに変わり、ヒュンケルの骨を映し出していた。無数にヒビの入った骨は、如実に彼のダメージを現している。

 それを見て、オリハルコンを素手で砕いて無事で済むわけがないと勝ち誇るマキシマム。もはや再起不能……それがなぜ動けるのかと、頭を抱えて絶叫する。

 マキシマムの動揺をよそに、すっくと立ち上がるヒュンケル。
 それを見ているヒムには、彼の力の源が分かっていた。

ヒム(すっげえ……ヒュンケルを突き動かしている、生命すらも越える力……! あれが……あれが、闘志なんだ!!)

 ヒムの目には、ヒュンケルの背中が炎を纏っている姿がはっきりと見えた。

 マキシマムは残る駒は兵士が五体だけだと気づき、動揺が深まる。
 1ポイントの生命力を奪えないわけはないと思いながらも、ヒュンケルに超常的な力があると懸念して、全員に戻るように指示し、自分をガードするように命じる。

 それを聞いて、目を光らせるヒュンケル。
 兵士達は一斉にマキシマムの所に戻った。自分の前方を五体の駒に守らせながら、マキシマムはヒュンケルの姿が消えたと驚愕する。どこに行ったかと、左右を見回してヒュンケルを探すマキシマム。

ヒュンケル「ここだ……」

 低い声でそう告げたヒュンケルは、マキシマムの真後ろにいた。驚き、肩越しに彼を振り返るマキシマム。
 言葉にならないほど動揺しつつも、マキシマムは豪腕を振り回してヒュンケルをはね除けようとした。

 が、低くしゃがみ込んでその腕を躱したヒュンケルは、伸び上がるようにマキシマムの顔面に拳を食らわせる。吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられるマキシマム。

 驚きおののくマキシマムの顔からは自慢の口髭が片方欠け、頬にも殴られて削れた後が残っていた。
 呻き声を抑えるかのように、自分の口元を手で覆い隠すマキシマム。

 そんな彼を前に、一列に並んだ兵士達は身動き一つしない。彼らの前にはヒュンケルが無防備に背を向けているが、それでも攻撃をする気配すらない。

 所詮は人形であり、命令がなければおまえを助ける義理もないようだと決めつけるヒュンケル。
 チェスの王が一コマずつしか動けないことになぞらえて、マキシマムは部下達の力を借りて戦う戦略的頭脳だけが彼の能力だと言い放つ。

 本人に実力があれば、あの場面で部下を呼び戻したりしないと言うヒュンケルの指摘に、激しく動揺するマキシマム。
 チェックメイトを宣言するヒュンケルに、それを聞いて勝利を確信するヒム。
 ヒュンケルは、真正面からマキシマムを見つめていた――。






 ハッとしたように、マキシマムを見やるヒュンケル。
 口元を隠し、ガタガタ震えるマキシマムは、弱々しくキングアクセスと呟く。

 彼の脳裏には、ヒュンケルのこれまでのデータが浮かぶ。
 指先だけで兵士を動かせるとは言え、それだけでは彼には勝てない。ヒュンケルの致命的な弱点を探して、彼のこれまでのデータを見返すマキシマム。
 数あるデータの中で、マキシマムが目を留めたのは、ボラホーンに頭を握られ人質にされたポップと、それを見て血相を変えるヒュンケルの姿だった。

 ニヤリと、いやらしい笑みを浮かべるマキシマム。
 頭を持ち上げ、ヒュンケルに早くやってしまえと声をかけるヒム。が、その時、マキシマムは指を鳴らした。

 驚くヒュンケルを無視して、兵士達は一斉に走り出す。ヒュンケルを通り越して彼らが向かう先がヒムの方向だと気づき、ヒムの名を叫ぶが間に合わない。
 兵士達は、五人が等間隔にヒムを取り囲んだ。

ヒュンケル「やめろぉおおっ!!」

 血相を変えて叫ぶヒュンケルの目の前で、兵士達はヒムを胴上げでもするように持ち上げ、バーンパレスから放り投げようとする。

ヒム「おいっ……やめろっ」

 抵抗虚しく、無造作に放り投げられるヒム。悲鳴を上げ、ヒムは落下する。無意識に手を伸ばし、二度目の天空城からの落下を味わうヒムだが、その手を人間の手がしっかりと掴んだ。

 見れば、五体の兵士が立ち並んで見守るまでで、城壁に身を乗り出したヒュンケルの手がぎりぎりでヒムを捕まえ、落下を食い止めていた。強く吹く風に、ヒムの銀髪が靡く。

 助けられたのが信じられないとばかりに、ヒュンケルを見上げるヒム。
 だが、驚きの一時がすむと、ヒムは自分なんかに構ってる場合ではないと激昂する。

 だが、ヒュンケルはダメージを受けた今のヒムが落ちたら即死だと、彼を引き上げようと力を込めて踏ん張る。
 と、陽気な声でそれを肯定したのは、マキシマムだった。
 巨大な足でヒュンケルの背中を踏みつけ、それによって吐血した血がヒムの顔に降り注ぐ。

 ゲシゲシと、連続的にヒュンケルの背を踏みつけるマキシマム。城壁が崩れるほどの威力の蹴りに、ヒュンケルも溜まらず苦痛の呻きを漏らす。だが、それでも彼はヒムを支える手は離さない。
 ヒムはそれを見て、手を離せと絶叫する。

 しかし、マキシマムは無理だと断言した。
 過去のデータを引き合いにして、ヒュンケルが自分のために仲間を犠牲に出来ない男だと、小馬鹿にしつつ説明する。共倒れになるにせよ、自分だけ生き延びる道を選べぬ、頭の悪い男だと――。

 背骨を折らんばかりの激痛に耐えながら、ヒュンケルはヒムを支える手を離さない。渾身の力を振り絞っているせいで流れる汗が、涙のようにヒュンケルの顎を伝う。
 自分を仲間だと思ってくれていたことを知り、ヒムの目が瞬く。
 
 それは致命的な弱点だと、マキシマムは得意げに腕を組む。
 かつては冷徹な戦士だったのに、仲間達の愛やら情けに触れたおかげで不死身の戦士に唯一の隙ができたとご満悦の様子だ。

 苦しげな表情で、目を閉じてそれを聞いているヒュンケルだが、その目がゆっくりと開かれる。潤んだ目で、夢見心地に呟くヒュンケル。

ヒュンケル「あい……」

 それを見いだした吾輩のここはすごいと、はしゃいで自分の頭をつついてみせるマキシマム。
 だが、そんな彼の高笑いもヒュンケルの耳には届いていなかった。彼は今にも泣き出しそうな表情で、譫言めいて呟く。

ヒュンケル「……そうか。オレは……」

 思い出すのは、アバンのしるしを手に聖母の微笑みを浮かべていた仲間の姿――マァムと同じことをしたのだと、ヒュンケルは今こそ気づいた。

ヒュンケル(このオレに……そんなことが……)

 何かを噛みしめるように、目を閉じるヒュンケル。無意識に、ヒムを支える手に力がこもる。
 ヒュンケルの様子が変わったことに気づいたのか、戸惑うように彼の名を呼ぶヒム。

 そんなヒムに対して、ヒュンケルは目を閉じたまま謝罪する。おまえだけでも救いたかったが、力が及ばなかったと申し訳なさそうに謝る。
 だが、愛や情けの心で敵に敗れるなら、むしろ誇らしいと言い切るヒュンケルは、涙を耐えるように目を伏せた。
 それを聞いたヒムは、号泣しながら叫ぶ。

ヒム「バカやろぉおおっ!!」

 吾輩も同意見だと口を挟み、両手を組み合わせるマキシマム。最後の1ポイントを、自らの手で奪うつもりなのだ。わざわざヒュンケルの背を押さえていた足をどけるも、傷つき、ヒムを支えるのに精一杯のヒュンケルは逃げることは出来ない。

 組んだ両手を高々と掲げ、自らの口で自分の豪腕を讃え、ヒュンケルに向かってそれを降り下ろそうとするマキシマム。
 目を閉じ、俯いたヒュンケルは覚悟を決めたように歯を食いしばる。ヒムもまた、目を固く瞑って歯を食いしばった。

 だが、そこに高速で飛んできた槍がマキシマムの頭を貫いた。完全なる不意打ちに、組んだ手もほどけ、横によろけさせられるマキシマム。

マキシマム「どす?」

 頭を抱え込んで騒ぎ立て、後ろに数歩下がって周囲を見回し、大それた真似をした犯人を捜すマキシマム。

???「大それた真似?」

 どこからか聞こえてきた不遜な声に、マキシマムだけでなくヒュンケルもハッとしてそちらに目をやる。
 自分にとってはいつものこと……卑劣な戦い方をする外道には、例外なくその魔槍をぶちこむのが流儀だと言ってのける声はどこまでも自信に満ちあふれていた。

 見れば、遠くに人影が見える。
 姿を隠しもせず、堂々と立っている男に、名を名乗れと凄むマキシマム。

ラーハルト「陸戦騎……ラーハルト! 推参!!」
 
 その名前を聞いて、目を見張るマキシマム。ヒュンケルもまた、ラーハルトの登場に驚きを隠せない。

 マキシマムの前にポーン達が一列に並び、身がまえる。
 それを、落ち着き払った顔で眺めるラーハルト。それを見返すマキシマムの顔は悔しさで歪んでいる。

 マキシマムらの注意がそれた隙に、ヒュンケルはすでにヒムを引き上げていた。
 誰が来たのかと戸惑うヒムに、ヒュンケルは奇跡というものは2度3度起こるものらしいと答える。

 アバンに続いて、また恐るべき男が帰ってきた……ヒュンケルの宿敵にして、意志を託された友。その名は、陸戦鬼ラーハルト。

 ラーハルトは、気負う様子もなくごく自然体に立っていた。
 そんな彼を、マキシマムは『アクセス』してデータ検索を行う。ラーハルトが元竜騎衆の一人で、ヒュンケルの持っていた魔槍の本来の持ち主であり、記録ではダイ達との戦いで死亡したらしい。

 死に損ないが迷って出たかと貶し、自分の頭にはおまえのデータは入っているし、技を掌握したと得意げに言い放つ。
 それに、ラーハルトは全く焦った様子を見せなかった。

ラーハルト「ほーお、そいつはすごいな。どんなデータを知っている?」

 皮肉が通じていないのか、マキシマムはラーハルトが素早さが身上なこと、必殺技の名のデータなどを自慢げに披露する。
 素手のラーハルトが逃げの一手しか出来ないと侮り、対応策を口に仕掛けた時、ラーハルトの姿がフッと消えた。

 驚くマキシマムに、ヒム。
 硬直したマキシマムの頭から、フッと刺さった槍が消える。それさえ気づいていないように、左右を見回すマキシマム。

 見れば、最初にいた場所に槍を持ったラーハルトがいた。
 まるで槍を見せびらかすかのように涼しげな顔で、それを手にしている。

マキシマム「げえっ」

 驚き、自分の頭に手を触れてから、マキシマムはさらに驚愕した。

マキシマム「げぇええええっ!?」

 後頭部にも触れ、貫通していたはずの槍がないことを確認するマキシマム。
 ヒムもまた、瞬きをして、今の動きに驚愕していた。そんなヒムに、ヒュンケルはよく見ていろと忠告する。
 ヒムも相当早かったが、上には上がいるのがわかる、と。

 軽く目を閉じたラーハルトは挑発的に、「かなり」素早い動きが見えたかと、相手の言葉尻を捉えて皮肉を言う。
 すぐに言い返せず、顔を歪めて唸るマキシマム。

 ラーハルトはなおも、挑発を続ける。
 速いと知っているだけで勝てるなら、世話はない、と。他のデータも当てにならないと当てこすられ、プライドを傷つけられたマキシマムは怒りにまかせて兵士達に攻撃命令を下す。

 ラーハルトは全く動じることなく槍を構え、後学のためにお見せしようと、必殺技を放つ。
 自分に迫る兵士に対して、槍を軽く回して構え直し、突進したラーハルトの身体がフッと消える。目にもとまらぬ速度で動くラーハルトの動きが見えているのか、ヒュンケルは叫ぶ。

ヒュンケル「出るぞ!!」

 いつの間にジャンプしたのか、空に高々と舞い上がって槍を回転させるラーハルト。彼は落下よりも速く地上に移動し、技を放つ。
 ハーケンディストール――赤い闘気が一直線に地を切り裂き、その斜線上にいたオリハルコンの兵士達をも両断する。

 たった一撃で、五体のオリハルコンの兵士達は見事なまでに真っ二つにされていた。
 強い風が吹き抜けたように、敵の間を駆け抜けて動きを止めるラーハルト。彼は槍を刃を上に持ち、もう攻撃はすんだとばかりに軽く一突きを一床に打ちつける。

 そのかすかな音が合図だったかのように、空中で斬られた兵士達は落下する前にそれぞれば爆発した。激しい爆炎があがり、ラーハルトを逆光に染め上げる。
 ラーハルトは振り返りもせず、ただ、槍を持ち直した。

 炎が消え、まとわりつくような黒煙が薄れると、ラーハルトの放った技が広範囲に亘って石床に傷をつけたことが分かる。ヒュンケルのグランドクルスに比べて範囲はごく狭いが、まるでクレバスのように深く、長く、地を割っていた。

 穂先を下に持ち直したラーハルトは、煙が薄れた頃ゆっくりと歩き出す。マキシマムの脇を見向きもせずに通り過ぎる際、マキシマムは怒りに拳を振るわせていた。

 が、ラーハルトは彼を一顧だにせず、ヒュンケル達の方向へと向かっていく。
 奇妙な声を上げ、顔を引きつらせながら振り返ったマキシマムは、なんとか尊大さを取り繕い、今日のところはおまえ達の勝ちにしてやると言い出した。

 ラーハルトを指さし、自軍に敗北は許されない、次こそは必ず勝つと言い放つマキシマムだが、ラーハルトは素っ気なく次などないと言い捨てる。
 その場を一歩でも動けば、おまえは終わりだとつまらなそうに言ってのけた。

 戸惑うマキシマム。
 が、すぐにくだらない脅しには乗らないと言い返し、含み笑う。
 その態度に、ヒムの方が焦り気味になる。

ヒム「てめえっ、全然気づいてねえのかよ!?」

 瞬間、画面が真っ白になり回想シーンが展開される。
 驚愕に目を見開くマキシマムに向かって、槍を振り回すラーハルトの姿が映る。

 それを目撃したヒムは、マキシマムがすでにラーハルトに目にもとまらぬ早さで全身を切り刻まれていることを指摘する。
 思いっきり動揺して叫ぶマキシマムを、冷静に眺めるヒュンケルに、ヒム。

 だが、マキシマムはその指摘を笑い飛ばした。
 ヒム達が集団で自分をかつごうとしていると決めつけ、キングアクセスと叫んで目を光らせる。

 ヒュンケルやヒム、マキシマムに背を向けたままのラーハルトには、彼が何を見ているかは分からない。
 しばし、目を輝かせた後、マキシマムは得意げに言い放った。

マキシマム「読めたわ! 心理的トラップというヤツだろう」

 そんな不確実な情報に踊らされないと自信満々に言うマキシマムに、今度は三人とも何も言わなかった。
 さらばと挨拶して手を上げてから、また会おうとの言葉を残してその場をジャンプし、空へ飛び上がるマキシマム。

 空を飛ぶ身体からは爆破の予兆である火花が、早くも散っていた。

マキシマム「あれ?」

 戸惑うマキシマムの顔に、縦一直線の筋が入り、そのまま二つになった顔が上下へとずれる。次の瞬間、マキシマムは空中で爆破していた。
 完全に爆破してから、ラーハルトはようやく振り返って呟く。

ラーハルト「自業自得……似合いの末路だ」

 パラパラと降ってくる細かな破片が、ヒムの頭にも当たる。だが、彼は痛くもないのか気にした様子はない。ただ、呆れきったような表情で空を見上げていた。

ヒム「正真正銘のバカだぜ……あのキング」

 呆れすぎて悟りを開いたのか、半眼になったヒムだが、次の瞬間、カッと目を見開いて手で口を覆う。

ヒム(オレ……あっち側のポーンになる可能性があったのかぁ!?)

 ホッとため息をつき、ハドラー様の部下に生まれて良かったとしみじみと呟くヒム。指を折り、八分の一の確率かとぼやくヒムを、ヒュンケルはどこか優しい目で見守っていた。
 が、その目がふと険しくなり、一方向に向けられる。ヒムもそれに釣られ、目線をそちらに向けた。

 視線の先にいるのは、ラーハルトだった。
 険しい目を向けてくるラーハルトを、ヒュンケルもまた、険しい目で見つめ返している。
 
 ただならぬ緊張感に、ヒムは無意識のように大きくヒビの入った胸元を押さえ、このラーハルトの男は何者なのかと疑問を抱く。
 いったい、過去にヒュンケルと何があったのか――。
 ラーハルトとヒュンケルは険の感じられる目で、睨むように見つめ合っていた。
 

 
 


《感想》

 マキシマム、言動が大仰でめっちゃ笑える敵でした♪
 マキシマムのキングスキャン、原作に比べてメッチャパワーアップされていましたよっ。

 原作ではせいぜい、赤外線探知のように大まかなシルエットを映し出してファミコン並のドッドの荒い字でHPなどを表示したり、レントゲンのように骨の詳細を調べる程度の機能しか無かったのに、アニメではゲーム画面のごとくしっかりと立派な枠がついていました。

 枠に、さりげに王冠が刻まれている辺り、キングのプライドを感じます(笑) 左上に何やら細かなステータス画面、その下には物差しのように目盛りのついたステータスバー。赤い表示が一番下まで下がったところを見ると、体力や戦力を総合的に判断しているのかも?

 さらに、六角形の図形がちょっと斜めに浮かんで出てきました。えーと、なんらかのパラメーター表示?

 よくある正六角形の枠に、色違いで歪な六角形が重ねられているのなら、パラメーターを視覚的に表現しているとわかるのですが、ただの六角形なのでそうは見えないのですが。
 でもしょっちゅう六角形が動き、三つ重なったり離れたりしているので、何らかの意味はありそうです。

 右上には方眼紙のように線を引いた図があって、どうやらその場の地形と敵と自分の表示しているっっぽいです。……妙にマス目が大きくて大雑把な地形ですが。ついでに、描かれているのは王冠マークと敵表示のみで、味方の駒の表示は一切されていないんですけど、それで役に立つんでしょうか?(笑)

 その下には、四つの文字表示が。
 上から二つ目が黄色くなっていたので、何かを示しているとは思うのですが……読めませんっ。
 
 その下には、心電図っぽい波で何かを表示する画面が。無駄に虹色でカラフルです。

 最後に、ヒュンケルの顔のアップと、HP21MP0の表示が。
 原作では最後のデータしか出ていなかったのに、なんだか無駄に高性能化っ(笑)

 マキシマムの台詞、ヒュンケルをバカと罵る部分が削られているなと思ったら、なんと悪魔の目玉関連のオリジナル部分を追加されていましたよ! 
 確かに原作でも、マキシマムのデータ収集は悪魔の目玉を通じてかなり前からやっているっぽいなとは思っていましたが、アニメでははっきりと台詞で断言していました。

 それにしても、指先のアクションが原作に比べてすっごくカッコよくなっとります。原作ではぶっとくも短い指をピンと立てているだけですが、アニメでは○転裁判ばりの勢いの良さでビシッと降り下ろしていますね(笑)

 ヒュンケルに「なにかな?」と聞きかえすマキシマムが、手をちょっと広げた時の表情には爆笑しました。
 う、上目遣いですと! 可愛い女の子がやるならともかく、この巨体でなぜに上目遣い!? 思いっきり相手を小馬鹿にしまくった目つき……こんなにもむかつく上目遣いの記憶が、更新される日が来ようとは(笑)

 原作ではラスト以外は割と固い表情だったのですが、アニメでは思いっきり顔芸を披露しまくっています。

 ヒュンケルがマキシマムに質問する台詞、後半の『今、まさに勇者(ダイ)達が中央の城へと突入しているはず……』という肝心の削られていたのが残念ですっ。
 ヒュンケル的にはマキシマムやバーンではなく、ダイ達がどうしているのか知りたい気分が一番だったと思っていたのに〜。

 質問時、最後の部分だけ表情を険しくする演出は気に入っただけに、削られた台詞の部分が残念でなりません。どうせなら、ダイ達のことを聞く時にこそ、この表情を見たかったですよ〜。
 ……マキシマムの追加台詞を削れば、入ったでしょうに(笑)

 でも、マキシマムの長文説明、思いっきり端折られていました。キルバーンやミストバーンをバーン様の側近と呼びながらも、立場と重要性を全く理解していなかったような台詞は、どうやら無用と判断されたみたいですね。
 ……まあ、マキシマムは多分、あの二人の正体などは知らなかったでしょうから、語らせても意味はなさそうです。

 ヒムちゃんの台詞の後半、マキシマムを「それじゃあまるでハイエナか盗賊じゃねぇか……!」と貶すシーンがなくなったのは、ちょっと残念。

 ミストバーンを焦らすのもいいと呟くマキシマム、髭を撫でていますが……金属製なのでピクリとも動いていませんが……意味があるのか、その行為(笑)

 そう言えば前回も思いましたが、掃除屋が掃除役になっていますね。
 マキシマムの思わせぶりな台詞のところで、ダイ達へ視点が変わったのはアニメの改変ですね。

 ダイがパプニカのナイフを身体の前に構えているのが、なんか新鮮です。親衛騎団な倒したと怒っているポップの横顔も、なんかいいですね。声の演技も合わさって、怯えているけど目一杯虚勢をはっている感じが好きです。

 そして、ミストバーンが語る、語る(笑)
 やっぱり、バーン様に口止めされていなければ、基本的におしゃべりさんなんでしょう。それにしても、台詞の端々からマキシマムへの嫌悪感がにじみ出ていますね。

 ミストバーンの指摘に戸惑うポップも可愛いですが、ミストバーンをじっと睨み続けているマァムが実にいいですね! 仲間に話しかける間も敵から気を逸らさない目に、惚れ惚れします。

 マァムの台詞と賢さを増やしてくれたのが、思いっきり感動です♪
 アルビナス戦が終わってからはマァムの見せ場は極端に少なくなりますし、元々マァムの説明シーンはすっごく少ないので、レア感があって嬉しかったです。

 ポーンの集中攻撃を見て気づいたのですが、ポーンらは右手から攻撃していました。ヒムちゃんは左手が決め技の手、つまり左ききっぽいのに、ポーンらは違うのかも。

 また、原作では一方向から全員が一斉に殴りかかるという、扇型の陣形だったのが、アニメではヒュンケルの周囲を取り囲む陣形に変わっています。
 原作では一発殴っていただけに見えましたが、アニメでは思いっきりタコ殴りですね。

 ヒュンケルにやられたポーンが、身がまえた手から力が抜ける演出と間がカッコいいです!

 しかし、ポーンは中が詰まっている質感で描かれていましたが、ナイトはなんだか……中が空っぽに見えたのですが。気のせいかな?

 ヒュンケルがハドラー親衛騎団を語る際、左向きの横顔のヒム、シグマ、アルビナス、フェンブレン、ブロックが並んだのは素直に嬉しかったです。……でも、フェンブレンとブロックは器物感が強すぎて、横顔だと生き物な感じが全くしませんでした。

 特にフェンブレン、横顔だと……なんか、顔が半分に切れたような変なデザインに見えます(笑)
 言っちゃ悪いですが、ヒュンケルがヒム、シグマ、アルビナスの三人の名前しか呼ばなかったのも、納得できちゃいますね。

 欲を言えば、回想シーンでのハドラー親衛隊のヒムは、髪の毛が生えた今の姿ではなく、彼らと一緒だった時のポーンの姿で見たかったです。

 炎の爆破を背負うヒュンケルが、特撮ヒーローのようでカッコいい♪
 しかし、キングスキャンで見るとHP1MP0……ピコーンピコーンと音を立てながらHPが点滅していますよっ。

 DQ風に、HPがある程度下がったら画面の色が赤く染まる仕様と思っていたら、HP1に限って点滅アラームって……警告にしては遅すぎる気がするのですけど(笑)

 僧正の土中からの攻撃の際、ヒュンケルの方に画面だけ走っているように視点が動き、いきなりビショップ登場の動きがよかったです。

 ヒュンケルが城兵を切った時の台詞は、アニメオリジナルですね。最後まで仲間を庇い続けたブロックと、ただの城兵の差を感じさせてくれる言葉です。

 それにしても、アニメだとポーンの動きがシンクロしすぎて、ちょっと笑っちゃいます。

 ヒュンケルがポーンらの攻撃を避ける動き滑らかでいいですが、特にのけぞるほどのスウェーバックを決めているシーンがカッコよかったです♪ ヒュケルって、なにげに背筋も強いですね。

 爆炎越しにヒュンケルをスキャンする際、ステータス表示がHPMPだけのさっぱりした画面になっていたのを見て、つい思いました。
 ……ステータス類って、もしかしていらないんじゃ?(笑)
 マキシマムがかっこつけのために不必要なステータス画面をわざわざ表示していると聞いても、ちっとも驚きません。

 その直後、コミカルな表情で手を身体の前にかざし、驚くマキシマムの姿に爆笑しました。「ひええ」の発音と言い、ポーズと言い、某有名漫画の出っ歯キャラの「シェー」のポーズを連想しちゃいましたよ。
 このシーンのマキシマムの台詞、改変があります。

原作マキシマム(ヘッ、減らないッ! あとわずか、1コマの体力がっ……!!)

 驚く時のマキシマムのコミカルな演技と、なぜと真相を追究する時のシリアスな声の落差には感心しました。ふざけているようでいて、決め所は外さない……さすが超ベテラン声優さん、素晴らしいバランスの演技です。

 マキシマムのスーパースキャン、背後に閉じ目が浮かんだかと思ったら、それが強烈に光る演出がすごい……! 原作通りなのに、アニメで光を加えるとこんなにも派手な演出になるのかと感心しました。

 ヒムの台詞『人間じゃねぇオレにも……今ならはっきりと分かるぜ!!』の部分がカットされていました。
 炎を纏ったヒュンケルの背中、ガッシュで描いたような荒々しさがいい感じです。ヒュンケルの肉体も、大分筋肉質な感じ。

 マキシマムがヒュンケルを見失った時、首を左右に振って探している姿を見て思いましたが……スーパースキャンってこういう時にこそ便利なのでは?(笑)
 
 チェックメイトのシーンでCMになったことで、今回のタイトルと重なって嬉しくなりました。

 弱気になったマキシマムのキングアクセスの発音には、爆笑しました。
 今回、何度となくスキャンをしていたのに、その度に発音が微妙に違って楽しかったです。

 ついでに言えば、この読み込み作業は原作では特に名乗らずにシャカシャカと起動音が聞こえるだけだったので、技名を初めて知りました。
 後でラーハルトを検索するときは、アクセスとしか言っていませんでしたし。

 目が大写しにアップになって、そこから新たなステータス画面が! 画面左下に、じーっと目を見張っているマキシマムの顔アイコンがあったのには大爆笑しましたとも。しかも、このアイコン、妙に動きますね。スクロールバーかな?

 が、その後、休息にデータフォルダらしきものが左右に流れていく様を見て、ビックリ。ヒュンケルの名シーン続出ですっ。
 最初にとまった画像では、ロロイの谷で暗黒闘気の杯を飲んで倒れる寸前の絵。

 暗黒陶器の杯を飲み、真っ黒になって吠える姿。
 アップにするのも自由自在の様子です。
 不覚にも、マキシムアムの能力が羨ましいと思っちゃいましたよ(笑) 家の録画機器やらDVDプレーヤーよりも、はるかに高性能ですなぁ。

 しかし、順番はあまり整理されていないみたいです。
 バーンパレスでヒムとの再戦で空を呆然と見上げている図の隣が、竜騎衆との戦いでポップが人質に取られた時の姿でしたよ!? 順番はそろえようよー、フォルダ名を適当に名付けて番号を振らないタイプと見ました!

 ボラホーンに頭を掴まれたポップを見て、血相を変えるヒュンケルの図は見ていて懐かしくて楽しかったですが。
 ニヤリと笑うマキシマムの顔がひじょ〜にいやらしかったですが『ニヤッ』とホントに口に出して言ってたのには爆笑しました。
 もう、どこまで笑わせてくれるんですか、このバカ殿様は(笑)

 ヒムのピンチに、ヒュンケルがやめろと叫ぶシーンはアニメの改変ですね。マキシマム戦で一番動揺した表情を見せています。

 無表情のポーン達がヒムをぶんっと放り投げるシーンは、思った以上にシュールでした。
 ヒムがやめろと言う台詞もアニメの改変ですね。
 
 原作ではヒュンケルが地面を蹴って走るコマの後、ヒムの手を捕まえるというコマでスピーディーに表現されているシーンですが、アニメではヒュンケル側の動きは見せず、ヒムを中心にゆっくりとスローモーションで落下させています。
 
 もう助からないと思いながらも手を伸ばすヒムを、ヒュンケルの手ががっちり支えるシーンは実に良かったです♪
 ヒムが驚いてから、ハッと気づいたようにヒュンケルを怒り出すまでに間があったのもいいですね。

 あれだけ助けを求めて手を伸ばしていたのに、いざ助けられてもそれがヒュンケルに不利になると気づいた途端、止めさせようとするも、それが怒りという形で表現されるのがヒムらしいです。

 ヒムを引き上げようと、ヒュンケルが城壁に空いた手を掛けて踏ん張り、台詞も途切れがちな演出もよかったです。力を入れていて、スムーズにしゃべれない感じに、懐かしの『ファイト一発』のCMを思い出しました。

 ヒムの手を離せの台詞の後半「オレにかまわずそいつをぶちのめしてくれッ……!!」がカットされたのは残念!

 逆に、マキシマムの台詞「吾輩のここはすごい! すごすごすごい!」と、妙なアレンジが追加されていますよっ。もう、今回だけでどんだけ笑わせてくれるんだか。大いに腹筋が鍛えられた気がします。

 そんな台詞を無視して、聖母なマァムの記憶に浸るヒュンケル。……ええ、どっちに比重を置くかは明白ですね(笑)
 好きなシーンなので、回想シーンにばっちり登場してくれて嬉しいです。

 マキシマムに止めを刺されそうなヒュンケルが、水色の影のかかったような白い画面で表現されていたのは、綺麗で印象的でした。
 ヒュンケルの髪の毛は灰色の影をつけて表現されていますが、水色も似合う気がします。
 ヒムちゃんは……水色より、銀色の方が似合いますね(笑)

 槍が飛んできて頭に刺さるシーン、刺さった瞬間がスローモーション風になり、背景が真っ白でキャラが目を残してシルエットで黒く表現されるという超シリアスシーン……なんだって「どす」と自分の口で言っちゃいますかね、この人はっ。

 一拍遅れてから、頭を抱え込んで呻いていますしっ。ていうか、両手で頭頂部を妙に可愛く押さえ込んでいますが、そこ、刺さった場所とちゃいますやん(笑) 

 ついでに、原作ではマキシマムが攻撃されたのを見てポーン達が多少は気にしているのか、それぞれが少し違うポーズを取りながら彼に注目しているのですが、アニメのポーン達は完全に直立不動で興味ナッシングです。……人望、ないですね(笑)

 久々に聞くラーハルトの声があまりにも尊大で、ふてぶてしいのに感動しちゃいました。バランにはあんなに従順だったのに。

 ヒムの引き上げシーン、めっちゃ早いですねっ。
 原作では抱き上げて引っ張るシーンと、安全圏に引き上げるシーンの二コマがあったのに、アニメでは後半シーンだけでしたよ。

 ラーハルトのアクセス画面、ヒュンケルのと全然違うんですけど!?
 ヒュンケルのステータス場面と同じなのは枠と、左上にごちゃごちゃ文字が書かれているところだけで、左下にアップの顔、正面向きの全身図、横向きの全身図、後ろ姿の全身図と、詳細な画像データ付き。

 その上、マルチ画面風に名シーンが連続的に画面に次々と開かれましたよっ。しかも、ベストショットを狙ったかのような素晴らしい画像の連続!

 えー、なにこれ、欲しいっ。
 改めて、マキシマムの能力が羨ましくなりました(笑)
 データは少々不正確かもしれませんが、画像データは一級品です!

 ラーハルトが槍を引き抜いた後のドヤ顔、なんか好きです。その後のマキシマムの驚きっぷり、わざわざ頭に手を置いて確かめるシーンの改変、いいですね。
 同じ「げえっ」と言うセリフとも言えない叫びが、最初と二回目では意味合いが違って聞こえる驚きの演技が素晴らしいです。
 
 ラーハルトの槍アクション、振り回す型が混じっているのが嬉しいところ。
 動きが速いのに、ピタリと止まった時の時間が長く、動きの緩急の差が大きいせいか、ヒュンケルの槍捌きよりも速く感じられます。

 ラーハルトのハーケンディストール、原作では地上ですれ違いざまに放っていた印象で、スカした顔で平然と放っていましたが、アニメでは空高く跳び上がり、気迫のこもった表情で技を放っていました。
 
 原作ではポーン達は真っ二つにされ、石床にゴロゴロと倒れていたのですが、アニメでは派手に爆破していますね。
 ラーハルトが槍を床に下ろすと同時に爆破したタイミング、時代劇で達人が刀を鞘に戻すと同時に敵が倒れるシーンのようで、惚れ惚れしました。

 マキシマムがすでに切り刻まれていたとヒムが言うシーン、回想シーンとしてラーハルトのみじん切りカットが追加されたのは嬉しかったです。
 しかし、最後の最後で、マキシマムのキングアクセスが行われようとは(笑)
 ここはアニメの改変ですが、いったい彼がなにを見たのか気になりますね。

 ○ルトラマンばりの「しゅわっ」にも笑いましたが、原作では単に頭にヒビが入って爆破していたのが、アニメでは断末魔として「あれ?」が追加され、真っ二つになった顔がズレるという世紀末漫画のような演出まで追加されていました。
 いやー、最後の最後までたっぷりと笑える敵でした(笑)

 爆破の光を帯びながら、肩越しに振り返るラーハルトの見返り美人構図、カッコよかったです!
 最初は特撮張りの爆破の余波に照らされ、それが薄れて青空を背負う色の変化もいいですね。

 ヒムちゃんがキングに呆れた後、自分があっち側になる可能性に気づく台詞と表情は、アニメの改変です。
 感情豊かな変化が、めっちゃ楽しいですよ!

 原作でもため息交じりにハドラー様の部下で良かったと呟いていますが、アニメの口調はコミカルで可愛いですね。
 確率八分の一の台詞も原作にありますが、アニメでは指を折って数えているのがいい感じ。

 しかし、ヒムちゃんの数の数え方が面白いです。
 親指を先に2本とも折って、残り八本の指を順番に折って数えていました。最初から八本を想定した指を用意できるのなら……これ、わざわざ指を折って数える意味が無いのでは?(笑)

 ところで、ヒムは自分がマキシマムの部下になる確率は8分の1だったのではないかと危惧していましたが、筆者としてはナイトの駒が空っぽに見えた点から、ヒム達5体が中身の詰まった原型の駒で、残りの駒は全て鋳造品だったのではないかとの疑惑を提案したいです。

 量産品の像を作る際はまずは基本となる像を製作し、それを型取りして、さらにその型に材料を流し込みます。

 安く上げるためには型取りした型を半分に切って、中身が空洞になるように薄く材料を流し込み、貼り合わせるような形で鋳造することで安価に、しかも大量に仕上げることが出来ると言う仕組みです。
 こうやって仕上げた複製品は、当然の話ですが基本となる像に劣ります。

 並べると出来の差は明白なので、普通なら原型の駒と複製品を同列に扱うことはないのですが、バーン様のチェスセットってどうも半分がオリハルコン、半分は素材が分からないけれどオリハルコンに劣る物質で作られているっぽいので、元々素材に差がある作品っぽいんですよね。
 だから、素材や精度がバラバラな駒で作られていた説をあげてみたいです。

 ついでに、最初に生きた駒のキングを手に入れた際、彼の姿に合わせた駒を製作して増やしていったとも考えています。
 そもそもバーン様は神への反感を持っているだけに、オリハルコンをそんなに大事にしていない印象なんですよね。

 バーンの依頼で作ったはずのロン・ベルク製の武器にも、オリハルコン仕立てのものはないし。バーンにしてみれば、神々が授けたという貴重な金属をただの玩具にするという贅沢な無駄遣いを、皮肉を込めて楽しんでいたんじゃないでしょうか。

 マキシマムの身体もオリハルコン製ではなく、オリハルコンメッキじゃないかと前々から疑っています(笑)
 いや、本編には全く関係ない、どーでもいい話なのですが(笑)

 次回予告……ちょっと待って、ちょっと待ってアバン先生っ! けったいな眼鏡と、ユニークなハンマーをぶん回すなんて、お笑いでマキシマムに対抗しようとしないでっ(笑)
 それにしても、予告であっさりとラーハルトに槍が譲渡されることをバラしちゃってますね。

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