『起て、宿命の騎士』(2021.7.2)

  

《粗筋》
 
 上を見上げ、ダイは正体不明な敵に驚愕する。
 巨大な目玉を動かして触手に囚われたレオナの様子を伺う『それ』には、明らかな意志が感じられた。

 戸惑いながらも、生き物かと判断するダイ。
 と、そのダイの判断に応じるように、ダイの剣の宝玉が光り、自動的に封印が解ける。次の瞬間、ダイは凄まじい形相で剣を抜き放った。

 すぐさま臨戦態勢を整えるダイは、上を見上げる。
 触手に締め付けられて苦しんでいるレオナのすぐ近くには、ゴメちゃんが励ますように鳴きながら羽ばたいていた。
 怒りの篭もった目で、それを睨むダイ。

 その時、どこか間の抜けた声が聞こえてきた。止まれと言いながら、近寄ってくる声を聞きつけ、周囲を見たダイは上の方に小窓じみた場所からだと判断し、ジャンプする。

 やってきたのは、奇妙な怪物だった。腹を打ちながら近づいてきたのは、四本の腕に下半身が太鼓状になっている怪物だった。怪物は、泣き叫ぶように止まれと繰り返す。
 その前にダイは剣を抜いたまま立ちはだかり、声をかけた。

 腕を振り回し、動揺しながら誰だと尋ねる謎の怪物。
 名乗り、お前こそ誰だと詰問するダイ。

???「ダイ……? こいつが!?」

 返事も待たず、怪物に駆け寄るダイ。
 いきなり敵の太鼓腹に飛び乗り、敵に首を片手で締め上げながら、相手の正体や謎の生き物について、そしてなぜレオナを攫ったのかと怒りのままに問い詰める。

 苦しそうに呻き、そんなに急に全部は答えられないと返す怪物。
 それを聞いて、ダイはハッとしたように相手の様子を見直し、ジャンプして彼から飛び降りた。だが、まだ気を抜かずに剣を手にしたまま、油断なく怪物を睨んでいる。

 苦しそうに喉をさすりながら、敵は自分はドラムーンのゴロアだと名乗り、バーンパレス中央部の管理者だと名乗る。
 戸惑いつつも、ここでバーンパレスを動かしていると理解し、険しい表情を見せるダイ。
 それに、素直に頷くゴロア。

 背後を半ば振り返りながら、ダイはレオナを捕まえた怪物について問う。
 ゴロアは他人事のような口調で、あれは怪物ではないと説明する。確かに生命体をベースにしているが、半分は機械で出来た魔力炉という物だと語る。

 それを聞いて、ダイはあれこそがバーンパレスを動かしているのかと察する。
 ゴロアも、魔力炉がバーンパレスを動かす心臓だと説明する。







 同じ頃、玉座からその光景を見ていたバーンも魔力炉について考えていた。
 魔力炉はバーンの魔力を受け、それをバーンパレス全域に伝える役割を持ついきたエンジンだった。
 まるで人体のように、赤い脈動がバーンパレスの設計図全域に伝わる。
 が、赤い光が不意に消え、バーンパレスの設計図そのものが灰色に染まる。

 しかし、皮肉にも捕らえられた本人……レオナのミナカトールにより、バーンからの魔力吸収機能は奪われている。

バーン「魔法力に飢えて……暴走しよったか」






 
 魔力炉の前でも、ゴロアが同じ説明をダイにしていた。

ゴロア「だからきっと、魔力炉は自ら触手を伸ばして魔法力を探っていたんだムーン」

ダイ「それで……魔法力の高いレオナを捕らえたのか……ッ」

 でも、自分やポップだって城の中にいたのにと疑問に思うダイ。
 が、ダイはハッと気づく。
 もがくレオナの腰に見えるのは、アバン先生のフェザーの入った小さなバック……先生が異次元に消えた今、レオナが一番大きな魔法力を抱えていることになる。

 意を決してベランダじみた柵ぎりぎりに駆け寄ったダイは、レオナにフェザーを手放すように叫ぶ。
 不自由な姿勢から、なんとか手を後ろへ回そうとするレオナ。だが、身動きが取れないと悲鳴を上げる。

 なんとかしようともがくレオナを助けるべく、ゴメちゃんが背後へと回り込む。が、どこからか伸ばされた触手に片羽を掴まれ、触手ごと放り投げられてしまう。

ダイ「うっ……くっそぉ! おれがぶち壊してやる!」

 柵に足を掛け、乗り越えようとするダイ。狭い足場で器用に攻撃態勢を整え、腰を低く落とす。
 それを聞いて、そんなことされたら自分がバーンに罰されると慌てふためくゴロア。

 だったらおまえがアイツを止めろと、怒りも露わに怒鳴るダイ。
 もうやっていると言いながら、ゴロアは腹の太鼓を叩いて超重力を生み出し魔力炉を制御しようとしていた。
 今も全開で放っているという。

 全然止まっていないと、腹立たしそうに言うダイ。
 ゴロアは相変わらず他人事のように、それだけ魔力炉の暴走が激しいのだと説明する。自分が重力波を止めたら、あの女の子は食われて死ぬとの発言に、大きく目を見開くダイ。

 あの触手に捕まったらどんな生き物も肉体ごと吸収されてしまうのだから、逆に感謝して貰いたいと得意げに言ってのけるゴロアだが、ダイは我慢しきれなくなったのか自分がやると言って飛び出した。
 ダイの動きを見て、魔力炉がその目を彼へと向ける。

 勢いよく斬りかかろうとしたダイだが、剣を振る前に何かにぶつかって弾き飛ばされた。見れば、魔力炉の周囲を赤い靄のような物が球体に覆っている。
 それを見て、ダイの名を叫ぶレオナ。

 見えない壁に戸惑うも、ダイは空中で姿勢を立て直し、今度は見えない壁に向かって攻撃を仕掛けだした。二度、三度と剣を振るが、見えない壁は固い激突音を立てるもびくともしない。
 火花を散らしながら、何度も剣を振るうダイ。

 ベランダからそれを眺めるゴロアはダイの強さを実感し、このままでは魔力炉が破壊されてしまい、自分がバーンに処刑されるのではないかと案じる。が、ゴロアは何かを思いつき、ほくそ笑んだ。

 焦りと怒りを滲ませて攻撃を続けるダイは、左手から炎の魔法を呼び出し、雄叫びと共にどれを魔力炉にぶつけた。が、魔法も弾かれてしまう。剣も魔法も効果が無いと痛感したダイは、少しレオナが危険だがアバンストラッシュで真っ二つにしようと決意した。

 身体をひねって、必殺技を放とうとするダイ。
 レオナに声をかけ、いざ技を放とうとしたその瞬間、腹鼓の音が響き渡った。瞬間、ダイの視界がぶれる。
 次の瞬間、ダイは見えない物に押しつぶされたように不自然に落下し、床石に押しつけられた。

 その衝撃で床石にヒビが入るほどの衝撃だった。一緒に落ちたダイの剣は、床に当たるものの、突き刺さらずにそのまま跳ね飛ばされてしまう。
 起き上がろうともがくも、身体が重くて立てないことに戸惑うダイ。そんな彼の前に、得意げにしゃしゃり出てきたのはゴロアだった。

 レオナを助ける義理がないと気づいたゴロアが、ダイに重力波をかけたのだ。

ゴロア「勇者のお前を倒せば、大手柄……船底暮らしから抜け出すチャンスだムーン!」

 ゴロアの話を聞いて、ダイはハッとあることに気づく。

ダイ(まずい……! おれに重力波がかかっているってことは……!)

 無理矢理のように顔を上に向けようとするダイ。
 彼が見ようとしているのは、もちろん魔力炉に捕まっているレオナだ。レオナに向かって、無数に増えた触手が一斉に襲いかかる。四方八方から襲う触手を見て、目を見開くレオナ。

 すがるように、ダイの名前を叫ぶレオナ。ダイもまた、レオナの名を叫ぶが身動きが取れない。
 ダイの目の前で、レオナは無数の触手に巻き付かれてしまった。あっと言う間に毛糸玉のように丸い固まりの中に封じられてしまい、もはや姿を見ることも出来ない。

 レオナの名を絶叫しながら、立ち上がろうとなおももがくダイ。その手の甲には、竜の紋章が浮かび上がる。
 竜闘気のおかげか、先程までよりも力が増したらしく、ダイは片膝を立てて起き上がろうとする。

 ゴロアは余裕たっぷりにすごいパワーだと言いながら、もったいをつけて腹の太鼓を一つ叩いた。生み出された波動のせいで、ダイはその場にぐしゃっと倒れ込んでしまう。
 自分はあの巨大な魔力炉を抑え込むパワーを持った男だと、ひどく自慢げに語る。

ゴロア「おまえのパワーなんかに負けない」

 床に押しつけられながら、悔しそうにゴロアを睨め上げるダイ。
 ゴロアは顎に手を当てたり、耳を掻いたりしながら、どうやったらダイにとどめを刺せるか悩み始める。

 その時、ゴロアは少し離れたところに落ちたダイの剣に目を留めた。剣の輝きを見て、邪悪な笑みを浮かべる。

 一方、ダイは自分に言い聞かせるように「起て」と繰り返し、レオナを案じていた。
 不気味な糸玉は、まるで心臓のように脈打っている。

 なんとか立ち上がろうとするダイの目の前に、剣の切っ先が突きつけられた。それは、他ならぬダイ自身の剣だ。
 剣を手にしたゴロアは、あの子が死ぬまでもう数秒もかからないと宣言する。この剣で刺せば確実にお前も死ぬと言い、やる気満々だ。

ゴロア「勇者を倒したとあれば、バーン様も必ず褒めてくれるはず……!」






 その頃、ダイとゴロアのやり取りを、バーンは水晶玉を通じて見物していた。
 最後の戦いを前に小物にやられるとは、勇者にしては情けない幕切れだったと、やや不機嫌そうに言うバーンは、腕を組んだまま何をするでもない。
 が、目を据えて、ダイをしっかりと見つめ直した。

バーン「いや……最期まで、分からん」







 魔力炉の前では、ゴロアがひどく楽しそうにダイの剣を振り上げ、ダイに止めを刺そうとしていた。

ゴロア「さあ! これで……お・わ・りムーン!」

 手の甲から紋章を光らせ、雄叫びと共に力を振り絞るダイ。
 ゴロアはそれにビビったのか、一瞬、手を止める。竜闘気を光らせて起とうとするも、やはり立てないダイを見て、ジタバタしないで死ぬようにと文句をつけるゴロア。

 必死に力を振り絞るダイだが、竜の紋章の浮かぶ手の近くに水滴がしたたり落ちる。次の水滴は、右の拳に――まるで熱い鉄板の上に落ちたように、ジュッと音を立てる水滴。

 嗚咽交じりの声に、ゴロアも気づく。
 ダイは、泣いていた。
 力を振り絞りながら泣くダイの涙が、竜の紋章の上に降り注ぐ。

 自分にはこんな程度の力しか無いのかと、ダイは慟哭していた。
 嘆く涙が、竜の紋章の上で蒸発していく。
 竜の騎士の力がこんなにも弱いのかと、ダイは絶望していた。生命を振り絞っても、この程度の力しか無いのか、大切な人、一人守れないのかと、声に出して嘆くダイ。

 ダイの悔し涙を揶揄し、再び剣を振りかざすゴロア。自分に向かって振り下ろされた自分の剣を、目を見開いて見上げるしかできないダイ。
 が、その見開かれた目が、突然、その色を変えた。

 







 次の瞬間、ダイは暗闇の中にいた。
 ハッとして、顔を上げるダイ。
 そこに、幻のように浮かび上がったのは城の中庭らしき場所に集う、大勢の人達だった。

 驚きに目を見張るダイの目の前で、三人の魔法使いがそれぞれに炎を手に宿す。さらにその前にいるのは、柱に後ろ手に縛られ、観念したように目を閉じている男……それは、若き日のバランだった。
 父と気づき、驚きに目を見張るダイ。

 そこに、一人の女性が駆け込んでくる。彼女は幻のようにダイをすり抜け、一直線に走る。
 ハッとするダイ。
 が、その時には、魔法使い達が魔法を放っていた。
 なんの迷いもなく、バランに抱きつく女性。驚いて、目を開けるバランが何かをする前に、それだけは現実と同じぐらい色鮮やかな炎が女性の背中を撃った。

 炎の照り返しを浴びながら、驚愕の面持ちでそれを見つめるダイ。
 夢で会ったのと同じ姿の母親が倒れる姿が、奇妙にブレて映る。驚くバランの顔が、ソアラを抱きしめて彼女の名を叫ぶバランが、続け様に映されるのをダイは呆然と見ているしか出来なかった。
 いつの間にか、世界は再び暗黒に染まる。
 その時、背後から聞き覚えのある声が聞こえてくる。

バラン「竜の騎士の人生は、戦いの連続……」

 先程までとは違う驚きが、ダイを襲う。
 次の瞬間、一陣の風と共に暗闇が綺麗に吹き飛ばされ、雲のたなびく青空が広がった。
 振り向き、父へ呼びかけるダイ。

 毅然と佇んだバランは、落ち着いた口調でダイへと話しかけてくる。
 それに巻き込まれ悲劇に見舞われた女性は少なくはないし、おまえの母もその一人だったと目を伏せて語る。
 ダイは立ち上がり、バランと向き合う形にしっかりと起った。

バラン「だが……過去の歴史はどうあれ、おまえはおまえだ」

 雲の上に、向かい合って立つ竜の親子。
 バランはダイに対して、自分の手で過去を断ち切れと告げる。
 わずかに驚くダイ。

 初めてレオナを助けた時のことを思い出すように諭され、ダイは口元をギュッと引き締める。
 バランは、ダイがただの竜の騎士ではなく、自分の力をも受け継いだ超騎士だと励まし、立ち上がるようにと力強く訴える。
 その声は、濃紺の空に響き渡った。

 次の瞬間、色が反転したダイの目が、普段の色と光を取り戻す。






ダイ(父さんっ……)

 その時には、ダイは現実に戻っていた。
 重力波に抑えつけられて立つことも叶わず、すぐ目の前に自分の剣を振り下ろされ、止めを刺される寸前という現実世界に。

 剣が振りおろされる刹那、ダイは初めて紋章の力に目覚めた時のことを思い出す。
 気絶したレオナを抱きかかえて紋章を光らせていた過去を、思い出すダイ。

 ダイの目に強い光が宿り、温かみのある茶色の目が、青く染まる。そして、ダイの右手だけでなく、左手も光を発しだした。
 それに気づき、驚くゴロア。

 自分と父親の力はまだこんなものじゃないと、両の拳から紋章の光を放ち、その場に立ち上がるダイ。
 噴き上がる竜闘気が、周囲を吹き飛ばす。その光に巻き込まれ、ゴロアは吹っ飛ばされ、壁に思いっきり叩きつけられた。

 何が起こったのか分からないまま目を見開くゴロアは、ダイが全身を仄青い光に覆われたまま立ち上がったのを見て驚愕する。
 胸の前に両手を一度交差してから、身がまえるダイ。
 その手には、二つの竜の紋章が強烈な光を放っていた――。

 







 ダイの覚醒を目の当たりにして、仰天するゴロア。
 両の拳から竜の紋章を光らせるダイの姿を見て、バーンすらも目を見張る。
 ダイも自分自身の方に左の甲を向け、そこに光る紋章がバランの力だと実感する。
 
 思い出すのは、父と死に別れた時のことだった。
 バランの手を握りしめるダイの心の中に、父の声が流れ込んできた。もう、我々は離れることはない、と――。

 あの時に、父親の紋章の力が自分に宿ったことを、ダイは今こそ実感する。目をつぶり、ダイは父親の魂が会ったからこそ、夢の中で会ったこともない母親に会えたのだと思いを噛みしめる。
 父親がずっと、自分の中にいてくれた――その思いと共に、ダイは目を開けた。
 ゴロアはそんなダイを見て、怯えるばかりだ。







 
 一方、水晶玉越しに、バーンは落ち着き払って状況を分析していた。

バーン「そうか……バランの力か。あれは言わば……双竜紋」







 怯えながら、ゴロアは腹を打って重力波を放出する。これまでにない強さの波動がはなたれ、立ち上がったダイにさらに負荷がかかる。
 が、ダイは床にヒビが入るほどの超重力にも踏ん張って耐えた。それどころか竜闘気を全開にし、重力波を振り払う。
 
 重力波が利かないと、うろたえるゴロア。
 睨みつけるダイの迫力に怯むゴロアだが、ダイの目は上にいる魔力炉に向けられていた。両手を頭上で交差させ、気迫を高めるダイ。
 青く輝く竜闘気の目映さに、ゴロアは思わず目を背ける。

 両手に紋章を浮かび上がらせたダイは、紋章閃と叫んだ。
 二つの紋章が斜めに重なり合い、そのまま凄まじい勢いの必殺技として魔力炉へと向かう。

 それは、見えない障壁を突き破り、内部にいた魔力炉を直撃した。初めて、苦痛の悲鳴を上げる魔力炉。
 二つの紋章が焼き印のごとく、その身体に深々と刻み込まれる。

 強烈な威力を目の当たりにして、ゴロアの怯えは強まるばかりだ。逆に、ダイは落ち着き払っている。
 うろたえつつ、地面に落ちたダイの剣に目を留めたゴロアは、それを手にしてダイに向かって斬りかかった。

 剣を振り下ろされても、ダイは微動だにしない。
 目は魔力炉に向けたまま、ダイは片手で剣を受け止めた。明らかに体格で勝るゴロアが力を込めても、ダイはびくともしない。
 と、ダイがゴロアの方を向いた。

 その目は光がなく、普段のダイ自身の意志が感じられない。そこまでなら、竜の紋章に振り回されていた頃の目と同じだが、不意にその目が青く染まる。
 さらに怯えたゴロアだが、その目がいきなり白目になった。
 ダイが、ゴロアの腹に掌底を食らわせたのだ。

 ものすごい勢いで突き飛ばされ、再び壁に激突するゴロア。ダイの最初の一撃ですでに気絶状態だったゴロアは、今度こそピクリとも動かない。
 青く目を光らせたダイは、ゆっくりとそちらへと向かう。静まりかえった広間に、ダイの足音だけが響く。

 歩きながらダイは、ごく当たり前のように剣を上に掲げた。いつでも振り下ろせる姿勢を取るダイの目は、感情が全く感じられず、殺気に満ちあふれている。
 だが、いざゴロアの前で足を止めた時、ハッとしたダイが瞬きと共にいつもの茶色の目を取り戻す。
 一瞬呆然としたダイは、首を強く2、3度振り、目を上へと向けた。
 その目の先には未だに呻く魔力炉と、レオナを封じ込めた糸玉があった。

 痛みか、怒りかに吠え立てる魔力炉は、新たな触手を次々と射出する。槍のように伸びる触手は、一直線にダイに向かった。
 ダイは、二つの紋章の宿る拳で剣をしっかりと握りしめる。
 竜闘気を身体にみなぎらせたダイは、襲い来る触手の中、目玉へと向かう。真正面から飛ぶダイを、触手はとめることすらできなかった。

 巨大な目玉が、大きく、大きく見開かれる。その瞳に最後に映ったのは、青い闘気に全身を包んだ竜の騎士の姿だった。
 暗闇の中、斜めに切り裂かれる青い剣筋。
 それは白く切り開かれ、その勢いで糸玉となった固まりも繋がれていた触手から解き放たれる。

 その一撃は、バーンパレス外部にまで影響を及ぼした。
 バーンパレスの中央部分が、内部から大きな衝撃で斬られ、細かな破片が舞い落ちる。






 玉座からそれらを見ていたバーンは、思わず声を上げる程の驚きを見せる。







 ダイの一撃は、たった一振りで巨大な魔力炉を袈裟斬りにしていた。
 触手や糸玉が、ボトボトと床に落ちてくる。ダイも糸玉の近くに飛び降り、剣を振り払った。その動きだけで敵の体液が全て振り払われたのか、ダイの剣には傷も曇りもなく、見事な輝きを見せる。
 剣を返してもう一度振り払い、背負い直すダイ。

 それらが終わってから、ダイはようやく目を開けた。
 微塵の油断も感じられない表情で、まだ両手から紋章の光を放つダイは、これから戦うかのようだった――。






 一方、そんなダイの姿をバーンは静かに見つめていた。

バーン「驚異だ……双竜紋……さすが死神の予言よ。悪い方にばかり、よく当たりよる……」







 ダイはレオナの名を呼びながら、駆けだした。その手からは、すでに紋章の光は消えていた。
 が、床に汚らしく広がる澱んだ固まりを見て、ダイは驚きのあまり足を止める。

 遅かったのかと息をのむダイ。
 だが、固まりがかすかに動いた。それを見たダイは躊躇なく固まりをかき分け、隙間を見つけ出す。
 金色に光る物を見て、ダイはそれを覆う部分を引きちぎった。

 中を見て、良かったと息をつくダイ。
 そこには、全身が金色の光に覆われたまま横たわるレオナの姿があった。レオナの無事を喜ぶダイだが、あちこち服が破けているのに本人は無傷なことに疑問を抱く。

 光が消え、レオナが小さく呻いた。
 レオナに掛けより、抱き起こすダイ。目を覚ましたレオナは、周囲を見て驚いた表情を見せる。

 そんなレオナを、ダイは大丈夫だと優しく励ます。
 ゴロアが生命を吸収すると言っていたから本当に心配したとダイが説明する中、レオナは確かめるように自分の体や装備を見下ろす。

 ダイが敵を倒したと知り、礼をいって立ち上がるレオナ。しかし、その表情は浮かない。
 装備や服がボロボロになったこと、捕まった時に脱力感があったことから、魔力炉が生物から魔力を吸収する能力があったと理解できるだけに、なぜ自分が助かったのか分からないのだ。

ダイ「さあ……?」

 考えもせず、首をひねるダイ。
 レオナはなおも考え込んでいたが、急にハッとして顔を赤らめる。そして、ダイに向こうを向いていてと素っ気なく言った。

 なんでと戸惑うダイに、レオナは顔を真っ赤にして、いいから早くと怒鳴りつける。その勢いに押され、後ろを向くダイ。
 レオナは自分の胸元に手を伸ばす。服の中からは、かすかな金色の光が放たれていた。そっと胸元を広げると、その光は一層強まり、レオナの顔を照らし出す。

レオナ「ダイ君ッ!」

 振り返ったダイは、驚きに目を見張る。
 レオナの肩手の中に、ちょこんと乗っているのは目を閉じだゴメちゃんだった。

 ゴメちゃんが縮んじゃったと、仰天するダイ。
 目をそらし、自分の服の中に入り込んでいたのと告げるレオナ。服のどこにとダイが尋ねた途端、顔を赤らめてどこでもいいでしょとレオナは怒鳴り散らす。

 わけがわからないまま戸惑うダイに、レオナはゴメちゃんが守ってくれていたのだろうと言いながら、そっとゴメちゃんの身体を、優しく撫でる。
 ゴメちゃんが魔法力を放出し続けてくれたから、自分が吸収されずにすんだのだという予測を口にするレオナ。
 戸惑うダイだが、ふと気づいたような表情を見せる。

ダイ「あ……だけど、ゴメちゃんは今までの戦いでもみんなを助けてくれた……!」

 やっぱり不思議な力があるのかと考え込むダイ。
 レオナも、これまでのゴメちゃんの活躍を振り返る。ゴメちゃんをそっと両手で包み込みながら、思いを巡らせるレオナ。

 ダイの時には体力の回復、ポップの時は死の淵からの呼び戻し、チウの時には身体を硬くして、レオナの時には魔法力……いったい、ゴメちゃんの真の力は何だろうと思うも、彼女はフッと笑って言った。

レオナ「まあ、いいわ! 命の恩人に、余計な詮索はなし」

 意外さに目を見張るダイの目の前で、レオナはこのサイズのゴメちゃんもちょっと可愛いかもといい、軽くキスをする。
 ポッと、頬を染めるレオナ。
 無理に起こさず、しまっておいて上げましょうと、レオナは自分の胸元を広げようとする。

 それを、ダイはじーっとガン見していた。
 次の瞬間、盛大に星が飛び散る。
 見ないでで言ったでしょと、顔を赤くして怒るレオナに対して、頭に巨大なたんこぶをこしらえ、涙目になりながら、一応どこにいるか知っとこうとおもっただけとダイは言い訳する。

 その時、触手がのたうった。
 ハッとして振り返るダイとレオナ。
 荒い息をつき、それでもニヤリと笑みを浮かべるゴロア――彼は、斬られた魔力炉の裂け目の中に入り込んでいた。

ダイ「ゴロア!」

 こうなったら最後の手段だと、ゴロアは自分の魔法力を魔力炉にやり、ダイ達も道連れにしてやるという。
 ゴロアの肉体に触手が根のごとく這いずり、メロンにも似た不気味な模様を描いていく。

 ダイはレオナを後ろに庇い、無駄なことは止めるように勧告する。
 絶対に倒してやると血迷うゴロアだが、そこにバーンの声がかけられた。







 玉座から、ゴロアを制止するバーン。
 魔力炉を失っても咎めないと言うバーンは、ダイの運命を高く評価している様子だ。あのまま天魔の塔をあがってきたら、ダイがまだ自分の敵では無かったと語るバーン。






 倒すべき敵からの言葉を、険しい目で聞いているダイ。







 魔力炉の代わりなど魔界にいくらでもあるから、これ以上ダイを刺激しないようにと命じるバーン。
 しかし、すでに顔まで触手の浸食受けているゴロアは、もう後には引けないとバーンに逆らってまでダイを攻撃する。

 自らの意志で、触手を一斉にダイめがけて射出するゴロア。
 鋭い声でレオナに下がるように言い、ダイは両手から紋章を光らせる。紋章が二つと、驚くレオナ。
 ダイは、両手を頭上で組み合わせた。







 その仕草を見て、何かに気づくバーン。






 走って逃げるレオナも、その構えには覚えがあった。強烈な闘気を吹き上げながら、ダイは叫ぶ。

ダイ「知らないぞ! こいつはただの呪文じゃない……父さんの! 竜の騎士の! 最大最強の切り札なんだ!」
 
 手を前に身がまえたダイの背後に、竜魔人化したバランの姿が幻となってだぶる。目を青く光らせ、ダイは禍々しささえ感じさせる超呪文を、組み合わせた両手から発射した。

 ドルオーラを放ったその瞬間のダイの背後に、同じポーズを取るバランの姿が見えたのは幻か。
 放たれた呪文は襲い来る触手を一瞬で消滅させ、そのままゴロアを直撃する。
 悲鳴を上げ、光に飲まれて消えていくゴロア。






 バーンもまた、驚きの声を抑えきれない。
 バーンパレスの外からでも、その凄まじい光は目視できた。ドルオーラは、バーンパレスの中央部を破壊した――!


《感想》

 ゴロアは思ったよりも、普通の敵な印象でした。
 声もちょっとお間抜けな口調が目立つ程度で、良くも悪くも無難な感じでした。残念ながら、マキシマムほどのお笑い要素はなかったですね。……まあ、マキシマムほど強烈なインパクトだったらせっかくのダイの覚醒シーンが霞んでしまいそうですし(笑)、抑えめで正解なのかもしれませんが。

 ダイの驚きや剣を抜く時の表情、原作よりも切迫感があるように見えます。それだけ、レオナの危機に焦っている感じで好印象♪ そこにさりげなくレオナが苦しむ姿、ダイが憎々しげにそれを睨む姿を挿入するオリジナル改変が、心憎いですね。原作よりも、ダイとレオナの絆が深まっているように感じます。

 ダイが誰かの接近に警戒し、一旦、小窓っぽい場所にジャンプするシーン、アニメでは場所の発見とジャンプだけになっていました。
 原作ではダイがスタッと着地し、物陰から様子を伺うシーンも一緒に描写されているのですが、アニメではここはカットされていますね。

 ゴロアが腹を打つ度に赤い靄が余韻のように広がる演出は、彼に特殊能力があるのが分かりやすくていいと思いました! 原作ではそれらの描写は無かったので、単に腹の太鼓を打っているだけの間抜けな怪物に見えて仕方が無かったですし(笑)

 しかし、ゴロアの台詞が地味に増やされていますよっ!? うわー、出落ちキャラなのに妙に優遇されていますね(笑)

 ダイが姿を隠さないまま登場したことと、声音の迫力で、原作よりもダイの怒りを強く感じます♪

 でも、ゴロアとダイがお互いに誰だと聞き合うシーンがきっちりあったのは嬉しかったです。ちょっとお間抜けなこのやり取り、好きだったのでなくならなくて良かった〜。
 ゴロアの台詞は省略されていましたが、そこはどんどんいっちゃっていいと思います(笑)

原作ゴロア「ダ……ダイ!? こ……こいつが、バーン様の敵の勇者の……!?」

 ダイがゴロアに飛び乗って首を締め上げるシーン、原作ではダイは相手の肩に足を乗せていましたが、アニメではゴロアの太鼓腹の縁に乗っている形になっていました。
 まあ、その方が乗りやすそうです。

 ダイがゴロアから飛び降りるシーンも追加されているのも、嬉しいところ。
 原作ではいつの間にか降りていましたので、動きで見るとカッコいいですね。余談ですが、棒状の長いものを持ったまま飛び降りたりすると、それをぶつけてバランスを崩したりするうっかりミスが発生しがちですが、ダイの動きはそんな危うさが全くないのがさすがです。

 ゴロアが手にしていたバチを腰のベルトにしまうアクションも、ちゃんと描いてくれているのには感動しました!

 原作でもゴロアのベルトには四つのポケットがついていて、バチを手放している時にはベルトに挟んでいる姿が記載されていますが、実際にベルトに挟むアクションはさすがになかったので、動きを見ることが出来たのは嬉しい驚きでした。

 しかも、動きが思ったよりも滑らか! もっと間抜けにもたつくかと思っていましたが(笑)

 ダイとゴロアが原作では『バケモノ』と呼んでいた部分が、アニメでは『モンスター』になっていました。

 ダイとゴロアの説明の最中、つかまっているレオナとそれをじっと見つめる魔力炉のカットがありましたが……触手がうねうねと動く中、あの巨大目玉に凝視されるなんて、それだけで拷問ですよ〜。
 レオナが目玉に背を向ける形で拘束されていたのは、不幸中の幸いかも……。

 余談ながら、じっとレオナを見ている魔力炉が『……コイツ、美味イノカナ?』と考えているように見えちゃいました。

 バーンパレスの設計図じみたカットは原作にもありましたが、アニメでは赤の線がまるで血流のように動いている演出が追加されていました。
 その直後、その血流が消えて灰色に染まるシーンがあり、魔力の流れが強制停止されたと一目で分かる演出がお見事です。分かりやすい!

 バーン様の説明では、こんなことはバーンパレスが完成してから数百年、おこったことがなかったと語られていましたが、そこは省略されていますね。バーン様の台詞も、一部改変が。

原作バーン「……飢えて……、狂ったか……!?」

 あー、ここは変えざるを得ないですね。むしろ、この台詞が文庫版、再録版でも校正を免れたのが不思議なぐらいです。

 ダイとゴロアの会話も割と改変されています。

原作ゴロア「……だから……! きっと魔力炉は自ら触手を伸ばして、魔力の源を探しに行ったんだムーン」

ダイ「その途中でっ……!! レオナをっ……つかまえたっ……!!」

 面白いことに、原作ではここでダイはほぼ同じ目線の物を見るように魔力炉を見ていますが、アニメではダイは明らかに魔力炉を見下ろしています。
 ダイ達のいる小窓じみた場所は、魔力炉のいる広間に繋がるベランダになっていて、魔力炉が天井に繋がっている部分を水平に眺めるのにちょうどいい場所になっていますが、ダイが見ているのはどうやらレオナのいる場所……魔力炉の目玉付近のようです。

 で、ここで見逃せないお色気カットが!
 首から下の胴体部分……もっと露骨に言っちゃうと胸から絶対領域部分のみが移るレオナの画像を手前に大きく表示し、奥に血走った目をぶるぶると震わせながら凝視する魔力炉のカットが追加されていましたよ!
 レオナがもがく度に必然的に胸が揺れて、魔力炉がそれに反応しているように見えてしまうのですが〜っ。

 それはさておき、フェザーのカットは原作では床に落ちたような構図でのイメージカットでしたが、アニメでは実際にリアルタイムでレオナの腰についているカットに改変されています。
 さらにイメージとして、金色のゴールドフェザーのアップから魔法力が溢れるシーンも追加されました。

 ダイがレオナにフェザーを手放すように叫ぶシーン……原作では足を下に吊り下げられたポーズだったレオナが、アニメではほぼ横たわるような姿勢に拘束され、触手の動きのせいでビクッビクッと身体が跳ねる動きがなんともはや性的で……ええと、今は土曜の朝でしたよね?(笑) いいんでしょうか、この時間にこの動きと妙に粘着っぽいこの効果音!(笑)

 原作では苦痛に片目を閉じた表情を見せているレオナが、アニメでは両目を閉じて苦痛に耐えているのが、これまた妙に色っぽいんですけどっ! な、なんか手加減なしになってきたような気が、いろいろとっ。

 でも、レオナが腰のフェザーを取ろうと手を必死に動かすシーンが追加されたのは嬉しかったです。
 原作では、身動き一つ出来ないまま諦めているように見えたので、結果は同じでも頑張っている姿を見ると好感が持てます♪

 ホテルやスチュワーデス……じゃなくて、キャビンアテンダントなどのサービス業で、そこに置いてない新聞などを要求された場合、即座にないと否定するのではなく、実際に一度取りに行ってからないと返答するという対応をしていいると聞いたことがあります。

 結果が同じだったとしても、実際に行動を見せることで受取手の意識が変化する心理学の実用方法として、感心した覚えがあります。

 ゴメちゃんがつかまるシーン、原作では触手に羽が絡むだけでしたが、アニメではその後、触手に掴まれたまま高く放り投げられるシーンが追加されました。
 てっきり、あのままレオナの側に掴まれたままだと思っていましたよ。
 
 ダイがゴロアを怒鳴りつけるシーン、彼にしてはずいぶんと荒っぽい感じなのがいいですね。レオナのために、普段の落ち着きやおおらかさを無くしている感じがします。
 
 原作とほぼ同じ構図ながら、画面を暗くして逆光で影を強調したおかげで、ゴロアの間抜けさが軽減され、不気味さが強まっているのはちょっと意外でした。原作ではマキシマムに次ぐおバカ敵と認識していましたが、影の入れ方の差でこんなに普通の敵っぽく見えるとは(笑)

 ダイが見えないバリアと戦っている際、魔力炉の目がゴロアの方に向けられていたのはアニメの改変ですね。
 原作ではダイを見ているのか、ゴロアを見ているのか微妙な角度ですが、アニメでははっきりとゴロアに向けられています。
 魔力炉的には『コイツ、邪魔。ナントカシロ』的な心境なのかなと予測。

 ダイが重力波で床に押しつけられるシーン、細かな線で輪郭をブレさせつつ、色を変化させた演出がよかったです。原作でも、このシーンはスピード線を増やしてトーンを張って欲しいなぁと思っていたところだったので、夢が叶った気分です。

 ゴロアの台詞「出世のチャンス」が「船底暮らしから抜け出す」に改変されていますね。ゴロアは後のシーンで「船底暮らし」発言をしているので、そちらの台詞から引っ張ってきた印象です。

 昔から下級船員の居場所は船底と相場が決まっていたので、ゴロアはよっぽど役立たずと思われていたんでしょうねえ(笑)
 動力の源を扱う役目なのに扱いがひどいなと思いましたが、よく考えたら昔のガレー船も機動力の中心である櫂の漕ぎ手達はほとんどが奴隷であり、寝場所は最下層でしたっけ。

 片目をアップにしたゴロアの顔芸は、見ていて楽しかったです。原作ではただただお間抜けキャラでしたが、アニメではそこそこ毒気が追加されてプラスマイナスで普通の敵になった感じですね。

 ダイの台詞が一部、改変されています。原作では「まずい」ではなく「そ……そうだ!!」と言っていますが、アニメの方が切迫感があっていいですね。

 魔力炉による毛糸玉攻撃、アニメでは一本一本の触手がポンプのように何かを吸い上げるような、脈動が付け加えられたのにビックリ。
 不気味さが増し増しです!

 ゴロアの自画自賛台詞、後半部分が改変されています。

原作ゴロア「一人のパワーでは、絶対身動きがとれないムーン」

 この台詞、後から思えばダイだけでなくバランの力が合わされば動けるという伏線になっていたと思いますが、アニメでは伏線を取っ払ってただの自慢台詞になっていますね。
 
 ゴロアが悩むシーン、顎をさすったり、耳を掻いたりしていますが、手が四本もあるのに使っているのは一本の手だけなのが面白いところ。右の前側の手を細かく動かしているので、その手が利き手なのかもしれません。

 やりたければ、二本の手を使って同時に出来そうなものなんですが(笑) 実際、原作では二本の手を同時に使い、顎と頭を撫でて悩んでいます。

 ゴロアの絵本のシーンがまるっとカットされたのは、悲しいところ。……まあ、確かにこれは描かれなくても問題が無い部分なんですが、正直、ゴロアよりもこの絵本話の方に興味津々だっただけに残念無念!

 伝説の不死身の剣豪とは、ヒュンケルの名前の元になった男なのかな〜とか、少女に化けた魔族の女が変身解除するシーンを見せて欲しいなぁとか、いろいろと夢と希望があったのにーーっ。

 ゴロアの台詞、アニメではかなり短く、分かりやすく改編されています。

原作ゴロア「これで……これで暗い船底暮らしともオサラバできるムーン……いくらバーン様が恐ろしい方でも、勇者を倒したとあれば必ず恩賞があるはず!」

 原作のゴロアの方が、バーン様への恐れが強いみたいですね。しかし、バーンがこのやりとりを聞いていると予想もせずにこんな台詞を言っちゃう辺りから、ダメ臭が漂います(笑)

 傍観者バーン様のお言葉、原作ではキルバーンの「ダイは進化する小さな魔神」と言う回想が混じっていたのですが、そもそもその発言自体がアニメではカットされていたため、必然的にキルバーンの回想も無くなっていましたよ、くすん。

 ダイに止めを刺そうとするおちゃらけた声音には、笑っちゃいました。原作にはない台詞ですね。
 ダイが力を振り絞るのを注目するシーンは原作にもありますが、アニメでは思いっきりビビっています。うーむ、原作よりも小心者!(笑)

 ダイが泣くシーン、真っ暗な中に輝く竜の紋章が青白く浮かび上がり、そこに涙が降り注ぐ演出、印象的でした!
 よく見たら、涙が落ちた後で一部が下に流れているので、見えないけれどダイの拳がそこにある前提で涙の動きが演出されているのに感心しました。

 だからこそ、次の瞬間にダイの手が実体化したシーンの演出と自然に繋がってみえます。竜の紋章付近では涙が熱で蒸発する演出は、原作通りとは言えやっぱりアニメの方が見栄えがしますね。

 ダイの嘆きの台詞、素晴らしい演技でした♪
 原作ではバーンの「竜の騎士は女を不幸にする」という台詞の回想が差し込まれていましたが、アニメではこの回想がなくなっていますね。

 止めを刺される寸前のダイが、精神世界に突入するシーンで、原作では白黒逆転コマだったのが、アニメではアップになった目を色彩逆転させる演出になっていました。
 過去のアルキードに行く前に、真っ暗な世界というワンクッションを加えてくれたのは嬉しい演出です。

 少しブレたような画像に、モノクロームな風景。人々の姿はセピアっぽくて、なんとも不思議なレトロ感が実にいい感じでした。バランの回想ではあれほど色鮮やか場面が、色が変わったことでものすごく昔の光景のように見えました。

 ソアラがダイの後ろから走ってきてすり抜ける演出も、よかったです! ダイには気づかす、触れた感触も無いままの一瞬の邂逅……ダイにとっては、辛い一瞬ですね。

 でも、ダイからは後ろ姿しか見えないはずなのに、それでも母親だと気づいてハッとするシーンが実にいい感じです!
 欲を言えば、この時のダイ視点からのソアラの走る後ろ姿を見たかったですが。

 ダイとバランの会話、しみじみしました〜。
 バランがダイを励ます言葉、ラーハルトの時よりも力強さを感じました。ラーハルトには自分自身の意志で選んで欲しいと考えていたのに対し、ダイには自分の意思を受け継いで欲しいと考えているように思えます。

 意識が現実に戻る演出も、実に良かったです!
 青空を高く昇っていき、濃紺になった世界から色彩反転した目のアップに繋がる演出、次の瞬間にはいつもの目に戻って時間の流れが戻る演出がカッコいいですね♪

 でも、一つだけ残念なのが、ダイが父さんと言った時にはすでに現実に戻っていたこと。
 ここは原作のように、バランにそう声をかけた後で現実に戻って欲しかった気がします〜。

 ダイが力に目覚める瞬間、目の色が青く染まったのがかっこよかったです! ダイ大メンバーは基本的に茶色の目が多いので、すっごく新鮮でした♪

 原作ではゴロアを吹っ飛ばした時は、まだ立つ途中の姿勢でしたが、アニメでは完全に立ってから吹き飛ばしていましたね。

 ダイが両手を広げて身がまえる前に、手を一度交差させる仕草をしたのはアニメの改変ですが、いい演出ですね! 最初から両手を広げて立つより、印象的でカッコいいです♪

 CMのクロスブレイドで、ミストバーンの真の姿が露わになっているのを見て、いくら以前に正体が暴露済みとは言えちょいと早くないかと思った後で、5週間アニメが止まっていたことを久々に思い出しました。
 ……そういや全国展開のゲームやらカードの販売なら、アニメの進行に合わせて予め用意しておくわけだし、ズレが生じるのも当然でしたね。

 ダイがバランとの別れを思い出すシーン、辛そうに目を閉じるダイと、最後にきっぱりと目を開ける表情の差が好みです。
 それにしても、原作ではダイの回想から、ダイが母親に会えた理由の間に挟まれていたバーン様の長文説明が思いっきりカットされていました(笑)
 原作ではページの三分の二を文章だらけにしまくった長台詞だったのですが。

 ダイの手をクロスさせてからの紋章閃、かっこよかったです♪
 しかし、撃つ前に二つの紋章が斜めに重なる画像が出てくるとは思いませんでした。
 原作にも無かったシーンですし、実際に魔力炉に当たった時には二つの紋章に戻っていましたし。

 ゴロアがダイに斬りかかるシーン、原作ではダイが上にジャンプしようとした隙をついていましたが、アニメではダイはゴロアと魔力炉の両方を見張ったまま動きを止めているように見えました。

 竜の紋章に暴走状態の光を失ったダイの光のない目は以前から気に入っていましたが、その色が青く変化するとさらにインパクト大!
 原作では目の光はそのままで、ベタをトーンに変化させるという演出でしたが、アニメでは透明感のある青い目で冷たさと人間離れした変化を強調している感じがいいですね!

 ゴロアがダイの掌底ですでに白目を剥いて気絶していた演出は、アニメの改変です。原作では壁にぶつかった瞬間、苦しそうな表情としているので、多分、そっちで気絶したと思います。
 しかし、原作よりもずいぶんと派手に吹っ飛ばされていますね。

 原作ではダイが手を広げて、ゴロアが吹っ飛ぶコマで表現されていたので、直接攻撃か、闘気弾か分からなかったのですが、アニメでは闘気を纏った直接攻撃のようです。

 青い目と青い紋章を光らせ、ゴロアに向かって進んでいくダイが、ちょっとホラーっぽいぐらい迫力がありましたよ!
 原作ではその場から止めを刺そうと剣を構え、すぐに正気に戻った描写でしたが、アニメはめっちゃ殺る気満々!
 でも、フッと正気に戻る瞬間の目の変化にホッとしました。

 魔力炉が新たな触手を生み出すシーン、原作ではヨレヨレもたもたな印象だったのが、アニメではビシバシッと素早く生み出しているのは反則と思いました(笑) 

 魔力炉を切り終わったダイが、真っ白な世界の中で逆光となり、シルエットで浮かび上がった後、徐々に周囲が通常の明度に変化してダイや魔力炉の姿が浮かび上がってくる演出はすごいですね!

 原作では見開きで表現された迫力を、アニメならではの演出で表現している感じがとても好きです。
 ダイが剣を振り払ったり持ち直す仕草も、カッコいいですね。
 鞘に収め、封印がかかった瞬間、まるでスイッチを切ったように、赤い線画サッと画面に横一線にする演出も格好良さ抜群です。

 ダイ自身の光が青で、剣の色が赤という、相反する色なのも面白いところ。
 ついでに、ダイの手の角度にも注目!
 原作ではダイは甲をはっきりと見せる形で剣を納めていますが、アニメでは紋章がやや見えにくくなっても、手の甲が斜めになっているという、より自然な角度で剣を背中に納めているのに感心しました。

 細かな部分でも実際の動きに拘って原作でのポーズを変化させているからこそ、アクションシーンが映えるのだと思います♪
 
 剣を振る一連のアクションは目を閉じて行い、最後に目を開けさせる演出もたまらなく好きです。原作ではここら辺はずっとダイの後ろ姿で描かれていたので、目を開けていたかどうかは分からないのですが。
 
 それにしてもバーン様、双竜紋というお言葉、お好きですね(笑)

 少し残念なのは、紋章の光が消えてダイが正気に返ったような様子を見せるシーンが、カットされていたこと。
 原作のダイは降りる場所に気を遣っていなかったらしく、紋章が消えてからようやくレオナを探しています。

 しかし、レオナの閉じ込められていた触手の残骸……色が汚っ。
 どろっとしたバブルスライムのような広がり方といい、一層汚らしくなった沼めいた濁った緑色が、すごくいやーんな感じです。正直、これで色がもう少し茶色がかっていたら、運子や下呂(両者とも、カタカナ変換でオナシャス(笑))を連想しましたよ〜。

 ダイ、よく触れたなぁ……さすがは勇者。
 原作では布っぽく感じましたが、アニメではもっとドロドロっとした印象でした。隙間を見つけてこじ開ける前に、中から光が漏れる演出はアニメの改変ですね。

 レオナが光り輝くシーンが長いのも、嬉しい改変!
 うっわー、めっちゃ綺麗で神秘的ですよ。装備を確かめるために身体を見回す仕草も、細かくていい動きですが、不満がっ!

 足手まといになったとレオナが謝るシーンが、まるっとカットされていますよーーっ。自分の力不足を自覚しているレオナと、それを全く気にしていないダイのやりとりが好きだっただけに、ここが削られたのが残念でなりません!
 楽しみにしていたのに〜っ。

 レオナの衣装、思ったよりもひどくはなかった印象。肩当てが黒ずんだり、手甲が多少爛れたっぽくなっていましたが、色事態に変化がなく、ツヤやテカリの演出はそのままだったので、劣化した感が薄かったです。
 どちらかというと、服の破け具合の方が目につきますね。

 レオナがなぜ自分が助かったか疑問をぶつける際、ダイが「さあ?」と返すのはアニメの改変ですね。可愛い!
 原作ではダイは無言で見ているだけです。
 ……でも、その方がまだ賢く見える気がします(笑) ちゃんと返事している方がおバカっぽく見えてしまうとは……沈黙は金ですね。

 レオナがダイに怒るシーン、原作とは表情が違っていましたが可愛くてお気に入り。
 レオナが胸を覗き込むシーンは……まあ、最初からカットされると思っていたのでショックは感じませんでしたが。

 でも、原作での真上から自分の胸を覗き込むという、生唾ゴックン物のセクシーカットと、顔を赤らめつつ胸を半分はだけるカットがなくなったのは残念です。くっ、深夜アニメだったら……っ!

 ダイが驚くシーン、原作ではゴメちゃんを見た後でしたが、アニメではダイが驚いた後、ゴメちゃんが登場しています。
 地味に左右反転した構図で、差し出した手が左手から右手に変わっていますが……このレオナの手のアップ、どうにもちょっとごつく見えてしまうのが残念。

 ダイやポップ、せめてマァムぐらいまでならこの手でも文句はないのですが、レオナの手だと思うともう少しほっそりしたイメージがあるのに〜。
 ついでに言うと、原作で片手に載せて小ささを強調していたのでその通りの演出ではありますが、むしろここは揃えた両手にちょこんと載せることで、ゴメちゃんのサイズが縮んだことを強調して欲しかったです。

 ゴメちゃんを投げるレオナの手の作画にも、めっちゃ不満がっ。なんというか、もう少し優雅さを希望したいのですけどっ。動きや手の形自体に基本tねきな問題は無いとは言え、なんか指太で女性というよりも男性の手のような印象があるのが気になります。
 レオナは特に少女で、ほっそりとした華奢な手をしているイメージがあるのに〜。

 レオナの推理にダイが応えるシーン、原作ではダイは全然信じていない風で「そんなバカな」とさえ言っていましたが、アニメでは最初から受け入れている感じですね。ゴメちゃんについての台詞にも、改変があります。

原作ダイ「……だけど……ゴメちゃんは昔、クロコダインとの戦いでもおれを助けてくれた。ポップやチウも助けられたって言うし……」
 
 具体的な原作に比べ、アニメではふわっとまとめていますね(笑)
 レオナが推理する際、冒頭のモノローグも削られていました。
 
原作レオナ(……でも、問題はその力がいつも違う力だという事……!) 

 ゴメちゃんの力の謎を考えるのには、大事なポイントだと思っていたのに、カットされちゃったのはビックリです。
 そう言えば今回、胸から腹への帯状の二枚の布が、横向きだとエプロンのような一枚布に見えるのはミスなのか、あるいはレオナが意図的に胸元の布をいじったのか……それとも単に角度が悪いせいなんでしょうか?

 レオナがゴメちゃんを両手で包み込んだ後、その手を離すシーンにも不満はあります。原作では、ここでレオナはゴメちゃんの遊撃隊バッチを指に摘まんで取ってあげているのに、アニメでは握りこんで取っています!
 台詞メインのシーンなだけに、細やかな指の動きを期待していたのに〜。

 レオナがゴメちゃんにキスするシーン、可愛いですが、キスをした後であれほど赤くなる必要はあるかな、とちょっと疑問。原作でもこの時のレオナは頬を染めていますが、レオナの感覚ではペットにキスしたような物だし、キスの前から頬を染めているならともかく、キスの後に恥じらう理由はない気がします。

 それよりも、その後のダイとのやり取りがカットされたのが残念で、残念で!

原作ダイ「お……おいおい、そんな問題じゃないだろぉ!」

原作レオナ「平気よ。ただ気を失ってるだけみたいだから……」
 
 ここも、好きなやり取りだったのにーっ。
 
 怒るレオナと、言い訳をするダイのシーンはカットされなくてよかった〜。
 原作では痛みに顔を歪めていただけのダイが、アニメでは涙目なのが可愛いです。
 
 しかし、ポップが言うと信憑性ゼロの言い訳にしか聞こえないのに、ダイがいうと本音に聞こえるのは……人徳というものでしょうか(笑)

 ゴロア復活で、ダイが後ろにいるレオナをさりげなく庇っているシーンはアニメの改変ですね、いい雰囲気です。アニメでは原作以上に、ダイがレオナを庇うシーンを見ることが出来るのが嬉しいですよ。

 ゴロアが触手に浸食されてメロン柄になるのは、アニメの改変ですね。不気味さがさらに増しています。……これほどまでに嬉しくない触手プレイを見たのは、初めてです(笑)

 ダイのドルオーラ、カッコいいです!
 放つ瞬間、目が青くなりましたね。父親と二人で放つかのようなシーンが、すごく好きですよ!

 見終わってからふと思いましたが、ポップの出番が全然なかったです〜(泣)
 原作では度々あったことですが、アニメだと一話ごとに原作で数話分の話が進むおかげで他のメンバーの活躍も同時進行で少しでも分かるシーンが挟まれていただけに、今回のように全く出番ナシは珍しいですね。

 次週、ついにバーン様との戦い!
 レオナのアレンジ済み衣装が、ちらっと見えました♪ 予告にポップ達とミストバーンが出てきたのには、ホッとしました。最悪、2、3週出番ナシかとヒヤヒヤしていましたので。

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