『大魔王バーン』(2021.7.9)

  
 

《粗筋》

 頭上で槍を旋回させたラーハルトが、気合い一閃、ミストバーンへと斬りかかった。穂先を、剣状と化した己の爪で受け止めるミストバーン。
 力を込め、押し切ろうとするラーハルトだが、ミストバーンも力では負けていない。互角の鍔迫り合いが続く中、ラーハルトの背後にいたポップが空中に跳び上がりマジックロッドを光らせ、ベギラマを放つ。

 目だけを後ろに向けその気配を察したラーハルトは、直前でサッと左へ飛んで避けた。ラーハルトの身体が斜線を塞いでいたのが仇になったのか、ミストバーンはまともにそのベギラマを受けてしまう。

 しかし、全身を覆う炎をミストバーンは手の爪を一閃させるだけで振り払った。
 無傷のミストバーンの姿が、そこにはあった。

 軽く床に着地したラーハルトと入れ違いに、背後に控えていたマァムが拳を握りしめて突っ込む。光り輝く輝く拳を握りしめ、攻撃のため駆け寄るマァムだが、ハッとする。

 頭上から地響きと、破片が落下してきたのをみて、一旦攻撃を中断して足を止めるマァム。未だ空中に浮かんだままのポップも、不思議そうに上を見上げていた。

 ミストバーンも、警戒の目を上へと向ける。
 なんだと戸惑うポップ。ラーハルトは、無言のまま上を見上げている。
 


 その時、バーンパレスの中央部から天井を吹き飛ばし、凄まじいエネルギー波が立ち上る。青い柱となって空へと一直線に伸びたそれは、ゆっくりと消えていった。
 そして、バーンパレスが無音となる。







 地上の魔法陣から、バーンパレスを見上げているフローラ。
 その近くには、メルルを抱きかかえたままのエイミもいた。人々がざわめく中、バウスン将軍はフローラに何があったのかと疑問を投げかける。

 空を見上げているフローラはわずかに目をすがめて「止まった」と呟く。
 戸惑うバウスン将軍やバダックに、フローラは説明する。今までレオナのミナカトールによって抑えられてはいても、バーンパレスの駆動音は途絶えることはなかった。

 しかし、今、それがピタリと止まったと語るフローラ。
 それを聞いただけで、ノヴァは目を輝かせる。フローラも微笑みながら、ダイ達がバーンパレスの中央部を破壊したのだと言った。

 歓声を上げ、喜ぶ兵士達。
 ゴメスとラーバは、ハイタッチのように互いに拳をぶつけ合っていた。頭に包帯を巻いた若い兵士も、隣り合った兵士とガッチリと手を握ってはしゃいでる。

 拳を天に突き上げて喜ぶ者や笑う者など、誰もが勇者の活躍に歓喜していた。
 喜ぶ一同を優しく見つめながらも、フローラはまだ安心は出来ないと軽く釘を刺す。
 
 まだ大魔王が倒されたとは限らないと言いながら、バーンパレスの機能が確実に破壊され、もう自分達の大地が攻撃を受けることはないと語るフローラ。
 喜び合う一太刀の中には、魔法使いフォブスターと鞭使いスタングルの姿もあった。

 狩人ヒルトに話しかけている兵士の背後には、チウの遊撃隊メンバーの姿も見える。
 ロン・ベルクはジッと空を見上げた末、ぽつりと言う。

 落ちてこないところを見ると、バーンパレス自体が浮遊力のある物質で出来ているようだ、と。
 その言葉に頷きながら、フローラも空に目を向ける。

フローラ「いえ、落ちてこないと言うよりも……浮き上がっていくようだわ」

 よく見れば、バーンパレスの壊れた瓦礫は上空へとゆっくりと立ち上っていた。

フローラ「少しずつ……緩やかに」

 上昇速度は、見ていてもすぐには分からないほどの速度に過ぎない。青い空に、白いバーンパレスはどこまでも優美に浮かび上がっていた――。








 その頃、ダイはドルオーラを撃った姿勢のまま、上を見上げていた。その目は未だ戦いに身がまえたものであり、険しさを宿している。
 レオナはぽかんと口を開け、上に大きく開いた穴を見上げていた。
 しばらくしてダイが身構えを解いてから、レオナは彼に駆け寄って両手の紋章について問いかける。

 俯いていたダイは、震える声で答える。

ダイ「……そうだよ、レオナ……! 生きてたんだ……!!」

 驚くレオナの前で、ダイは大切そうに自分の左手を掴む。
 父さんは、この左手の中で生きていたと告げる大野目は、今にも泣きそうに揺らいでいた。
 そんなダイを、静かに見つめるレオナ。

 死を越えて自分を助けてくれたのは、先生やラーハルトだけでは無かったと、万感の思いを込めて呟くダイ。
 ギュッと握りしめられたダイの左手を、レオナの両手が優しく包み込む。
 目を閉じたままのレオナは、ダイの拳を引き寄せながら、ダイの話を信じられると語る。

レオナ「だって、ダイ君、本当に嬉しそうな顔をしているもの」

 そう言って微笑むレオナもまた、この上なく嬉しそうな表情だった。
 少し寂しそうな表情だったダイも、レオナの笑顔に釣られたように屈託のない明るさが戻る。
 ダイを見つめるレオナの頬はわずかに紅潮し、勇者と姫が見つめ合う穏やかな時間が流れた。

 が、それは長くは続かなかった。
 小さな悲鳴を共に、何かが二人の近くに落下してきたのだ。ハッとしてそっちに目を向けるダイとレオナ。
 
 薄れていく煙の中から現れたのは、ごく小さな太鼓型の怪物だった。
 見た目が大きく変わっているが、それがゴロアだと直感するレオナとダイ。ゴロアはその場から走って逃げ出した。

レオナ「あ、転んだ」

 ダイは彼が『ドラムーンのゴロア』と名乗っていたことから、あのドラムのモンスターが元々の姿じゃないかと推察する。バーンから力を授かったとも聞き、レオナはあんな小さなモンスターを変貌させるようなこともできるのかと、懐疑的だ。

 ダイは何が出来ても不思議ではないと、バーンの底なしの魔力を肯定し、敵愾心も露わな表情で拳を握りしめる。
 ダイとレオナはそろって上を見上げ、太陽の光が差し込む天井の穴に目を向ける。
 天魔の塔の一番上に行こうと言うダイ。

レオナ「でも、階段のなにも、みんな吹き飛んじゃったわね」

 笑顔で、レオナに手を差し伸べるダイ。レオナも微笑み、ダイの手の上に自分の手を重ねた。
 魔法力のほの白い光が二人を包み、浮き上がったダイに引かれる形でレオナも飛び上がる。

 ダイ達は上の階で、一旦、床の上に降り立つ。
 周囲を見回してから、上を見やるダイ。周囲は大きな石の破片が散乱し、人影は全くない。
 頭上では、何層もぶち抜かれた穴がまだ続いていた。

 ダイが周囲を警戒している間、レオナはゴソゴソと自分の服を整えていた。短くなったマントを首元で結び、破けたニーソックスは短く折りたたんだので、眩いまでの太股が剥き出しになる。
 布地をランナーのたすきのように斜めにかけて、腐蝕した肩当ては捨てたレオナはそれなりに身なりを整えていた。

レオナ「なにもないわね……」

 上を見上げながらそう言うレオナに、ダイは答える。

ダイ「もっと上だ」

 手を繋ぎ、二人はまた飛び上がった――。








 一方、ホワイトガーデンではマァムが気合いを入れながら拳で殴りかかっていた。マァムの拳を、ミストバーンは爪の刃で受け止める。
 が、まあむもそれは読んでいたのか、迷いのない動きでその場で逆立ちの姿勢になり、足をプロペラのように回転させて連続攻撃を仕掛ける。

 何度も足が当たるが、ミストバーンはそれもなんとか刃で抑えた。斬りかかろうとするミストバーンの攻撃を大きくジャンプし、敵の肩に手をついて後ろへと飛ぶマァム。

 そのまま、彼女は流れるような華麗な蹴りでミストバーンの後頭部を蹴り飛ばした。
 さすがに体勢を崩し、前のめりになるミストバーン。

 その隙を狙って、空中に浮かんだポップがブラックロッドを大きく振りかぶってメラゾーマを放つ。振り返ろうとしたミストバーンを、豪火が襲う。
 その瞬間、ラーハルトの目が光った。
 炎が消えると同時に、ミストバーンに槍で斬りかかるラーハルト。

 が、ミストバーンは手の爪でそれも受け止める。そこに、ポップがブラックロッドを両手に真後ろから殴りかかった。しかし、ミストバーンはそれを片腕で軽く払いのける。
 あっさりとふっ飛ばされるポップとは反対側の方を見ながら、ラーハルトは叫ぶ。

ラーハルト「後頭部だ!!」

 その時にはすでにマァムは、高々とジャンプしていた。体重を載せた強烈な蹴りを、ミストバーンの後頭部へと叩き込むマァム。大きく姿勢を崩したミストバーンを、ラーハルトはすれ違い様に鎧袖一触する。
 ミストバーンの脇腹の衣が切れ、暗黒闘気が漏れだした。

 動きを止めたラーハルトの左右に、マァムが足から見事に着地し、ポップは尻餅をついて落下する。

 暗黒闘気を白い衣から撒き散らしたミストバーンだが、それはすぐに薄れ、服の傷跡も跡形なく直ってしまう。
 その光景を目の当たりにして、驚く三人。

 振り返ったミストバーンは、何事もなかったように無傷だった。
 ポップはゼイゼイと肩で息をつきながら、ミストバーンのタフさをぼやく。今日はロン・ベルクと戦い、自分やマァムとずっと戦っているのにと呟くポップに続いて、マァムも息を切らしながら、まるで疲れることを知らないみたいだと補足する。

 ラーハルトはごく真顔で、それを肯定した。
 驚くポップとマァムに、ラーハルトは自分の痛んだ槍を見せながら、ミストバーンに何度も致命的な一撃を入れているのに効果がないことを説明する。

 ダメージを受けないとしか思えない……ラーハルトの感想を、今度はミストバーンが肯定した。
 攻撃を受けないラーハルト、攻撃を受けても全くダメージのないミストバーン……一見互角に見えても、結果は明らかだと言い放った。

 ポップ達も、それはすでに理解していた。
 長期戦になれば、自分達が疲れ果て直撃を受ける……ミストバーンの勝ちだと危惧するマァム。

 なんとか敵の秘密を突き止めなければと思うラーハルトも、表面上は冷静なように見えて、わずかに冷や汗を滲ませていた。
 どうするか、攻めあぐねてミストバーンと向かい合う三人。








 その頃、ダイは天魔の塔を目指して飛んでいた。ダイに手を引かれて、レオナも一緒に飛ぶ。複数の階に開いた穴を一気に飛び、二人は最上部の床に降り立った。
 壊れ果てた内装に、目を見張るダイ達。

 周囲を見回して、レオナはここが天魔の塔についていたドームだと察しをつける。本来はその上に城があったが、それはドルオーラで吹き飛んでしまったようだ。
 
 ダイは油断なく周囲を見回しているが、レオナは半ば夢見るように上だけを見つめ、ドルオーラの恐ろしさを噛みしめていた。
 これなら、バーンも一緒にやっつけたのではないかと楽観的な意見を口にするレオナ。

 が、ダイはこれだけで倒せる相手とは思えないと否定する。その声に応じる形で、バーンの声が響き渡った。

バーン「当たり前だ」

 ハッとするダイとレオナ。
 二人の目の前にある大岩にヒビが入り、それが見る見るうちに広がっていく。穴から魔法の光が見えた時、ダイは棒立ちのレオナに抱きつき、一緒に飛び退いた。

 二人がその場から動いた直後、凄まじい炎がその場を燃やし尽くす。
 超魔法を放った後に現れたのは、軽く人差し指を伸ばした手だった。レオナごと避難したダイは、彼女から手を離し、バーンに向き直る。

 最初から降魔の杖を手にして現れたバーンは、静かな声でダイを手加減ぬきで戦う敵と認定した。
 闘志に目を燃やし、バーンを睨み返すダイ。
 初めて目の当たりにする大魔王の姿に、レオナも目を見開いて彼を見つめている。

ダイ「来るっ!」

 急に立ち上がったダイを見て、レオナは息をのむ。
 ダイにはバーンがこれまでの余裕をなくし、殺気立っているのが見て取れた。バーンが全開で襲ってくるのを悟るダイ。
 予想違わず、バーンの周囲には禍々しい雷気が漂い始める。

 気迫を高めるバーンを見て、ダイはハッとしてレオナの前に回り込んだ。彼女の肩を抱きしめ、敵に背を向けて庇う体勢をとる。

 目を見開き、吠えるバーン。
 その瞬間、バーンから凄まじい魔法力があふれ出した。吹き荒れる暴風に目を閉じるレオナに、そんな彼女を身体で庇うダイ。
 瓦礫が吹き飛ばされ、風が吹き荒れる。

 だが、それでもバーンの雄叫びは止まない。
 荒れ狂う暴風から、目を固く閉じているレオナをしっかりと抱きしめて守るダイ。

 やがて、暴風が収まった。
 見れば、バーンのいるところは大きなクレーターが出来ていた。その光景を見て、レオナは魔法力を解放しただけでこれほどの威力があるのに驚愕する。ダイも、バーンの全力を改めて思い知る。
 そんな二人を見て、バーンはニヤリと笑った。

 それを見て、ダイは以前、たった一撃でやられた時にはバーンが本気ではなかったことを悟る。
 立ち上がるダイとレオナだが、ダイは二つの紋章でパワーアップしたとは言え、相手に通じるのかと考え込む。
 そんなダイを、レオナは不安そうに見つめていた。

レオナ「ダイ君」

 自分に目も向けないダイに、レオナが不安げに話しかける。
 だが、ダイがそれに応じるより早く、バーンがダイに話しかけてきた。かすかに笑いを含ませながら、ダイの今の考えを言い当ててみせる。
 ハッとするダイとレオナ。

バーン「双竜紋……余はそう名付けた」

 戸惑うダイに、バーンは淡々と語る。

バーン「竜の騎士が生涯を終える時、紋章はマザードラゴンの宿す新たな生命へと受け継がれる。竜の騎士の恐ろしさは、紋章に秘めた戦いの遺伝子によるところが大きい」

 竜の紋章には長年に亘り、騎士達が引き継いできた戦いの技術が受け継がれてれていると説明するバーン。
 竜の騎士は、生まれつき戦闘技術を受け継いだ天才だとも言う。
 そこで、バーンはダイを指さした。

 竜の騎士バランの息子ダイは自身の紋章と強さを備えていたが、技術の継承がなかった。
 だが、今、バランの技術が正式に継承され、超戦闘能力が生まれた。それが、双竜紋……生まれ持った強さに、歴代の騎士の戦闘経験が上乗せされた超騎士が、ダイなのだと語るバーン。

 ダイは自分の拳に目を落とし、どこか怯えたようにそれを聞いていた。
 もはやダイの力を予測できないと言うバーンは、自分の手に降魔の杖の鞭部分を絡ませる。魔法力を杖に吸わせることで、バーンと杖が輝いた。

 竜魔人以上に化けるかもしれんと評価するバーンの言葉を、ダイは怯えの感じられる目で聞いていた。
 降魔の杖の先端が開き、光の刃が出現する。

 刃先を下に向け、槍のように身がまえるバーン。
 天地魔界に恐るるものなしと自負するバーンだが、未知なるものに警戒する必要があると言う。
 その姿に、ダイははっきりと怯んだ。

ダイ「うぅ……ッ」

 バーンは、武器を振り上げる。

バーン「即時粉砕! それが、余の結論だ!」








 思わず悲鳴を上げ、バーンの攻撃を辛うじて躱すダイ。
 そんな中でもダイはレオナを小脇に抱え、横っ飛びに大きく飛んで彼女を庇う。
 柱の陰に飛ぶダイとレオナ。ぺたんと座り込んだレオナに、ダイはしばらく離れていてと言い、自分が身がまえてすぐにジャンプしてその場を離れる。

 レオナは反論しかけるが、その時にはすでにダイは彼女の側にいなくなっていた。
 降魔の杖を身がまえるバーンは、言うことを聞いておけと嘲笑う。
 自分への話しかけに、ハッとするレオナ。

 近づくまで無駄死にだと言い、一撃でダイを殺すつもりで攻撃するバーン。真正面からバーンに向かっていったダイだが、寸前で怯えた表情を見せ、床に手をついて方向転換する。
 直前までダイがいた場所を、バーンの刃が貫く。

 凄まじい煙と暴風が吹き荒れ、顔をしかめるダイ。だが、それでも空中で身体を反転させ、地面に着地する。
 それだけの攻防なのに、肩で息をするダイ。

 煙の向こうで背を向けていたバーンはゆっくりを振り向き、反撃してこないのかと責めるように言う。
 ダイはバーンの早さと威力が以前と桁違いだと感じていた。

 柱の陰にいるレオナも、ダイに反撃するようにと声援を送る。
 が、その後で彼女は憂い顔で、一撃目を決めかねているダイの迷いを見抜く。1度は剣を折られた相手であり、ドルオーラにも無傷だった……萎縮してしまって戦いのきっかけがつかめないでいるのだと、彼の心境を推し量る。

 まさにレオナの予測通り、ダイはバーンを相手に攻めあぐねていた。剣か、呪文か――それさえも決めかねて、バーンを睨みつけるダイ。
 しかし、いかに目つきが険しくても、そんな虚勢はバーンにはお見通しだった。

 ダイが恐怖に負けたと判断し、興ざめと言いつつもダイに止めを刺そうと杖を振りかぶる。
 それでもまだ、どうすればいいか迷うダイ。

レオナ「ダイくーんっ」

 よく響くその声に、ハッと目を見開くダイ。
 声の方に目をやれば、柱の陰を離れ、しっかりと姿を見せたレオナがいた。

レオナ「迷うことなんかないわ! ぶんなぐっちゃえ!」

 大胆に拳を突き上げ、大声を張り上げるレオナ。
 それを見て、ダイは吹っ切れた。
 襲いかかる大魔王バーン。
 が、ダイは両の手の紋章を光らせ、雄叫びを上げながらバーンに殴りかかった。

 バーンの攻撃を躱しつつ、相手の懐に飛び込むダイ。驚愕するバーンの足元で強く床を踏み込んだダイは、高く跳び上がった。長身のバーンの背後へと回り込むダイ。バーンが振り向こうと動くも、ダイの方が早かった。
 闘気の籠もる両手を組み合わせたダイは、そのままバーンの右肩を殴りつける。

 それを見て、笑顔を見せるレオナ。
 ダイの攻撃に、バーンが驚きの表情のままよろめいた。驚愕に目を見張るバーン。

 ダイが地面に降り立つのと同時に、バランスを崩したバーンが膝をつく。
 当たったと驚くダイの目の前で、バーンは膝をついたままの姿勢で打たれた右肩を押さえ込んだ。

 バーンが倒れたと驚き、ダイは光る両手を見返しながら、自分が先制の一撃を打てたことを実感する。
 自分が考えすぎていたこと、元々勝てる相手ではなかったこと、全力をぶつけて突破口をぶつけるしかなかったことを、改めて噛みしめるダイ。

 そこでハッとしたダイは、レオナの方に目を向ける。
 レオナがそれを自分に教えようとしてくれたと、気づいたのだ。笑顔で、レオナにアドバイスの礼を言うダイ。
 親指を立ててそれに応じるレオナは、得意そうだった。

 でも、お姫様がぶんなぐっちゃえなんてはしたないとたしなめられ、憮然とした表情になるレオナ。
 人がせっかく固さを取ってあげようとと、ぷんぷんに怒りだす。

 が、その時、バーンが突然、怒りを露わにする。
 最初に魔法力を解放した時と同じか、それ以上の輝きを見せて立ち上がるバーン。それを見て、レオナは慌てて柱の陰に隠れる。

 警戒して身がまえるダイに、バーンは思う。
 確実に斬れていたはずが、とらえられなかった……ダイの動きが予測不能だったと、たった今の攻防を思い返すバーン。
 ダイを見据え、やはり戦いの遺伝子が受け継がれたかと思いを巡らせるバーン。

 不安そうに、ダイに呼びかけるレオナ。が、ダイにはもう、迷いはなかった。

ダイ「わかってる!! 攻撃だ!」

 片っ端から得意技をぶつけようと、背中の剣に手を回すダイ。
 ダイの闘志に呼応して、封印が外れ、宝玉が輝く。剣を抜き放ったダイは、竜闘気を剣に伝えるために全身を青く光らせる。
 
 まず、大地斬で斬りかかるダイ。
 小僧が図に乗るなと、不快そうに迎え撃つバーン。
 それぞれが青の闘気と金色の闘気をまとい、両者の武器が激突する。がっつりと鍔迫り合いの形になるダイとバーン。

 バーンは、剣が折れない事実にわずかにたじろく。
 逆にダイは、いけると調子を上げる。
 高いに刃を打ち会い、ダイは一旦後ろに下がって距離を取った。が、間を置かずにすぐに突っ込んでくる。

 顔をぶつけんばかりの距離で、鍔迫り合いを繰り広げるダイとバーン。再度距離を取ったダイは、今度は離れた場所からの大地斬を放った。衝撃波が矢のように、バーンめがけて飛んでいく。
 バーンはそれを顔をのけぞらせ、身体をわずかに左に逸らすことで避けた。

 バーンとダイは気迫のこもった目のままに接近し、激しく刃を交える。
 その攻防を、レオナはただ、見守っていた。ダイが大魔王と対等にやり合っていることに、感動すら覚えながら。

 戦っているダイもまた、感慨を味わっていた。
 自分の力が以前とは比べものにならないほどパワーアップしたと実感し、バーンと対等に戦える自負が、自信となってダイを支えていた。







 堂々と自分に打ちかかってくるダイの刃を、バーンは降魔の杖で受け止める。
 この程度強いことは、ダイがドルオーラを放った時点ですでにバーンは承知していた。
 
 竜の騎士が竜魔人にならないとドルオーラを放てないのは、生身では呪文の強さに耐えきれないから……呪文を放とうとして、自爆する竜の騎士を思い浮かべるバーン。
 その回想は、咆哮を上げて竜魔人化するバランへと変化する。

 ドルオーラを放つバランを思い出しながら、竜魔人にならないと呪文が使えないように制御機能が備わっているとバーンは予測する。








 なのに、生身でドルオーラを放ったダイは、竜魔人と互角か、それ以上だと考えながら、バーンは降魔の杖を払い上げてダイを突き放す。
 ダイの力を見極めようと、バーンは一段と光を強めて降魔の杖を構える。
 その構えを見ただけで、ダイは技の正体を察した。

バーン「カラミティウォール!」

 下段に構えられた杖の刃が、床石を削って弧を描く。それと同時に、津波のごとくそびえ立つ光の壁がダイに向かって動き出した。
 それを見て、悲鳴を上げるレオナ。

レオナ「ああっ!?」

 以前と違い、全力で放った必殺技がダイに迫るのを、冷徹な目で観察するバーン。

 床石を削りながら迫ってくる光の壁の速さに、ダイは避けられないと判断する。

バーン「さあっ、どうする!?」

 迫り来る壁を、ジッと見つめるダイ。
 その目がどんどん大きく映り、世界が真っ黒く染まる。







 暗転し、暗闇の世界の中に佇むダイは、思う。

ダイ(これは、闘気だ。……闘気に近いものだ! それが上に吹き上がりながら、高速で迫ってくる)








 ダイは剣を自分の目の前で、縦にかざした。
 柄を上にし、剣先を下にした持ち方は攻撃には不向きとしか見えない。
 意外そうな表情で、注目するバーン。
 迫る光の壁を、恐れる様子もなく見つめるダイ。
 
 両手の紋章が光り、ダイは気合いを入れて剣の刃に片手を添える。柄を握る手にも、紋章が輝いていた。剣に上下から闘気を込め、ダイは吠えるように叫ぶ。

 ダイの気迫に応じて、彼の足元から上に向かって闘気が噴き上がった。青い闘気はダイの全身を包む形で上に立ち上る。
 さながら、一本の柱のように輝く青い闘気を、バーンの放った光の壁が通り抜けていく。

 驚愕するバーン。
 声を上げてしまうほど、バーンは心底驚かされていた。
 上に噴き上がる闘気を纏ったダイは、カラミティウォールのダメージなど全く受けた様子もない。

 川の中にある橋脚のように、カラミティウォールはダイをすり抜けていった。通り過ぎた光の壁の後には、無傷のダイの姿があった。
 そして、その名の通りの災厄を実証するかのように、カラミティウォールはダイの背後の壁を爆破し、粉々に打ち砕いた。

 黒煙が大きく上がり、元々壊れていたその場がさらに崩れていく。
 だが、ダイは未だ剣を縦に構えたまま無傷だった。
 床を大きく削る放射状のクレーターの中で、ダイの立っている場所だけが丸く、無傷で残っていた。

 煙が薄れてから、ダイはやっと剣の構えを解く。
 それを見たバーンは、わずかに肩を落とす。
 驚愕の目を見開くバーンは、ダイがカラミティウォールの衝撃波をすり抜けたのだと理解していた。







 一方、ホワイトガーデンでも天井部分から小さな瓦礫が舞い落ちていた。
 それを見上げたミストバーンは、先程からの衝撃からダイとバーンの戦いが始まったことを察していた。そろそろケリをつけなければと、爪を剥き出しにして身がまえるミストバーン。

 悔しそうにそれを見たポップは、マァムに向かってへばってしまう前にラーハルトを全快にするよう、指示した。ミストバーンへの主戦力になるのは、ラーハルトだけと理解しているのだ。

ポップ「その間はおれがっ!」

 言うなり、空に飛び上がるポップ。

マァム「ポップ!?」

ラーハルト「やめろっ!!」

 仲間達の制止に、切迫感が篭もる。
 
ミストバーン「ものおぼえの悪い奴よ……おまえ程度では、足止めも出来ん!!」

 床から、一直線に空中にいるポップめがけて五本の爪が伸びた。
 その瞬間、世界は色が極端に落ち、モノクロじみてみえる。
 驚き、目を見開くポップ。
 
 彼の目には、自分の爪を1度床に埋め込み、離れた場所からその爪を外へと着きだしたミストバーンの姿が見えた。
 彼の白い衣の中、真っ暗な空間には光の球だけが怪しく輝いているのが見える。
 やけにゆっくりとした動きで、爪はポップへと迫ってきた。

 悲痛に、マァムがポップの名を叫ぶ。
 だが、ポップはもう爪を避けることもできない。恐怖に見開かれた目の前まで、五本の爪が迫ってくる。

ポップ「あ……あぁっ!?」

 瞬間、暗転し、何かがぶつかって壊れる鈍い音が響いた。そして、一歩遅れて、ぺちゃっと軽い音も。

 ミストバーンが、珍しく驚きを見せる。
 彼が見たものは、ポップと爪の間に割り込んだヒムの姿だった。オリハルコンの肉体に当たった爪は、先端が粉々に砕け散った。
 ヒムに当たったポップは、目を閉じたまま後ろへと軽く弾かれる。が、さほどダメージもなかったため、ヒムの背後に普通に着地した。

ヒム「こうやっておまえを庇ってやるのは、確か二度目だったよな?」

 肩越しに振り向いたヒムの顔を見て、驚くポップ。
 その時、背後から声が聞こえた。

ヒュンケル「仲間だ」

 その場にいた全員が、後ろを見やる。
 そこには、クロコダインに支えられたヒュンケルと、両手を腰に当て胸を張るというおそろいのポーズをとるチウとビースト君がいた。

 得意げに胸を反らすチウらに、軽く笑うクロコダイン。
 ヒュンケルは、ヒムを死を乗り越えて生まれ変わった新しい仲間だと紹介する。

 ヒュンケルの姿を見て、目を潤ませるマァム。
 マァムは溢れる涙を拭いもせず、ヒュンケルの元に駆け寄った。

マァム「無事だったのね、よかった……!」

 ヒュンケルの手を、両手で握りしめるマァム。が、痛そうに顔を歪めるヒュンケルを見て、マァムはハッとしたように手を引っ込める。
 心底申し訳なさそうに謝るマァムに対し、ヒュンケルは優しく微笑みかけて、心配要らないと言った。

ポップ「バッ……バカ野郎ッ!!」

 響き渡ったポップの声に、目を見張るヒュンケル。
 その場に胡座をかいて座り込んだポップは、嗚咽を必死に抑えたような声でヒュンケルに食ってかかる。

ポップ「何が……っ、なにが心配いらねえだっ、おれ……っいや……」

 振り返って怒鳴りかけた癖に、一回そこで詰まったポップは目をそらしてから、再びヒュンケルを睨みつける。

ポップ「おれ達がどんな気持ちでいたか……っ!」

 泣くまいと必死に目を見張り、頑張って口元を引き締めているせいで、かえって泣き出す寸前の顔になったポップは、そっぽを向き、捨て台詞のように怒鳴る。

ポップ「今度一人でかっこつけやがったら、マジでぶっ殺すからなぁっ!」

 言うだけ言って俯くポップを、ヒムは苦笑しつつもそっと見守る。ポップは気づかなかっただろうが、ビースト君はそれを見て軽く腕を組み、チウは呆れたようにため息をついて見せていた。
 クロコダインも、苦笑は隠せない。

ヒュンケル「許せ、ポップ……だが、もう一人で格好をつけることもあるまい」

 彼がそう言った時、クロコダインやチウ達も側にいた。

ヒュンケル「援軍も来たし……残る敵は限られているからな」

 大勢並んだ勇者一考のメンバーの前で、ミストバーンはただ一人で、その目を光らせていた――。







 一方、ダイ達は未だ向かい合っていた。
 落ち着きを取り戻したバーンは、ダイが何をしでかしたのかようやく理解していた。
 たとえ竜闘気で耐えたとしても、衝撃波で大きなダメージを受けるはずだった。

 しかし、ダイはカラミティウォールと同質の竜闘気を身に纏うことで、衝撃波の影響を受けることなくやりすごした。
 ダイ自身にも、ダイの仲間達にも全く見られなかった技術と発想と感じるバーンは、密かに冷や汗を掻く。

 間違いなく、ダイの中で竜の騎士の遺伝子が脈づき始めたとバーンは確信した――。

 


《感想》

 今回、冒頭からラーハルトとミストバーンの戦いから始まったのにびっくりしました。原作には無かったオリジナルバトル、いいですねえ!
 地上からもダイ達が中核を壊したと分かるのなら、すぐ近くにいるはずのポップ達にだって分かるのは当然なので、そのシーンを見られてよかった〜っ。
 リアル連載当時は、今週もポップの出番が無いのかと思ってばかりいましたし(笑)

 ラーハルトとポップが、連動した攻撃を取っているのが嬉しかったです。
 ラーハルトが前衛を務めることで後衛のポップは余裕を持って呪文を用意できるし、ラーハルトが文字通り盾になってくれているおかげでミストバーンの跳ね返し攻撃を防ぐ結果に繋がっています。

 また、ラーハルトとマァムが入れ違いの形で、前衛を入れ替えているのもいいですね。これなら相手を休ませることなく、三人で波状攻撃をかけ続けられます。

 どちらかというと長期戦向けで被害を抑える堅実な戦法な辺り、ラーハルトがダイの意を汲んでポップ達の安全をはかりつつ戦っている感じがして感心しました。やる気になれば出来るじゃないですか!(笑)

 地上組、ひっさびさにメルルが登場してくれたのが嬉しかったです! フローラ様も、お美しい……!
 しかし、バーンパレスが静かになってふと思いましたが、今までずっと風の音かと思っていた効果音ってバーンパレスの駆動音だったんでしょうか。うむむ、耳にはあまり自信が無いのでよく分かりませんが。

 フローラ様のセリフ、原作では「ダイ達の中の誰かが」と言っていた部分が「ダイ達が」に改変されていました。
 地上からはダイ達が別行動したなんて分かるはずもないので、アニメの言い方の方がスッキリしていていいと思います。

 喜ぶ兵士達、てっきり原作にも登場した包帯を巻いた兵士らのガッチリとした握手シーンをアクションで見られるのかと思っていたら、なんと、後ろにいるゴメスとラーバが拳をぶつけあうという渋い場面を作って、そっちを動かすとはっ(笑)
 意表を突かれましたっ。

 フローラ達が喜ぶ中、右端にいるアキームが目を閉じ、ガッツポーズを取って大喜びしているのを見て、ハットトリックを決めたサッカー選手かと思ってしまいましたよ。
 ……実は、原作ではこのシーンで欠片も出番のなかったアキームさんなのですが、アニメでは細やかながらも出番があってよかったです。
 
 フローラ様の発言、今思えば思いっきりフラグですね。
 ピラァ・オブ・バーンの落下こそが地上攻撃と考えていたフローラ達にしてみれば、その後にそれが爆破する危険性まで思いを巡らせる余裕なんかなさそうですし。

 もう少し余裕があればピラァ・オブ・バーンの調査が出来たかもしれませんが……その知識と手段を持ったちょうどいい人材なんていないかなと思い、ロン・ベルクがいたことを思い出しました。
 っていうか、ロン・ベルクが寸前まで武器作りに集中していないで、的確な情報収集して手を打っていれば、問題はもっと早く片付いた気がしてきましたよ!(笑)

 せめてポップがピラァ・オブ・バーンの危険性に気づき、調査していれば、とも思います。黒の核晶の情報をダイと共有できたかは微妙なラインなんですが、そんな危険物がこの世に存在することを知った上で、ピラァ・オブ・バーンを調べていれば、発見できた可能性もあったはず。

 黒の核晶の処理については、マトリフかロン・ベルクの知恵を借りることになりそうですが、ポップの機動力なら二人のところへルーラで飛べたはずですし……って、当時、悩みのどん底にいたポップに多くを望みすぎてもなんですけどね(笑)

 こう考えると、メルルが最後に情報共有したのがどんなに素晴らしい奇跡か、身に染みます。

 ロモスの決勝進出者達、意外と優遇されていますね。狩人ヒルトの後ろにいた鎧男は、兜ナシでしたけどバロリアさんっぽかったですし。
 個人的には、その背後にいたクマチャと、その肩に乗っていたマリベエに注目しちゃいました。ガルーダとパピー、ドナドナなどもいたのが嬉しいけど、出来れば全メンバー見せて欲しかったですよ。

 原作ではモノローグで事細かにバーンパレスが上昇している説明をしていた部分を、フローラ様の台詞を微妙に変えることで状況説明した改変はお見事と思いました♪
 フローラ様の台詞が、短いのに詩的に聞こえてとても好きです。

 原作では凜としていて、毅然とした命令が似合う印象を持っていたのですが、アニメのフローラ様はむしろこういう柔らかな印象の台詞が似合うように思えます。

 ダイとレオナのやり取りが、ほのぼのと可愛くて本当に良かったです!
 ダイの拳を包むレオナの手にも、今週は満足しました♪ 
 レオナの台詞は、少しだけ変わっていますね。

 原作レオナ「だって、ダイ君のそんな嬉しそうな顔……ひさしぶりに見るもの……!!」

 台詞の差違はあれど、ダイとレオナの優しいひとときが実によく表現されていて、文句なしです。
 でも、原作通り、ここでゴロアがお邪魔虫として登場するんですね(笑)
 ちゃんと太鼓が破けている部分まで再現されているのは、笑っちゃいました。

 改変としては逃げる際にゴロアが太鼓を鳴らしている点や、原作ではヨロヨロしているのにアニメでは割と素早く走っていること、原作と違って哀れむような表情で彼を見やっていること、などが目につきます。

 でも、一番大きいのは「あ、転んだ」の台詞が原作ではダイの台詞だったのが、アニメではレオナの台詞になっていることでしょうね(笑)

 ダイがバーンの魔力について語るシーン、原作だとやや恐れが感じられるような表情が、アニメでは戦いへの決意を強く感じさせる表情なのは嬉しい改編です。

 ダイとレオナがそろって上を見上げるシーン、原作では背中側からのカットでしたが、アニメでは二人の表情を真正面から見ることが出来て嬉しいです。
 アニメでは下から上に視点をずらしつつ、壊れた穴から光が差し込む演出が綺麗でした。

 原作では即、飛ぶシーンになっていましたが、アニメではレオナの一言と、ダイが手を繋ぐシーンがあったのには感動しましたよ!
 特に、ダイが掌を上に向け、まるでダンスでも誘うように紳士的に手を伸ばしたのには思いっきり感服しました♪ ダイ、いつの間にか成長して……。

 レオナの衣装改造に時間を割いてくれたのは嬉しいですが……胸とお尻付近のアップが多くないですか?(笑)
 マントの裾をナイフで切って整えるシーンとか、ニーソックスをまくって短くするシーンが入るかと密かに期待していたのですが、その辺は描写されませんでした〜。

 レオナ、服のアレンジが早っ。
 しかし、女性陣の服を見ていていつも思うのですが、原作よりも質感がふわっとして柔らかそうに見えます。
 ダイとレオナの台詞が、改変されているのは嬉しいところ。

 ポップ達の戦いも、少し改変されていますね。まさか、マァムの○ピニングバードキックを見られる日がくるだなんてっ♪♪♪
 ええ、○トリートファイター?はめっちゃ好きでしたとも♪ リアル連載世代なら、あのゲームを知らない者などいないでしょう!

 マァムの攻撃だけでなく、ポップのメラゾーマも付け加えられているのは嬉しいところ。
 原作では、ミストバーンとラーハルトの組み討ちシーンから始まるので、ポプはやられちゃうだけで活躍らしい活躍はしていませんでしたから(笑)

 マァムの見事な着地と、ポップの落下シーンも再現されてくれたのも嬉しいポイントです。

 ミストバーンの傷が治るシーンを見て、画面が三分割され、左から、マァム、ラーハルト、ポップの驚き顔のアップの演出、いい感じです。
 マァムが驚き、肩越しに振り返るラーハルトは目だけで微妙な驚きを、ポップはドン引き気味の怯えという表情の差もいい感じ。

 ラーハルトが痛んだ槍を手に説明するシーンで、手前に壊れた槍を見せるつつ、その背後にミストバーンを見せる演出シーンがかっこよかったです。原作にはない構図ですね。

 ポップ達が長期戦について考えるシーン、顔の向きが左右逆転しています。
 後、原作ではマァムは「ラーハルトが直撃を受ける」と言っていましたが、アニメでは「私たちが直撃を受ける」になっていますね。

 原作ではここでポップがすぐに行動に出るのですが、アニメでは三人の後ろ姿と相対するミストバーンの構図から場面転換しているのが、ダイ達の戦いが並列に行われていると実感できていいですね。

 レオナがドルオーラを語る際、実際にドルオーラの回想シーンが入っていたのは嬉しい改変です。
 レオナはずっと上を見上げてばかりいるのですが、ダイは周囲を探るように見ている動きの細かさに感心しました。

 原作でもダイは目の動き的に、上よりも周囲を警戒しているように見えるのですが、アニメでもそこを強調しているのが嬉しい限りです。

 原作ではバーンが出現時に放った魔法はイオ系かと思っていましたが、アニメでは炎が帯のように一直線に伸びていたので、ギラかなと思いました。

 ダイがレオナを庇う仕草が、細かくていいです!
 レオナは危険に全く気づいていない棒立ちでしたし、避難した後もわけが分からないとばかりにきょとんとしているレオナをダイが優しく下ろすシーンが、気に入っています。

 バーンと対峙した際、ダイが「来る」と口にして立ち上がるのは、アニメの改変ですね。原作ではモノローグとして語っているし、どのタイミングで立ち上がったのかは不明になっています。

 バーン様が怒りの余り、周囲に魔法力か闘気を撒き散らす図、原作ではトーンで表現されていたのでただの雷かと思っていたら、アニメでは雷の放出っぽい演出に黒々とした色も備えているので、めっちゃ悪役っぽいです! いや、悪役ですけど(笑)

 ダイがレオナを庇って敵に背を向けるシーン、通常なら背中を見せるのは危険もいいところなんですが、ダイの場合はダイの剣を背負っているからそれが盾代わりに背中を守ってくれているようですね。

 原作ではレオナは身体を縮めるようにしてダイの影に隠れ、様子を伺っていましたが、アニメでは普通に座り込んで目を閉じているのが、なんとも普通の女の子っぽく見えました♪

 力を解放した後のバーン様のニヤリと笑う顔、ちょっとお茶目でいい感じ♪ 原作にはない、アニメの改変ですね。

 原作ではダイの不安をモノローグで語っていますが、アニメではダイがバーンに気を取られて、隣にいるレオナに目を向ける余裕すらなくしていること、レオナの不安そうな表情と呼びかけで演出しています。

 バーン様の台詞、一部省略されていますね。

原作バーン「双竜紋……前代未聞の新能力を、余はそう名付けた……」

 形容詞はいらないと判断されたようです(笑)
 バーン様の長文説明、冒頭にマザードラゴンの下りを追加した上で形容詞を省くことで略していますね。

 背後に石版めいた模様に竜の紋章を大きく輝かせ、上からゆっくりと歴代竜の騎士らしきシルエットを浮かび上がらせ、その額の紋章が次々とパスされるように次の騎士の額に飛び移っていく説明図、アニメのオリジナル演出ですがすっごく分かりやすくてかっこよかったです。
 
 登場してきた騎士のシルエットは6人で、最後はなんだかバランっぽい印象ですが……まさか、歴史上竜の騎士はたったの6人しかいなかったとは言わないですよね?(笑) 漠然とですが、もっといると思っていましたよ!

 後、原作では『テクノロジー』が『技術』に言い換えられるなど、細かな差違がありますね。

 面白いのは、バーンの説明をダイは驚いたように目を見張って聞いているのに対し、レオナは驚いたり、気合いの入った表情などに変えながら聞いています。
 ……もしや、ダイはバーンの説明について行けていなくて、レオナだけが話を理解しているんじゃと心配になりますね(笑)

 後、アニメではダイの怯えが強く表現されているのも、興味深いところです。原作でもバーンを前にダイのためらいが感じられますが、アニメではそれがより強調されている感じ。

 バーン様が武器を振り上げるシーン、原作では黒のはっきりと見えないシルエットとトーンを組み合わせていましたが、アニメでは金色の線と金色のかすれた線を組み合わせたシルエットを使っていたのが意外でした。でも、黒の背景に金色の線がすごく際立っていて、迫力満点!

 と、ここでCMになるとは思いませんでした(笑)
 しかも、バーン様同じ台詞を仰っていますよ!? 大事なことだから二回言ったんですね、分かります(笑)

 バーンの攻撃シーン、構図は同じでしたが刃の向きだけが逆になっていたのは珍しい改変ですね。
 でも、原作だとバーンがダイの後ろに回り込んで攻撃したような角度の刃の向きだったので、正面から攻撃した向きに変更したのは無難だと思います。

 ダイとバーンの攻防、原作ではダイが逃げ回っている風に見えましたが、アニメでは最初は真正面から向かっていったのに途中で日和るシーンが印象的でした。
 戦わなくちゃという気持ちと、完全敗北した時の気持ちがせめぎ合っている感じですね。

 バーン様、強い! ダイが珍しくビビっていて、レオナが分析している感じがいいですね。
 ダイの剣が折られた回想シーンが映し出されたのは嬉しいですが、……レオナはあの場にいなかったんだから、映像化するには無理があるような(笑)
 
 レオナの『ぶんなぐっちゃえ』発言とポーズ、思っていたよりもずっと可愛くていいですね♪
 原作ではここからダイの反撃ターンになりますが、アニメではダイの覚醒の後でバーン様の攻撃シーンを織り交ぜている演出が入っています。
 敵の動きもあった方が、緊迫感が高まっていいですね。

 ダイの一撃でバーンがよろめく図、原作と同じ構図、ポーズ、表情なのに、アニメだと黒で影を強調することで思いっきり迫力をアップさせています。スローに倒れ込む姿なのに、迫力が凄すぎ!
 直前に、原作にはないレオナの笑顔が挿入されたのも好印象♪

 アドバイスの礼を言われて、得意げに胸を張るレオナが可愛いです! 原作よりも悪戯っぽい笑顔を浮かべているのがいいですね。

 ダイにたしなめられて、最初は戸惑いから、まるで○びまる子ちゃんのような半目になる変化も、すっごく楽しかったです。原作では下ぶくれな横顔になっていたので、あれが忠実に再現されたらちょっと嫌だなと心配していただけに、大いに安堵しましたとも。

 手を身体の前に揃え、ぷんすこ怒るレオナも可愛い♪
 が、その次に即映ったバーン様のアップが、ホラーっぽくて怖いんですが。

 ダイとバーンの対決、顔面をぶつけんばかりの睨み合いや、ダイの二度目の大地斬はアニメの改変ですね、カッコいいです!
 アバンストラッシュが二種類あることを理解してから、大地斬も使い分けできるようになったみたいですね。

 バーン様が顔を逸らすだけで避けるのが、めっちゃカッコいいですよ。
 
 生身のままドルオーラを放とうとして自爆し、自分の腕を吹っ飛ばしてしまう謎の竜の騎士、まさが画像になるとは思いませんでした!
 しかも、普段はこの手の画面はイメージ画像にしてみたり、シルエットにしたりするのに、今回に限って妙にリアル!

 原作ほど露骨に肉体が散らばっていないとは言え、腕が明らかに吹っ飛んでるのですが〜。

 もののたとえなのか、あるいは実際にこんな自爆をかましてしまった竜の騎士がいたのか、興味があるところです。
 バーン様の説明は原作よりも省略傾向にあるのですが、バランパパンの変身回想に気を取られてついつい説明を聞き逃しちゃいますよ(笑)

 長文説明という動きのなさを補うように、回想シーンがふんだんに盛り込まれている気がします。

 バーンのカラミティウォール、なんだか色が前よりも綺麗に見えるような気が。
 レオナの悲鳴は、アニメのオリジナルですね。

 また、原作ではダイが避けられないと言った後で、バーンが「以前とは違う〜」のモノローグを語っています。

 ダイがカラミティウォールを見定めようとする際、目がどんどん大きくなり暗転する演出はかっこよかったですが、意外でした。
 てっきりここでダイの目が青く染まり、紋章の声が聞こえてくるかと思っていたものですから。

 が、原作であった紋章による解説ではなく、ダイ自身が感じ取ったことをダイの言葉で語るという形に改変されていました。
 モノローグに頼らない演出がここでも一貫して発揮されていることに驚き、それから嬉しくなりましたよ! 

 ダイの対抗手段にバーン様が驚くシーンで、カラミティウォールの中央にバーン様の顔がコマ割のようにカットインされる演出もかっこよかったです。
 原作では色が分からなかったので、アニメではダイの闘気とカラミティウォールの色の差が見えるのも嬉しいところです♪

 しかし、バーン様のカラミティウォールに関する長文説明、まるっとカット!? い、いや、次週回しでしょうか?
 驚きのあまりか、バーン様が肩を落とすようによろめくシーンが追加されていたのは嬉しいです。

 いきなり、ポップ達の方に場面が映ったのにはビックリしました。
 でも、ミストバーン……台詞は原作と同じでも、爪を剥き出しにしたそのポーズ、殺る気満々なんですけどっ!? 原作では普通に立っているのに、アニメではやたらと好戦的です(笑)

 ラーハルトの台詞、後半の「おまえだけでは無理だッ!!」がカットされていますね。個人的には気に入っている台詞ですが、あの緊急時だと短い方がらしく聞こえるのでカットもやむなしと思いました。
 ミストバーンの台詞も、改変が。

原作ミストバーン「……物覚えの悪い奴よ。おまえ程度では足止めもできないと教えてやったものを……もう忘れたかっ!!」

 原作の方が、相手を馬鹿にしているように聞こえますね(笑)

 ポップが爪に襲われかけた時、画像がモノクロ風に色が落ちて、ポップとミストバーンだけが色が残る演出がかっこよかったです。
 色が残ると言っても底だけ鮮やかなカラーではなく、色落ちしたような褪せた感覚の色なのが、渋くていいですね。

 爪がスローモーションで迫る演出も、死の寸前の走馬灯じみていて危機感を煽ってくれます。
 後、ポップの悲鳴がアニメと原作では変わっていますね。

原作ポップ「や、やべっ……!!」

 ヒムがポップを助けるシーン、原作ではヒムは両手を軽く広げたまま手を下ろして突っ立ている風ですが、アニメでは両手を軽く広げたままなのは同じでも、ガッツポーズ風なのが庇っている感が強くて気に入りました!
 ちょっと影が入っている感じが、かっこよくていいです!

 助けられたポップが、ヒムちゃんに当たって後ろに弾かれているのにはちょっと笑っちゃいましたが。
 体重差がありすぎるから仕方がないですけどね。

 それに、原作ではヒムちゃんの肩当てに顎をぶつけているので、この程度の被害で済んだのはむしろ幸運だと思います。

 ヒムとポップの距離が、思ったよりも近かったのは意外でした。後ろから見ると、ほぼ密着状態ですね(笑)
 
 全員集合場面で、チウとビースト君が同じポーズを取っているのが可愛いです。原作ではチウはこの時、後ろに手を組んでいるのですが、アニメでは手を腰に当てたポーズを取っていて、無駄に偉そうな感じが好きです(笑)
 ちゃんとアップも用意されましたし。

 ヒュンケルに涙ながらに駆け寄るマァムの可愛さも見惚れますが、なんと言っても表情豊かなポップのツンデレっぷりが最高に楽しかったです!
 ヒュンケルに泣きながら文句を言うポップが、実に可愛い!
 頑張って堪えているのに、最後は目元に涙が滲んじゃっていますし、泣きそうな震え声の演技がまた絶妙でした。

 ヒムがそんなポップを見守っているのは原作通りですが、ビースト君が腕組みをするだけならまだしも、チウに「やれやれ、これだから未熟者は……」って感じに首を振られているのに爆笑しましたよ! チウにまで、強がりがバレバレですよ(笑)

 クロコダインの両目を閉じての苦笑が、すごく優しそうな表情でジーンとしちゃいましたよ! やっぱりクロコダインは格好いいですよね♪

 マァムも微笑ましそうに見ていますが……さりげにヒュンケルにピッタリと寄り添っています。ポップの立場なら、ヒュンケルの心配以上にすべき心配があるような気がしてなりませんが(笑)

 ヒュンケルの返答で『援軍も来た』はアニメでの改変ですね。その台詞の時、仲間達のアップが表示されたので、ものすごく頼りがいを感じました♪

 そして、まだダイの方に、というかバーンの方に視点が変化。
 バーン様の説明には、またも回想シーンが被りまくり(笑)
 ラスト、竜の紋章とダイが重なるイメージが実に綺麗でした。でも、レオナの奮闘は見せないまま終わりなのですね(笑)

 次週予告、アバン先生とキルバーンから始まったのにはびっくりです。そして、ダイとバーン、ヒムとミストバーンと、三種類の戦いが並行すると分かる予告は安心感がありました。ネタバレもなかったし(笑)
 最後がアバン先生とキルバーンだし、タイトルもタイトルなのでこの二人の決着がつきそうですね。

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