H.6.12.19 (月)No3,4  『ポップ・炎に死す!!』

  
 
 炎の渦がじりじりと縮まっていく。
 誰かポップを助けてと叫ぶマァムに、応えられる者はいない。その場にいる者には、何もできない。自分達の無力さを痛感しながら、みんな、次第に小さくなっていく炎の塊を――その中にいるはずのポップを見つめていた。

  特に、一緒に脱出するはずだったダイは、どうしてポップがダイに掴まりそこねたのか分からず、唖然としていた。
 一方、遠くから水晶球でその様子を見ているキルバーンは、彼らの絶望を明らかに楽しんでいた。

  まるで、花火でも楽しむように――。ダイに逃げられたことも、ほとんど苦にしていない。トランプと同じ数だけ罠があることを考えれば、ダイよりもポップが死んでくれた方がありがたいのだ。

  ダイ以上の成長度を持つポップさえいなくなれば、パーティーにはキルバーンの罠を突破できる者はいなくなる……。一人一人、ジワリジワリとダイ達を始末しようと言うキルバーンに対して、バーンは黙したまま何も語らない。
 ポップの最期を、キルバーンとピロロは乾杯をして祝う。

  しかし、その頃、ポップはまだ生きていた。
 熱さに苦しみながらも目を開けたポップは、ハドラーは自分の上に覆いかぶさるようにして炎から庇ってくれているのを知る。

  もう一度立てとハドラーは叱咤するが、魔法力も体力も尽きたポップには立ち上がる力さえもない。それに、ダイを救っただけで満足したポップには、もうあがく気さえ残っていなかった。

  そんなポップを、ハドラーは叱り付ける。逃げれたはずだったのに、なぜあの時ためらったのか、と。
 少し間をおいて、ポップは正直にハドラーに気をとられたことを話す。必死に自分達を助けようとしてくれたハドラー……絶対に助からないと分かっていても、ポップには見捨てることはできなかった。

 「だって、そうじゃねえか……! 自分の誇りを賭けて…! 仲間達と力を合わせて! 努力して! 正々堂々とおれ達と戦うために必死に、必死に頑張りぬいてよ…!!
 おれ達とどこが違う…?! 同じじゃねえか!!」

  だからこそハドラーが崩れ墜ちた時、ポップはつい手を差し伸べてしまった。敵を助けようとして死んでしまう……それでも、きっとアバンは自分の気持ちを分かってくれると思える。

  ポップは、その点には悔いはない。……だが、罠の外にいるマァムの悲痛な叫びを聞いて、思わず歯を食いしばる。
 そんなポップの顔に、ハドラーの涙が降りかかる。ポップの生命を惜しみ、泣くハドラーに対し、ポップは少しも恨みを持っていない。

  むしろ、感謝さえ感じている。ハドラーのおかげでメドローアを放て、ダイを救えたのだから。
 涙さえもすぐに蒸発してしまう高熱の中、ポップはすでに覚悟を決めていた。

  ハドラーと共に、アバンのいるあの世に逝くのだと……。しかし、ハドラーはあきらめきれずに全身でポップを庇い、一心に祈る――。

 『……神よっ!! 人間の神よっ!!
 魔族のオレが……初めて祈る…!! もし本当におまえに人命を司る力があるのなら、こいつをっ…!! この素晴らしい男だけは生かしてくれっ!!
 オレのような悪魔のためにこいつを死なせないでくれ!! ……神よっ!!』

 

 ハドラーの祈りも空しく、とうとうダイヤの9の罠に最期の瞬間が訪れる。一段と光を増す罠を見て、マァムは思わず目を逸らす
 が、白い羽がどこからともなく飛んできて、罠が激しい光を放った――!!

 

 ……ゆっくりと目を開けたマァムは、振り向くのをためらい、仲間を見る。驚きの余り目を見開き、小刻みに震えているみんなの姿を見てから、ようやく罠の方を振り向いたマァムは、その光景に驚愕する。

  あんなにも燃え盛っていた炎が嘘のように消え、ポップとハドラーは生きていた。
 事態を把握しきれず、驚いているのはポップも同じだ。
 5つの羽が五芒星の魔法陣を描き、罠を打ち消している――。

 「……こまりますよ、ポップ。勝手に『あの世』なんかにいかれちゃ…」

  どこか呑気なその声に、ポップやダイを始め、みんなが動揺を見せる。

 「……そんなところに行っても、私はいません……!」

  遠くに立つ男の姿に、一同が目を見張る。穏やかな微笑みを浮かべたアバンが、そこに佇んでいた――!

 


《タイムスリップな感想》


 どわわわわ〜〜〜〜っ、な、なんんという大どんでん返しっ?!
  まさか、アバン先生が出てこようとはっ?! でも、ポップが助かったのは素直に嬉しいけどっ♪

  他人を救うためには必死になるくせに、自分の命には諦めのいいポップ君。彼はどうも、実力的にも精神的な面でも、自分の存在が大きいことに気が付いていないらしい。
 彼の力を高く評価しているのが、よりによってキルバーンだなんて…っ(笑)
 
 それにしても、ハドラーの今回の踏ん張りには驚いてしまう。強くなるためになら、神にも悪魔にも魂を売りかねなかった男が、ポップを救いたいと神に祈るとは……! はっきり言って、感動ものv ……でも神様を『おまえ』呼ばわりするのは、罰当たりというものではないかと、ちょっと心配(笑)

  他にも、もう一つ心配なのが、魔法陣。
 マホカトールだと思うんだけど、ポップはまだしもハドラーにダメージがいかないものだろうかと、心配してしまう。

  さらに! これが最大の疑問なんだけど……あのアバン先生って、本物?!
 ずっと死んでいたと思っていただけに、ここで生き返られてもちょっと――なんか、引っ掛かるものが。

  マトリフ師匠あたりが化けているんなら、まだ納得できるんだけど。あーっ、本物であって欲しいような、偽者であって欲しいような……っ。
 こんなにも続きが気になるのに、次号は1/5発売だなんて殺生すぎるーっ!!

 

次へ続く
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