H.7.1.5 (木)No5,6 『復活!! 大勇者』 

 

   キルバーンの手から祝いの杯が落ち、砕け散った。
 さすがの死神も驚愕の表情をあらわにして、アバンの復活を見つめる。
 信じられない――その想いは、ダイ達も同じだった。ゆっくりと自分達の方に歩いて来るアバンを、ダイ達は呆然として見つめていた。

 誰もその場を動けない  彼が本当にアバン当人なのか、確かめる勇気が湧かなかったのだ。夢のような出来事を目の当たりにして、ポップはかえってそれを信じきれず、疑う気持ちを捨てきれない。

 そんなポップに、アバンはちょっとだけ手当てを待ってくれと優しく言い、先にハドラーを抱き起こし、礼を言う。
 本当にアバンなのかと問うハドラーに、静かに頷いてみせるアバン。

 アバンはかつての敵であるハドラーが自分の弟子と助けたことに驚き、自分の知っているハドラーとは全くレベルの違う男になったと見抜いていた。
 重ねて礼を述べようとするアバンに、ハドラーは突然牙を剥く。甘い奴だと罵り、突如、地獄の爪(ヘルズ・クロー)を伸ばして襲いかかるハドラーに驚くダイ達――!!

 だが、ハドラーが爪を突き立てたのはアバンにではなかった。アバンの肩越しの、なにもない空間……そこから血が滴り、くぐもった悲鳴が漏れる。
 ハドラーは最初から、空間の中に身を潜めていたキルバーンを狙っていたのだ。


 心臓を突き刺され、空間からヌウッと現れたキルバーンは大鎌を取り落とし、倒れる。
 だが、刺したハドラーもまた、最期を迎えようとしていた。腕の先からぼろぼろと崩れていくハドラーは、アバンへ忠告を残す。
 バーンに対抗するためには、情を捨てて冷徹になれ、と。アバンの力こそが、これからのダイの戦いに必要なのだから――。

 かつての仇敵の弟子を褒めたたえ、自分への礼として彼らを勝利へと導くようにと言い残すハドラーに、アバンは深く頷いた。彼の死期を悟り、思わず呼び掛けるポップに、ハドラーは最期の言葉を残す。

「……ポップよ……。おまえ達、人間の神というのも……なかなか粋な奴のようだぞ…。……オレの生命と引き換えに……オレがかつて奪った大切な者を……おまえ達に返してくれた……。そのうえ……」

 言葉を最期まで言い終わる事なく、ハドラーの身体は完全に崩れさった。だが、彼は死に場所がアバンの腕の中だったことに満足し、安らいだ表情で逝った。
 ハドラーの死を、静かに見つめるアバン。

 そして、ハドラーの死はダイ達にも悲しみに近い寂しさを与えた。特に、ポップにはその想いが強かった。
 ポップは最期の瞬間、ハドラーが自分達の仲間になったと認め、その死を悼む――。そんなポップを、アバンは軽々と抱き上げた。

「……いい顔をするようになりましたねえ、ポップ。しばらく会わないうちに……!!」

 優しく言葉をかけられ、ポップはだだっ子のように首を振って、暴れる。夢か幻か、ザボエラがモシャスで化けているんだと騒ぐポップに、レオナはそんなはずはないと、指摘する。

 なぜなら、姿を変えることは出来ても、使用魔法を偽ることはできない。悪の魔道士には使えない魔法を使ったと、鋭く真実を指摘する冷静さがレオナにはあった。
 ぴたりと騒ぐのをやめ、光の魔法陣を見下ろすポップ。

 ダイもマァムも、うれし涙を浮かべながら答えを求めるようにレオナを見つめる。頷くレオナに力を得て、二人はアバンの元へ駆け寄った。
 まだ呆然としているポップに、アバンは自分が幽霊でも幻でもない、本物のアバンだと保証する。

 今まで抑えていた涙をどっと零し、アバンに抱きつくポップ。手放しに再会を喜び、アバンに抱きつくダイ、ポップ、マァムを、ヒュンケルとレオナは涙ぐみながら見つめていた――。
 だが、そんな彼らを、キルバーンは目を光らせて見ていた……!!


《タイムスリップな感想》

 う……わぁあああーーっ、感動ーーっ!!
 みんなの喜びようを見ていると、アバン先生が復活して良かったと、しみじみ思ってしまう〜っ。

 ハドラーも、願いがかなってさぞや本望かと。なんせポップが助かった上に、アバン先生まで復活したんだから。
 それにしても、アバンが本物かどうか見抜いたのが、一番アバンとかかわりの薄かったレオナと言うのが面白い。

 逆に、一番疑っていたのがかかわりの深いポップというのも、皮肉な話。
 でも、その気持ちも分かる〜。
 確かに、ポップが五人の中で一番疑り深い性格というのもあるだろうけど、なによりポップが一番、アバン先生の生存を望んでいたからこそ、信じて裏切られるのが怖かったんだと思う。

 ところで、今回妙に楽しかったのが、先生にお姫様抱っこ(笑)されてるポップの図! ダイと一緒にいることが多いから、ポップってそこそこ身長あるのかな〜って思ってたけど、アバンと比較するとずいぶんと子供っぽく見えるなぁと実感。
 肩幅なんか、全然足りてないし。

 ……まあ、15才で魔法使いのポップと、30過ぎで勇者のアバン先生を比べるのが、間違っているのかもしれないけど(笑) よくよく考えてみれば、ポップって一つ年上の女の子であるマァムとほぼ同じ身長や体格なんだし、そうそう体格がいいわけないか。
 でも、まだまだ少年って雰囲気で微笑ましくって、いい感じv
 
 それはそうと、素直にアバンとの再会を喜ぶダイ達に比べ、れっきとした一番弟子にもかかわらずヒュンケルってば、素直になればいいのに……。
 そんでもって、生き返った言い訳が楽しみでならないっ!

 アバンの書を持ってきたマトリフが、このことを知っていたかどうかとか、ヒュンケルがアバンに対する負い目を消せるかとか、知りたいことは山ほどある〜っ!
 ここんとこ、めっきり大人びた雰囲気の目立つダイやポップが、先生に会うことで子供っぽい面を見せてくれるかな〜という期待も大っ!

 それに、倒れてもまだしぶとく目を光らせているキルバーンの怒りの矛先が、誰に、どんな形で向けられるのかも興味津々っ!
 う〜んっ、来週も楽しみっ♪
 

次へ続く
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