H.7.2.27(月)No13 『正義の快進撃!!』

 

 ぽかんとしているダイ達の前で、アバンはいそいそとお弁当のバスケットを広げてはしゃぐ。花柄の敷布や手のこんだお弁当まで用意しているアバンにみんな呆れているが、中でもポップは不満を隠そうともしない。

 ヒュンケルが表で頑張っていることを考えてば、いくらバテているとは言ってもジッとしてはいられず、腰を浮かしかける。そんなポップに、アバンは物も言わずに羽を投げつけた!

 白い羽が後頭部に刺さった途端、ポップは白目を向いて倒れる。驚くダイやマァムだが、身体を光らせたポップは起き上がってとまどったように手のひらを見つめる。魔法力が回復しているのだ。

 ポップに放った羽は、さっきまで使っていた羽とは違う。
 攻撃用の羽、ゴールドフェザー。輝聖石の簡易的な力を持つ輝石で、魔法の威力を増幅するアイテムだ。

 ポップに使った羽が、シルバーフェザー。先端にはマァムに与えた魔銃弾と同じ聖石が使われており、魔法力を貯めておくことができる。
 その両方の特質を合わせ持つのが、アバンのしるし…すなわち輝聖石だが、熟成に時間が掛かるため、二種類の羽を作るだけで精一杯だった。

 ポップの頭から羽を引き抜いたアバンは、まだポップの魔法力が満タンになっていないことに気がつく。
 並の魔法使いの2、3人は満タンに出来るだけの魔法力は入れてあったのだが……。もう一本羽を打つことを嫌がるポップだが、アバンは優しく諭す。

 回復することも、重要なことなのだと。
 少々心や身体が痛んでもやっておかなければ、それこそ今、身体を張ってくれている人に申し訳ないのでは  そう言われ、ポップはようやく素直に頷く。

 アバンはダイとポップの回復をマァムに任せ、その間に先に進んでトラップを外すと言い出した。一人で大丈夫かと心配するダイに、アバンはレオナに手伝ってもらうといい、彼女を抱えて走り出す。

 取り残されたダイ、ポップ、マァムはお弁当をつつきながら変わっていないアバンについて、おしゃべりをしていた。――だが、マァムはどこか、アバンが無理をして明るく振る舞っているような気がして、不安が拭えない。
 同様の不安を抱えるダイは、回復に専念することを提案する。

 全力で戦い、アバンの負担を軽くできるように。――以前、ダイ達の力が足りなかったため、アバンがメガンテをかけるのをなす術も無く見守るしか無かった……そんな悲しい思いは、二度と味わいたくは無い。
 ダイの言葉を聞いて、ポップは黙って袖をまくる。

 ポップにしてみても、気持ちはダイと同じだ。二度と同じ悲しみは味わいたくないし、そのために自分達が回復していなければならないのなら、早くそれをすまそうとばかりに嫌がっていた羽での回復を進んで受けようとする。でもさすがに頭は痛かったのか、せめて腕に刺してくれと愛嬌を振りまくポップに釣られ、ダイとマァムも声を立てて笑っていた――。


 その頃、先に進んでいたレオナは、アバンに何を手伝えばいいかを尋ねていた。ミナカトール以外は破邪呪文を使えないことを恥ずかしそうに打ち明けるレオナだが、アバンの目当てはレオナの助力ではなかった。
 レオナに渡したい物があったからこそ、わざわざ彼女一人だけを連れ出したのだ。

 羽の入ったポーチを渡され戸惑うレオナに対して、アバンは優しく微笑みかける。その笑顔から何かを察したのか、レオナはハッとしたように驚愕の表情を見せた――。

 一方、地上で戦っている人間達とミストバーン達……ザボエラは苦しい言い訳を使って、ミストバーンに地上の連中を押しつけようとするが、その考えは完全に見透かされていた。ミストバーンにあっさりと見捨てられ、地上の人間達と単独で戦う羽目になったザボエラには、焦りの表情が浮かんでいた――。


《タイムスリップな感想》


 おおっ、ついお弁当の歌を歌いたくなるほど美味しそうなお弁当が見物だった! アバン先生ったら、相変わらず料理上手ですね〜♪
 なんだかんだと言いつつ、ヒュンケルのことを心配しているポップも微笑ましかったし。でも、当分、ポップとヒュンケルが顔を合わせることがなさそうなのが、残念だ。

 それにしてもアバン先生は、自分が育てた愛弟子達よりも、冷静なレオナの方を信頼しているっぽい(笑) でも、攻撃魔法さっぱりなレオナより、魔法力が頼りな上に大呪文連発するポップに羽を渡した方が、役に立つと思うんだけど。

 さらに言うのなら、なんだか形見を残すみたいな雰囲気で、不吉な……っ。涙の復活をして間もないと言うのに、また死ぬ気ではなかろうかと、ヒヤヒヤしてしまう〜。
 キルバーンやミストバーン、ザボエラなどの動きも気になるし……。

 最後に、今回の印象的なシーンッ。
 ポップが袖をまくった時、腕が意外なくらい細いのにびっくり。うーむ、いつも長袖だから気がつかなかったが、あれじゃあマァムと同じ…か、もしかするともう少し細め?(笑)
 羽を嫌がるところも、注射を嫌がる子供みたいで楽しかった♪


《時を超えたおまけ》


 この回は、パートカラー♪
 旧コミックスの中扉に使われていた、アバン先生とダイのツーショットのイラストが本来の表紙でしたっ!
 しかし、今チェックしてみたら新装版では消えてるんですね、この回の表紙って。

 この回の表紙の煽り文句は
『強い心(ハート)と優しい瞳…。真の勇者の必須条件!!』
 でしたっ♪

 そして、この回は真モンスターデザインコンテストの審査発表会でもありました!
 4138通の応募の中から、優秀賞として選ばれたのは三点。

 三条賞として『超魔合体ハイパー・ザボエラ(仮)』(作中では、超魔ゾンビとして登場)
 堀井賞として『ドラムーン』(作中では、ドラムーンのゴロアとして登場)
 稲田賞として『キルバーンの手下のロボット』(策中ではジャッジとして登場)

 よーく読んで見ると、細かい設定やデザインが少し本編とは違うのが面白いところ。
 たとえばハイパーザボエラは、書いた人の設定では「ハドラーのように空中戦も可能」と書かれているけど…飛んでませんでしたね、あのゾンビ(笑)

 その他にも十点ほどの応募ハガキが掲載されていて、当時の読者達の熱意が伝わってきそうな雰囲気でした♪
 
 

次へ続く
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