H.7.6.18(月)No29 『さらば! 闘いの日々よ』

 

 無言で見つめ合う、ヒュンケルとラーハルト――。
 ラーハルトが生きていたことに、驚くヒュンケル……だが、ラーハルトは一度、死んでいた。

 ポップがバランの血で生還した様に、竜騎集の三人にもバランの血が与えられたのだ。だが、誰もが蘇生できるわけではない。強靭な精神力を持つ者のみに、その効果が現れる。 永い眠りから覚め、生き返ることができたのは、ラーハルトだけだった。

 事情は事情として、今、自分達を助けてくれた礼を述べるヒュンケルを、ラーハルトは戦士失格だと突き放す。それに反発するヒムだが、ヒュンケルは素直にその言葉を受け入れる。

 そんなヒュンケルではディーノ様の力になれないと見切りをつけたラーハルトは、彼にとどめを刺そうと槍を身構える。
 だが、ラーハルトが実際に槍を突き刺したのはヒュンケルにでは無く、彼のすぐ隣の壁だった。戸惑うヒュンケルに、ラーハルトは言う。

「……戦士ヒュンケルは死んだ!!
 オレが今!! この手で殺したのだ!! ……したがって、オレがこの鎧の魔槍を持って行っても、誰も文句はあるまい…?」

 辛辣な口調とは裏腹の、ラーハルトの穏やかな表情を見て、ヒュンケルは彼なりの思いやりを理解した。

「……ああ……構わん。死体は、もう鎧を使わんからな…」

 鎧化して完全武装し、ヒュンケルに別れを告げて去っていくラーハルトを見て、ヒムは何となく苛立っていた。
 だが、ヒュンケルは満足していた。

 傷つき、戦えなくなった自分に代わって、使命と意思を受け継いでくれたラーハルト――互いの死に目を見取った奇妙な円を噛みしめながら、ヒュンケルは目を閉じる。

 やるだけのことをやり、ヒムも救った……深い満足感の中でヒュンケルが思うのは、アバンのことだった。
 無意識に、昔の様に素直に『先生』と呼び掛けていた――。

 一方、ヒムはラーハルトを腹立たしげに見送っていた。
 ヒュンケルにライバル心を抱くヒムにして見れば、自分以上にヒュンケルとは好手敵同士という雰囲気を漂わせたラーハルトが気に食わない。
 ヒュンケルと戦うのは自分が先だとばかりに呼び掛けるヒムだが、それに対する返事は無かった――。

 ラーハルトの退場と入れ違いになる形で、チウやクロコダイン達がやっと駆けつける。事情の分からない彼らは、ヒュンケルの側でうずくまっているヒムに説明を求めるが、ヒムはそれを撥ね除ける。

 ヒュンケルが初めて得た、安らかな眠りを邪魔するなと言うヒムの目からは、止めどもなく涙が溢れる。
 そして、ヒュンケルは、彼にしては珍しく無防備に手足を投げ出す様な格好で、今まで見たこともないような安らいだ表情で目を瞑っていた――。

   それと同じ頃、パーンパレスの噴水前では、ダイ達とミストバーンのにらみ合いが続いていた。
 ミストバーンはキングが全滅したことを知り、彼の死を嘲笑う。

 だが、誰が彼を倒したかは気になる様で、ダイ達に探りを入れる。この場にいないヒュンケルか、アバンか――?
 だが、ミストバーンの後ろの階段の上から、レオナを伴ったアバンが現れた。

「…そいつらを倒したのは、きっと私の自慢の一番弟子でしょうっ!!」


 


《タイムスリップな感想》


 うっ?! こ、この『真っ白な灰となって燃え尽きた』的な俯き加減は……伝説の○日のジョー状態っ?!
 ま、まさか、今度こそヒュンケル死亡っ?! ――と、素直に悲しめないのは、今までさんっざんっぱら不死身っぷりを発揮して生き返ってきたせいだろうか(笑)

 アバン先生やラーハルトでさえ生き返ってきたのに、よりによってあのヒュンケルが死ぬなんて、全然思えないし(笑)
 それにしても、ラーハルトの今回の説明で、なぜバランがソアラを生き返らせなかったのか、分かった気がする。

 しかし、ラーハルトって直接ダイに会ったこともないくせに、一人で行ってどうやって合流する気でいるんだろ? …まあ、ポップとは顔見知りだから、なんとかなるかな?
 んでもって、当てにはできないジャンプの予告によると、アバンに何が起こるっぽい。いよいよ、新キルバーン登場かな?

 ところで余談だが、ミストバーンに対して身構えるダイ達三人の中で、一番後ろにいるのがポップなのが、妙に笑えた。……そうか、女の子を最優先で庇うんじゃないんだね(笑)
 

次へ続く
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