10 人間ってすんばらしい! 気配り上手なワニ男クロコダイン

  

 見るからに恐ろしい外見のクロコダインは、種族はリザードマン。登場時は魔王軍六大団長、百獣魔団の軍団長であり魔王軍の一員として人間と戦っていた敵だったが、ダイとの戦いの後はすっかり改心して心強い味方となった。

 豪放で誇り高い性格の彼はバランやヒュンケルさえ一目置いていたほどの侠気にあふれる武人で、強さを追い求め戦うことを生きがいとし、勝利を追い求める男だった。大魔王バーンの主義に賛同していたというよりはその強さに敬服し、自分を磨くために従っていたような観が強い。

 ヒュンケルやバランとは違って人間にはほとんど憎しみを感じてはいなかったものの人間をひ弱な下らない生き物と軽蔑していた彼が、180度意見を変えたのはダイとの戦いがきっかけだった。

 最初はただの子供と侮っていたが、自分に傷を負わせたダイの底力に驚き全力で戦う決意を固めた。その時、なんと卑怯の生き字引、嫌っていたはずのザボエラの手まで借りようとしていたくらいだから、いかに精神的に追い詰められていたか分かると言うもの。

 武人との誇りと、勝利との間に迷っていたクロコダインの目を覚まさせたのは、ダイのために命を捨てて挑んできたポップだ。

 勝てないと分かっているのにそれでも自分に向かってきたポップを見て、クロコダインは人間を見直したと言ってもいい。
 お互いに庇いあい、力を合わせて戦うダイ達に敗れて初めて、クロコダインは勝利よりも大切な存在に気付いたのだ。

 それから一気に考えを変えて魔王軍を退きダイ達の味方になったのが、クロコダインの偉いところ。

 いろいろしがらみや葛藤もあっただろうに、人間の素晴らしさに感動したクロコダインは人間のために生きることに決め、己の心のままに行動する決意を固めた。

 一度改心した悪人は並の人よりもはるかに善人になるという例え通り、クロコダインは実に頼りがいのある正義の味方へと変身した。自分の思うがままの道を行くクロコダインは、同じ立場のヒュンケルほど過去に囚われてはいないようだが、それでも自分が怪物であることに多少のコンプレックスはあるらしい。

 対フレイザート戦後、レオナ救出を祝ってささやかな宴会が行なわれた時は自分が怪物であることを考え、宴会に加わらず一人離れたところでひそかに酒を飲んでいた。

 また、対バラン戦の際、ダイを匿うためにテラン王の助力を借りるために面会する時も、話が付くまで遠慮して外にいる気遣いを見せている。
 豪快さとは裏腹に、意外と神経が細かいところがある男だ。

 しかし、そんな気配り上手な面があるからこそ、パプニカの人ともうまくやっていけると言うもの。
 縁の下の力持ちのような地味な役割が多いが、それに不満を感じている様子もない。

 むしろ、わずかでもダイの役に立てることを誇りにしているようだ。
 戦いばかりにしか興味のない無骨な男だが人間と接するうちにだんだん感化されてきたらしく、大魔王バーンとの戦いが終わったら嫁探しでもしようかなどと発言するようになった。

 クロコダインは年齢は人間に換算すれば30歳程度というから、なるほど確かにお年頃。結婚を考えるのに、なんの無理もない年齢だ。
 ……まあ、問題なのはお相手。

 結婚ともなれば同族結婚が望ましいのだが、連載終了までクロコダインと同種族と思われるものは女性どころか男さえ出てきていない。
 …リザードマンの女性と言うのはあまり見たくない気もするが……。

 しかし、戦いばかりが人生じゃない。是非とも結婚して温かい家庭を育て、幸せをつかんでほしいものである。
 
 

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