22 正体発覚! 消えてしまった小さな友達

  

 ダイの初登場時からずっと彼の側に居続けた珍獣ゴールデンメタルスライム、ゴメちゃん。
 その正体がやっと分かったのは、物語の終盤、大魔王バーンとの最終戦の最中だった。
 ゴメちゃんを間近で見たバーンは、それが『神の涙』と呼ばれるアイテムだと看破する。人間の神が古代に作ったされる『神の涙』は、手にした者の強い願いを叶える効力を持つ。望めばどんな奇跡も叶う、凄まじい力を秘めた古代のアイテム。

 ただし、叶えられるのはその持ち主が強い想いで願われたものに限り、なおかつ利害を越えた純粋さに満ちたものでなければならない。


 そのために『神の涙』には、願いの善悪を判定できるように感情や心が備わっている。
 だが、ダイ達はそれを長い間、ずっと知らないままだった。
 そのため、ダイ達が叶えてもらった願いはどれも奇跡と呼ぶにはあまりに細やかな、小さな願いばかりだ。

 対クロコダイン戦ではダイの体力の回復を祈ったポップとマァムに反応し、レオナがポップに強く呼び掛けながら復活呪文をかけた際は、その想いに反応して死後の世界でポップに呼び掛けている。

 ……もし、ちゃんと効果を知っていて願ったのだったら、クロコダインを即死させることも、ポップ死亡時に復活呪文を成功させることもできたと思うのだが。

 基本的に『神の涙』はその場において最適な願いではなく、あくまで持ち主が純粋な気持ちで願った一番強い想いに反応するようだ。

 まあ、その価値を知らなかったとは言え勿体のない使い方をしてきたものだが、ここで重視すべきは人類のために自分達の危険も顧みずに戦っているダイ一行には『神の涙』を使えるという事実だ。

 本来は誰でも使えるというアイテムではないのに、ダイ、ポップ、レオナ、マァム、チウは確実にゴメちゃんを通じて奇跡の力を引き寄せている。レオナやダイの願いなどは2度叶っているので、一人にただ一度限定などというセコい決まりもないらしい。

 無意識の願いの強さも影響しているようだが、ゴメちゃんと言う仮初の人格をもったため『神の涙』自身もダイ達に手助けしたい気持ちもあったのだろう。

 バーンが、ダイ達が『神の涙』に意図的に願いをかけるのを恐れ、最優先で潰したのも理解できる。
 だが、大魔王の力を持ってしても『神の涙』を完全消滅させることはできないようだ。
 元々、願いを叶えれば叶えるほど『神の涙』はその身体をすり減らし、最後には消滅してしまう運命にあるが、時間が経てば自動的に修復され、また『神の涙』と呼ばれるティアドロップ型の光の塊となって地上に降ってくる。

 それも人間の欲望の少ない地に落ちる習慣があるようだ。
 7、8年前に何十……もしかすると何百回目の再生を果たした『神の涙』は、人間の欲望の最も少ない場所……デルムリン島に降ってきた。

 それをたまたま見つけたのが、まだ幼い頃のダイだった。
 小さなダイには、それがアイテムだとは分からなかった。きらきら光る、可愛い生き物だと誤解し、手の中に落ちてきた『神の涙』に願いをかけた。

 『ぼくと一緒に、遊ぼう…友達になってよ』
 ダイのその願いがゴールデンメタルスライムという珍獣を生み、ゴメちゃんを生んだのだ。

 余談だがダイが記憶喪失になった際も、彼は自分的には初めて見たゴメちゃんに同じ台詞を言っている。

 ゴメちゃんとの別れのシーン、ダイは何年……何十年かかろうと、再び空から降ってくる『神の涙』を探して、同じ願いをかけると誓っている。
 ダイとゴメちゃんの絆を感じさせる、心温まる別れの演出シーンだった。
 
 
 

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