3 ポップ 成長率なら、No1! なんと、勇気を司る使徒 

 

 ランカークス村の武器屋のせがれで、アバンの強さに憧れて家出し押しかけ弟子になったポップ。

 一年以上もアバンと旅をし魔法を習っていたポップだが、お調子者で感情の起伏が激しく、不利な立場にたたされれば弱気になってしまう――こんなポップの胸の奥にうもれていた『勇気』の資質を見出だしたアバンは、すごいとしか言いようがない!

 なにせ周りの者はおろか本人まで勇気の使徒はダイだと思い込んでいて、大破邪呪文の時まで、まさかポップこそが勇気の使徒だとは思いもしなかったのだ。

 しかし、分かってみればなるほど、と頷ける。
 考えてみれば、戦いを恐れる臆病なものが戦うためにこそ勇気は必要なのだし、なによりダイを初めとしたいろんな人に影響を及ぼしたのは間違いなくポップの捨て身とも思える勇気だ。

 ポップの成長は、その勇気に目覚めた時から始める。
 成長の取っかかりこそは遅いものの、一度きっかけをつかんだ後はポップは急激に心も魔法力も成長していく。

 その成長は大器晩成型で、尻上がりに調子が出ていくタイプだ。
 修行始めからではなく、成長初めから考えれば間違いなくポップがみんなの中で一番成長率がいいだろう。

 しかし、魔法使いから賢者……自称大魔道士に成長しただけあって、弱点ははっきりしている。
 攻撃力の高さに比べ防御力の低さが、ポップの一番の問題だ。

 と、言ってもこれは魔法使い全体の弱点で、補いようがない。
 それでも最終戦直前にロン・ベルクから貰ったブラックロッドのおかげで、肉弾戦では手も足もでなかった弱点は多少は緩和されたはずだが……。最終戦で壊れましたね、あっさりと(笑)

 攻撃魔法と回復系が主な力のポップは、バランスが偏ったキャラクターだ。特筆すべきは、運の数値の異様な高さ! ほとんど、遊び人並だ。
 魔法関係の知識は詳しいが、剣にかけてはろくすっぽ知らないのがポップの問題点。

 それに洞察力自体は割としっかりしていて、敵の心理を分析できるくせに、ついつい感情に任せて流されがちになるのが大問題だっ。

 とは言え、感情を大事にするポップだからこそ、今までダイやみんなを何度も救ってきたのも事実。
 そのへんの兼ね合いが難しいところである。

 

≪☆家出少年ポップの、成長が遅いワケ≫

 自分から望んでアバンの弟子になったはずなのに、ポップの成長は遅い。
 それもそのはずでポップは別に魔法使いになりたいとか、友達を救いたいとか目的があって弟子になったわけじゃない。

 アバンの強さに憧れて、ただついていったようなものである。
 優しいアバンが無理に修行しないのをいいことにポップは特訓は受けるのを嫌がり、難しい課題を出されると挑戦するより先に諦める……これで強くなれるわきゃないっ!

 なまじ妙に才能があったせいで、初期の頃からメラゾーマなんかを使えたのもかえってポップの成長を妨げたんだろう。

 理想的な保護者アバンの元でぬくぬくと修行していたポップは師匠に恵まれ過ぎて先に進もうとしなかったが、アバンの死をきっかけにダイと共に旅に出、マァムに会うことになる。

 が、それでもポップの性根は座らない。
 そんなポップが踏ん切りをつけたのは、対クロコダイン戦。

 マァムにひっぱたかれ軽蔑されたこと、そして昔は正義の魔法使いを目指していた偽勇者一行の魔法使いの後押しを受けて、やっとポップは戦う勇気を持つようになる。
 それから、ポップは積極的に戦いに加わるようになっていった。

 

≪☆ほとんど実戦! 大魔道士マトリフのサド教師!!≫

 ポップが飛躍的に成長することになったきっかけが、マトリフとの出会いだった。
 最初の師アバンとは正反対で修行はやたらめったら厳しく、弟子を苛めるのを楽しんでいるのではと疑いたくなるほど過激な教師だ。

 怪物でポップを追い回すのが準備運動、瞬間移動呪文を覚えさせるために手をしばって重しをつけて水の中に放り込んでみたり、あげくに危険な場所に置き去りにする始末。
 だが、マトリフはただ厳しいだけでなく、一本筋の通った人だ。
 魔法使いの魔法や知識は仲間を守るためにあるのだと教え、戦闘で軍師役となるべきの魔法使いの心構えを教えた。

 そのマトリフの教えのせいか、ポップはそれ以降仲間を守ることに全力を尽くすようになる。

 ポップの戦いは、敵を倒すことよりも仲間を助けることに重点が置かれている。
 無謀と分かっていても一人で敵に向かっていったり、命に関わるような危険な魔法を使うようになっていくのだ。

 また、彼が瞬間移動呪文を覚えたことによって、一行の行動範囲がぐっと広くなったことも明記しておこう。

 

≪☆一歩踏み外せば死が見える!! ポップのハラハラ修行録≫

 ポップがマトリフに修行を受けたのは、戦いの合間。
 パプニカにいる間はなんだかんだいってポップはちょくちょくマトリフのところに顔を出し、彼の教えを受けることになる。

 実戦とその合間に行われる修行――この二つがポップの上達を著しいものにしている。元々ポップは、死にたくないと思った時から実力を発揮するタイプ。
 それを見抜いたマトリフの修行が、過激になるのも無理はない。

 マトリフの修行でもっとも厳しいものは、極大消滅呪文習得時の修行。
 決まればすべてが消滅してしまう呪文を、ポップに向かって放ってさえいる! 一歩間違えれば、自分の弟子を自分の手で殺しかねないほど過酷な修行を強いてきたマトリフ……彼の導きががあればからこそ、ポップは強力な魔法を使いこなせるようになっていった。
 そして、戦いに勇気を振り絞って望むことで、強さ、魔法使いに必要な冷静な判断力を身につけていくことになる。

 だが、ポップは大破邪呪文挑戦間際に自分がアバンの使途の資格がないことに気付き、愕然とする。

 アバンの証に想いをこめるとその人独特の魂の色が光るはずなのに、ポップの証は光らない。
 自分一人だけがみんなと違うことに、ポップは悩み、苦悩する……。

 

≪☆最後の難関!! 自分の力で越えたハードル≫

 マトリフの元に相談にいったものの悩みを打ち明けることができず、また、自分の心の問題を他人がどうにもできないことを十分知っているだけに、仲間の励ましすらポップの悩みを解決する手がかりには成らなかった。

 みんなが信じているほどに自分を信じ切れないポップは、自分のミスでみんなが傷付くのに耐えられず、その場から逃げ出そうとする。
 が、自分を助けるために命を投げ出したメルルの想いが、そして、それに応えられずマァムへの想いを打ち明けたポップ――その瞬間、ポップのアバンの証が光り出した。

 そして、メルルを死なせたくないと思う気持ちが、ポップが今まで使えなかった回復系の魔法の力を生み出したのだ。
 最終戦直前になってから自分の資質を自覚し賢者の力を得たポップ――最後の戦いにおいて、これまで以上に頼りになる仲間になった。

 ……さて、ポップはダイに比べて、圧倒的に師に恵まれている。
 それにもともと仲間思いなこともあり、最初に『勇気』を出すきっかけをつかんだ後は、それまでのんびりしていた反動か急激に伸びている。

 アバンに心を習い、マトリフに技を習ったポップは、修行で技を磨き戦いで精神力を伸ばしてきた。

 そんなポップの一番の壁は、自分自身に対する自信のなさ。
 戦いは怖がらないのに、自分の想いを打ち明けるのをためらう……そんな心のあやふやさが、アバンの証の光を妨げていたのだろう。

 『勇気』の意義に目覚めたポップは、この先どんな難関が待ち構えていようとも、立ち向かうことができるに違いない。
 
 

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