4 マァム 自立した女の子…慈愛の心を持つ使徒!

 

 両親ともにアバンの仲間だったマァムは、人を慈しみ思いやる気持ち――慈愛の心を力の根源とする女の子。

 一見、行動的で男勝りなコに見えるが、マァムは感じやすい心を持ち敵に対してさえ同情心を感じるほど優しい女の子だ。
 しかもマァムは判断力も高く自分のことは自分で決められる、しっかりとしたコ。

 戦闘能力と回復能力を持つマァムは、5人の中では一番攻守のバランスの取れたキャラクターだ。
 マァムの成長について言えるのは、極端なS字型の成長だと言うこと。

 ダイやポップほどまっすぐには成長せず、一定の安定期間を置いてその後急激に成長している。
 それと言うのも、彼女が途中で転職したからだ。

 また、マァムは転職前と後ではまるで戦い方が違っている。
 僧侶戦士の頃のマァムは武術よりも効果的に使う魔弾銃と回復能力を生かして、サポート役に徹することが多かった。

 僧侶の魔法を使え並の僧侶よりも力強く、魔弾銃で攻撃魔法も使用できる実にオールマィティなキャラだったが、対フレイザード戦で魔弾銃を壊して以来、攻撃魔法は使えなくなってしまった。

 しかし、その後武闘家に転職することで、攻撃力を飛躍的にアップさせた! そのかわり回復能力は劣らないものの最大魔法力は減ってしまったわけだが、十分それを補う力は手に入れたと言える。

 しかもロン・ベルク制作の魔甲拳を譲り受け、マァムは並の武闘家の弱点である防御力の低さを補うことができるようになったわけだ。
 さらに言うのなら、攻撃魔法も通じない。

 いたって攻防のバランスのいいマァムだが、弱点は攻撃魔法はからっきしだということ。
 同じく魔法の使えないヒュンケルと違って、マァムはどうも、魔法が使えないことになんらかのコンプレックスを感じているらしい。

 そして、マァムの優しさは時にはかえって仇になり、敵と戦うのをためらう時もあれば、仲間を心配する余り無意味な行動に出てしまうこともある。

 だが、マァムは優しさに強さを合せ持つ少女――少々の弱点も、その二つのバランスを取ることでカバーできるだろう。

 

≪☆心残りは、人手不足! 村から出れない、優しき乙女≫

 ネイルの村出身のマァムは数年前にアバンに武術と回復系の手解きを受けた後は、一人だけで修行を重ねてきたらしい。

 先生を慕いつつもポップのように家出してまでついていかなかったのは、マァムが片親だと言うことと、村のみんなに対する思いやりに原因がありそうだ。

 男手のなくなった村で、すぐ近くの魔の森の怪物から村人を守っていたマァム――ダイやポップの旅になかなかついて行けなかったのも、村の人や母親を心配していたからだ。


 心から二人についていきたいと思いつつも口に出せないでいたマァムの思いを察して、村のみんなや母は心配ないからと彼女を安心させ、後押しして旅立たせてくれた。
――そこから、マァムの旅が始まるわけだ。

 

≪☆超便利アイテム、魔弾銃!≫

 初期のマァムは僧侶や戦士的な役割よりも、その判断力とマァムの考え次第で使い方にバリエーションのでる魔弾銃を生かしてリーダー的な活躍を見せることが多かった。
 戦い以外には子供のダイやまだまだ頼りなかったポップに比べて、一番年上でしっかり者の彼女がリーダーシップを取るのは当然だろう。

 だが、マァムよりも、二人の成長の方がはるかに早い。
 僧侶戦士と言う中途半端な職業のせいもあるが、もともと最初からそこそこの実戦経験と判断力を持っていたマァムは中だるみというか中盤はほとんど成長していない。

 魔弾銃と言うあまりにも便利なアイテムを持っていたことが、かえって成長を妨げていたらしい。
 なにせ本人が何の努力もしなくとも、弾に入れる呪文がパワーアップされるだけでマァムの戦力は確実に上がるのだから。

 しかし、その魔弾銃が壊れてしまったことが、マァムにとっては大きなターニングポイントになる。

 仲間が増えたのも、彼女の考えを変えるきっかけになった。自分よりも回復能力の高いレオナの存在、そしてポップの急成長を見て、マァムは自分も成長したいと考えるようになる。

 

≪☆決意は突然に! 転職成功、武闘家マァム≫

 マァムは転職の決意を固めるまで、誰にも相談せず一人で悩んでいた。
 そして、マトリフがダイとポップに仲間の心得を聞かせてやっているのを聞き、自分だけの特技を生かす道を考えるようになる。

 結果、回復系を伸ばすよりも腕力を伸ばそうと思い立ち、武闘家になる決心をする。ここでマァムが回復能力を伸ばそうとしなかったのは、おそらく賢者の卵であるレオナの存在を考えての判断だろう。

 みんなと修行するよりもロモスの山奥にいるという武闘家の神様のような人を訪ねて、一人で修行することを選んだ自立精神の高さは立派の一言!

 しかし、その自立心の高さゆえにポップにとっては少々辛い別れになったようだ。
 ……マァムの方は、比較的元気に旅立っていったのだが。

 

≪☆マァムの第二の師! 自称病弱な、拳聖ブロキーナ≫

 病弱だと言う割には変装して弟子の成長を見守るほど元気で、コロコロ持病が変わるおちゃめなじいさん――それが拳聖ブロキーナだ。
 もっともトボけて見えるが、実は彼は元はアバンの仲間で、世界を救った一員でもある。
 作品中にはマァムがブロキーナ老師に弟子入りしたエピソードは、残念ながら出ていない。

 ロモスの武術大会で弟子入りを申し込まれても即断っていた人相手にどう頼み込んだのか知らないが、マァムはわずかの期間に師匠さえも驚くほどの速さで武術を習得し、最大奥義も授かっている。

 普通、あまりにも強力な技を伝えるのには心の修行が大切なのだが、ブロキーナはアバンに教えを受けたマァムの心の優しさを信頼し、技を伝授した。

 つまり、マァムの場合師匠に習って精神力を鍛えたというよりは、純粋に武術を習ったといった方が正しい。

 この後、マァムは戦闘力に関しては飛躍的な伸びを見せるが、行動や精神面的には僧侶戦士の頃とあまり変わりはない。

 

≪☆愛すればこそ、強くなれる! マァムの愛…!≫

 マァムは戦闘力の成長に比べて、年頃の女の子らしい情緒面での成長はひどく立ち遅れている。
 まあ、遅れているからといって、戦力には関わらないのだが……。

 孤独を抱えたヒュンケルになにか惹かれるものを感じ、どんな心配事でも相談できるポップに信頼感を抱いている……マァムの異性に対する感覚は長い間こんなものだった。

 だから、短期間でヒュンケルに恋しているとみんなの前で断言したエイミや、ポップに愛を打ち明けたメルル、そしてマァムが好きだと告白したポップを目の当たりにして、彼女はただ戸惑うばかりだった。

 しかし、マァムは対親衛騎団戦で、一途にハドラーを想うアルビナスとの戦いを経て『愛』の重要さを自覚する。
 すべての人に注ぐ慈愛ではなく一人の異性に注ぐ愛のその強さを知ったマァムは、自分もそんな想いを抱きたいと考えるようになる。

 愛に目覚めた慈愛の使徒マァム――余談ながら彼女が自分の気持ちに結論を出さないまま連載が終了したのが、いまだに無念でならない。いや、ホントに。

 ……さて、マァムの成長は、ダイやポップほどはっきりとは見えない。
 元々そこそこのレベルを持っていたため伸び方が分かりにくいせいもあるが、肝心の修行期間を仲間から離れて送ったことが原因だろう。

 彼女の場合は、仲間思いというよりは敵にさえも愛を注ぐ優しさがあるため、特に仲間のために成長したという感じは薄い。むしろ自立した存在になりたいため、頑張って修行した観が強い。

 いったん伸びてしばらく安定期間が続き、また飛躍的な伸びを見せる成長を遂げたマァムは、どうやら精神面の成長もその曲線を描きそうな感じがする。
 この先が楽しみだ。
 
  

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