3 陰険、残酷、短足の、サイテー男ザボエラ

 ザボエラは、魔王軍六軍団の妖魔士団の軍団長。
 その狡猾さ、卑劣さ、あくどさでは他に並ぶものがないザボエラは、ハドラーと同じく、魔族。

 年齢はハドラーよりも上で、なんと890歳! かなり初期の頃からハドラーの腹心として登場するザボエラだが、登場回数の割には、意外と戦闘回数は少ない。

 間違ってもダイやクロコダインとまともに戦おうとせず、その場にいる一番弱い敵に目をつけてなぶり殺そうとするところなんか、呆れてものもいえやしない。

 もともと、ザボエラは正面きって戦うようなタイプではない。
 参謀役として、裏で糸を引くのを得意とする性格だ。
 しかし、その作戦はセコく、あくまで自分は安全圏にいることを前提の上でたてるものが多い。

 まずは保身第一、そして強い者に取り入って出世する――ザボエラの行動論理はこれに尽きる。
 ザボエラにとっては、相手が気にいっているからとか忠誠を感じるから協力するという発想はない。

 回りすべてを手駒と思い、利用することばかり考えている。
 ハドラーに取り入ったのも彼が利用できると踏んだからで、利用価値を感じられない時などはあっさりハドラーを見捨てようとしてさえいる。

 意外にも息子がいるのだが、その割には少しも人間味のある性格をしていない。
 肉親の情を利用してダイに罠をかけるなど人間的な感情に通じてはいるようだが、本人はほとんどそんな感情を持たないのか息子に愛着を見せたことはない。

 息子に死さえなんとも思わないようで、息子の仇だからといってダイ達を恨む様子もない。
 どちらかと言えば自分の個人的な感情で、彼等を憎んでいる風には見えるのだが……。おまけに人望のなさときたら、間違いなく魔王軍一だろう。

 ハドラーも、ザボエラの悪知恵を使えると思っていただけで信用していなかったし、クロコダインは魔王軍にいる頃はもちろん、正義の使徒になってからは輪をかけて卑怯なザボエラを嫌っているし、ヒュンケルはザボエラを恥さらしとまで言い切った。

 感情を露わにしないミストバーンさえ、ザボエラを罵る言葉を口にしたのだからその嫌われようにもすごいもんがある。

 おまけに新制魔王軍が整えられた時、ハドラーやミストバーンに新しい任務が与えられたにも拘らず、バーンはザボエラには何も言わなかった。
 他の六軍団と違って、ザボエラも妖魔士団もしっかり健在だったのに。
 ――ここまで人望のない奴は、そうはいないぞっ。

 しかし、ザボエラはそんなことにはめげもせずひたすら自分のやり方を信じて、強いものに取り入り弱いものを踏み躙るという処世術を実行している。
 かなり計算高く悪知恵に長けた男だが、性格的には冷静と言うタイプではない。

 普段はそうでもないがいざという時となると感情に走りがちで、癇癪を起こしただだっ子のようにわめき散らすことが多い。
 強い奴にはとことんへつらうくせに、目下と見下しているものには思いっきりわめきちらす。

 ……ここまで書いても褒めるところが一つも見付からないとは、いっそ見事なもんだ。

 それでも、唯一すごいのは超魔生物の研究。
 ハドラーを改造し大幅にパワーアップしたのは、紛れもなく彼の力なのだ。

 ただ、息子のザムザと違って、ザボエラは未完成の技術をまず自分の体を使って試そうという気は少しもなかったようだが……。研究者の風上にも置けない男である。

 こんな卑怯極まりない敵こそさっさと滅びてほしいものだが、なぜか妙にしぶとかった。『憎まれっ子世に憚る』の諺通り、惜しい敵は早死にし嫌な奴だけ長生きする――世の中そんなもんかもしれない。

  

 

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