4 逆恨みは募るばかり! ダイもポップもご用心  

 

 ザボエラは戦力として考えれば、そう怖い相手とは思えない。
 妖魔士団長という肩書きがついているが、ザボエラはどちらかといえば魔法使いに近い。

 死の呪文を唱える以外は僧侶系の呪文を唱えるのは見たことがないし、小柄な外見からみても分かるように特に格闘能力はないようだ。
 個人で使った攻撃魔法も、ベギラマやメラゾーマ程度……一対一で戦うならば怖くなさそうな相手だが油断は禁物。

 他人の魔法を一身に受け呪文の威力を収束して放つ、収束呪文(マホプラウス)を使いこなし、アバンのかけた光の魔法陣の中にやすやすと踏みいることのできる魔法力を持つザボエラは、実力を発揮しきっていないだけだったのかもしれない。

 また、ザボエラの使う毒は強烈だ。
 彼は体に、数百種類にも及ぶ毒素を持っている。
 自分の任意で爪から毒を注入することもでき、その威力は凄まじく人間を数分で殺すこともできる。

 他にも、かすっただけで命取りとなる猛毒入りのアイテムを使ったこともある。
 どうやら、ザボエラは毒薬使いとしてもかなりの使い手のようだ。

 ザボエラは決して正々堂々と勝負を挑んでくるタイプではない。
 誰かと組むか、強力な力をもつ部下達を前面に出してその影に隠れるようにして攻撃を仕掛けてくるタイプだし、また、不意打ちや騙し討ち、人質を取るなどの作戦を臆面もなくやって除ける卑劣な男だ。

 相手を騙すためなら、変身呪文で女の子に化けて色じかけに頼るなんて真似までやってのける。
 ――ここまで手段を選ばない節操のない敵を倒すのは、たやすいことではない。

 しかも、ザボエラは妙に根を持つ性格だ。
 魔王軍を裏切ったクロコダイン、ヒュンケルに会えば必ずそのことを罵るあたりにも性格が出ているが、ハドラーと共にダイ暗殺を謀った一件ではザボエラの性格の悪さがはっきりとうかがえる。

 猛毒のせいで動けなくなったポップを意味もなく踏み躙り、ほっておいても死ぬと自分でいったくせに、ポップの態度が気に入らないからといって散々蹴飛ばすはとどめを刺そうとするわ……この手のタイプは、間違いなく逆恨みをするタイプだ。

 現に、ぎりぎりの所でポップを助けにきたマトリフに手を切り落とされたことを恨み、その憎しみで怪我の痛みも忘れ、ハドラーに加勢しマトリフに攻撃魔法をかけている。根性はないくせに、妬み根性だけは人一倍である。

 手柄を求めて一人でダイ抹殺を計ろうとしてヒムに連れ戻されたザボエラは、本来なら命令違反で処刑されるところだった。
 しかし、ハドラーの恩情で魔牢幽閉ですんだのだが、ザボエラはその気持ちを理解せず、ただ根を持ち逆恨みしていた。

 ところでザボエラは後に不意打ちでハドラーにしっかり復讐を果たした上、その功績でちゃっかり魔軍司令補佐にまで出世している。
 つくづく転んでもただでは起きないクソじじいである。

 後に大破邪呪文完成を邪魔するため大軍で攻める魔王軍の中で、一人安全権に隠れながらポップの暗殺を謀って手柄を立てようともしていたし。
 ……こんな油断も隙もない敵がいたのでは、狙われる方もたまったものではないだろう。

 倒せば一番手柄になるダイはもちろんのこと、二度、ザボエラの猛毒から命拾いしたポップも、要注意だ。
 魔王軍を裏切ったクロコダインやヒュンケルよりも、個人的恨みを買ったこの二人の方がはるかにザボエラには恨まれているだろうから。

 さて、徹底して実戦を避けていたサボエラは最後に華々しい戦闘を繰り広げることになるのだが……それは超魔ゾンビの章で後述する。

 

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