6 寡黙な男が出世する?! 影の実力者、ミストバーン

 

 ミストバーンは魔影参謀。
 魔王六軍団の魔影軍団を率いる男として登場したミストバーンは、種族、年齢が一切不明の不気味な存在である。

 バーンの代理人とも呼ばれているが、その真偽のほどは定かではない。
 ひじょうに寡黙な男で、数十年に一度しか口を開かないといわれているほど。

 しかし、登場を重ねるごとに少しずつ喋るようになってきている。
 特に死に逝く者に対しては、冥途の土産とばかりにペラペラと結構良く喋る。
 しかも、割と文学的才能があるのか、凝った形容や芝居染みた大袈裟の台詞を澱みなく話す。

 その喋り方から察するに、どうもミストバーンはもともと無口な性格とは思えない。ロン・ベルクが察したように、ミストバーンはなんらかの理由があって沈黙を保っているらしい。

 理由は長い間不明だったが、誰が命じたのか歴然としている。
 ミストバーンに命令をすることのできる者――そして、ミストバーンがそれに平伏する相手といえばバーンしかありえない。

 彼の行動には、まずバーンへの絶対的な忠誠がある。
 自分の感情よりもバーンの言葉を優先させる彼は、その真の姿も大魔王の命令がなければ現すことができない。

 暗黒闘気と闇の衣で真の姿を覆い隠し、正体不明の怪物を装っているミストバーン。仮の姿の時でさえも、その実力はダイ達にとっては驚異だ。

 暗黒闘気の使い手であり、ヒュンケルが得意とした闘魔傀儡掌、それのパワーアップ版である闘魔滅砕陣を使いこなす。

 また、手から長い爪をだしそれを剣がわりにつかうことによって、肉弾戦でもなかなかのパワーと技を誇り、ヒュンケルやロン・ベルクとも互角に渡り合うだけに力を持っている。

 攻撃魔法を使うシーンは無いが瞬間移動呪文を使うところや、かけられた閃熱呪文を極大閃熱呪文に増幅して打ち返すという術を見せるところを見れば、魔法力がないとも思えない。

 仮の姿の実力でさえ無敵に近い上にとらえどころのない……つくづく不思議な男だ。
 かなり早くから登場してきた割には、ミストバーンはあまり積極的に戦いに参加しないキャラクターで、最後の戦いを除けば目立った行動を取るのは鬼岩城戦の時ぐらいだ。

 どちらかといえば傍観者的存在で、ひっそりとダイ達の戦いぶりを見詰めている時が多い。
 気配には敏感なダイ、ヒュンケルすら気付いていないことの多い『観察』は、ミストバーンの意図が見えないだけに不気味である。

 じわじわと見えない迫力で相手を威圧する圧迫感と、底知れぬ実力を感じさせる風格に、みんな早くから危険なものを感じ取っていたが、彼の教え子だったヒュンケルでさえミストバーンのことは何も知らないも同然。

 また、ストーリー中盤で、ミストバーンは闇の衣を脱ぎ捨て真の姿を見せたことが一度だけある。
 素顔は、なんと、長髪の美青年っ?

 仮の姿をしているのがもったいないほどのいい男で、その時ミストバーンは作り主であるバーンにしか起爆させられないはずの黒の結晶を、彼の魔法力で爆発させている。

 ミストバーンの正体の正体がなんであれ、バーンと密接な関わりがあることは確かなようだ。
 六団長が半数に減り戦力が半減した魔王軍で、ミストバーンは自分から司令の地位を辞退したハドラーに代わって魔軍司令の座を任じられ、初期の軍団長の中で一番出世したキャラクターとなった。

 ハドラーとは全くタイプの違う魔軍司令がこの先どう動くのか――興味津々である。
 

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