10 感情的なトサカ野郎、ガルダンディー

 外見からして鳥っぽいガルダンディーは、鳥人族で年は人間でいえば20歳前後。
 彼は魔王軍の者というよりはバラン直属の部下で、超竜軍団最強の三人、竜騎衆の一人で空を司る空戦騎。

 空を得意とするだけあって、羽の生えている彼は空も飛べるし、乗っているのもスカイドラゴンだ。
 竜騎衆の中では一番若い彼は、感情的でいささか子供っぽいところがある。

 気分に任せて人間の町で暴れまくってみたり、人間をなぶり殺しにしたがったり……基本的な趣味の悪さに加えて、感情で行動する精神的な未熟さはひどく傍迷惑だっ。

 もっとも竜騎衆の連中は魔王軍の者としては比較的に仲間意識が強く、バラン達もそんなガルダンディーの行動をやんちゃな子供のいたずらのように黙認するだけで、あえて止めようとしない。

 人間を殺すのは虫けらを殺すのと同じこと――彼等にはそんな意識があるようだ。
 子供がしばしば意味もなく虫を殺すように、ガルダンディーは人間を殺すのを楽しんでいるにすぎない。

 行動が軽率であまり深く考えないで動いてしまうタイプだが、フェンシング形の剣で空を飛びながら攻撃をするガルダンディーは、戦いを好む好戦的な性格の持ち主だ。

 頭の羽を敵に投げ付けて相手を弱らせ、ジワジワを刻み殺すのがお好みだと言うから、敵に回したくはない。ちなみに白い羽が相手の魔法力を奪い、赤い羽が相手の体力を奪う効果を持つ

 しかし、ガルダンディーは魔王軍にしては珍しく、味方の死を悲しむ感情を持ったキャラクターだ。
 騎竜に過ぎない空竜にルードと名前を付け、兄弟同然の最愛の竜だと言い放ち、敵を目の前にしてルードの死を悲しんでわんわん泣いていたのが印象的だ。

 ――もっとも派手に泣いていた割には立ち直りが早く、すぐにルードを殺した敵にその怒りをぶつけたが……。

 逆上すると手の付けられなくなるガルダンディーと戦ったのは、ポップ君。
 さまざまな事情により、バラン、竜騎衆3人とそれぞれの騎竜に、たった一人でかかって行ったのだが、当時のポップの実力から考えればとんでもなく無謀な挑戦だった。

 その頃のポップの最強呪文は重圧呪文で、決まればドラゴン数匹をも仕留めることができる大呪文。

 だが、騎竜はともかく竜騎衆はポップの不意打ちに驚きはしたものの、それで即死するほどヤワじゃない。

 その際、ガルダンディーの乗っていたルードが咄嗟に上空に飛んで逃れ、さらに尾でポップに攻撃を仕掛けて呪文を中断させたから、確かになかなか賢いドラゴンだ。
 ……つーか、この時、このルードがいなかったら最初の一撃で竜騎衆全滅も有り得たわけだが(笑)

 竜騎衆は全員そろいもそろってポップをみくびっていたからこそ、バランを先に行かせ遊び気分でガルダンディー一人がポップを相手にしていたのだが、その時も、ルードが実にガルダンディーに忠実に従っている点は見事なものだ。

 手綱の合図一つでガルダンディーの意を汲み取るところを見れば、兄弟同然の仲という意見も頷ける。

 しかし、さっきも書いたように、ポップが反撃に出てルードを倒したことにより、嘆き悲しんだガルダンディーはその怒りを思いっきりポップに向けた! 

 羽でポップの魔法力と体力を奪ってからなぶり殺しにしようとしたところに、彼の狂気と恐るべき残酷さがうかがえる。

 言うまでもなく、ポップは魔法使い。
 魔法力さえ奪ってしまえば体力なんぞなきに等しいのだが、それでも体力を奪う羽を投げ付けたのは、ポップの気力を砕くため。

 好戦的な性格の割には、強い敵と戦うよりも弱い敵を徹底的にいたぶるのが好きらしい。つくづく敵に回したくない嫌な相手である。

 ヒュンケルの援護の一撃によりからくもポップが勝利した戦いだったが、羽が千切れかける程の傷を負ったにも関わらず、実際に飛ぶまでそれに気付かなかったガルダンディーの鈍さは特筆に値する。
 普通、気付くと思うのだが。

 ポップのイオに止めを刺され、最後の言葉を残す暇もなくあっさり死んだガルダンディー――だが、仲間にその死を悼んでもらえたことを考えれば、割と幸せな最後を迎えた、と言えるかもしれない。

  

 

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