11 見た目の割にセコいトド男、ボラボーン 

 

 竜騎衆の二人目のボラボーンはクロコダインをも上回るかもしれない巨体の戦士で、種族はトドマン。
 年齢は人間の年に換算すれば、約30歳。

 ガルダンディーと同じくバラン直属の部下で、姿から分かるように彼は海を司る海戦騎。乗っている騎竜もガメゴンロードだが、ガルダンディーと違ってまったく騎竜に愛着を抱いてはいないようだ。

 三人の中では最年長だが、その分大人びているという印象はない。
 ガルダンディーほどではないが、彼もどちらかと言えば短気で粗暴な性格だ。

 同じ獣人族同士気があったのか、ボラボーンはガルダンディーをたしなめるシーンが多く見られた。
 彼が死んだ時もその死を一応は悲しんでいたし、けっこう仲間思いな奴である。

 しかし自分で自分に様をつけたり、自ら『海の王者』と名乗ったりするところには、何の謙虚さもみられないぞっ。
 相当な自信家といえるだろう。

 彼のご自慢は、自ら怪力無双と言い切るその腕力。
 巨大なガメゴンロードをも軽く放り投げる力の持ち主で、鎖鎌によく似た鋼の錨を武器に戦う。

 彼の必勝パターンは、まず種族の特種攻撃である凍て付く息で相手を凍り付かせ、自慢の怪力にものを言わせて相手を砕くこと。
 頭に血が上ってもこの戦法をとるところを見るとこれには自信があるようだが、それにしてもいささかせこい必勝法だ。

 彼の凍て付く息はマヒャド級の威力があり、一息でポップのメラゾーマを蹴散らしたほど。

 大男は動きが鈍いと相場が決まっているものだが、ボラボーンは瞬間移動呪文で飛び出したポップを鎖で引き戻していたから、反応速度が鈍いとも言い切れない。

 彼はポップとヒュンケルを相手に戦ったのだが、最初にかかってきたポップに攻撃を仕かけ、彼の弱さとラーハルトの忠告を聞いて遊ぶ気をなくして簡単に殺そうとしている。
 人間をなんとも思ってはいないのはガルダンディーと変わらないが、彼と違って弱いものをなぶる趣味はないらしい。
 雑魚には関心が無く、大物狙いばかりをする大雑把なタイプだ。

 ポップvsガルダンディー戦では静観を決め込んでいたが、ガルダンディーがやられたことに腹を立て、さらにヒュンケルに牙を折りとられたことに逆上して彼に戦いを挑んでいる。

 だが、彼ご自慢の力でさえヒュンケルに劣っていた……。
 剣の達人のヒュンケル相手とはいえ、雑魚敵並にあっさりとやっつけられたところが、ひじょぉお〜に情ない。

 実力的に及ばないだけならともかく、どう見てもボラボーンには根性がないぞっ、根性が!

 ボラボーンは牙を折られたとか殴られたとか、とにかく相手の攻撃にたいして実に大袈裟に痛がっていた。
 あれだけ図体がでかい上に、獣人なら打撃に対しての耐久度は高いはずだし、現にヒュンケルに決め技を受けた後でも、後でちゃんと立ち上がってきたのだからタフさはある。
 それなのにあんな風に、致命傷ともいえない程度の怪我でわめきまくるのは、単に堪え性がないとしか思えないっ。

 しかも倒されて復活した後、こっそり逃げればまだかわいげがあるものだが、ボラボーンはラーハルトとの戦いでつかれているヒュンケルのすきを狙って不意打ちし、それに失敗するや否や今度はポップを人質にとって、ヒュンケルを殺そうとした。

 一見クールなヒュンケル相手に人質作戦がよく効くと見抜いた眼力は、思い付きなのかそれとも彼の性格を読んでのことなのか、いまいちはっきりしない。
 どうも、ボラボーンも賢そうには見えないし……。

 それはさて置き、ヒュンケルを殺せばポップを見逃すとはいっていたが、こんな歪んだ根性の持ち主のこと、ヒュンケルが死んだ後ついでとばかりにポップも殺したに決まっている。

 その卑怯さのせいでラーハルトの怒りをかって、仲間であるはずの彼によって倒されてしまった。
 思えば哀れな最期だがそれも自業自得。
 同情する気にもならない、セコい悪党らしい最後だ。


  

12に進む
10に戻る
三章目次に戻る
解析目次に戻る

inserted by FC2 system