16 冷たいまでの美しさ 女王アルビナス

   

 ハドラーが超魔生物となって新たに死の大地の守護を命じられた時、バーンから新しい親衛隊を作るためにと、オリハルコンでできたチェスの駒を5つ、授けられた。

 それに禁呪法をかけて生み出したのが、新親衛騎団――全身が銀色に輝くボディをもった強敵揃いだ。

 中でも一番の力を持つのが、リーダーであるアルビナス。
 チェス最強の女王(クィーン)の駒から生まれた彼女は、その強大な力を隠すために普段は手足を隠し、こけしのような身体だけの姿で戦いに望んでいる。

 彫刻めいた無表情な美しさを持ち、冷静沈着にして慇懃なほど丁寧な言い回しが奇妙な魅力を放つ『ダイの大冒険』初の女性の敵だ。
 自信に満ち溢れ、正々堂々とした態度は敵ながらあっぱれとしかいいようがない。

 彼女の行動理念には、なにを差し置いてもハドラーへの忠誠がある。
 親衛騎団全部に通用する考えだが、アルビナスには特にそれが顕著に表れている。
 状況分析力に長けた聡明さは、知的なムードを漂わせた大人の女性の魅力を感じさせる。
 瞬間移動呪文やベギラゴンを応用させたニードルサウザンスを使いこなす彼女は、手足がなくても強敵だ。

 彼女が手足を見せて戦ったのは、最後の戦いである対マァム戦だけだが、そこで見せたスピードや技は見事なもので、武器がなくても十分に強かった。

 回復魔法が使えないのが全員に共通した欠点だが、親衛騎団は作り主であるハドラーさえ無事なら、致命傷を負わない限り、何度でも復元されるのでその点の心配はない。
 それにオリハルコンの特徴として並の武器は通じず、たいていの魔法を跳ね返す。

 まさに不死身の体を持つ、と言ってもいいだろう。
 親衛騎団は魔王軍で初めて、集団で戦った方が強いタイプの敵として登場した。

 お互いに強さを補いあうチームワークの良さもさる事ながら、勘がよく状況分析力があり、司令塔の役割を果たす役目 アルビナスがいることが、親衛騎団の攻撃にいっそうの厚みを付け加える。

 力を合わせて戦うことで本来以上の力を発揮するダイ一行に対抗するために作られただけあって、彼等は「打倒アバンの使徒」を合い言葉に、心までも一つに結束されている。
 途中でハドラーがバーンに反逆したが、その時でさえアルビナスを初めとする親衛騎団は迷いもせず、ハドラーに従いバーンに反抗している。

 彼等の望みは最初からたった一つ――正々堂々とした戦いで、アバンの使徒をたおすこと。

 その念願通りダイ達と親衛騎団は幾度か戦いを重ねるが、ダイと、というよりは親衛騎団vsダイを除いたダイ一行……ポップやマァム、ヒュンケルなどと戦うことの方が多かった。

 決着をつけたのも、対個人戦だった。
 ハドラーの最後の望み、一対一でのダイとの決闘を果たさせるため、アルビナス達はポップ達をバラバラに切り離してそれぞれが戦い、時間を稼ぐ作戦を立てた。

 協力し合って戦った方が力が出せるのは双方とも同じだが、個人の弱点がはっきりしている分、ポップ達の方が個人戦に弱い。

 ダイ一行でダイ以外に恐ろしいのは、魔法使いと戦士だけと考えたアルビナスは、他に何人来ようと全員と戦う覚悟でいたが、なりゆきからアルビナスはマァム一人と戦うことになった。

 その場で、アルビナスは初めて、ハドラーに逆らってまでダイ一行を皆殺しにし、バーンにハドラーの助命を嘆願する決意を明らかにする。

 たとえ主君の意思に背いてまでも、ハドラーにとって最も有効な道ばかりを考える彼女の想いの深さには、しばしば圧倒されてしまう。

 もっとも自分をただの駒と言い切るアルビナスは、なかなか自分の想いを認めようとはしなかった。
 アルビナスの恋心に同情し、和平を申し出たマァムにムキになって反論し、攻撃を仕かけていたし。

 圧倒的にアルビナスが有利だったにも拘らず、感情的になり過ぎたのが仇になり、マァムが辛うじて勝ちを収めた試合だった。

 死の間際になってから、ようやくハドラーへの想いを素直に口にしたシーンが、実に印象的だった。
 個人的に、大好きなキャラクターだっただけに、彼女の消滅が残念でしたよ!

 

17に進む
15に戻る
三章目次に戻る
解析目次に戻る

inserted by FC2 system