18 礼儀正しい馬男 騎士シグマ 

 

 騎士(ナイト)の駒から生み出されたシグマは、馬に似た姿形をもつ異形の戦士だ。
 控え目ながら礼儀正しく、少々古めかしい言葉使いをしているシグマは、騎士の駒に相応しい機動力の持ち主だ。

 スピードとジャンプ力では、ダイ一行で一番素早い武闘家のマァムをも上回っている。 イオラを得意とし、決め技はイオナズン級の威力を持つ、ライニングバスター。

 素早い動きで相手を翻弄し、疾風の槍を持って戦うシグマのもっとも恐ろしい武器は、シャハルの鏡という盾だ。
 普段は胸の奥に隠されているが、戦闘時には腕に装備する。

 何者にも砕けぬ強度を持っているばかりでなく、どんな魔法でも跳ね返してしまう魔法返しの力が秘められている。
 ハドラーから授かった伝説のアイテムを持ったシグマは、明らかに対魔法使い向きのキャラクターだ。

 シグマはマァム、クロコダイン、ポップと一対一で戦ったことがあるが、スピードでマァムを圧倒したものの、クロコダインの怪力の前ではなかなか苦戦を強いられていた。
 やはり速度で勝負をかけている分、力はやや弱いようだ。

 しかし、シグマがもっとも意識した相手はやはり、魔法使いのポップ――。
 彼がメドローアを使って見せた時から、シグマはポップに注目したようだ。

 オリハルコンには本来呪文は効かないが、極大消滅魔法メドローアにかかってはさしものオリハルコンも大ダメージをまぬがれない。

 『空』の技でオリハルコンのボディを砕くことのできるダイ、ヒュンケルとならんで、ポップの存在も親衛騎団には驚異的なもの……シグマとポップは互いに対局の関係にあるわけだ。

 シグマは性格的にもあまり目立たない存在だが、その冷静さと慎重さは5人の中で随一のもの。

 有利な戦況でもまったく油断せず、逆に不利な戦況に追い込まれても動じることのないシグマは、感情に揺さぶられることがない分、アルビナスやヒムより精神面では強いかもしれない。

 そんな彼の最後の戦いの相手は、ポップ。
 シグマとの戦いの寸前に賢者の力を身につけたポップとシグマの戦いは、好勝負だった。
 ポップの呪文をシャハルの鏡で封じようとするシグマと、シグマのすきをついてメドローアを決めようとするポップ。
 シグマはポップを見縊ることなく、むしろ恐ろしい男として評価し、メドローアという切り札を持ったポップ相手に油断することなく、堂々と闘い抜いた姿が印象的だった。

 二人は互いに相手を認めあい、相手の強さを称えながらも、それぞれの信じるもののために全力を持って戦ったのだ。

 この戦いは技を競う武術戦と言うよりは、頭脳を巡らせて相手のすきを狙う駆け引きが主となった試合で、なかなか趣深いものがあった?

 結局、機会を狙ってじっと耐え抜き、相手の裏の裏までを見抜いた作戦を立てたポップが勝利をおさめたが、シグマはそんなポップと全力で戦ったことに満足し、悔いのない最後を迎えた。

 その場に駆け付けてきたマァムが、ポップの言う『横っ面をひっぱたく勝利の女神』だと悟ってか、君の勝利の女神によろしくと言い残した言葉が心憎い。

 『ダイの大冒険』には、些細なことでムキになる大人気ない敵が多いが、脇役の中にこんな渋い台詞をさらりといえる奴が、ポロッと出てくるから楽しいっていうもの。
 ……顔さえ人間並みなら、いい男だったとしみじみ言えるんだがなぁ……。

 

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