26 頭悪いぞ、魔力炉&ドラムーン!

  

 とてつもない大きさを誇り、バーンの意思により自在に動く、空を飛ぶ巨大要塞バーンパレス。
 その動力となっているのが、魔力炉と呼ばれる魔物だ。

 巨大な根の姿に酷似して目玉を持つ不気味な姿の魔力炉は、魔法力を吸収する能力を持つ怪物だ。自分の意思はほとんどなく知能も動物並に低いようだが、貪欲なまでに魔法力を欲する性質を持っている。バーンは魔力炉の代わりは魔界にいくらでもあるといっていたから、魔界では珍しくない生き物のようだ。

 しかし、バーンパレスの魔力炉は半分機械の中に組み込まれ、改造を加えられているのが通常と違う点だ。バーンは自分の膨大な魔法力を常に魔力炉に与え、魔法力を吸収した魔力炉は生きたエンジンとしてバーンパレスに全域にその魔法力を伝えている。

 一見、燃費が悪そうに見えるやり方だが、この方式だとバーンは常に一定量の魔法力を失うものの、変わりにバーンパレスの操縦という面倒で地道な作業から解放される。

 魔力炉が欲する魔法力は並のものではないようだが、ほぼ底無しとも言える魔法力を持つバーンにとっては、たいした負担にもならない。

 また、自在に動く触手はもっているものの、足がないため機動力のない魔力炉にとっても、獲物を探す手間が省けるため双方に益の多い取り引きだったようだ。

 バーンパレスが完成してから数百年、バーンと魔力炉は互いに共生状態にあったが、その均衡が破れたのが、最後の決戦。

 レオナが使った大破邪呪文は、バーンの魔法力を封じ込めるほどの力はなかったものの、バーンとバーンパレスを繋ぐ魔法力を押さえるのには成功した。
 バーンの魔法力は変わらないものの、それをバーンパレスに伝える機能が麻痺したのだ。


 結果、魔法力を得られなくなった魔力炉は飢えて暴走してしまう。
 自分から触手を伸ばし、当時バーンパレスにいる中で一番魔法力の高い生き物を狙った。その対象に選ばれたのは、魔法力を回復させるための羽を大量に持っていたレオナだった。


 知能が全く無い魔力炉のこと、復讐のつもりがあったとも思えないのだが……偶然とは恐ろしいものである。
 暴走する魔力炉を押さえようと、必死で頑張っていたのが、ドラムーンのゴロア。

 下半身が太鼓の姿であり、四本の腕でその太鼓を叩くことにより重力波を発生させ、魔力炉をコントロールする能力を持っている。

 元は小さな怪物にすぎなかったがバーンにより力を与えられ、バーンパレスの魔力炉の番人として、長年地道〜に活動してきたようだ。
 一応は人間系怪物とはいえ、このゴロアもまた――あんまり頭の良くない怪物である。


 つーか、はっきりいってかなりのお馬鹿だ。
 自分の目の前にやってきた見知らぬ人間が、彼にとっては主君の敵に当たる勇者ダイだと名乗ったと言うのに、ゴロアは戦う素振りも見せない。それどころか、答える必要もないダイの質問にいちいち律義に答えていた。

 おまけにゴロアは最初、魔力炉の暴走を止めるために重力波を魔力炉にかけていた。
 つまり、魔力炉に掴まっている人間の小娘を魔力炉が食べないように、わざわざ制御してやっていたという親切っぷりだ。

 途中で、レオナを助ける義理がないと遅まきながらも気が付き、攻撃対象をダイへと切り替えるぐらいの頭はあったようだが――彼には相手を見る目がとことんなかったようだ。
 レオナの危機を目前にしたダイは、その力を数倍パワーアップさせてしまったのだから、ゴロアのしたことは結果的にダイを強くさせただけだった。

 主君であるバーンじきじきから、魔力炉を失った事実は責めないからダイにこれ以上攻撃をしかけるなと釘を刺されたにも関わらず、全魔法力を注ぎ込んで戦った結果……彼はバーンに改造される前の、スライムレベルの小さな怪物に戻ってしまった。

 破れた太鼓姿となり、よろめき、転びつつ退場していった姿が妙に同情を誘ったものである。


  

 

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