27 ミストバーンの最期! 儚く消えた最強への夢 |
バーンに最も近しい腹心であり、物語の中でも最大級の謎を秘めていた敵であるミストバーン。 さんざん謎めいた雰囲気や発言を仄めかし、読者を翻弄しまくったこの強敵の正体が完全に発覚したのは、物語終盤。 この戦いの中での謎解きがまた秀逸で、緊迫感のある戦闘と平行しつつ、一行らがわずかなヒントの中から駆け引きを駆使し彼の正体を探り当てていく様が実に興味深い。 実体を持たないゴーストのようなものであり、他人の肉体を乗っ取って支配する能力を持つ生き物に過ぎなかった。自らの肉体を持たず、次々と他人の身体を奪い取ることで強くなるしかないと述懐する彼の姿には、一抹の哀愁が漂う。 その能力を活かして、大魔王バーンの身体を預かる役割を負ったミストバーンは、その役目に誇りを感じると共に、そんなやり方でしか強くなれない自分に不満や憤りを感じている。 肉体を鍛え、強くなる生き方に焦がれているからこそ、彼は敵であろうとも強くなろうとする者を尊敬し、一目を置く姿勢を崩さない。 闇の衣にその身を隠している時の戦法と、実際に実体を伴った時とのミストバーンの戦法はガラリと違う。闇の衣をまとっている間は、ミストバーンの戦いは自在に伸びる爪や暗黒闘気を利用して相手を無力化させる戦法を取っていた。 接近戦を挑まれても引かず、互角以上に渡り合っていたから目立たないが、戦法自体は基本的に中〜遠距離を得意とする戦法であり、防御にメインを置いている。 その真の役割が、闇の衣の下に隠した大魔王の身体の保護だとすれば頷ける話だ。 バーンの肉体の時もそうだったが、マァムに乗っ取って戦った時も、彼は徒手空拳で戦う接近戦専門の戦士に早変わりする。 ポップのメドローアを跳ね返すという技を見せたところや、魔法力で黒の結晶の爆破に導いた点を考えれば、相手の身体を乗っ取った際に魔法を全く使えないわけでもなさそうなので、接近戦にこだわるのは彼の思考が大きく影響していると予測できる。 バーンに身体を返した後のスペアボディとして、理想の戦士になるべく育ててきたヒュンケルが専業戦士だというのも、彼の好みを反映している。 鍛え上げた肉体だけを武器に、他を圧倒する強さを手に入れる――それがミストバーンの真の望みであり、バーンこそがそれを与えてくれる存在だった。 バーンの計画をあらかじめ知っていたミストバーンは、ちょうどヒュンケルが成長し戦士として絶頂期を迎える頃にはバーンに肉体を返す時期が来ると考えていたのだろう。 そして、バーンに肉体を返した後も彼のために戦い、働きたいと願う彼にとってはスペアボディがどうしても必要だった。 ミストバーンの考えを本能的な勘として読んでいたヒュンケルは、魂を消されないように光の闘気を心に蓄え、戦いにそなえていた。 長年かけて鍛え上げた理想の身体の中で消滅したのなら、本望と言うべきか。ハドラーやバーンとは違う形ながら、最強を求め続けて消えた敵の一人である。 |