4  素直になれない兄弟弟子 ポップとヒュンケル

  

 ポップとヒュンケル――アバンの使徒同士という点ではダイやマァムと同様とはいえ、なんとなく噛み合わないのがこの二人だ。

 マァムを挟んでの三角関係にあるというのも理由の一つだが、それ以前に第一印象からして問題がある。初めて顔を合わせた時、ポップは直感からヒュンケルの殺気を感じ取り、反感を抱いていた。

 マァムやダイがあまりにも素直にヒュンケルを認めたのがそれに拍車をかけたとはいえ、悪に身を染めたその雰囲気を敏感に察したらしい。
 もっともヒュンケルの方はポップを侮り、特に気にかけてはいなかったのだが……。

 マァムがヒュンケルに恋愛めいた想いを抱いたため、ヒュンケルが仲間となってからもポップはヒュンケルには常に突っかからずにはいられないようだ。

 ヒュンケルの強さや人格を十分認めているくせに、彼に対しては必要以上に肩肘を張り、拗ねた態度を取ってしまう。しかし、ポップのそんな子供っぽい反感は、ヒュンケルにとってはむしろ微笑ましく写るようだ。

 考えてみれば思い出したくもない過去を持ち、そこから逃れられずにいるヒュンケルにしてみれば、どこかヒュンケルの過去を気遣う気持ちが抜けないマァムやみんなよりも、ただ自分の感情をぶつけるポップの方が、ある意味では気楽に接することができる相手かもしれない。

 いずれにせよ、ヒュンケルとポップは対等の友人関係と言うよりは兄と弟の関係に近い。 手のかかる弟をもった兄のように、ヒュンケルがポップを助けるシーンや、自分のことのようにポップの成長を喜ぶシーンがちらほら見られる。

 冷静に戦力を分析できるヒュンケルはポップの実力を認めているし、頭っからポップを子供扱いしているわけではないのだが、魔法使いと言うのは魔法力が尽きてしまっては普通人並の戦力にしかならない。

 ペース配分もなく大呪文を連発するポップは、あっという間に魔法力がゼロという状況になることが多いので、結果的にはヒュンケルがポップを庇ったり、助けたりするシーンは多い。しかし、ヒュンケルを恋愛上のライバルと見ているポップにとっては、ヒュンケルが自分を子供扱いしていることが我慢できないらしい。

 心の底ではヒュンケルとマァムがお似合いだと思っているから、なおさら素直になれないのだろう。
 だが、ヒュンケルの方はポップを恋愛のライバルとは思ってはいない。

 確かにヒュンケルにマァムにただの仲間以上の感情を抱いているが、少なくとも物語の時点では彼女に恋はしていない。

 ポップへの想いに悩むマァムの後押しをしたのは、彼女のためと――多分、ポップのためだろう。ヒュンケルはポップがマァムを想っていることを知っていたのだから。
 やはりヒュンケルにとって、ポップはなんとなく手助けしたくなる弟分なのだろう。

 変に人の気持ちを察するポップは、ヒュンケルが自分を子供扱いはするものの、決して馬鹿にしているわけでも見下しているわけでもなく、自分を心配しているだけだと分かっている。

 ――分かっていても反発してしまうところが、ポップの短慮さというもんだが……。
 しかし、ヒュンケルの方に責任がないわけでもない。

 ポップが素直になれない理由の一つは、人間関係に不器用なヒュンケルが素直にポップへの好意を表現できず、つい突っ放した口を叩いてしまうせいもある。意地っ張りなポップもそれに対抗して憎まれ口を叩くから、ますます互いの意地が募るばかり。だが、普段は変な突っ張りあいをしている二人だが、いざと言う時はちゃんと協力し合っている。

 なんだかんだいっても、互いに信頼感を抱いているポップはヒュンケルは、この先もずっとこの間までもいいのかもしれない。

 口先では意地を張り合っていても、心の底ではとっくに互いの気持ちを察しているのだから――。


  
  

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