7 気持ち、似たもの親子 ポップとジャンク |
さて、ダイとバランが宿命すら感じさせる特殊な親子だったのに対し、ポップとジャンクはドラ息子に頑固親父という、落語かなにかに登場しそうな庶民的な親子だ。 家出少年であるポップは、メルルの占いでランカークス村の名前が出るまでは、とんと家や家族について話したことはなかった。まぁ、ダイをはじめとしたみんながほとんど親に恵まれていないメンバーぞろいだから気を使っていたのかもしれないが、一番の原因は父親に対する恐怖らしい。 地震、雷、火事、親父とは昔からある怖い物のパターンだが、ポップの父ジャンクはそんな古典的な厳しさを備えた、怖〜いお父さんだ。 その気になれば瞬間移動呪文を使えるポップは、一瞬で家に帰ることもできたはずなのにねえ〜。 親に会いたくないわけではないが、父親に会うのが怖い――そんな矛盾した気持ちを抱えたままランカークス村に戻ったポップは、仲間にさんざん言われるまで村外れに隠れていようとさえしていた。マァムに説得され、こそこそと実家の武器屋に向かったポップの親子の対面は見物だった。 母親との涙の対面は絵になったが、問題は父親の方――実の父の姿を見た途端、怯えて逃げ腰になったポップだったが、ジャンクが声を震わせてポップの肩に手をかけたのを見て、感動しかけたのは甘いとしかいいようがないっ! 次の瞬間、ジャンクは不届きな息子を目の高さよりも高く担ぎ上げ、思いっきりぶんなげたっ!! 彼の怒りはそれだけではとどまらず、妻や息子の友達が必死でとめる中、ポップをボコスコに殴っている。 どうやらジャンクは体罰主義のようで、ちょっとでも気に入らないことを言った途端、息子を怒鳴りつける某野球狂親父のようなノリの父親だ。 髪質などは父譲りでも、ポップはどちらかといえば母親似だ。 性格的にも大きく違っているが、さすが親子というべきか細かく見てみればポップとジャンクには妙な共通点がある。 相手を気にいるか気にいらないかが友人を選ぶ基準となっている思考は、二人ともまったく同じだ。ダイが竜の騎士でも態度を変えなかったポップと同じように、ジャンクは魔族のロン・ベルクを差別しない。しかも、相手の真の実力も知らずに気軽に仲よくなって、後でびっくりするところなどホントに親子だと実感させられる。 ポップがアバンの正体が勇者だと知ったのは、弟子入りして一年以上も経ってからだし、ジャンクもロン・ベルクが剣の達人で魔界の名工と知ったのはずいぶん後だし……。 ポップの家出という事件はあったものの、ダイとバランと違って大きな親子の断絶のないポップとジャンクは、なんだかんだいって気の合った友達感覚のいい親子関係を持ったコンビだ。 それに怒鳴ってばかりいるようで、ジャンクはちゃんと見るべき事は見ている。 ……本来なら誘拐犯と思って恨んでいても、おかしくはないのだが……。 戦いの最中と言うこともあってポップが実家に戻るシーンはそれっきりだったが、この親子の掛け合いは見ていてとても楽しかったので、もっと見てみたかったものである。
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