8 先代勇者一行 アバン、マトリフ、ロカ、レイラ、ブロキーナ

 

 破邪の力と、類い希な剣技を得意とした勇者アバン。
 アバンの親友であり、勇敢な戦士である戦士ロカ。
 癒やしの力を持つ心優しい娘、僧侶レイラ。

 百を越える呪文を操る、大魔道士マトリフ。
 武闘の神様と謳われる、拳聖ブロキーナ。

 この5人こそが、15年前世界を救った先代勇者一行だ。
 現在のダイ一行に比べてずいぶんと小人数に感じるが、敵の数も少ないことを考えればこんなもんかもしれない。

 それに人数が少ない分、ダイ達と違って専門職オンリーではなく、それぞれ得意な分野が重なっているのも特徴の一つだろう。ロカを除くみんなが多かれ少なかれ回復能力をもっているから、回復しながら戦うのも作戦と言うものだろう。なにしろ15年も前のことだけに、まだ子供のダイ一行はアバンの弟子にも拘らず、先代の戦いについては詳しくない。

 かろうじて当時7歳だったヒュンケルは朧気にそのことを知ってはいるが、ヒュンケルの記憶はアバンだけに限られており、先代の一行については何も知らないも同然だ。

 アバンはポップやダイには自分が勇者だったことさえ打ち明けなかったぐらいだし、マトリフも過去のことについて詳しく話したがるタイプではない。ポップはマトリフの身体の具合や忠告から、昔仲間達を守るために禁呪法まがいの強力な魔法を使ったらしいと察したが、それ以上のことを知っているわけではない。

 みんなの中で一番先代一行について知っているのは、ロカとレイラを両親に持ち、事情を知らぬままにブロキーナに弟子入りしたマァムだが、彼女でさえさほど詳しくはない。

 しかし、あちこちから聞いた話を繋ぎ合わせて推測すると、多少の事情は分かってくる。
 ダイ達がパプニカ王国を拠点とし、レオナ姫を打倒魔王軍の指揮者として行動しているように、アバン一行はカール王国を拠点としフローラ姫を守るために戦ったらしい。

 アバンとロカはカール王国出身者だし、二人ともカール騎士団の騎士だったから、それも当然だろう。

 元々はアバンは一人で行くつもりだったようだが、親友のロカが彼についていき、さらにネイルの村を通りかかった時に、傷付きながらも旅する二人を見兼ねて、レイラが同行したらしい。マトリフとブロキーナが加わった時期は不明であり、どういう経緯で仲間入りしたのかは語られていない。

 しかし、仮病を使いまくるブロキーナもなかなかの問題児だが、当時マトリフはすでに80代だったはずだから、性格もすっかり凝り固まっていただろうし、説得するのはさぞかし大変だっただろう。

 現代のダイ一行が思春期に差しかかったお年頃で、初恋感覚でほのぼの付き合っているのとは対称的に、アバン達はさすがに年が上のせいか恋愛問題についてもぐっと大人びている。アバンはフローラとは恋人同士だったような雰囲気があるし、ロカとレイラは後に結婚している。
 ここで注目したいのは、マァムの年齢。

 マァムは当年とって、16歳――つまり、魔王ハドラーが倒される前に生まれた子供なのだ。スピーディーな展開のダイ一行の戦いと違って、アバン一行の旅は相当に長く、年単位の時間をかけて戦い続けていた。
 なんと妊娠事情で一行が一時解散したこともあり、マァムはその時に生まれた子だ。

 その際、アバンは凍れる時の秘法を使ってハドラーと共に時間を止め、自分の身を犠牲にして平和な時間を作り出している。
 そこまでは明らかにされているが、その後の詳細が語られなかったのが残念でならない。

 さらに言うのなら、仲間達の話も気になる。
 マァムの父ロカはすでに死亡しているため物語には登場しないが、若き頃のロカは堅物で一生を剣に生きると断言し、女なんかと結婚するぐらいなら裸で国中を走り回ってやる、と豪語した恋愛音痴だ。

 そんな彼がレイラと出会って恋に落ちたいきさつなどを、是非知りたいものである。
 実力的には今の一行に劣るかもしれないが、彼等がいなければ現在の勇者一行は有り得なかったはず。

 世界に平和をもたらし、新たなる勇者達が育つ時間を作ってくれた先代一行のご活躍を、一度、ゆっくりと聞きたかった。


  

 

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