17 立場に縛られた導き手師弟 アバンとレオナ 

 

 物語序盤から4人しかいないと思われていた、アバンの使徒。
 が、最終決戦を前にしてレオナもアバンの使徒の一人と認められているが、彼女の師弟関係が弟子全員の中で一番イレギュラーだと言える。

 なにせ、卒業試験に匹敵する破邪の洞窟攻略を成し遂げ、アバンのしるしを完全に自分のものとしてから、師に初めて弟子入りしたと事後承諾しているのだ。
 異例にも程がある。

 しかし、立場が阻まなければ、アバンとレオナはよい師弟関係を築けた可能性は高い。
 レオナはバラン戦の頃、クロコダインにアバンに憧れ、教えを受けたいと願っていた心境を明かしている。

 このセリフや、再会の際のアバンのセリフから見ても、アバンがパプニカ王に依頼を受けた際、アバンとレオナが面識を持っていた事実は伺える。どの程度会話を交わしたかは定かではないが、ほんの短い間だけでも聡明なレオナはアバンを認め、彼になら弟子入りしてみたいとさえ思った。

 ――が、王女であるレオナは立場を捨ててまでアバンに弟子入りするなんて、できっこない。
 アバンもまた、王族に対する敬意やその存在意義を充分以上に承知している。

 最終決戦で、レオナまでもが戦場に立っているのを見て、反対めいたセリフをこぼしている。
 だが、同時に、アバンはレオナを弟子として認めている。

 アバンがレオナを認めたのは、元から知り合いである程度は彼女の資質を見抜いていたせいもあるだろうが、なによりもフローラに対する信頼の大きさゆえだろう。

 王としての指導力を持ち、人を見る目も優れたフローラが認めた少女なら間違いないと――再会後、即座にレオナを弟子と認めただけの信頼は、実はレオナにではなくフローラに対するものだろう。実際にアバンがレオナに教えを授けたのは、罠をつぶすという口実でダイ達と離れた数十分の間だけ。

 短いにも程がある師弟関係だが、こんな短い間でさえアバンとレオナは即座に意気投合し、目的を明確に持ちあうことに成功している。
 全ての戦いは勇者のために――。

 本来なら一行の参謀に与えるのに相応しい言葉を、アバンがポップにではなくレオナに託しているのが興味深い。これはポップを過小評価したというより、役割を見事なまでに見切っているからそう判断したのだろう。
 魔法使いの役割は、戦況をよく見て仲間の援護をすること。

 リ−ダ−とはまた違った角度で状況を冷静に判断し、参謀の役割を果たすのが本来の役割だが……あの時のポップにそれまでも求めるのは、無理がある。


 感情に流されがちな性格もさることながら、ポップは前線で戦う役目も負っていたのだ。
 攻撃力も高く、主力の一人であるポップをわざわざ前線から下ろして後方で指令する係に回すよりも、レオナを参謀として司令塔の役割を持たせた方が、集団としての戦力は上がる。

 それに、参謀に必要な冷静さは彼女の方が上回っている。
 アバンの判断は正解だろう。さらに言うのなら、そこにはレオナを気遣うアバンの優しさも含まれているように思えてならない。

 立場も顧みず、ダイ達と同じ戦場に立ったレオナの意志を重視し、彼女を認めながらも――それでも戦いに不慣れであろう彼女を庇い、少しでも安全圏におく理由を作ってあげようとする思いやりを感じる。互いの立場を弁え、それでいて気遣いあうことのできる師弟関係は、他の四人に比べてやや他人行儀さが残るが、かつて世界を救った勇者と一国の姫という立場を忘れきれない以上、致し方がないだろう。

 それに、自分の立場をしっかりと認識しているのが、アバンやレオナの魅力でもある。 共に世界を守ろうという共通意識を持つ彼らは、師弟というよりも同盟者に近い関係なのかもしれない。
 

 

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