20 万人への優しさ、一人への拘り ダイとマァム |
真っ直ぐで曇りのない正義感を持ち、誰に対しても屈託を持たず、公平で優しい。 無人島育ちと過疎化のすすんだ村という差はあれど、家族も同然のごく親しい人達に囲まれて育ったという生活環境においても、二人とも似通っている。 ダイやマァムは、周囲の者に大切に思われ、さらには特別扱いを受けてきたという共通項があるのだ。ダイの方が戦いを好む傾向が強く、また、マァムの方が優しさと冷静な判断力を持っているというタイプの違いがあるが、基本的な部分において共通点は多い。 困っている人を見れば裏表なく助けようとし、弱い者を庇おうとする心を持つダイとマァムが、同じ事件に遭遇した際に取る行動が似ていても不思議はない。 対フレイザード戦辺りまでは、ダイとマァムの連携は特にいい。 おっとしとした姉弟のように、似た者同士のダイとマァムはこれと言ったエピソードがなくても理解しあい、相手を自然に思いやれる家族のような関係だった。 対ザムザなどではむしろダイの方が、感情に走るマァムを説得するシーンすら見られる。言わば、ダイの成長がマァムを追い抜いてしまったから起こった現象だが、それにはバラン戦が大きく影響している。 ダイが自分の出生を知り、悩み、父親との決別を決意して本当の意味で勇者になろうとするこの戦いは、ダイにとっては大きな試練となった。 自分が無条件に『みんな』を大切に思い、守りたいと思うように、『みんな』も自分を理解し、受け入れてくれる――ダイが無意志に信じていた前提を突き崩したのだ。 さらに記憶の喪失に加え、実の父との戦い……ごく短期間で次々と試練に見舞われたダイの支えとなったのは、ポップの存在だった。 他の誰が認めてくれなくても、何があっても自分の味方になってくれて、信じてくれる存在がどんなに大きな支えになるのか……ダイはこの時にそれを知った。ごく単純に正義を信じ、みんなを守るために悪い奴を倒せばそれでいいと考えていたダイは、バラン戦を通して大きく成長した。敵でありながらも、ただ倒すべき悪としてではない存在として、大きく意識を支配する相手との出会い。 そんな相手に対して同情や共感を抱いていても、それでも自分の意志を押し通す強さを持ったのは、譲れないものを自分の中に見いだしたからだ。誰に対しても公平に優しさを持っていたのでは選べない選択肢を、ダイはこの時に選んだ。 しかし、勇者一行の中で最大の激戦とも言えるこのバラン戦に参加しなかったマァムは、特定の誰かに拘る心情を理解することなく、『みんな』に対して公平で居続けていたから、差が生じてしまっている。 彼女がダイと同じ選択肢に悩むのは、すでに最終戦にあたる対アルビナス戦での話だ。 成長して考えに差が生まれ、それぞれが実家を離れたとしてもやはり変わらない繋がりを持ち合う姉弟のように、つかず離れずの仲の良さを保っている。……なまじ似過ぎているせいで恋愛要素が皆無なのが、難点といえば難点だが(笑)
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