35 仲良さそうで、遠い二人 マァムとメルル |
マァムとメルルは、一才違い。しかも、男性だらけの勇者一行の中で数少ない女の子同士という条件であり、仲良くなるにはもってこいのように思える。実際、物語中盤でランカークス行きイベントがあるため、マァムとメルルが行動を共にした機会は、実はマァムとレオナよりも多い。 指揮の仕事を引き受けて勇者一行の裏方に回っているレオナよりも、占いという特殊能力を持って勇者一行に直接力を貸すメルルの方が、マァムと共に過ごす時間は多くあった。
メルルにとって、マァムは密かなライバル……恋敵に当たる人物だ。ただでさえ内気で、他人と接するのに壁を作りがちなメルルにとって、マァムと屈託なく話すのはあまりに難度が高すぎる。 そして、マァムの思いやりの深さと天然さが裏目に出ているというべきか。 正義やみんなのために無償で戦うことを当然と思えるマァムには、勇者一行にあえて同行する女の子の気持ちなど分かっちゃいない。お子様で恋愛感情に疎いダイでさえ、メルルの見せる微妙な雰囲気を察していたのだが……(笑) ポップにもメルルに対してもただの仲間として接するマァムに比べ、メルルの心理はもっと複雑だ。 それに対して密かに嫉妬を抱いているメルルは、同時にそう思う自分を恥じる気持ちを持っている。 メルルが最初に見掛けたマァムは、ザボエラが変身魔法で化けた姿であり、その時メルルは彼女の変な気配にちゃんと気がついていたものの、それを自分の嫉妬心と思ったせいで真相を見抜けなかった。 その経験があるせいか、それとも生来の内気さのせいか、メルルは嫉妬の思いを素直に外に出すこともできない。 嫌いではないはずなのにわだかまりを捨てきれず、素直に感情をぶつけられない相手――結果、メルルからマァムに対しては少しばかりぎくしゃくした雰囲気が漂ってしまっている。 しかし、運がよいのか悪いのか、マァムとメルルは二人っきりで腹を割って話す機会がついぞ一度もなかった。鈍感なマァムが微妙な雰囲気を感じ取れない上、彼女らが共に行動すると気には常にポップやレオナなど、緩衝材となって場をもり立ててくれる人材がいたため、二人っきりで過ごす時間がなかったのだ。 これといった対立もなく、仲間として一緒に過ごした時間のおかげで、マァムとメルルはそれなりに打ち解けられるようになっている。 内気さゆえに誰に対しても礼儀正しく振るまい、結果、他人行儀な態度に見えがちなメルルには珍しい口数の多さだ。 マァムとメルルは、間に誰かを挟んで少しずつ親しみを育み仲間となってきた関係だ。 物語の最後でポップ、マァム、メルルの三人が一緒にいたカットがあったが、ポップを挟んで過ごす時間がマァムとメルルの関係をどう変えたか――それを確認出来なかったのが非常〜に残念である。
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