42 対極の参謀役達 ポップとミストバーン

 

 勇者の親友で一番最初からの仲間であるポップと、バーンの一番の信頼を獲得した側近であるミストバーン。冷静な判断力と頭脳で一行の司令塔となるべき魔法使いに、魔王軍の魔影参謀となれば、規模は違うが共に軍師役と言う共通点を持っている。

 ポップはダイの友達であり、ミストバーンはバーンの部下という違いはあるが、自分の信じた相手のためになら命を賭けるのも辞さないという点で、この二人は似通っている。

 それでいて、ダイだけでなく周囲の仲間達全てを大切にしようと考えているポップと、バーン以外は二の次とし、極論でいえばどうでもいいと考えているミストバーンは、思想的には真逆とも言える。

 いろいろな意味で対極の立場にいるポップとミストバーンだが、彼らが直接顔を合わせた機会はそう多くはない。

 ミストバーンの登場は割に早いが、ポップとミストバーンが初顔合わせしたのはフレイザード戦の終盤の頃。味方であるはずのフレイザードを、利用し最終的にはとどめを刺したミストバーンに、ポップはあまり好印象を持っていなかったようだ。

 続いて顔を合わせた鬼岩城戦でも、人間を見下しきったミストバーンにポップが怒りをあらわにするシーンがある。
 だが、ミストバーンの方のポップに対する印象は、それ程強くはないようだ。

 バーンの敵であるダイや、自分の弟子でありながら寝返ったヒュンケルに注意を払っているミストバーンは、ポップに注目した様子はない。
 それもそのはず、ミストバーンの興味を持つ基準から、ポップは大きくはずれているのだ。

 ミストバーンは元々、最強を求める戦士としての心を持っている。ミストバーン自身も強さを求めることには貪欲であり、だからこそ自身を強く鍛える戦士に尊敬を払っていた。
 屈強な戦士であれば、敵、味方、魔族、人間を問わずに認める心が、元々ミストバーンにはあったし、その意味で魔法使いのポップは彼にとっては最初から興味の範囲外だった。せいぜい、キルバーンが注目し、殺そうとしている人間として認識していたぐらいのものだろう。

 そんなミストバーンがポップを認める発言をするのは、バーンパレスでの戦いの時のこと。
 ミストバーンの反撃により、ポップが死んだと誰もが思った時のことだった。

 この時、ミストバーンはポップと直接戦ったわけだが、戦いにより彼の評価を上げたわけではない。
 ミストバーンがポップの評価し直したのは、ポップが死亡したと敵も味方も思った時のこと。

 それまで果敢に抵抗していた勇者一行が、ポップがいなくなった途端、絶望して戦いを放棄した――それを見たからこそ、ミストバーンはポップへの評価を上げている。
 ミストバーン自身が一目置くに値すると認めた強者達が、真からポップを重視していたのを実感したからこそ、彼を見る目が変わったのだ。

 もっともこの着目は、その直後にミストバーン自身が死亡したため、効果を発揮しないまま終わっているのだが。
 物語の展開上、ポップとミストバーンは今一歩、絡み合わない敵同士ではあった。

 だが、立場的には似通うものを持っていた者同士でもあった。もっと関わり合う機会があれば面白かったのではないかと思えるだけに、残念だ。


  
  

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