6 メルルの出会った、魔法使い

  

 占い師メルルが、ポップに出会ったのはベンガーナのデパートでのこと。
 もっとも、オークションに参加するかどうかでもめていたレオナ達を、メルルがどこまで意識していたかは定かではない。

 ポップはメルルを『ちょっと美人』だと思っていたが、メルルのコメントは特にない。続いてベンガーナで起こったドラゴンとの戦いでも、ポップはみんなから離れたところで戦っていたから、メルルは彼の勇姿に惚れたわけではない。

 では、どこでポップを見初めたかといえば、おそらくメルルの故郷テラン王国でのこと。

 自分が人間ではないかもしれない事実に悩み、ポップやレオナに嫌われるのを恐れるダイに対して、ポップはダイが怪物でも友達だといい、泣いたことがある。

 その姿に、メルルは大きく心を動かされたようだ。
 そして、到底かなわない強敵であるバランに、一歩も引かず正対したポップの勇気――これが、決定打だったらしい。

 メルルはその後、ポップを一途に見つめ続けるようになる。
 しかし、メルルはいたって内気で引っ込み思案の女の子。とても、告白しようという発想には結びつかなかったようだ。

 だが皮肉な話だが、メルルはポップに『嫌い』だと宣言したことならある。
 ポップが危険な戦いに一人で挑むため、わざとレオナ達を怒らせて逃げるふりをした時のこと。

 彼を責める質問に弁解もせず、ただ目をそらすポップに向かってメルルは、あなたのことが嫌いになったと告げ、泣きながら去っている。

 しかし、今も昔も、嫌いは好きの裏返し。
 内気なメルルのこの大胆な行動こそが、彼女の本心を余すところなく現しているというものだ。

 ――つまり、メルルはそれだけポップのことが好きなのである。
 しかし、自分のことに関しちゃ鈍いポップは、いっこうにメルルの想いに気づいていない。

 ダイ達がテランを去る時にメルルがあれこれポップの世話を焼いたわけも、その後メルルがダイ一行に加わって戦いに参加したわけも、まるで気付きもしない鈍感さ。
 ……メルルが気の毒というものだ。

 明るくお調子屋のポップはメルルとも簡単に馴染み、二人はけっこう仲が好い。仲が良いといっても男女交際の仲の良さではなく、あくまで仲間としての友達付き合いだが、恋した少年と気楽に話せる心地好さがかえってメルルから告白の勇気を奪ったようだ。


 それに、マァムの存在がある。
 ポップが彼女が好きなことはメルルは早々から気付いていたし、彼女が素晴らしい人だと思えばこそ、ますます告白できなくなってしまったようだ。

 メルルはマァムに多少の焼きもちは感じているものの、そんな自分の心を恥じる気持ちを持っている。
 それにしても、彼女はどうも、自分に対しての自信にかけている。

 メルルは標準以上の美人だし、女の子キャラクターの中では唯一、お料理もお裁縫もできることが原作で立証されている実に女らしい女の子だ。
 必要以上に自分を卑下してしまうのは、やはり、その能力のせいかもしれない。

 予知能力に加えて感知能力……普通の人ならばそんな力を持った者と友達付き合いをしたいとは思うまい。
 悲しい事実だが、人間は人と違う点を持ったものを、意味もなく疎む傾向があるのだから。

 いくらDQワールドで魔法が珍しい物ではないとはいえ、メルルの力はかなり特殊なものだろう。
 しかし、彼女は自分の力を疎むよりは、勇気のない自分の心を責めているようだ。

 だからこそ勇気があり、相手を差別することなく付き合えるポップに惹かれた。
 しかし、彼女はその恋が成就しないことを知っているかのように、諦めがちである。

 一昔前の少女漫画のヒロインのように、影からポップを見つめるメルル――けなげな彼女の想いがいじらしくてならない……。
 個人的には、こーゆー女の子って好みである♪


  
  

7に進む
5に戻る
五章目次に戻る
解析目次に戻る

inserted by FC2 system