7 自分勝手な髭親父、ベンガーナ国王

   
 

 『世界で最も安全な国』という名を欲しいままにする巨大国、ベンガーナ国王の名は、クルマテッカZ世という、えらく御大層な名前だ。

 ライオンのたてがみそこのけに逆立った髪と、踏ん反り返った軍人髭が特徴的なベンガーナ王は、42歳の男盛りだ。妻に、息子、娘がそれぞれ一人ずついるというから、家族には恵まれているらしい。
 この人についていえることは、とにかく自信家だと言う事。

 どうやら彼は剣と魔法の世界に住んでいるにも拘らず、武器や兵器の方を信頼しているようで、戦車隊を主戦力とした軍隊を誇っている。そのせいか、ベンガーナでは町に住む人も武器に頼る一方で、積極的に戦う人は皆無に近い。さらに言うなら、魔法の使い手も少ないようだ。

 それが証拠に、ポップの瞬間移動呪文を見て各国の王はさほどでもないのに、ベンガーナ王はやたら驚いていた。身近で護衛しているのも戦車隊長のアキームだし、魔法を信頼していないのか、はたまたベンガーナにはろくすっぽ魔法の使い手はいないのか…。

 思い込みの激しさから見ると、前者のような気もするが。
 とにかく、彼は思い込みが激しい自信家だ。世界会議の時も、自分の軍が魔王軍を倒す相談をするのだと思い込んでいたぐらいで、一人で会議を引っ掻き回していたトラブルメーカーである。

 しかし、彼のいいところは、自分の間違いは素直に認め、考えを変えることができること。強さを求めて武器や兵器を磨いてきたベンガーナ王は、ダイの強さを目の当たりにして、その強さに心から感動し、彼の勝利のために全力を傾けると決めたのだ。

 ベンガーナ王国は代々莫大な財産を継いできたが、彼はそれを大きく増やした。
 一度賭けたら勝利を疑わない――それが、彼の人生哲学のようだ。確かに、ある程度まで見る目を持ち、そして己の信念のために全力を傾けることができるのならば、人はどんな分野ででも成功するだろう。

 そう考えれば、自信家で思い込みが激しいのも、悪いばかりじゃなさそうだ。
 しかし、ベンガーナ王のせっかくの援助は物語上、ほとんど何の役にも立っていないのが悲しいところ。

 なんといっても死の大地に乗り込むはずの船は一撃で壊されてしまったし、ベンガーナ戦車隊はろくな活躍を見せていないし……。実際に戦場にてリーダーシップを取っているのは、レオナ率いるパプニカ王国、もしくはフローラ率いるカール王国……うわ、ベンガーナ王国、立場なしである(笑)

 ところで、かなりアクのある性格の上、ダイ達とはあまり馴染みのないベンガーナ王は直接ダイ達と話すシーンがないのだが、彼等との会話も一度見てみたかったものだ。

 特に、ポップの父ジャンクはもともとこの国の人間だから、ベンガーナ王もジャンクのことを知っている可能性もある。…まあ、いくらその親を知っていたとしても、その息子の顔まで知っているはずもないのだが。

 ジャンクがぶん殴ったのは王ではなく大臣だと言うが、作品中には結局ベンガーナ大臣は未登場のまま終わっている。
 大臣を交えてのその辺の因縁話も、一度聞いてみたかったと思うのは筆者ぐらいの者だろうか(笑)
 
 

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