8 真面目すぎるのもご愛嬌、戦車隊長アキームさん

  

 ベンガーナ王国の戦車隊長を勤めるアキームは、弱冠24歳の青年だ。
 しかし、どうも彼にははつらつとした青年らしさが欠ける。
 顔立ちは悪くはないものの、いつもむすっと押し黙った表情をしているせいで、どう贔屓目に見てもハンサムといいがたいし、しかめっつらのせいで目付きまで悪く見えている。

 普段は兜を被っているから目立たないが、つんつるりんに反り上げた坊主頭が、余計に人相を悪く見せている。
 やたらと忠誠心が厚く真面目なのはいいが、この人はどうも、柔軟性とか、部下への配慮という物が欠けている。

 世界で最強の戦車達隊長と言う誇りが有り余っているせいか、国王の命令ならば決して勝てない相手にでも向かっていくと言う無謀さといい、敵襲で真っ先にやられてしまった部下をねぎらうよりもいきないしかりとばす厳しさといい、まず軍律を優先してしまうタイプのようだ。

 真面目一途に教育された場合、こんな考えの狭いタイプになりがちだ。軍人としては平均点以上で、上から見ればつかいやすい軍人だが、この手のタイプは実は突発事項に弱い。


 常識に乗っとり訓練を重ねた戦いには向くが、定石を無視して襲ってくる敵には実力を発揮し切れない優等生で、自分の考えを交えて動かない分、ますます分が悪くなる。しかも、本人がその弱点に気付いていないのだから、ますます始末に負えない。

 彼の不器用さは、言葉遣いにも現れている。
 国王や、尊敬すべき目上の者には敬語を使うと決めたら、それをどこまでも通す。かたくななまでにそれを通す真面目さは、ある意味では爆笑ものである。

 いかに勇者一行とは言え、年下のダイやポップにさえきっちりと敬語を使う。初めてアキームの坊主頭を見たポップがからかって、

『なんだい、あんた。戦車隊全滅の責任を取って、頭丸めたのォ?』

 と言えば、あくまで真面目に、

『自分は以前よりずっと坊主頭であります!』

 と宣言する。
 ……こんな奴はからかってもおもしろくないと思ったのか、さすがのポップも絶句していたが、ここまで真面目だとかえって笑いを誘ってくれるからおかしな物だ。

 ジョークにはジョークを返すような柔軟性や、適度な口調……そんなものを身に着けるのはかなり難しそうだ。

 しかし、彼はまだ24歳、練れてくるのはこれからだろう。――もっとも、あの真面目さがアキームのなによりの魅力なのだが。
 最後に、公式プロフィールによると、彼には両親と弟がいるそうだ。どんな弟か、一度見てみたかったもの。

 双子のようにそっくりで、同じく真面目な男だったら、腹を抱えて爆笑していただろう(笑) 兄とは正反対の、ちゃらんぽらんの駄目弟ってのもアリだと思うが(笑)


  
   

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