13 マァムvsライオンヘッド戦

 

 さて、ストーリーとしては順番が前後してしまうが、ダイとクロコダインとの戦いの最中、魔の森ではマァムとライオンヘッドとの戦いも発生している。
 ダイとポップと別れた後自宅に戻ったマァムは、異常な揺れと轟音を聞き、即座に反応している。

 この時、マァムは素早く屋根の上にあがり、森が燃えているのを発見。武器を持って、すぐに森へと向かっている。
 このマァムの判断の早さと正義感は、見事なものだ。

 マァムは基本的に村人を助けるために戦っているのだから、村を最優先するなら見張りを立てて敵の襲撃に備え、守りを固めるだけで充分だ。
 だが、マァムは彼女にとっては通りすがりの旅人にすぎないダイとポップも心配して、わざわざ様子を見に行っている。

 その辺は、彼女の優しさというか、慈愛深さの現れというべきだろう。何か優先し、そのためには多少の犠牲を無視してでも行動するという計算は、マァムにはない。
 困っている人がいるなら、助けたい  その一心で、マァムは森へと向かった。

 その時、マァムは逃げてくるポップを発見し、即座に助けようとしている。この時、マァムはポップに横に飛び退くように指示し、真正面からライオンヘッドに向かっていってる。

 ここで面白いのが、ポップの行動だ。
 必死に逃げまくっているポップだが、パニックを起こしているようで妙に冷静なのか、突然現れたマァムや彼女の指示に驚きながらも、即座に従っている。……正直、そこまでの冷静さがあるのなら、魔法で反撃したらいいのではないかと思うのだが(笑)

 まあ、ポップは魔法使いなだけに防御力がないに等しい。相手との距離がないのに魔法を使うのは、それだけで危険行為だ。呪文で相手を倒す前に攻撃を食らったのなら、それで一巻の終わりなのだから。初期のポップは接近戦を特に嫌っているので、相手との距離がある程度開いていないと、魔法を使うだけの勇気がないと見なすべきだろう。

 初期のポップはライオンヘッドと戦えるぐらいの魔法力は充分持っているし、最低限の冷静さ、判断力は備えている。
 ……が、決定的に勇気が足りていないのだ(笑)

 それとは逆に、マァムは勇気に溢れている。
 怒り狂っているライオンヘッドの真正面に突っ込み、鼻面を狙ってハンマースピアで一撃を加えているのだから。

 マァムはこの時、まずはポップの無事を確かめる優しさを見せているが、ポップがダイを見捨てて逃げたらしいと分かった途端、激しく問い詰めている。他人を犠牲にするということに関して、彼女はひどく敏感だ。

 だが、そんな風にポップを怒っていたにもかかわらず、ライオンヘッドが起き上がったのを見た瞬間、マァムは彼を庇っている。
 咄嗟にポップを横抱きにして飛び退き、魔弾銃を発射している。

 この時、マァムにしては珍しく弾を込めずに打っているのは、森に来る前から戦いを予測して予め攻撃呪文を詰めておいた、と考えていいだろう。
 詰まっていたのは火炎呪文に過ぎないのに、ライオンヘッドを追い払うのに成功したマァムの手並みが見事過ぎて影が薄れるが、この時のポップもある意味で凄い。

 マァムの持っている武器の特殊性に気が付き、偶然見えたアバンのしるしを見逃さず彼女の正体を看破している。その観察力と洞察力はたいしたものなのだが……どさくさまぎれて女の子の胸を思いっきり揉み捲ってしまっては、せっかくの頭脳的活躍シーンなど吹っ飛んでしまう(笑)

 怒りに満ちたマァムが、この後ポップをボコスコに殴りつけるのも当たり前だ。
 だが、この後、ポップとマァムは一緒に、ダイの救援に駆けつけている。マァムの怒りが強調されたとことでその後がカットされているので、二人の間でどんなやりとりがあったかは分からない。

 だが、この後、ポップとマァムは一緒にダイの救援に向かっている。
 この判断が、マァムのものとは考えにくい。
 ポップもアバンの弟子だと知ってからならまだしも、この段階ではマァムはポップを非戦闘員扱いで庇っているので、彼女からポップを誘う理由がないのだ。

 胸に触られたことで怒っているマァムには、アバンのしるしを見分けることのできるポップもまた、アバンの関係者だと考えるだけの余裕などない。
 第一、クロコダインの所に駆けつけた時、ポップはマァムより先に走っているので、彼女に無理やり連れて行かれたと考えるのも無理がある。

 やはりポップがマァムをなんとか説得して怒りを静めたか、持ち前の調子の良さを発揮してダイを助けようと話を逸らして実行したと考えた方が、自然だ。
 ポップ自身もダイを気にしていて、自分の意思で戻ったと考えた方がいい。

 自分一人では無理だがマァムと一緒ならなんとかなるだろうと考え、見捨てたばかりのダイの所に戻るとは呆れるようなお調子者っぷりだが、どうにも腰の定まらないこの中途半端さがいかにも初期のポップらしいと思える。 

 

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