21 魔王軍の情勢 (3) |
クロコダイン敗北直後、ザボエラは実はこそこそと暗躍しまくっている。 死神(あくまで、イラストからの判断なので確定ではありません、悪しからず)は明らかに百獣魔団ではなく、妖魔師団寄りのメンバーなので、彼らはザボエラの部下と判断していいと思えるが、ここで注目したいのは、ちゃんとクロコダインにぴったりのサイズの棺桶が最初から用意されているという事実だ。 ……最初から、クロコダインが負けることもザボエラの想定に入っていたと言わんばかりの用意の良さである。 実際、ザボエラはクロコダインが負けたことについては、多少の苛立ちは見せているものの、さして気にしている様子はない。クロコダインの敗北は結局は彼のミスであり、自分とは無関係と割り切っている雰囲気が強い。作戦を授けた割には、責任感がない人である(笑) ザボエラはそういう意味では感情的にドライで、クロコダインの生死に対してはなんの関心も持っていない。仮にも共闘していた相手の死を、悼む気配すらないのである。 戦いではとことん手を抜きたがるくせに、ザボエラは出世のためにこまめに上司の機嫌伺いをする苦労は厭わないらしい。ハドラーが気にしている人間の少年……ダイの正体不明な力について詳細な報告をして機嫌を取ろうという作戦である。 だが、並の上司になら効き目がありそうなこの胡麻すりも、ハドラーには効果があったかどうか。 『残り4人の軍団長を鬼岩城に終結させよ』 つまり、ザボエラの報告を聞く以前から、ハドラーはザボエラの他に後4人しか軍団長がいない事実 ――すなわち、クロコダインの敗北を知っていたのだ。 ザボエラの途中報告ではクロコダインが優勢であり、ハドラーも彼らの勝利を疑っていた様子もなかったのに、次の登場ではこの態度……ザボエラが訪問前にも連絡しクロコダインの死を先に伝えたのか、それともバーンがハドラーにそれを教えたのか。
バーンはハドラーに閃熱魔法で最強の呪文を与えてパワーアップさせるのと同時にクロコダインの敗北を伝え、彼を煽ったのではないかと、筆者は考えている。 実際、新しく習得した魔法の効果もあり、自分の力に自信を持ったハドラーは意気揚々と軍団長を集合させている。 まず、オーザム王国を攻略中の氷炎魔団長、氷炎将軍フレイザード。 それを楽しんでいる様に笑い、部下達に生き残りの人間達を殺せと命じるフレイザードには一切の容赦がない。皆殺しどころか、田畑や家まで焼き払えと命じる残酷さ……彼を見ていてまず感じるのは、突出した攻撃性の高さだ。 凶器じみた残虐性を持ち、他者に対してやたらと攻撃的に威嚇をする性格――それだけならただのチンピラだが、フレイザードはもう一つの特性として氷の様な冷徹さを備えている。ザボエラとの会話で、フレイザードはクロコダインの受けた傷を的確に分析し、ダイの潜在能力をきちんと見抜く知的な部分を見せている。 ザボエラも指摘した通り、フレイザードは炎の性質と氷の性質という二面性を合わせ持ったキャラクターであり、それは初登場の回からはっきりと示されているのだ。 そして、超竜軍団長、竜騎将バラン。 凶暴さや凶悪さを感じさせない落ち着きがあり、だが強いらしいと言う印象を与えるバランは非常に謎めいたキャラクターだと言えるだろう。 軍団長達が揃う円卓の空席に、突然、幽霊の様に浮かび上がってきてちゃっかりと座している、ミストバーン。だが、驚くみんなに対して挨拶の言葉ですら発さない。 初登場のキャラクター3名いると言うのにそれぞれが個性的であり、会話のやりとりだけでそれぞれの性格が伺えるのが面白い。 彼は、自分以下と思う相手は容赦なく罵倒するタイプだが、同等の相手には妙に恩着せがましいというか馴々しく話しかける癖がある。クロコダイン、フレイザード、ヒュンケルに対しては、ザボエラはずいぶんとフレンドリーだ。 しかし、目上の者にはきちんと敬語を使う。 身分的にはバランとザボエラは同じ六団長なのだが、バーン直々に見出だされスカウトされたバランの実力をザボエラはずいぶんと高く買っている様だ。ザボエラは変な所で見る目があるというのか、媚びる価値のある相手を見極める目だけはあるようである。
|