26 ダイvsヒュンケル戦(4) |
動けなくなったダイとポップにとどめを刺そうとするヒュンケルに、やめる様にと叫んだのはマァムだった。 ヒュンケル自身は『女と戦うのは性に合わない』と考えているため、彼はマァムへの攻撃は極力避けているし忠告もするが、それでも彼女からかかってくるようなら戦うというスタンスをとっている。だが、マァムの方はヒュンケルに同情は感じていても、戦いに男女はないと考えている。 そして、二人とも自分達の基本精神は譲る気は全くない。両者の意見が対立し合う以上、激突は避けられない。 マァムは素早い動きで動き回りながら、ヒュンケルに向かって魔弾銃を打ち出している。ヒュンケルは一応避けているのだが、その呪文の効果は見事に影響を及ぼしている。周囲に霧がかかって見え、複数のマァムがいるように見える 幻惑呪文(マヌーサ)の効果だ。 魔法を弾き返す効力がある鎧とは言え、呪文によっては効力が現れるのは面白い設定だ。攻撃により直接ダメージを与えるのではなく、精神に働きかけるような呪文では鎧化(アムド)後でも有効らしい。 とすれば、おそらく催眠呪文(ラリホー)や混乱呪文(メダパニ)なども有効なのだろう。……勇者一行にはその呪文の使い手がいないから、この推論は無意味だが(笑) 分身したマァムはヒュンケルの攪乱には成功するが、その後が問題だ。 作戦的には悪くなかったが、この時のマァムは明らかに実力が不足している。 自分の力量をきちんと計りきれない……マァムのこの欠点は、後々の最後の戦いの時までずっと残っている彼女の最大の欠点である。 マァムには、ポップやレオナ、アバンのように、高い知能を持って理性的に現状を把握し、的確な状況判断する力はない。そして、ダイやヒュンケルのように戦いに徹しきる厳しさや、戦士ならでは直感力もない。 マァムの戦いに関する思考は、正義感と感情に大きく左右されている。誰かを助けたいと思い、そのためになら戦いも厭わないと考える精神は素晴らしい。 まあ、『成果を気にせず、一生懸命に頑張る』というのは、日常生活や生活信条としては長所だから一概に悪いとは言えないが、戦いの場ではどちらかと言えば短所に近い。常に勝率を計算し、リスクを避ける計算高さがなければ、戦場で生き延びるのは難しいのだから。 本人の自覚は薄いが、自分の実力を半ば過信しているマァムは、本人が思う以上に危なっかしい行動をとっているのだ。 実力でヒュンケルに及ばず、また、防御力も低いのであれば、マァムはここはなんとしても遠距離からの援護に徹するべきだった。仲間を助けたいと思うのならなおのこと、サポートに徹してダイやポップの回復に専念しておく方が効果的だ。 三人の中で最大の物理的攻撃力を持つのはダイなのだから、マァム自身が中途半端な力で攻撃するよりもダイの回復を優先し、彼をメインにすえた攻撃にした方がいい。そして、マァムが優先順位を間違えなければ、それぐらいの時間はあった。 幻惑呪文にかかった際、ヒュンケルは一度幻のマァムに切りかかっている。 つまり、攻撃の気配さえ悟らせなければ、もっと長い時間相手を騙せた可能性があるということだ。 ヒュンケルが幻惑呪文にかかった瞬間を狙って、ポップが魔法を放ち、ダイとマァムが揃って攻撃をしかけていたのなら 。そして、前から思っていたのだが、マァムは自分が前線に立つ覚悟があるのであれば、魔弾銃に回復魔法を詰めてポップに渡しておいた方がよほど効果的に戦えると思うのだが。 防御が極端に低い上に移動呪文も使えない初期のポップは、どうせ前線にいても接近戦ではなく中距離もしくは遠距離に下がって援護する役目しかできないし、初期〜中盤は実際にそうしていることが多い。援護魔法を放つ合間に、仲間の回復をするぐらいの余裕はあるだろう。 ダイを絶妙のタイミングで助けた点からみても、ポップの危険を見切る目は確かだ。
|