49 炎魔塔の破壊(1) |
バジル島に上陸したダイ達は、二手に分かれて塔を破壊しようと考えた。 この計画は、妥当なものだ。 敵が自分達の接近に気がつく前に、同時に両方の塔を襲撃した方が効率がよいと考えたのは立派なものだ。 それに、ダイは自分とポップを別けている。 また、炎の魔法の得意なポップを氷魔塔に割り振り、戦力外のバダックやゴメちゃんを自分のチームに入れた辺りに、ダイの思いやりが見て取れる。 だが、ダイのやり方は策略も捻りもなく真っ直ぐすぎる。 ところで、ここでゴメちゃんがダイ達の方のメンバーに加わっているのだが、これはダイがゴメちゃんにそう言ったからであり、ゴメちゃん本人の意思ではない。 ゴメちゃんはその正体のせいか、常にメンバーの中で最も弱い、もしくは危機にある者の側に行く傾向が見られるので、もしこの時自由意思でゴメちゃんが行く先を決めたとしたのなら、どちらのメンバーに付いていったかと考えるのは面白い。 戦力バランス的にはダイ&バダックコンビの方がやや不利と見えるので、やはりそちらに付いていった様な気がするが。 まあ、それは本人達も覚悟の上だからいいとしても上陸した時からすでに彼らは敵に気付かれてしまっている。ザボエラ配下の悪魔の目玉に見つかっているのだが、そのことにダイ達は気が付いていない。 それだけでも大きく不利なのだが、炎魔塔に辿り着いたダイはフレイム達が見張りについているのをみて「おっぱらおう!」と宣言している。実際、その言葉通りに勢い良く突っ込み、剣で脅して一気に彼らを追い払っている。 ……見張りというものは、敵がきたのを自軍に知らせるのが最大の役割なのであり、『追い払って』も意味はない。むしろ、逃さない様にして連絡を封じなければかえって不利になるだけだ。 というより、フレイムならば別にそこにいても全く問題にはならなかったのではないかと筆者は見ている。なにしろフレイムの攻撃方法はメラを打ち出すか、でなければ炎の身体で相手に触れてダメージを与えることだけなのだ。 爆弾を塔に放り投げた際、もしフレイムが邪魔をしたとしても、フレイムごと巻き添えにして爆弾が爆発するだけのことである。そう考えると、フレイムを追い払ったのはむしろ彼らを守るための思いやりと言えるかもしれない。 しかし、敵をも思いやるその精神は見上げたものだが、敵に見つかっても構わないし、力押しで行動するというダイの戦法は無謀といえば無謀だ。 おまけに、ダイとバダックとの連携も余りうまくいっていない。ダイの突然の行動にバダックは驚きが先に立つ様で、行動がいちいち鈍い。打ち合わせ抜きでも、すぐにダイに合わせてくれるポップやマァムの様にはいかない。 ダイの行動に合わせ、すぐに爆弾を準備してフレイムが遠ざかった瞬間を狙ってすぐに爆弾を投げていれば間に合ったかもしれない。だが、ダイに呼ばれてから塔へ駆け寄り、爆弾を投げようとした行動は遅すぎた。バダックが爆弾に火を付けた時、魔法が飛んで来たのに気が付いたダイは、咄嗟にバダックとゴメちゃんを抱きかかえて避けている。 切り札であるはずの爆弾をあっさり見捨てて、仲間を守るのを優先する ダイの優先順位がはっきりと現れているシーンである。 妖術士とさまよう鎧(例によって、外観からの判断です)の集団に囲まれたのを見て、ダイは彼らがフレイザードの部下でないことに気がついている。罠かと驚くダイに向かって、嘲笑いと共に登場したのはザボエラとミストバーンだ。 実は、ダイとザボエラが顔を合わせるのが、ここが初めてとなる(ミストバーンとも初対面だが) ザボエラの方は以前よりダイを観察していて見知っているが、ダイから見れば初めての相手なのだ。 ところでこの時のザボエラは妖魔士団長と名乗り、ミストバーンを魔影軍団長と紹介しているが、ザボエラはこの時のミストバーンに対しては態度が尊大だ。自分よりも上位の者に媚びるのを得意とするザボエラだが、極め付けに無口なミストバーンに対しては会話でのコミュニケーションが取れないせいか、扱いがかなりぞんざいである。 後に、ミストバーンが出世してからは手の平を反した様に遜った態度を見せているが、ミストバーンが寡黙な時は結構上から目線な口調で話しているのである。 ついでに言うのなら、この時、ザボエラはダイに向かってお前達の作戦はお見通しで、ここでお前達を始末する予定だと宣告しているが……ツッコまずにはいられない、その読みをしたのも作戦を考えたのもおまえじゃなくてハドラーだろう、と(笑) ハドラーの考えを聞いて露骨に驚いていた癖に、さも自分の手柄であるかのように偉そうに語る辺り、ザボエラらしいセコさというべきか。どんな些細なことでも自分の有利になる様に画策する貪欲は、ある意味では感心する。
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