65 ダイvsフレイザード戦2 (4) |
弾丸爆花散――自らの身体を無数の岩に変化させ、それを連続的に敵に叩き付けるフレイザードの最終闘法は常識を裏切る厄介な技だ。 投げられた勢いを無くせば、石礫は落下するだけのことだ。物理学上の法則に従い、物体は別の物体に一度ぶつかればエネルギーを使い果たして無力化する。 何かに当たった後も勢いが減じることがないし、フレイザードの意志に従って自由自在に飛び回る。 なにしろ、人類最古の武器は石ころだ。 いくらでも簡単に調達できる上、十分な殺傷能力や破壊能力を持つ石礫は、遠い間合いにいる敵に対しては絶好の攻撃手段だったのである。
普通の石礫と違っていつまでも勢いの減らない石の攻撃に業を煮やし、クロコダインはマァムを後ろに庇いながら斧を振るって石礫に反撃しているが、これは無意味にもほどのある攻撃だった。 クロコダインの豪腕から繰り出される斧の風圧に押され、押し返されたように見えた石礫だったが、空中で一度動きを止めたそれらは、次の瞬間クロコダインへの集中攻撃をしかけている。 巨体に見合った体力や防御力を持つクロコダインを倒しているのだから、弾丸爆花散の威力はたいしたものだ。 物理的に壊すのは不可能と考えたポップは氷系呪文で凍らせようと考えるが、彼が呪文を放つと同時に氷の岩が素早く集まって盾となる。氷系の岩に氷系呪文をぶつけても全く効果はなく、そのエネルギーを吸収して逆にポップに襲いかかっている。 氷の石礫を連続的に受けたポップは半ば凍りついて倒れているので、フレイザードは自分の身体である石のエネルギーの放出も自由にできるようだ。 この時、ヒュンケルはクロコダインの二の舞いになるとダイを止めているが、怒りに駆られたダイは戦うことしか考えていない。 ダイのその直感が戦いを勝利に導くことも多いが、この時はそれが裏目に出ている。 しかも、フレイザードはダイに対しては全く容赦がない。 弟弟子を庇ったヒュンケルのこの行動に、彼の成長と改心が現れている。 彼はフレイザードに生命の源……核があることを知っていたのだし、無数にバラける石礫を攻撃するよりも、一塊の岩を攻撃する方がよほど効率がいい。 そうまでして、ヒュンケルはダイにフレイザードの弱点と倒し方を教えている。 だからこそ自分よりもダイの方が空裂斬に近いと考え、ダイに全てを託そうと考えたのだろう。 この後、ダイが苦戦しながらもフレイザードと戦い、アバンの技を極めようとしているのを応援し、力も貸している。 自分の身を守ることよりも目的最優先な思考は相変わらずだが、ヒュンケルに自分以外の者を信頼する心というものが芽生えた意味は大きい。
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