89 ダイvsヒドラ戦(1) |
ダイ達がオークションに参加する前から、魔王軍の攻撃が開始されている。 しかも、相手が強力な力を持つ生き物であること、複数であること、いつ襲ってくるかなど詳細な点まではっきりと当てている。この的中率と情報の詳細さは、素晴らしい。 ここで海中より登場してくるのは、ヒドラだ。 余談だが、ダイ大ワールドのベースとなっているDQ3にでてくるヒドラの亜種ヤマタノオロチは冒険中盤の最大の敵であり、当時ここで全滅を食らったパーティは多かったはずだ。 実際、ダイ大世界でもヒドラの強さは圧倒的だ。 正直、平和な日本の常識に慣れた者にとっては、常日頃から実弾装備が標準というのは誤射など危険が大きいのではないかと余分な心配もしてしまうのだが、彼らにしてみれば今現在、まさに戦争の最中なのだ。このぐらいの装備や警戒は、当然だろう。 しかし、この攻撃はヒドラには一切効かない。最低でも4発の大砲の弾をまともに食らっているにもかかわらず、全くダメージを受けた様子がない。しかも、兵士達が第二撃に移る前に、地震のように足下を揺らしながら5頭のドラゴンが地中より登場している。 その攻撃により、港は大きく壊され、大砲や兵士達は壊滅的なダメージを受けてしまっている。 なぜならこのヒドラとドラゴン5頭はデパートの方へと向かい、そちらに攻撃を仕掛けている。つまり、港を徹底破壊している時間があったとは思えないのである。しかも、ベンガーナの港はかなりの大きさがある。 だが、ヒドラの攻撃に対してベンガーナ軍は手の打ち方が遅い。港に大砲を幾つも備えるぐらいに臨戦体制を取っている割には、はっきり言って港を突破された後の備えがなってないのである。 後に出てくることだが、ベンガーナ王国には移動力のある戦車隊が存在しており、それこそが軍備の要となっている。ならば港が突破された場合、すぐさま戦車隊を派遣して攻撃を仕掛けると同時に、危険域にいる国民を避難させるように手配するのがこの場では最善の手だろう。 しかし、どうみてもベンガーナ側がそんな手を打っているようには見えない。ダイ達が戦った時どころか、その後でさえベンガーナの軍隊が登場してきた気配がないのだから。後に登場するベンガーナ王の言動から察するに、むしろこの港や勇者の一件は王の耳には入っていないのではないかという疑惑すら感じられる。 軍備に絶対の自信を持つあまり、ベンガーナでは大砲での攻撃が通じない場合の対策をこれっぽっちも立てていない。被害を受けた場合、即座に味方に連絡をつけて次の手を打つという方向性が、ベンガーナ王国には皆無なのだ。 パプニカ王国で一兵士にすぎないバダックでさえ信号弾を持ち歩き、遠方の味方と連絡をつける手段を確保していたのとはずいぶんな差である。 地震に似た地鳴りをきっかけにデパートの客達が窓から見て、竜の軍団が町を襲っているのを発見する――このくだりまでは、まあ、いいとしよう。いくら城並みの大きさがあるとはいえ、ここはデパートだ。城と違い常に見張りを配置しておく意味などないし、そうする義務があるとは思えない。 だが、客達が事態に気が付いて騒ぎだしてからも、店員が一向に姿を見せない点については大いに言及したい。 店でなにかトラブル及び事故が発生した場合、店員がリーダーシップを取るのが自然だ。大勢の人間がいる場合、パニックが起きれば群集心理が手伝って被害がより広がる危険性が高い。それを防ぐためには、きちんとした指示を送れるリーダーが必要だ。 それを予め予測しておき、いざ何かが起きた場合どうすればいいのかをある程度決めておき、店員が積極的にリーダーシップを取り、被害を最小限に抑えるようにマニュアルを作っておく――という心理は、残念ながらベンガーナデパートには一切なかったようだ。
ドラゴンキラーのオークションのために集まった人間の大半は戦士、もしくは兵士風の人間なのに、彼らは自分が戦おうという気概が一切ない。なまじドラゴンの強さについて知識があるせいか、かえって怖けつく始末である。 基本的に彼らはわいわいと騒いでいるばかりで、物事を解決しようとかあるいはすぐさま逃げ出そうとか、トラブルに対して積極的に行動する気配が全くない。声高に騒ぎはするが、自分でなんとかしようとする意欲に欠けているのである。 揚げ句、ドラゴンキラーを買った商人風の男に対して『おまえがなんとかしろ』と戦士が言っているのだから、他人任せなのもこれに極まるというものである(笑) ところで、この時ドラゴンキラーを競り下ろした商人ゴッポル氏は、自分は戦いなんてできない、この剣は財テクのために買ったんだと主張しているのが面白い。 ダイ大連載当時に発売されたDQ4ので、商人トルネコが武器を購入しては他人に売り飛ばしその差額で設けるという小技があるのだが、その設定がちょっぴりと感じられ、DQファンならば思わずニヤリとしてしまうシーンである。
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