76 ハドラーVSダイ戦2 (5) |
ハドラーの超必殺技に対し、竜闘気による防御もままならないダイは、その場で敗北するはずだった。 ポップのこの行動は、ずいぶんと無茶だ。 ダイもキルバーンに殺される寸前のポップを救っているが、同じことをしていているようで、実はポップの行動の方がずっと危険度が高い。ダイの場合は刃物で敵の攻撃を受け止めているのだが、ポップの場合はまるっきりの丸腰だ。 相手の攻撃を受けるどころか、ほんの少しでもタイミングがずれればそこで一巻の終わりである。 その上、ポップの場合は近くにミストバーンとキルバーンがいた。キルバーン側から一時休戦だと宣言したものの、これはあくまでダイとハドラーの決闘の間だけという条件だった。 もちろん、これは対等な関係での取り引きではない。ポップがこの提案に従って大人しくしているなら、しばらくは見逃してやるよ、と言わんばかりの態度である。 つまり、ポップが行動に出た途端、その場にいる全員を敵に回すのは最初から見えている。 しかし、ポップの表情やその後の行動を見ると、感情のまま、何も考えずについ飛び出してしまったと言う風には見えない。 ハドラー「ポップめ、見かねてダイを救いおったな」 ここでハドラーが初めて、ポップを固有名詞で呼んだことにも注目したいが、面白いのは後者の台詞の方だ。 負けん気の強いポップは敵味方問わず挑発には敏感に反応して、即座に言い返すことが多い。 ましてや、これまでさんざん悪辣な手を打ってきた魔王軍から卑怯者呼ばわりされるだなんて、性格的にも我慢できるはずはないだろう。 理屈で考えるのなら、即座にもう一度瞬間移動呪文を唱えてパプニカに逃げ帰った方がいいように思えるが、ここで思い出して欲しいのは竜騎衆との戦いだ。 あの時、ポップはバランの後を追うために瞬間移動呪文を唱えたが、移動寸前に捕まり、引きずり落とされた。 作品では飛翔呪文と瞬間移動呪文の違いを詳細に語ったシーンはないが、ダイを助けてそのままパプニカまで逃げなかった点から見ても、瞬間移動呪文の移動にはそれなりの難点がありそうだ。 推論にすぎないが、瞬間移動呪文の軌跡は、出発点と目的地を最短距離で結ぶだけではないのだろうか。それだと移動範囲が読みやすいので、当然邪魔もしやすくなる。 また、発動前にごく短いとはいえ溜めが発生している可能性も捨てがたい。 実際にポップが移動前に捕まったことを考えれば、有りえる説である。 信号待ちの車とバイクでは、バイクの方がスタートが早いように、この場から速く逃げ出すのを何よりも先に選んだのだとしたら、なかなかの判断力だ。 しかも、ポップはパプニカに直接は向かわなかった。 逃げている最中、ポップはダイにハドラーの強さを説明している。 なぜなら、ポップの目的はあの場から逃走することではない。 ハドラーがダイに集中し、ミストバーンとキルバーンがハドラーの改造度に集中していたあの時なら、ポップは単身なら逃げ出すチャンスはあった。正直、戦力的にはあの場からポップはとっとと逃げ出した方が、結果的にダイへの負担を減らすような気もするのだが、この場ではそれは置いておこう。 キルバーン達とやり合う時寸前と同じく、ポップ的にはダイと一緒に隙をついて逃げ出すという目的は揺らいでいなかった。しかし、ダイはハドラーに気を取られて戦いに未練を残している。 つまり、二人の間には優先順位の違いが存在するのである。 ポップがダイとハドラーの決闘に反対する理由は、ダイに勝ち目がないと判断したためだ。 ポップはハドラーの評価を、この戦いで改めている。 これまでは感情的で敵を見下す傾向の強かったハドラーが、精神的に一皮むけたと見抜いている。 ダイはハドラーの強さを、主に肉体面から観察し、以前との違いに注目していたが、ポップは主に精神面に注目しているのが面白い。 余談だが、リーダーとサブリーダーは目的意識が共通であり、それでいて注目する視点が違う方が望ましいとされている。 この時はポップはダイを完全に説得しきれてはいないが、それでも強引にパプニカへ逃げようと瞬間移動呪文を唱えるが、ここでポップの痛恨のミスが発生する。 魔法力不足により、瞬間移動呪文が発生しなかったのだ。 《おまけ・ポップの残りMP》 ポップが死の大地に降り立ってから使った魔法は、キルバーンへのメラゾーマ(推定)とダイを救うためのルーラ、さらにトベルーラである。 トベルーラはオリジナル呪文なので消費MPは不明なのだが、ルーラが使えない状態でもトベルーラを使えたのだから、1〜7だと考えることができる。 つまり、死の大地にきた時点で、ポップの残りMPは21〜27! ……これでよく、無謀にも敵陣に一人で突っ込もうと思えたものである(笑)
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