07 マジック・オリンピア論文の後日設定

 

 「言霊の力」で、ポップがマジック・オリンピアに発表した論文は『人間と怪物の共存』というタイトルの小論文です。

 魔物や怪物が決して恐ろしい生き物ではなく、人間とほぼ変わりのない感情や意思を備えていることを述べ、共存は可能だと言い切ったこの論文は、会場で一番もめることになった論文でした。

 あまりにも理想主義で破天荒な意見だと悪評も受けながらも、勢いと熱意、それに今まで誰も主張しなかった面からの着眼点の鋭さを高く評価され、過半数をわずかに上回る評価を獲得し、なんとか首席論文に選ばれました。

 ついでに言うのなら、最年少記録のおまけつきで首席論文賞を獲得しています。
 もっとも、準備を全くしていなかった上にその場の成り行きでの発言を、書記の口述筆記により書き留めた記録なので、文体も荒く、決して出来がいいとは言えない文章です。
 

 マジック・オリンピアに参加したお偉方を徹底的に怒らせたせいもあり、専門家の評価は決して高くはないです。というか、4、5年の間は、ボロクソに非難されまくっていました(笑)

 しかし、書き手が勇者一行の魔法使いという知名度もありますし、短くてしかも読みやすい文章なので、初心者魔法使いや僧侶にとっては馴染みやすく、広く読まれる文章になりました。

 並の論文と違ってユーモア混じりで分かりやすいため、初心者向けの教材にはちょうどいいと学校に使われることも多かったため、専門家の評価とは裏腹に多くの人に親しまれる文章として広がっていきます。

 勇者一行やそれにかかわった人々が、怪物と人間の共存に力を注いだおかげもあり、ポップの論文は時代に立証されていく形で評価を少しづつ高めていきます。

 人間と怪物が共存出来るという教えを受け、それを正しいと考えて成長していった世代の中から生まれたのが、魔物使いという新職業でした。魔物を自分の友達とし、力を借りることのできる職業は最初は数も少なく異端と見られがちでしたが、やがて戦士や魔法使いの様にありふれた職業として認識される様になっていきます。

 ポップの論文の評価が最大に高まるのは、100年以上の年月がすぎてポップが天寿を全うした後……魔物使いという職業がすっかりと世界に広まりきった後のことです。

 その頃になると、ポップの名前や魔法使いという職業も忘れられかけているものの、それでもポップの残した言葉は魔物使いの基本理念として、伝えられる様になる……というのが、ダイ達にとって最良の未来での論文の結果です。

 もちろん、分岐ルートによっては結果は大幅に違っちゃいますが。
 バッドエンドルートなら、……たとえば「闇の翼」ルートなら、人類を裏切った大魔道士ポップが書いた文章として、発禁扱いで抹消される結末になりそうですし、「訪れない明日」ルートだと、忘れられる論文の一つになるでしょうしねえ。

 どんなに優れた論文や意見であろうとも、それを賛同し、実現するために働きかける人々がいなければ、ただの空論にすぎません。
 ポップ自身や仲間達が協力し合って他者に働きかけ、初めて達成出来るかもしれない理想論――ポップの論文は、そういう位置付けで考えています。

 
 

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