09 カール王国自治領設定

 

 カール王国自治領は、原作にはないオリジナルな設定です。
 場所的にはカール王国の西の平原一帯、ギルドメイン大陸西方の草原地帯全域を領土としています。

 カール王国領域内に領土を持っているから名目はカール王国自治領となっているものの、実質はギルドメイン大陸全ての騎士達の合意による組織的な集まりに対する名称です。
 その歴史は古く、元はといえば何代か前のカール王とその地に住まう住人や騎士達の離反が原因でした。

 08の騎士道設定で書いた様に、本来なら王が騎士達に領土と名誉を与え、騎士達が武力を王に貸す、という形で契約は成立します。ですが、騎士達が王に力を貸したにもかかわらず、それに見合うだけの領土や名誉は与えられないということは、しばしば起こります。


 平たく言えば、カール自治領は騎士達のストライキ組織のようなものです。
 会社で働く従業員が自分の働きに見合う給料がもらえないと不満を感じ、ストライキや団体交渉をするように、騎士達もまた、王達に不満を抱いたのが自由騎士誕生のきっかけになりました。

 もし、王が不当に自分達の権利を侵害するようであれば、自分達も団結してそれに対して戦うという意志をはっきりと示したのです。
 その考えを支持したのが、カール王国自治領に住む住人達です。

 彼らは信用のできない王の支配を受けるよりも、自分達の選んだ騎士を領主として彼らの支配を受けることの方を望みました。
 自分達で自分達の主君を決める権利……つまり、王国制ではなく民主制を望んだというわけです。

 これは王国側から見れば明らかな反乱なのですが、大勢の騎士達がカール自治領の領主に賛同したため、うかつに対処できなくなりました。

 カール自治領をあくまで認めずに処罰の対象にすれば、単にその領土の住民や騎士だけではなく、全ての騎士達を敵に回しかねないともなれば、二の足を踏むのも無理はありません。武力で鎮圧しようにも、武力の要は騎士達です。

 契約によって王に協力している立場である騎士達は、契約や信頼が破られたのならばいつでもその契約を断ち切って別の王に仕える権利を所有しています。自分達の仲間である騎士の王国を潰そうとする王に離反し、新たな騎士王と契約を結び直されたのなら、目も当てられません。

 最悪の場合、騎士達全てが団結して王達との全面戦争になる可能性もあるのです。
 結果、カール王国を初めとした各国の王族達はカール自治領の独立を認めざるを得ませんでした。

 まあ、これはカール王国にとっても悪いことばかりではなく、騎士の勢力が強まった分、実力や武力も持つ騎士が増えたせいで、カール王国は世界でもトップクラスの騎士団を持つことになりました。

 利益が少なからずあるため、カール王国はカール自治領を容認するのみならず少なからぬ保護を与え、それが受け継がれ、今でもカール自治領は一国に匹敵する扱いを受けています。

 普通の王国と違うのは、カール自治領の領主は世襲制を許されず、実力で勝ち取らなければならないということです。カール自治領の領主は、少なくとも過半数を超える王を呼んだ上での御前試合で正々堂々とした決闘を行い、現在の領主に勝利し、なおかつカール自治領の住民投票で過半数以上の承認を獲得しなければ領主にはなれません。

 ところで現在の領主であるマァムは、最初からカール自治領になりたいと思って、自分から戦いに挑んだわけではありません。王宮に自由に出入りするために騎士にはなろうと思っていたマァムですが、野心家とは程遠い彼女は最初から自治領の領主になる気なんてありませんでした。

 はっきりいって、それにはカール自治領の前領主に加え、アバンとフローラ、及びレオナの陰謀が少なからず絡んでいます。
 カール自治領では、並の王国と違って武力で勝ち取る必要性があるせいで、領主の引退は比較的早いうちに行われます。

 先代のカール自治領の領主も40代でしたが、そろそろ引退時と考えていました。
 その際、カールの騎士だったロカの娘であるマァムが騎士になったのを知り、彼女の実力や経験、性格を検証した後、彼女にならこの国を任せるのに相応しいと考えました。

 だからこそ、フローラに話を持ち掛けてマァムから自分に挑戦してくる様にできないものかと相談したのです。

 フローラは夫であるアバン、それに友人であるレオナと相談し、マァムがカール自治領の領主になってくれるのが一番いいとの結論に達しました。で、多少の小細工と言いくるめを駆使しまくって、マァムが自分から領主に決闘を挑む様に仕向けたのです(笑)

 ちなみに、マァムは未だに自分が半ば騙されたというか、仕組まれて領主になったことに気づいていません。

 

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