Q1『ポップがどのようにして精霊にあそこまで好かれるようになったか』

 

ポップ「……って言われてもなぁ。おれには精霊って見えないし、あんまり意識したことねえんだけど」

ダイ「おれも見えないけどさ。でも、精霊が近くにいると分かるし、ポップのこと大好きなのも分かるよ。
 なんとなくだけど」

ポップ「おまえはまたそれかよ? そんなの、なんの証拠にもならないだろ」 

ダイ「だって、なんとなくだけど分かるんだもん!
 ポップがいると、精霊達がすごく嬉しそうにしてるし」

ポップ「だから、おれには見えないし分からないっつーの!」

 

 なにやら揉めているダイとポップには内緒で、アバンとマトリフがこっそりと回答してくれます。

 

マトリフ「(しみじみと)あいつはホントに、てめえのこたぁ分かっちゃいねえな」

アバン「まあ、こういうことは本人には分かりにくいものですからね。
 精霊は元々、人間を好むものなんです。特に生まれたての赤ん坊が好きで、精霊は必ず赤ん坊のために贈り物をすると言われています。
 その赤ん坊のために、一生分の幸運を。
 一説に拠ると、精霊からの贈り物を掴まえておくためにこそ、赤ん坊は常に手をギュッと握りしめているといいますね」

マトリフ「ふん、そんなのはただのおとぎ話だろうが」

アバン「そうかもしれませんが、肝心なのはここからですよ。
 精霊は公平で赤ん坊に与える幸運の量は、その子が人生の中で味わう不幸の量と同量だと言われています。
 即ち、本来、全ての人間は幸せでも不幸でもない一生を送れるはずなんですよ。
 ですが、現実はそうではない。不幸に嘆く者もいれば、幸せを満喫するものもいる。なぜ、そうなるのかは知っていますよね、マトリフ?」

マトリフ「そりゃ、手を放せば幸運が逃げちまうからだろ」

アバン「ザッツライト、その通りですよ!
 幸運はとても失われやすくて、しっかりと握りしめていないとなくしてしまう。特に、他人に向かって手を伸ばせば、それは自分の幸運を相手に分け与えているのと同じこと。 自分の幸運を無意識に他人に上げてしまう者がいるからこそ、世界には不幸と幸せが不平等に現れてしまうのだと、伝説では語られますね」

マトリフ「つくづく理不尽な伝説だよな。要するに、人助けをしようとする奴が馬鹿を見るってだけの話じゃねえかよ」

アバン「でも、そんな人間の愚かさを精霊は愛しみ、好むのかもしれませんね。
 打算や、損得なんかじゃない。自分の幸運を躊躇なく他人に上げてしまえるような人間こそ精霊がもっとも好む存在だと、古い伝説では語られていますね。
 そして、そんな人間にこそ最大の加護を与えるのだと……あなたもこの伝説は知っているんじゃないですか?」

マトリフ「ケッ、知ってはいるけどよ、知っているのと信じているってのは別モンだぜ」


アバン「また、そんなひねくれたことを(笑)
 おとぎ話を信じたって、別にいいじゃありませんか。私は信じていますけどね……優れた魔法使いはすべからく、精霊に愛され、その加護を受けた人間だとね」

 

 と、くすくす笑いつつ、アバンは意味ありげにマトリフに視線をやりますが、老魔道士はわざとらしく外方を向いてしまっています(笑)

 

アバン「幸運を握りしめているだけでは、人は不幸にはならなくても幸せにはなれない。 だけど、他人に手を差し延べることで本来よりももっと幸運に恵まれ、幸せになることができる……いい話だと思いませんか?」

 

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