Q8『ポップとヒュンケルって今のところどちらが強いのですか?』

 

ヒム「んー? あの魔法使いとヒュンケルの野郎がやりあったらどっちが勝つかって、話かぁ? 
 まあ、普通に考えれば魔法使いと戦士の対決なら戦士の方が有利って相場は決まってるけどよ――あの魔法使いは普通じゃねえからなぁ〜」

ポップ「てめえのように、全然フツーじゃねえ奴に言われたくねえよっ!」

クロコダイン「しかし、どちらが有利かなど、状況と場所次第でいくらでも変わるだろう。 距離を置いた戦いでは遠距離から攻撃のできる上、飛行できるポップの方が圧倒的に有利だが、場所を限定した上での接近戦ならヒュンケルの方が有利だろう。
 戦略を練るという点ではポップの方が上かもしれないが、瞬時の判断力や至近距離での攻撃速度では戦士の方が優れているのだな」

ヒム「あー、そう言われるとどっちが有利かってのが、分からなくなってくるぜ。防御力では圧倒的にヒュンケルの方が強いから、持久戦になりゃあ奴の価値だろうけどよ。けど、ポップの野郎には一撃必殺の魔法がありやがるからなぁ、最初に一発大技をかましちまえば話は別だしなぁ」

ラーハルト「フン……くだらん」

ヒム「なんだとぉ?! 人が必死に悩んでるってぇのによ!」

ラーハルト「(蔑んだ目で)だから、くだらないと言っている。悩む必要もない……戦いには甘さは禁物だと、分からないのか。
 弱みや甘さを捨てきれない奴に、勝ち目があるわけがないだろう」

 

 ラーハルト、ちらっとポップの方に目をやります。その視線に釣られたように、クロコダインもポップの方を見ます。

 

クロコダイン「手厳しいがそれも一理あるな。ヒュンケル、おまえならどう考える?」

ヒュンケル「……聞かれるまでもないな。強い者が、勝つ――それだけのことだ。おまえも、同意見だろう」

クロコダイン「(苦笑しつつ)悪いが……、まぁ、そうだな」

 

 ヒュンケルも視線を弟弟子に向け……その場にいる全員の視線を一身に受けたポップ、あっさりとぶち切れます。

 

ポップ「なんだよ、なんだよっ、てめえらそろいも揃って! ああ、どうせおれは弱っちい魔法使いだよ、どーせ戦士に勝てやしねえよっ」

 

 ぷんぷんに腹を立てたポップ、どこかに行ってしまいます。

 

ヒム「あーあ、あいつ拗ねちまったぞ。ま、あいつにゃ悪いが、やっぱ戦いとなれば戦士の方が有利だよな、やっぱり」

ラーハルト「……所詮は木偶人形だな」

ヒム「あア? 今、なんて言いやがった?」

ラーハルト「(心底馬鹿にしたように)分かってないのはおまえだけだ。オレ達の意見は、一致している――あの魔法使いの勝ちだとな」

ヒム「はぁあっ?!(呆気に取られて)だって、てめえら、揃いも揃って甘い奴は勝てないだの、強い方が勝つだの言っただろうがよっ?!」

ラーハルト「ああ、言ったさ。甘さを捨てきれない奴は勝てない、とな。
 そして、戦士が魔法使いが戦うなら、相手を殺す覚悟がいる。防御力の弱い魔法使いにはただの一撃でも致命傷になりかねないし、手加減も効きにくいからな。
 だが――ヒュンケルには、あの魔法使いを殺せまい」

ヒュンケル「……(否定せず、わずかに笑う)」

ヒム「い、いちいち回りくどい言い方しやがって……じゃあっ、おまえらもかよっ?!」

ヒュンケル「言っただろう、強い方が勝つ、と」

クロコダイン「オレは、ポップの強さを知っているからな。
 どんなに実力差があろうと決して諦めず、捨て身で戦いを挑んでくる……あの姿には心底感動したし、かなわないと思ったものだ」

ヒュンケル「オレもだ。
 オレは、あいつに勝てる気がしない」

 

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